残りの人生をより良く生きるための活動「終活」に欠かせないのが「エンディングノート」です。
終活という言葉が社会に広がるとともに、エンディングノートも知られるようになり、2011年には、実際に終活を行った男性が亡くなるまでを描いたドキュメンタリー映画『エンディングノート』も制作されました。
主人公は、“段取り命”の元サラリーマン。
会社を定年退職し、第二の人生を謳歌し始めた矢先、ガンの宣告を受けます。
そこから闘病とともに始めたのが、「やることリスト」を作り、実行することでした。
作品では、葬儀会場の下見をする様子や、長男に死後の引き継ぎをする様子が淡々と描かれていきます。
終活は、残りの人生をより良く生きるためのものでもありますが、残された家族のためのものでもあります。
どのようなことを書いておけばいいのか、見ていきましょう。
目次
エンディングノートとは?
まずは、エンディングノートについて、おさらいしておきましょう。
エンディングノートの役割とは?
エンディングノートには、大きく分けて2つの役割があります。
1つは、過去の自分を振り返ることを通して現在の自分を見つめ直し、未来の自分がどうありたいか考えること。
もう1つは、もしもの時、遺された家族の負担を軽減するため、自分の意思を伝えることです。
エンディングノートの選び方は?
どんなノートに書くかは自由です。普通の大学ノートに書いてもいいですし、書店などで扱っている市販の専用ノートに書くのもいいでしょう。
手書きが苦手なら、パソコンで書いても問題ありません。
最近ではスマホのアプリも登場しており、手軽に書けるようになっています。
遺言書と違い、エンディングノートは公式な書類ではありません。
自分の書きやすいものを使い、気軽に書いてみましょう。
エンディングノートの内容は?
何を書いても自由です。
絶対にこれを書かなくてはいけないというルールもありません。
一般的な内容としては、
- 自分について
- 財産について
- 身の回りについて
- 死後について
などがあります。
エンディングノートはいつから始めるべき?
始める時期に関しても、ルールはありません。
何歳から始めてもいいですし、一気に書き上げる必要もありません。
エンディングノートのメリットは、何度でも見直しや書き直しができること。
生きていくうちには、さまざまな変化があります。
気持ちや考えが変わったら手直ししましょう。
また、健康状態や資産状況などが変わることもあります。
定期的に内容を見直し、情報の更新をするとよいでしょう。
気をつけるべきポイントは?
せっかく書いても、エンディングノートの存在を家族が知らなければ意味がありません。
ノートの存在や保管場所を必ず家族に伝えておきましょう。
エンディングノートには重要な情報が詰まっています。
金庫や机の引き出し、お仏壇の中など、紛失しづらく、なおかつ見つけやすい場所にしまうのがお勧めです。
家族が困らない書き方とは?
自分の死後、家族は、葬儀の準備など慌ただしい中でノートを見ることになります。
いくら血のつながった家族とはいえ、自分の考えていることを全て正確に理解できるわけではありません。
まして、悲しみのただなかにいる状況です。読み手の立場に立って、誤解のないよう明確に書くことを心がけましょう。
市販のエンディングノートや、インターネットでダウンロードできるものを使う場合、自分に関係ない項目もあるかもしれません。
そういうときは、その項目を空欄にしておくのではなく「なし」「該当しない」などと、その項目が必要でないことをはっきり示しておくのもコツです。
空欄のままにしておくと、書き忘れなのか該当しないのかが判断しづらく、かえって家族が迷ってしまうことになりかねません。
書き残しておくべき内容とは?
自分について
まず、自分の基本情報について書いておきます。
- 氏名・生年月日
- 血液型
- 住所・本籍地
- 経歴
- 趣味・特技
- 好きな食べ物や思い出
など。
改めて家族に知らせる内容は少ないかもしれませんが、基本情報はエンデイングノートの導入部分であり、書くことが苦手な人でも書きやすい部分です。
また、子供であっても、親のことを全て知っているわけではありません。
あとで見たとき、意外な発見になるかもしれません。
さらに、
- 携帯
- インターネットのプロバイダやメールアドレス
- 運転免許証
- パスポート
- 保険証や年金手帳
など、証明書や契約関連についても、家族が解約時に困らないようまとめておきましょう。
財産について
自分の財産・資産の内容を一覧にします。
- 預貯金・有価証券
- 不動産
- クレジットカード情報
- 借入金・ローン・保証人など
- 人にお金を貸している場合は、その相手と金額
- 年金
- 生命保険
- 市場価値のある骨董品
- 貸金庫やトランクルームの有無と場所
など。
相続税の申告が必要となる場合、全ての財産を明らかにする必要がありますが、これを本人の死後に洗い出すには、大変な手間と時間がかかります。
どのような財産があるのかを明確にしておきましょう。
特に、周りが気づきにくいインターネット銀行やインターネット証券の口座を持っている場合は必ず明記しておきます。
これをまとめておかないと、まだほかに口座があるのではないかと、探さなくてはならなくなります。口座情報は必ず一覧にまとめましょう。
ここで気をつけたいのは、万が一、盗難に遭った場合のことを考え、ノートには口座の一覧を書くだけにとどめておくことです。
金額や暗証番号まで書いたり、通帳や銀行印をまとめておいたりしてはリスクが高くなります。
書き残すのは口座の一覧だけにしましょう。
また、遺族にとって最も迷惑なのは、家族の知らない負債です。
借金やローンなど、いわゆる「マイナスの財産」がある場合は、必ず明記しましょう。
“借金は恥ずかしい”という思いから、家族、特に子供には内緒にしている人は少なくありません。
ですが、相続が発生した場合、マイナスの財産が多いことがわかっていれば、相続人は借金を背負わないよう相続放棄をすることができます。
莫大な借金を知らずに相続し、遺族が返済に苦労することがないよう、負債についても包み隠さず書くことが大切です。
身の回りについて
あなたは、自分の死後、臓器を提供する意思はありますか?
2010年に臓器移植法が改正され、本人の意思が不明な場合は、家族の承諾があれば、臓器の提供や15歳未満の人の脳死臓器提供ができるようになりました。
つまり、もし自分が臓器提供の意思がなかったとしても、それを証明できない場合、家族に判断が委ねられるため、自分の意思に反する結果になってしまうかもしれません。
また、
- 終末期医療、延命措置などの方針
- 心肺停止した際に蘇生を望まない意思表示「DNAR」をするか
- 介護が必要になった時どうするか
- 認知症になった場合の財産管理方法(成年後見制度か、家族信託か)
- 施設入居などの費用をどう準備するか、どこに入居したいのか
- 年金や貯蓄をどのくらい日々の生活費に充てるか
などについても、自分の希望を書いておきましょう。
ペットを飼っている場合は、世話ができなくなったとき、ペットをどうしてほしいか書いておきましょう。
- ペットの名前・年齢
- かかりつけの動物病院・病歴
- 好きな食べ物
- 誰に面倒をみてほしいか
など。
死後について
近年、従来の常識にとらわれない葬儀やお墓、納骨方法が増えています。
人一人が亡くなるのは大変なことです。
家族は気が動転している上にやることが多く、なかなか故人の意思にまで気が回らないかもしれません。
特に、病院で最期を迎えた場合、病院に出入りしている業者に葬儀を任せることになるケースが多いようです。
そのため、望まない形の葬儀が行われることになったり、「これで良かったのか」と、家族に後悔が残ることもあります。
- 葬儀(宗派・会場・形式・遺影・呼んでほしい人リストなど)
- 納骨(代々墓に入るか、散骨や樹木葬などをするかなど)
などについて書いておきます。
まとめ
近年、自分の最期に関するさまざまな選択肢が増えています。
以前は当たり前だった、お仕着せの葬儀や、先祖代々のお墓に入ることが、当たり前ではなくなりつつあります。
それだけに、自分の意思を家族にハッキリと伝えることがますます必要になっていると言えるでしょう。
冒頭でご紹介した映画の主人公の、「自分の人生をきちんとデッサンしておかないと、残された家族が困るだろうと思いまして」という言葉が、深く胸に響きます。
エンディングノートは、自分と家族を結ぶ絆でもあります。
普段から家族と話し合い、エンディングノートを活用してみてはいかがでしょうか。