デジタル遺言とは、オンライン上に遺言を残すサービスです。
スマホなどから手軽に書き込めて、いつでも修正することができます。
書き込んだ情報は、タイミングと相手を指定することで、希望するタイミングで希望する相手に届けられます。
デジタル遺言には法的効力はありません。
しかし、有効な遺言書を作るサポートをしてくれるアプリもあります。
アプリの指示に従って入力した内容を紙に書き写すだけで、法的効力のある遺言書を作成できます。
デジタル遺言サービスのメリットや利用方法を解説します。
目次
遺言書とは?
「遺言書」とは、自分の死後、財産をどのように分割・分配したいかについて自分の意思を書き残すための書類です。
遺言書がない場合は、民法に従い、法定相続人が決まった割合の財産を相続します。
しかし、遺言書がある場合は遺言書の内容が優先されます。
遺言書でできることとは?
遺言書では、誰に、何を、どんな割合で渡すのか決めておくことができます。
遺言書の場合、法定相続人でない人にも遺産を分配可能です。
また、財産を渡したくない人がいる場合、その相手に何も相続させないようにすることもできます。
たとえば、特定の相続人から虐待や侮辱などを受けていて、その人に相続したくないような場合、相続の権利を剥奪できます。
遺言書を書いただけでは安心できないなら、遺言書の内容を代理人として行う「遺言執行者」を指定することも可能です。
遺言執行者を指定しておけば、相続の手続きをスムーズに行うことができます。
そのほか、以下のような利用法もあります。
- 家族信託の設定
- 子供の認知
- 保険金の受取人変更
- 未成年の子供の後見人を指定
遺言書の種類とは?
遺言書は、法律によって書式が決められており、正しい書式に則って書かないと無効になってしまいます。
法的効力のある遺言書には、大きく分けて3つの種類があります。
自筆証書遺言
「自筆証書遺言」とは、自分の手で書いた遺言書です。
用紙の指定や縦書き・横書きも自由で、自宅で気軽に書くことができます。
ただし、日付の記入や押印など、一定の書式に則る必要があります。
自分の肉筆で書かなくてはならないため、パソコンでの作成はできません。
ただし、財産目録については、平成31年1月より自筆でなくても大丈夫となっています。
自宅で保管できますが、紛失や書き換えの心配がある場合は、法務局で預かってもらうこともできます。
公正証書遺言
「公正証書遺言」は、公証役場において、交渉役人の立ち会いのもとで作成する遺言書です。
公証役人の立ち会いのもとで作成するため、内容・書式ともに正確な内容の遺言書を作成できます。
国の機関である公証役場で作成・保管するため、偽造や紛失の心配がありません。
秘密証書遺言
「秘密証書遺言」とは、遺言の内容を誰にも知られない遺言書です。
公正証書遺言は公証人が立ち会って作成するため、遺言の内容を知られてしまいます。
しかし、秘密証書遺言の場合は公証人が立ち会いますが、遺言をした本人以外は内容を見ることができません。
そのため、遺言の内容を秘密にすることができます。
秘密証書遺言は、パソコンや、代筆でも作成可能です。
遺言書と遺言の違いとは?
繰り返しになりますが、「遺言書」は主に財産の分割について意思を書き残す書類です。
ルールに従って書かなくてはならないのは、遺言書は法的効力がある書類だからです。
遺言書に対して、「遺言」の内容は財産のことに限りません。
自分の思いを書き記した手紙のようなものです。
内容は何を書いても構いませんし、決まった書式やルールもありません。
ただし、相続について希望を書いても「遺言」の場合、法的効力はありません。
デジタル遺言とは?
「デジタル遺言」とは、ウェブ上に遺言を残すサービスです。
「デジタル遺言」は、アプリやデジタルフォーマットで作成します。
自分で内容をカスタマイズできるものから、フォーマットに必要事項を記入していくだけのものなど、さまざまな種類の遺言が登場しています。
デジタル遺言のメリットとは?
デジタル遺言を利用するメリットは、なんといっても手軽で便利な点でしょう。
手軽に書ける
デジタル遺言は、スマホやパソコンがあれば手軽に書くことができます。
スマホなら場所も選ばないので、思い立った時、何か思いついた時にすぐ書くことができるでしょう。
また、入力が苦手な人は、音声による入力も可能です。
内容の変更が簡単
デジタル遺言は内容の変更が簡単にできるのも便利です。
「公的な遺言書を作るのは少し重いし難しそうだな、でも自分の意思は書き残しておきたい」と思う人は、まずデジタル遺言を書いてみると良いでしょう。
終活で言えば、エンディングノートを書くような感覚で作成することができます。
関連記事:デジタルエンディングノートとは?無料サービスもご紹介
デジタル遺品問題が解決できる
近年はデジタル遺品の問題が注目されていますが、デジタル遺言であれば、ネット銀行やSNS、有料サイトなどのIDパスワードなども残しておけます。
紙ではできない表現ができる
紙に文字を書くのとは違い、動画で遺言を残すことができます。
遺された家族は、いつでも、何度でも、残された姿を見たり、声を聴いたりすることができます。
保管場所に困らない
自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合、どこに保管しておくかが大きな問題になってきます。
自宅で保管していると、偽造や改変が心配な場合、貸金庫などを借りて保管しなくてはなりません。
しかし、デジタル遺言はオンライン上にデータを保管するため、置き場所・保管場所に悩むことがありません。
デジタル遺言のデメリットとは?
では、デジタル遺言のデメリットとは、どんなところにあるのでしょうか。
法的効力がない
便利なデジタル遺言ですが、残念ながら法的効力はありません。
現在、日本の法律で認められている遺言書は、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3つのみです。
これらは、自筆での記入や専門家の作成、交渉役人の立ち会いなどが必要になります。
しかし、デジタル遺言は、このような制限がありません。
ですから、法的効力はないということになります。
もしトラブルが起こったとしても、その内容に強制力はありません。
そのため、デジタル遺言は、エンディングノートのような感覚で作成するのがおすすめです。
さらに、法的効力を持つ遺言書と併せて作成しておくと、さらに良いでしょう。
サービスの運営期間が心配
オンライン上のサービスで心配なのは、そのサービスがいつまで運営されるか、自分の死後まで続いているかどうか、ということでしょう。
死後、遺族に診てもらうために書いた遺言も、もしサービスが終了してしまったら消えてしまいます。
こういった心配は、オンライン上で行われる民間のサービスにはつきものです。
企業側としては、利益が上がらなければ終了するしかありません。
もしかしたら、遺族に遺言が届かないかもしれないという懸念はぬぐえません。
デジタル遺言にはどんなものがあるの?
では、現在、運営されているデジタル遺言をご紹介しましょう。
タイムカプセル
タイムカプセルはLINEが運営するデジタル遺言作成ツールです。
画面の表示される質問に、LINEのトーク感覚で記入していくだけで難しい手順はありません。
また、最初に設定された10問の質問に答えることで、解答を分析し、自分に適した質問内容を提案してくれます。
書き込んだ遺言は、誰に・どの情報を・どのタイミングで届けるかを指定することができるので万が一の時に安心です。
また、届け先を指定しなくても利用できるため、自分だけの覚え書きや、情報の整理にも使えます。
さらに、法的な遺言書の作成をサポートしてくれます。
法的なルールに則った遺言書の見本を作成することができるので、紙に書き写せば、法的効力のある遺言書を作ることができます。
Husime.com
Husime.comは、音声入力によって遺言書の作成をサポートするツールです。
高齢になるほど、ルールに則った遺言書を手書きするのは大変になります。
また、デジタル機器の扱いが得意でない人も、音声入力機能によって、スマホに話しかけるだけで簡単に入力できます。
また、作成した遺言書はブロックチェーンによって保管されるため、改変の心配がありません。
ブロックチェーンとは、暗号技術によって更新履歴を1本の鎖のようにつなげて正確に維持する技術で、ビットコインなどの仮想通貨やNFT絵画で用いられています。
アプリで自分の財産を俯瞰することで、手軽に自分の保有資産を把握・整理することができ、自分がどうしたいか、しっかり考えることができます。
last message
last messageは、メッセージや写真、映像などを保管し、死後に大切な人へ送信するサービスです。
以下のようにさまざまな機能が充実しています。
- 人生の最後に特定の人に届けたいメッセージを送信する機能「ラストメッセージ」
- 人生の終わりまでにやりたいことをメモする「やりたいことリスト」
- 思い出や大切な情報を保管する「秘密ボックス」
- 定期的に生存を各2人して見守る「生存確認」機能
- 遺言や相続などに関して相談できる「遺言・相続カンタン相談」
まとめ
デジタル遺言には法的効力はありません。
エンディングノートのような感覚で使ったり、法的効力のある遺言書の作成と併せて利用するのがおすすめです。