実家の片付け、どこから手をつけたらいい?片付けのコツ

実家の片付け、どこから手をつけたらいい?片付けのコツ

自分が今住んでいる家なら誰にも遠慮なくどんどん片付けていくことができますが、現在暮らしていない実家を片付けるとなると、そう簡単にはいきません。

散らかった実家を片付けるには、住人である親の許可が必要です。

いくら親であっても、勝手に片付けを進めることは難しいでしょう。

しかし、ものにあふれた状態を放置すれば、いずれ実家はゴミ屋敷化する恐れもあります。

ゴミ屋敷化すると、遺品整理や相続の際、残された家族へ負担がのしかかるだけでなく、親が社会的に孤立しかねません。

この記事では、実家の片付けをスムーズに行うコツや手順について、詳しく解説します。

実家の片付け、どこから手をつけたらいい?片付けのコツ  

実家がものであふれる原因

高齢者の住まいには「ものが多い」というのが定番のようになっていますが、近年、その傾向はますます強くなっているようです。

その原因には、以下4つの問題が関係していると考えられます。

実家がものであふれる原因

核家族化が進んだ

核家族化が進み、親と一緒の家で暮らす人が格段に少なくなりました。

進学や就職で親元を離れた方は、実家が遠方で頻繁に通うことが難しいでしょう。

久しぶりに帰省した時、ものであふれた実家を目の当たりにして驚愕した経験のある方は少なくありません。

このように、親と別で暮らすライフスタイルだからこそ、「実家の片付け」は深刻な問題になりつつあります。

高齢による体力・認知能力の衰え

年を重ねるごとに、筋力・体力は少しずつ衰えていくものです。

若いころは何ともなかった家事も、高齢になると以前のようにこなせなくなることもあります。

収集日にゴミ出しをするだけでも、体力はもちろん時間も要するでしょう。

重いごみを持ち上げて運びだしたり、部屋を掃除機かけしたりといった作業が億劫になってきます。

また、エコの観点からごみの分別が複雑になり、高齢者にとってはかなり手間がかかるようにもなりました。

このようなことから、実家がゴミ屋敷化するひとつの要因として考えられます。

強い勿体ない精神

親世代は、まだ戦後のもののない時代を知っています。

食べ物をはじめ、何もかもが足りなかった時代を生き抜いてきただけに、ものに対して「勿体ない」という意識が強いです。

こういった、世代的な考えから、捨てることがなかなかできない人や、ものが少ないと不安に感じてしまい、ものを溜め込むケースは少なくありません。

1人暮らしによる孤独感

子どもが自立し、親が1人で暮らしている家庭も少なくないでしょう。

広い家での暮らしは、悠々自適なように見えますが、案外寂しいものです。

家族が近くにいない孤独感から、寂しさを埋めるために、ものを集める方もいます。

実家を片付けるメリット

今は一緒の家で生活していないとはいえ、かつては暮らしていた大切な実家です。

あまりの惨状に目を背けたくなっても、いつかは親が亡くなる時がきます。

散らかったままの実家の遺品整理は、自分や家族に大きな負担となります。

親が存命で体力・気力ともに元気な時に実家を片付けることは、残される側の家族にとっても、たくさんのメリットがあります。

実家を片付けるメリット

生前整理を行える

少子化が進み、「終活」を行う人が増えている現代。

親が元気なうちに散らかった実感を片付けることは、終活のひとつ「生前整理」を始められるメリットがあります。

「生前整理」とは、生きている間に自分の財産や持ち物の整理を行うことです。

体力や判断力が落ちる前に、必要なもの・不要なものを取捨選択し、何を残すべきかしっかり考え、行動に移します。

生前整理を済ませておくと、親の死後、相続や遺品整理といった手続きがスムーズです。

家族・親族間のトラブルも回避できますし、親自身も自分の人生を見つめ直す良いきっかけになります。

親が存命中に実家の片付けを行うことは、親子ともにプラスとなるでしょう。

親の介護がしやすくなる

今は親が元気でも、年齢とともに身体の自由が効かなくなる可能性もあります。

状態によっては在宅介護を受けるため、自宅に介護器具を取り付けるかもしれません。

実家が散らかっていると、在宅介護を受ける際、ヘルパーさんのサポートや介護器具の搬入を妨げてしまいます。

不要なものを処分し、実家が片付いていれば、いざ介護を受けると決まった時も慌てません。

将来利用するかもしれない介護のサポートに備えて、実家を片付けておくことは大切な準備のひとつです。

実家の暮らしがより安全になる

実家の床がものであふれていると、転倒リスクが高まります。

高齢者にとって、転倒は命取りです。

ただ転んだだけでも、骨折等大きなケガにつながり、長い間身体を動かせなくなる可能性もあります。

その結果、体力・筋力そして気力も衰え、亡くなってしまうケースは決して少なくありません。

暮らしの快適性そして安全性は、散らかった実家を片付けることで高まります。

老後を安全で充実した毎日を過ごすためにも、片付けを進めていきましょう。

トラブルなく実家を片付ける3つのポイント

実家の片付けをスムーズに進めるには、現在住んでいる親の協力が不可欠です。

親とのもめごとを避けるために、きちんと段階を踏み準備を整えましょう。

トラブルなく実家を片付ける3つのポイント

必ず親の許可を取ってから作業を

実家の片付けを行うには、必ず親の許可が必要です。

無許可の作業開始は、親との関係が悪化する可能性があるためおすすめできません。

ものを片付けることは、メリットがあることを理解してもらいましょう。

  • 避難経路ができて防災になる
  • より安全に暮らせるようになる
  • キレイな家で快適に過ごせるようになる

もし、ものを捨てることに抵抗感がある場合は、「手放す」と言い換えると受け入れやすいいかもしれません。

また、処分するのではなく、寄付団体や知人に「譲る」、リサイクルショップやフリマアプリで「売る」など、手放す以外の選択肢を提示するのもひとつです。

他の家族にも周知しておく

兄弟など他の家族がいる場合は、実家の片付けをすることを伝えましょう。

勝手に片付けを進めることで、トラブルが発生する場合もあります。

また、片付け中に財産や価値ある貴重品が見つかるケースもゼロではありません。

相続や遺品のトラブルを回避するためにも、作業前に必ず伝えておきましょう。

兄弟など他の家族も、実家の片付けに参加してもらえれば作業効率もアップしますので、協力を仰ぐのもおすすめです。

上手に実家を片付ける手順・方法

実家を片付けることに親の同意が取れたら、さっそく作業に移りましょう。

自分の家ではない分、片付けに割ける時間には限りがあります。

できるだけ効率良く片付けを進められる手順と方法を、説明します。

上手に実家を片付ける手順・方法

自分の部屋だった場所から

片付け開始早々トラブルを避けるためにも、まずは自分が使っていた部屋から作業を始めるのが無難です。

実家を出た時に残していったものを整理し、必要なものは持ち帰り、不要なものは処分します。

かつて過ごしていた部屋なら、自分の所有物が多く、捨てる・残すの判断に困りません。

自分のものであれば許可なく処分できるため、片付け作業はスムーズに進みます。

もし、自分の部屋から親のものが出てきた時は、「一緒に手放そうか」と相談してみましょう。

ついでに手放すということで、ものを処分するハードルが下がりやすくなります。

エリアを決めて、不要なごみを捨てる

次に、明らかにごみと思われるものをどんどん処分していきます。

最初に不要なものを処分しておくと部屋のスペースが広くなり、後の整理整頓がしやすくなります。

ただし、片付け作業はただやみくもに行うのではなく、エリアを区切って進めた方がモチベーションを保ちやすいです。

家の中でもスペースの広いリビングは、片付け作業も難航しやすいため、後まわしにしましょう。

まずはキッチンや洗面所など、狭い範囲から攻めて、達成感を得ることが大切です。

キレイになった部屋を見れば、キレイに片付いた家での暮らしを想像して、親の気持ちも片付けることに前向きになるかもしれません。

いるものと保留するものを仕分ける

ある程度ごみがなくなったら、残ったものをどんどん整理整頓していきましょう。

残っているのは、「必要なもの」と「捨てるかどうか迷っているもの」です。

実家のスペースに余裕があれば、事前に「残すもの」を保管できる置き場所を用意しておくと良いです。

残すものの一時置き場があると、作業効率が上がります。

難しい場合は、ダンボール等の大きな箱を2つ用意しましょう。

それぞれに「要」「保留」と書き、該当するものどんどん仕分けていきます。

「迷っているもの」は今すぐ決めず、ひとまず保留へ。

迷っていると時間をロスしまいますので、手放すかどうかは後からゆっくり考えましょう。

いるものと保留するものを仕分ける

必要なものの配置を決める

ものを分けたら、「必要なもの」の配置を決めます。

家の広さや部屋の間取りにもよりますが、ある程度、ものの配置を決めると、どのくらいものが置けるのかがわかるため、今後の役に立ちます。

ものの定位置を決める時は、親が生活することをイメージしながら行いましょう。

置き場所は複雑にせず、できるだけワンアクションで片付けられる工夫をすると良いです。

また、一目でどこに何があるか、片付ける場所はどこなのかが把握できるよう配置していきましょう。

小さいものは種類ごとに分け、散らからないように箱などへ入れておくのが片付けのコツです。

化粧品やアクセサリー、ちょっとした生活雑貨や文房具などは、小さければ小さいほど、単体で置いておくと散らかりやすくなります。

大まかで構わないので、「化粧品入れ」「アクセサリー入れ」というように、種類で分けてまとめておくと、使いたい時に見つけやすくなります。

「必要なもの」を配置し終わったら、次に「迷っているもの」の中から、捨てたくない順にものを配置していきます。

ものが多くて収納しきれない場合は、親と相談しながら、手放すものを少し増やしましょう。

ここまで進めたら、ものが収まり、片付けの終わりが見えてくるはずです。

清掃する

ものを配置し終わったら、部屋の清掃をします。

清掃は、一度にすべてを行うより、一部屋ごとに進めていきましょう。

実家は部屋数も多いため、無理をしないよう計画を立てて進めるのがポイントです。

ゴミを正しい方法で処分する

実家の片付けは、いらないものを捨てるまでが一区切りです。

集めた不用品やゴミは、それぞれ正しい方法で処分しましょう。

大きなゴミは粗大ゴミへ、小さなゴミは品目や素材別に、「燃えるごみ」や「燃えないごみ」に出します。

大きな不用品を優先的に捨てると、部屋はかなりスッキリします。

ただし、ほとんどの自治体では、粗大ごみに出すための事前申し込みが必要です。

収集日のタイミングが良くないと、1〜2週間も捨てられないということになりかねません。

大きいゴミは場所も取りますので、粗大ごみの受け付けはできるだけ早めに行いましょう。

実家を片付ける際に、心がけるべきポイントは?

実家とはいえ、自分の部屋を片付けるのとは勝手が違います。

親子でも、片付け方法や進め方によっては、機嫌を損ねてしまう可能性もあるでしょう。

実家を手際よく片付けるには、次のポイントを押さえておくとスムーズです。

実家を片付ける際に、心がけるべきポイントは?

順番を間違えない

最初に、すべての部屋の状態を見て、片付けの順番を決めておきます。

これは、作業の動線を確保し、片付けをスムーズに進めるために必要なことです。

まずは、ものを搬出する経路となる廊下や玄関を片付けます。

次に、部屋に出されているものを片付けていき、最後に収納棚を片付ける、という順番で進めましょう。

ものを搬出する経路を確保する前に収納の中身をすべて出したりすれば、仕分けても運び出すことができず、そこで頓挫してしまう可能性があります。

計画を立てて少しずつ進める

どうしても片付けに日数を割けない人もいるかもしれませんが、できれば、片付けは少しずつ進めていきましょう。

片付けのスケジュールを組み、○日と○日はリビング、△日と△日はお母さんの部屋、というように、日程と場所を区切って片付けていきます。

こうすると、1つの部屋が完結したことでやりがいが生まれ、片付ける意欲やモチベーションが上がりやすいです。

親の思い出に寄り添う

片付けの主役は親であり、自分はあくまでサポートする立場であるということを忘れないようにしましょう。

親の家にあるものは親のものです。

自分の価値観や判断を押しつけ、無理に捨てさせるのは良くありません。

思い出が詰まった大切なものを捨ててしまうと、大きな喪失感を生むことになりかねません。

本当は捨てたくなかったのに、子どもに捨てさせられたという意識が強くなり、親子の間に溝を作ってしまうこともあります。

時にはもどかしいこともあるかもしれませんが、根気よく親と話し合いながら進めていきましょう。

目指すのは「安全な暮らし」

片付けというと、「スッキリしたきれいな空間」と考えるかもしれません。

しかし高齢者の家を片付ける場合、きれいな空間よりも、「安心して暮らせる安全な空間」を目指した方が快適な家に近づきます。

ものがまったくない「しまう収納」よりは、何がどこにあるか一目でわかる「見せる収納」の方が生活しやすいです。

また、ものを片付ける際も、置き場所には注意が必要です。

床にものが置いてあると、つまずいて転倒してしまう危険性があります。

片付けを行う際は、動線の床に置かれたものを片付けて、親が生活する安心・安全に暮らせる空間を確保することを念頭に置きましょう。

生活しやすい空間を作る

収納場所は、普段の親の暮らしを観察してから決めると良いです。

  • ものが出しっ放しになのは、肩が痛くて高いところに手が届かないから
  • ホコリが掃除しきれていないのは、視野も狭くなり目が見えにくいから

など、部屋が散らかっているのには、加齢による身体的な理由が原因であることがよくあります。

  • 下着やタオルは、お風呂場から出てすぐの洗面所
  • 着用頻度の高い服はたんすの下段ではなく、背の高さに合う中段や上段に入れれば、かがまずに取り出せる

このように、親の体格や体力を考慮して、ものが取りやすい、使いやすい位置へ配置するように心がけましょう。

困った時は「片付けサービス」の検討を

実家の散らかり具合やレベルは、それぞれ異なります。

不用品やごみが大量に溜まってゴミ屋敷化した場合や、親族だけではどうにもできない場合、プロの片付け業者の力を借りることを検討しましょう。

実家の片付けを依頼できる業者はいくつかありますが、ここでは「遺品整理業者」「不用品回収業者」「ゴミ屋敷清掃業者」の3つを簡単に紹介します。

困った時は「片付けサービス」の検討を

遺品整理業者

「遺品整理業者」では、親が亡くなった後の遺品整理だけでなく、存命中の「生前整理」の相談も受け付けています。

遺品整理というと、人が亡くなってから依頼するというイメージがありますが、近年では生前整理のアドバイスを行ったり、片付けのサポートをするサービスも増えてきました。

泣く泣く捨てるようなものがあれば、供養してくれる業者もあるので、思い切って手放すことができるかもしれません。

不用品回収業者

処分したいものが大量にある場合は、「不用品回収業者」が便利です。

不用品回収業者は品目問わず、ありとあらゆる不用品をまとめて回収してくれるところが強みでしょう。

仕分けや搬出も不要で、処分する手間と労力がかかりません。

ゴミ屋敷清掃業者

「ゴミ屋敷清掃業者」は、名前の通りゴミ屋敷の片付け・清掃に特化した業者です。

特殊清掃の実績・経験が豊富で、劣悪な状態でも短時間ですっきりキレイな状態にまで片付けてもらえます。

片付けだけでなく、部屋の清掃まで一括して依頼できるのもゴミ屋敷清掃業者のメリットです。

実家がゴミ屋敷レベルに達してしまった場合は、一度相談してみると良いでしょう。

遺品整理業者、不用品回収業者、ゴミ屋敷清掃業者は複数あります。

まずは見積もりを取り、いくつかの業者を比較・検討しましょう。

業者によって料金はもちろんサービス内容も異なりますので、利用して悔いのない納得できる業者を選んでください。

まとめ

せっかく実家をきれいにしても、リバウンドしてしまったら、また大変な思いをして片付けなければなりません。

リバウンドせずきれいな状態をキープするためには、暮らしやすい片付け方をすること。

そして、高齢者はものが少ないと不安を感じる傾向があるということを頭の片隅に置いておきましょう。

親が安全に安心して暮らせる空間を作るために、まずは実家の状態を今一度確認してみてください。

この記事の監修をしたゴミ屋敷の専門家

氏名:新家 喜夫

年間2,500件以上のゴミ屋敷を片付け実績を持つ「ゴミ屋敷バスター七福神」を全国で展開する株式会社テンシュカクの代表取締役。ゴミ屋敷清掃士認定協会理事長。