葬儀の最後、お棺にふたをしたら、遺族や親しい友人男性数名でお棺をかかえ、霊柩車まで運びます。
お棺を霊柩車に納めたあと、火葬場へ向かう前に、喪主または遺族代表が、出棺の見送りをしてくれる会葬者に対してお礼の挨拶をします。
「喪主の挨拶」というと、こんな場面が思い浮かぶのではないでしょうか。
集まってくれた会葬者に感謝の意を示し、故人を立派に送り出すためにも、喪主挨拶はきちんとしたいもの。
いつか来るかもしれない「その時」に備えて、マナーなどを知っておきましょう。
目次
喪主とは?
葬儀を滞りなく行うため、葬儀に関する最終決定権を持つのが喪主です。
とはいえ、葬儀当日、喪主がどこからどこまでやるべきかという決まりはありません。
特に会葬者が多い場合などは、実務は葬儀社や世話役に任せる方がよいでしょう。
「喪主」になるのは誰?
喪主の決め方に法律やルールはありません。遺族や親戚が相談して喪主を決めます。
もし、故人が生前に喪主を指定していたら、できる限り希望に添うようにしましょう。
また、お通夜・葬儀の日程を決める時点で、誰が喪主を務めるか決めておきましょう。
喪主の決め方
喪主の決め方にルールはありませんが、一般的な慣習として、次のような順番があります。
- 故人の配偶者
- 故人の長男
- 故人の次男以降の直系の男子
- 故人の長女
- 故人の次女以降の直系の女子
- 故人の両親
- 故人の兄弟姉妹
故人に配偶者や血縁者がいない場合は、友人や知人などが喪主を務めます。
またそういう人もいない場合、葬儀社のスタッフやお寺の住職が務めたり、介護施設に入所していた場合は、その施設の代表者が喪主を代行することもあります。
喪主は未成年でも務めることができます。
その場合は、親族や知り合いの方から、喪主の補佐役を選ぶようにしましょう。
民法では「祭祀継承者」(お墓や仏壇を引き継ぎ、法要などを主催する人)の規定がありますが、必ずしも祭祀継承者が喪主になるという決まりはありません。
また、祭祀継承者は原則として一人ですが、喪主の場合は二人以上で務めることもできます。
また、故人に子どもが複数人いた場合は、必ずしも長男・長女が喪主になるとは限りません。
喪主の役割
喪主は、葬儀についての取りまとめを行うのが役割で、具体的には以下のようなものがあります。
- 葬儀の手配
- 弔問客への応対
- 通夜でのあいさつ
- 僧侶への応対
- 葬儀内容の決定
- 葬儀でのあいさつ
- 金銭の管理
- 世話役、ご近所へのお礼
- 葬儀終了後の後片付け、御礼など
喪主の妻の役割
夫が喪主となった場合、妻は喪主の妻として夫の手助けをすることになります。
場合によっては、喪主の夫とともに挨拶に出向かなくてはならないこともあります。
また、喪主の妻は、遺族の中で、席の順番や焼香の順番がどのようになるか、地域や家風によって違います。
必ず事前に相談しておきましょう。
「喪主挨拶」とは?
喪主挨拶は、喪主を務める人が、一般の参列者・会葬者に対して行うものです。
親族の代表としてだけでなく、故人の代理として謝意を伝えるという意味もあります。
参列していただいたことに対するお礼、生前、故人と親しく付き合っていただいたことへの感謝の気持ちを込めて挨拶します。
喪主が挨拶をするタイミングは、
- お通夜の終わりまたは通夜振る舞いのとき
- 告別式(出棺)のとき
- 精進落としのとき
が一般的です。
ただ、葬儀の流れは地域や宗旨・宗派、葬儀の形によっても異なります。
いつ、どのタイミングで挨拶をするべきかは、葬儀社の担当者としっかり打ち合わせておきましょう。
通夜での挨拶
お通夜での喪主挨拶は、読経の後か、通夜振る舞いの前に行います。
焼香を終えた参列者に対し、主に通夜に参列してくれたことに対するお礼の言葉を述べます。
出棺の挨拶
親族や参列者が故人に別れを告げ、棺のふたを閉めたあとに行います。
喪主の挨拶のあと、棺を乗せた霊柩車が出発します。
また、出棺の直前ではなく、告別式の途中で喪主の挨拶をすることもあります。
その場合は、閉会の辞の前に挨拶をします。
精進落としでの挨拶
火葬の後には精進落としの食事をします。この際にも喪主の挨拶があります。
葬儀が無事に終わったことを報告した上で感謝の言葉を述べます。
喪主挨拶で気をつけるポイントは?
喪主挨拶をするにあたり、気をつけるべきポイントについて見ていきましょう。
①挨拶の長さ
挨拶の長さは、1~3分ほどが目安です。挨拶の文言を考えるときは、「短すぎず、長すぎず」を意識しましょう。
挨拶の内容
挨拶に含めるべき内容は、主に5つあります。
- 自己紹介・・・自身と故人との関係性
- 弔問へのお礼
- 生前のお礼・・・故人への生前の厚意に対する謝意
- 故人のエピソード
- 今後について・・・家族への力添えのお願い
ほとんどは、ある程度決まった定型文を使えばOKですが、故人のエピソードについては自分の言葉で伝えましょう。
故人の人柄や、生前の功績などが分かるような内容が適切です。
忌み言葉に注意する
葬儀においては、「忌み言葉」と言って、避けるのがマナーとされる言葉があります。
葬儀の代表者として、言葉のマナーについても知っておきましょう。
- 不吉な言葉・・・「浮かばれない」「迷う」「消える」「九」「四」など
- 重ね言葉・・・「ますます」「重ね重ね」「たびたび」「くれぐれも」
- 不幸が続くと連想させる言葉・・・「再び」「引き続き」「繰り返し」「追って」など
- 生死に関する直接的な表現・・・「死ぬ」「死亡」「急死」「生存」「存命」など
- 縁起の悪い言葉・・・「終わる」「流れる」「切れる」「敗れる」など
忌み言葉は、日常でよく使う言葉が多いため、つい口をついて出てきてしまいそうですね。
これらを避けるためには、違う表現を使いましょう。
例えば、
- 重ね重ね→深く、加えて
- いろいろ→多くの
- 追って→のちほど
- 死ぬ→他界
- 存命中→元気だったころ
- 四、九→「し」「く」と読まず、「よん」「きゅう」と発音する
など。
喪主挨拶の例
通夜での挨拶
通夜振る舞い前の場合
「○○○○の長男、△△でございます。本日はお忙しい中、亡き父の通夜にご弔問頂きまして、誠にありがとうございます。
父は、長い間、がんで闘病生活をしておりましたが、○月○日△△時に息を引き取りました。享年○歳でした。
ささやかではございますが、別室に粗宴を用意しております。お時間のご都合がよろしければ、どうぞ召し上がりながら、故人の思い出話をお聞かせください」
お通夜終了時の場合
「○○の妻、△△でございます。本日はお忙しい中、亡き夫の通夜にご参列頂き、誠にありがとうございました。
長い闘病生活から解放されて、お世話になった皆様にお集まりいただき夫も喜んでいることと存じます。
まだ私の知らない夫の話をお聞きしたいところではございますが、時間も遅くなりましたので、本日はこの辺で終了とさせていただきます。
なお、明日の葬儀・告別式は○時より○○にて予定しておりますので、お時間がございましたらお見送りいただけたらと存じます。
本日は誠にありがとうございました」
出棺の挨拶
「○○○○の長男、△△でございます。本日はご多用中にもかかわらず、亡き母の通夜にご弔問頂きまして、誠にありがとうございます。
遺族を代表いたしまして、皆さまに一言ご挨拶を申し上げます。
おかげさまをもちまして、昨日の通夜、そして本日の告別式を滞りなく執り行うことができました。故人もさぞかし皆さまに感謝していることと存じます。
母の人生を振り返ってみますと、息子の私から見ても決して平坦な道ではありませんでした。しかし、私たち子どものためにと、どんな時も仕事に向かい励む姿を見せてくれました。
私も家族を持ち、一家を支えるために一生懸命だった母の偉大さが身にしみております。
母が晩年を豊かに過ごすことが出来ましたのも、ひとえに皆さまのご厚情のたまものでございます。
本日は、皆様にお見送りいただき、母もきっと喜んでいることと存じます。
お世話になった皆さまに、母に代わってお礼を申し上げ、また、今後も故人の生前と同様、皆さまのお力添えをいただければ幸いに存じます。
本日はご参列、誠にありがとうございました」
精進落としでの挨拶
「本日は亡き○○の葬儀・告別式にお集まりくださいまして、誠にありがとうございました。
おかげさまで、滞りなく葬儀・告別式を済ませることができました。
これもひとえに皆さまのお力添えの賜物と、故人もさぞ感謝していることと存じます。
ここに改めてお礼申し上げます。
ささやかではございますが、精進落としのご用意をいたしましたので、どうぞ、ごゆっくりお召し上がりください。
本日は誠にありがとうございました」
まとめ
お葬式は突然行われることが多く、また、1人の人がそう何回も喪主を務めることはないだけに、実際に喪主になってみると、慌ててしまう人が多いかもしれません。
でも、大丈夫です。
喪主の挨拶は、定型をしっかり押さえておけば、怖くありません。
故人のためにも、会葬者の心に残る、温かい挨拶ができたらいいですね。