「団塊の世代」が後期高齢者(75歳)になる2025年が目の前に迫って来ています。
長寿化はさらに進む予想がされており、高齢者の人口は今後もえていくと考えられます。
医療機関や、特養など国の介護施設にもパンク状態が近づいています。
この流れを受けて、終末期の医療も病院や施設から在宅へと向かっています。
今回は、終末期の医療を行うホスピスや、自宅で行う在宅ホスピスについて見ていきましょう。
目次
緩和ケアとは?
緩和ケアとは、病気になった時、身体的・精神的な苦痛をやわらげる医療やケアのことです。
病気が重い場合、病気そのもののみならず、検査や治療、また日常生活や費用の負担など、不安がいっぱいです。
大切な家族が重い病で苦しみ、死に直面することは、見守る家族にとっても大変な苦痛となります。
生活が一変してしまうような負担がのしかかってくるものです。
日本人の死因の第1位は「悪性新生物」、つまり、がんです。
厚生労働省の調べによれば、日本人の2割超ががんで亡くなっています。
これは死因第2位心疾患(15.8%)の約2倍です。
がんによる痛みは、病気そのものだけでなく、検査や治療時にも起こることがあります。
痛みは身体を疲弊させるだけでなく、気持ちも落ち込ませてしまい、家族にも精神的苦痛を与えます。
がんの痛みはどの段階でも起こりうるもので、終末期だからひどいということはありません。
しかし、本人が治療を望まなかったり、延命を望まない場合でも、最後まで穏やかな日常を送り、生活の質を上げるために痛みを軽減するのが緩和ケアです。
ホスピス・在宅ホスピスとは?
ホスピスとは、週末期を迎えた病人に対し緩和ケアを行う施設です。
以前の日本では、緩和ケアを行うのは病院内にある専用病棟に限られていました。
しかし現在は、同様の緩和ケアを行える施設や老人ホーム、サービス付き高齢者住宅なども増えています。
こうして、苦痛がやわらいだら自宅に帰ったり、お別れまでの時間をホスピスで過ごしたりするなど、さまざまな使い方がされるようになっています。
ホスピスはどんな人が利用できるの?
ホスピスは、がんに限らず病気による苦痛を和らげ、最期までの時間を穏やかに過ごしたいと考えるすべての人が利用できます。
たとえば、がんやエイズ(後天性免疫不全症候群)に罹患した人で根治が難しい状態だったり、手術や治療を望まない人が入居の対象となります。
ホスピスで行われる緩和ケアとはどんなもの?
ホスピスでは、病気による苦痛を和らげる治療やケアを行いますが病気の治療は行いません。
そのため、病状や今後の方針など、患者本人がしっかり理解し家族と話し合って入居を検討することが大切です。
ホスピスで行われるケアには、大きく分けて3つあります。
緩和ケア
痛みなどの症状をやわらげることを目的としたケアです。
主に末期がんやエイズなどの患者が鎮痛薬による痛みの緩和や、心身のケアを受けます。
ターミナルケア
「終末期医療」と呼ばれるケアで、認知症や老衰によって余命わずかな人たちのケアを行います。
痛みを緩和するというよりは、残された生活を心穏やかに過ごすことに重点が置かれています。
看取りケア
亡くなる直前に施されるケアで、食事や排泄の介助や床ずれの防止などを行います。
意識がなくなった状態でも、最期まで本人とコミュニケーションを取る努力をし、必要な身体的ケアを行います。
また、ホスピスでは、精神的な悩みや経済的な問題などについてもサポートします。
死に直面し、つらい思いをしている患者には心理士や宗教家に支援してもらうことが可能です。
経済的な問題に対しては、公的支援を受けられるよう、ソーシャルワーカーが支援を行います。
家族もケアの対象
また、緩和ケアは、患者本人だけでなく家族もケアの対象となります。
スタッフは、家族の心身の状態を把握した上で、患者の支援が家族の負担にならないように考慮します。
また、患者の病状や心身の変化について早めに説明し、心の準備をするサポートもしてくれます。
説明の際は家族の精神的負担が大きくなり過ぎないよう、タイミングを見計らって行います。
そのほか、スタッフは、さまざまな家族にニーズを汲み取り、患者と家族が心おきなく過ごせるような環境を整えていきます。
また、死別後の家族が悲しみから立ち直ることができるようサポートも行います。
在宅ホスピスとは?
在宅ホスピスとは、ホスピスで行われるケアを自宅で行うものです。
最期は住みなれた家で過ごしたいと思う患者の希望をかなえられます。
クリニックや訪問看護ステーションの医師、訪問看護師が定期的に訪問し、ケアを行います。
緊急の場合は、365日24時間、いつでも往診や訪問看護ができる体制です。
また、医師や看護師だけでなく、ケアマネージャー、ソーシャルワーカー、薬剤師、理学療法士、ヘルパーなどさまざまなプロと連携しながら、患者を支えます。
在宅ホスピスでケアを受けたい場合は、主治医やケアマネージャーに相談しましょう。
また、介護保険サービスを上手に利用し、家族にかかる金銭的負担を減らすことも大切です。
ホスピスにかかる費用は?
最後まで自分らしく過ごすためのホスピスですが、費用はどのくらいかかるのでしょうか。
ホスピスでのケアでかかる費用は、ホスピスの種類によって違います。
緩和ケア病棟
病院内にある緩和ケア病棟に入院する場合は以下が必要です。
- 入院料
- 食事代
- 差額ベッド代
トータルの費用は、各々の施設や入院期間によって変わってきます。
健康保険が使え、また高額療養費制度の対象にもなるため、経済的な負担は軽めでしょう。
有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅
近年は、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅にもホスピスプランのあるところがあります。
このような施設に入居する場合、以下が必要となります。
- 居住費
- 管理費
- 食費
- 日常生活費
- 医療・介護サービス費
居住費や管理費は施設や部屋、また地域によって異なりますが、月額15〜30万円ほどかかることが多いようです。
また、医療・介護費用の目安は5〜25万円ほどといわれています。
在宅
在宅での緩和ケアには以下が必要です。
- 医師の訪問診療にかかる費用
- 看護師の訪問看護にかかる費用
- 薬代
在宅であっても、医療保険や高額療養費制度が適用されます。
そのほか、保険適用外として、医師・看護師の交通費やケアマネージャーに情報提供を行うための居宅療養管理指導料がかかる場合があります。
ホスピスの探し方は?
ホスピスへの入居を希望する場合は、まず、かかりつけの病院や、地域包括支援センター、ケアマネージャー、医師会の在宅医療介護連携支援室に相談してみましょう。
また、インターネットで全国の緩和ケアを受けられる施設を検索することもできます。
ホスピスには病院、老人用施設、在宅とさまざまな選択肢があります。
まず、家族と話し合い、最期の時をどのように、どんな場所で過ごしたいかイメージして考えましょう。
終活の中でのホスピス探し
終活の一環として、終末期の医療やケアについて考えておくのもお勧めです。
病院の場合は、施設は既に揃っているので、患者側で準備するものはありません。
しかし、ほかの場合は費用がかさむことが考えられます。
老後、老人用施設やサービス付き高齢者住宅に入りたいという希望を持っているなら、緩和ケアにも対応していたり、ホスピスプランを提供しているところを探してみるのも良いでしょう。
施設に入居する場合は費用がかなりかかるので、早めに準備する必要があります。
希望の施設を調べ、老後の計画をしておきましょう。
在宅の場合は、一見、費用がかからなそうに思えるかもしれません。
しかし、基本的には家族が日常の世話を行うため、介護用ベッドや車椅子など、さまざまな用具を揃える必要があります。
在宅ケアを希望する場合も、早めに心づもりし、費用をプールしておく必要があるでしょう。
まとめ
在宅ホスピスとは、終末期を迎えた患者が、自宅で緩和ケアを受けながら過ごすことです。
住み慣れた自宅で、自分らしい最期を迎えたいという希望をかなえることができます。
医師や看護師が定期的に訪問し、必要なケアを行いますが、基本的に延命治療は行いません。
医療保険や高額医療療養費制度が適用されますが、さまざまな介護用品を揃える必要もあります。
そのため、終活を行う中で最期のあり方を考え、準備しておくのがおすすめです。