終活は、どちらかというと個人的な活動で、誰か他人や、特に行政にサポートしてもらうものというイメージは薄いですよね。
しかし近年、終活を奨励しサポートする自治体が全国的に増えています。
少子高齢化に伴い、さまざまな終活がクローズアップされる昨今。
補助金や終活ノートの配布など、自治体の支援内容もさまざまです。
終活が話題となっていても、どのように取り組んでいけばよいのか、具体的なやり方を目にする機会は意外と少ないもの。
そんななか、私たちの暮らしに最も密着している行政である自治体が、終活も支援してくれるのは心強いですね。
今回は、自治体が行なっている終活支援について見ていきましょう。
終活とは?
終活とは、人生の終わりを見据え、身の回りのさまざまなもの、ことを整理する活動です。
かつては自分や親の死後について口にするのは縁起でもないこと、元気なうちに考えることではないとされてきました。
しかし、最近では「終活」という言葉もすっかりおなじみとなり、口に出すのもはばかられるような存在ではなくなって来ています。
それは、終活を「死」という暗い面からのみ捉えるのではなく、残りの人生を有意義に過ごすために行う活動としての側面がクローズアップされるようになっているからでしょう。
総務省統計局によると、我が国の総人口は、2019年9月15日現在推計で前年に比べ26万人減少しています。
その一方、65歳以上の高齢者人口は、3588万人と前年に比べ32万人増加し、過去最多となりました。
高齢者の総人口に占める割合は28.4%と、前年(28.1%)に比べて0.3ポイント上昇し、こちらも過去最高となっています。
この傾向は今後も続き、2025年には約30%、2060年には約40%に達すると推測されています。
このように、少子高齢化が急速に進み、また、家族制度など家族の形が変化していく中で、自分の死後、子どもや周りに迷惑をかけたくないと考える高齢者が増えて来たのです。
こういった社会状況の中で、終活は、単なる身辺整理ではなく、残りの人生をより良いものとするために行う活動に変化していきました。
終活では、不用品の整理、スムーズな遺産相続のための財産目録作り、遺言書の作成、重要書類の整理、死後の希望について書き残すなどさまざまなことを行います。
とはいえ、終活の内容は十人十色です。
決まりごとはありません。
自分らしく自分のペースで行いましょう。
終活を通して過去を振り返り、残された人生をどう過ごすか考える良い機会になるといいですね。
自治体の取り組みとは?
平均寿命の延びによって「人生100年時代」といわれます。
長くなった人生。
ライフプランを想像したとき「自分はどう生きていくのか」「自分の最期を誰に託すのか」という漠然とした不安を抱える人が増えています。
しかし、終活という言葉の認知度に比べ、実際に終活を行っている人はまだ少なく、具体的にどんなことを行うのか分からない人も多いようです。
また、一人暮らしの高齢者も増えており、終活について相談する相手がいない、どこで相談したらいいのか分からないという人も多く、終活の必要性を感じながらも行動に移せずにいるというケースも出て来ているようです。
生涯未婚率の上昇や独居老人の増加を受け、2018年5月、神奈川県横須賀市が終活支援事業の取り組み「エンディングプラン・サポート事業」を始めました。
その背景には、身元が分かっているのに遺骨が引き取られないという事態があります。
2003年前後から、納骨先があるはずなのに、唯一それを知っていた配偶者が亡くなってしまったために分からないという人が増えてきたのです。
2015年には約20人、2017年には50人以上もの人が、身元がわかっているにもかかわらず引き取り手がないという状態になりました。
このようなケースでは、市の無縁納骨堂に納めざるを得ず、本来、納めるべき場所に納められないということになってしまいます。
このようなことにならないよう、横須賀市では、万が一のときに必要な本籍地に関する情報や、エンディングノートの保管先、葬儀や遺品整理の契約先、お墓の所在地などを事前登録し、指定した人に開示できるサービスを始めたのです。
横須賀市のエンディングプラン・サポート事業を皮切りに、高齢者の終活を支援する動きが全国で広がっています。
自治体の終活支援の内容とは?
では、自治体の終活支援とはどのようなものか、具体的に見ていきましょう。
補助金の支給
終活の取り組みの中で、住宅をリフォームする場合などに自治体から補助金が出るケースがあります。
段差をなくし、手すりをつけてバリアフリーにしたり、浴室に暖房を設置するなど、高齢者の生活をサポートするリフォームの場合、介護保険による住宅改修費の支給制度や自治体単位の補助金制度などがあります。
工事内容などに一定の条件はありますが、補助金をうまく活用すれば、経済的な負担を軽くすることができます。
エンディングノートの配布
死後に周りの人が困らないよう、自分に関することを書いておく「エンディングノート」。
今や終活の必須アイテムとも言えるものですが、このノートを配布する自治体が増えています。
東京都狛江市、神奈川県厚木市、神奈川県茅ヶ崎市、滋賀県守山市などが行っており、それぞれ特徴のある内容のノートを配布しています。
厚木市と守山市のものは、それぞれの自治体ホームページからダウンロードもできます。
ノートを配布するだけでなく、書き方についても教えてもらえます。
たとえば、茅ヶ崎市ではノートの書き方を学ぶ講座を開いています。
2017年には20回以上開催。再度の開催を求める声も多いようです。
各種の事前登録サービス
神奈川県大和市では、2016年7月、生活にゆとりのない人を対象に終活支援事業を始めました。
葬儀などの生前契約サポート、事前登録すれば、死後に知人や親族などへ死亡したことや墓の場所などの情報を連絡してくれるといった内容です。
このようなルートを作っておけば、せっかくお墓があるのに無縁仏として葬られるケースも少なくなります。
この事前登録サービスは、一人暮らしの人や、近くに頼れる人がいない高齢者に心強い内容です。
そのため、事業開始後、身寄りのある人や生活にゆとりがある人からも問い合わせがたくさんあったそうです。
これを受け、大和市では、2018年6月から経済的な状況や別居の親族の有無を問わず、自身の死後に不安を抱えるすべての市民にサポート対象を拡大しました。
今後も、葬儀の内容や死後の遺品整理などの相談を受けるサービスを始めるなど、よりきめ細かな対応をしていくそうです。
安否の確認
自治体によっては、高齢者の安否確認をするため、定期的に訪問を行うサービスを行っています。
このサポートは、自治体が行う地域包括システムのひとつで「見守り支援」と呼ばれるものです。
ひとり暮らしの高齢者は、地域とコミュニケーションをとる機会が少なく、孤独を感じやすい状況の中で生活しています。
元気に暮らしているかどうか、職員が訪問するだけでもサポート対象者の安らぎになっています。
市民と社会のパイプ役
徘徊している高齢者を保護した警察や、倒れた高齢者を収容した病院は、まず親族に連絡をとります。
親族につながらない場合、必ず自治体に照会して来ることから、2018年5月、横須賀市は「わたしの終活登録」という支援事業を始めました。
この事業は、本人が元気なうちに終活関連情報を市に登録してもらい、万一の際、病院・警察・消防・福祉事務所・本人指定の人からの問い合わせに市が答えるというものです。
対象者には制限を設けず、この事業を必要とする市民全てが利用できます。
原則、本人の申請となりますが、緊急連絡先など一部の項目については、本人が認知症などにかかった場合は、後見人や親族、知人も登録できるように配慮されています。
登録できる項目は、
- 本籍
- 緊急連絡先
- 支援 事業者や地域の終活サークルなど
- かかりつけ医
- リビングウィルの保管場所
- エンディングノートの保管場所
- 臓器提供の意思
- 葬儀・納骨・遺品整理・献体の登録先
- 遺言書の保管場所と回答者の指定
- お墓の所在地
などで、このほか、自由な内容も登録できます。
特に、地域の終活サークル等のコミュニティー登録は、今後、親族に代わる生活支援体制のツールの1つとして期待されています。
まとめ
従来「死」は、家族や子どもが面倒をみるものでした。
しかし、社会は大きく変化し、家族のあり方も多様化しています。
今後は、どんな人も安心して死んでいける社会を目指す時期が来ていると言えるでしょう。
終活や、いつかくる最期に不安を感じたら、自治体に相談してみてはいかがでしょうか。