たいていのお葬式は、準備する余裕もなく手配しなければなりません。
最近は新型コロナの影響でお葬式の規模は小さくなる傾向にあります。
それでも、大切な人を亡くした悲しみの中でお葬式の手配をするのは大変なことです。
やっとの思いで葬儀を終えると、次に費用の支払いが待っています。
葬儀社に支払う葬儀費用は、お葬式のあと1週間〜10日以内に支払いが生じるのが一般的です。
中には1ヵ月以内と長めの場合もありますが、お葬式が終わって即日支払いという葬儀社もあるようです。
こんなとき、保険があったら・・・と思う人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、葬儀費用に充てることができる「葬儀保険」について見ていきましょう。
目次
お葬式にはいくらかかるの?
近年は、葬儀の形もさまざまになってきました。
葬儀社やお葬式の規模・プランによっても違いはあるものの、以下のようにまとまったお金が必要になります。
- 一般葬・・・150万円前後
- 家族葬・・・100万円前後
家族や、ごく少数の親戚のみで執り行うお葬式- 一日葬・・・90万円前後
お通夜を行わず、1日で済ませるお葬式- 直葬・・・20万円程度
お通夜・葬儀・告別式を行わず、すぐ火葬する
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葬儀費用は故人のお金で支払える?
多くの場合、お葬式の費用は遺族が支払うことがほとんどです。
しかし、すぐにお金が用意できないとき、故人の預貯金から出せないかと考えるケースも多いでしょう。
でも、それは難しい場合が少なくありません。
なぜなら、金融機関に故人の死亡届を出すと、その口座は凍結されてしまいます。
遺産分割協議が終わり、相続が行われるまで引き出すことができなくなるのです。
では、金融機関に死亡届を出す前にお金を下ろせばいいのでは? と思う人もいるかもしれません。
実際に、引き出すことは不可能ではありません。
口座凍結前に預金を引き出して使える?
口座が凍結される前に預金に手をつけることはお勧めできません。
故人の預金は相続財産だからです。
誰かが勝手に預金を下ろしてしまうと、相続人間でのトラブルに発展しかねません。
そのため、葬儀費用を賄うためであっても相続人全員の同意を得る必要があります。
また、故人の預金を引き出すと、この時点で相続をするとみなされ相続放棄ができなくなります。
もし、あとでマイナスの遺産(借金)が多いことが分かっても、借金も含めて相続することになってしまうのです。
相続を行うには、調査や協議など、時間がかかります。
よく調べずに遺産に手をつけるのは、得策ではありません。
関連記事:今、増えている相続放棄とは? その内容と手続き方法について
「葬儀保険」とは?
お葬式に備えるため「葬儀保険」という保険があります。
葬儀保険は、「お葬式保険」「終活保険」などという商品名で発売されています。
契約者の死後、支払われる保険金を葬儀に充てる保険です。
葬儀保険には、大きく分けて2種類があります。
- 一般の生命保険
- 少額短期保険
一般の生命保険は死亡時に葬儀費用が支払われます。
生命保険会社と契約します。
少額短期保険は、契約期間が短く保障内容を葬儀費に限定した保険です。
基本的に掛け捨て・1年更新で、掛け金や保障額は、一般的な生命保険に比べて低額なのが特徴です。
住まいの賃貸契約の際などにかける火災保険と同様のものと考えればよいでしょう。
支払われる保険金が一定のものと、月々の保険料が一定のものがあります。
少額短期保険業者と契約します。
葬儀保険の掛け金や支払い額は?
葬儀保険は、どのくらいの掛け金で、いくらくらいの保障があるのでしょうか。
一般の生命保険
主に終身保険で、死亡保険金を葬儀費用として使うことができます。
保険金額は数千万円まで設定でき、保険期間は一生涯の終身タイプや、5年、10年などの定期タイプがあります。
契約者や契約内容によって、掛け金や払戻金は異なります。
相続税対策などの幅広い目的の中に葬儀費用も含まれます。
少額短期保険
少額短期保険は、葬儀費用の補填を目的とした保険です。
掛け金は月に数百円ほどのものから、2,000円ほどのもの、9,000円ほどのものなどさまざまですが、一般の保険に比べて低額です。
払戻金は50万円ほどから200万円ほどまでいろいろなコースがあります。
50万円でも、規模の小さい葬儀であれば十分助けになるでしょう。
契約者の年齢などから計算して掛け金が決まるものもあるので、気になる人は業者に相談してみましょう。
葬儀保険のメリットとは?
では、葬儀保険のメリットについて見ていきましょう。
保険金の支払いが速い
葬儀保険の最大のメリットは、保険金の払い戻しのスピードでしょう。
通常の生命保険の場合、審査などに時間がかかります。
実際に保険金を受け取るまで、どうしても日数が必要です。
しかし、葬儀保険の場合、原則として書類到着の翌日には保険金が支払われます。
遅くても5営業日以内には支払われることが多く、早めに費用を支払わなくてはならない場合も安心です。
また、葬儀会社が募集代理店を行っている場合、葬儀会社に直接保険金を振り込むことができます。
もし、故人が葬儀保険に入っていることを家族が知らなくても、保険金は葬儀費用として確実に使われるので安心です。
保険料が低額
特に少額短期保険の場合、毎月の掛け金が低額で加入しやすいのもメリットです。
通常の保険と比較するとかなり安く掛けることができます。
一般の生命保険の多くは貯蓄機能もあるため、保険料は高めになります。
高齢者でも加入しやすい
一般的な生命保険の場合、契約前に医師の診断を含め審査があります。
しかし、少額短期保険の場合、保険金を葬儀費用に充てることが目的なので、医師の診断は必要ありません。
そのため、加入年齢や保障が続く上限年齢も高く設定されており、高齢になってからでも加入しやすいのが魅力です。
満85歳まで加入でき、最高100歳まで保障が続く保険もあるようです。
一般の生命保険の場合は、医師による診査など加入要件が厳しめで、加入年齢にも制限があります。
保険の見直しがしやすい
少額短期保険は1年ごとの保険なので、ライフプランの変化や健康状態を考えて契約内容を見直せます。
また、他の保険に切り替えやすいこともメリットの1つでしょう。
葬儀保険のデメリットとは?
では、葬儀保険のデメリットについても見ておきましょう。
保険金が低額
少額短期保険の場合、毎月の支払いが少ないため、死亡時に支払われる保険金も少なくなります。
一般の生命保険の場合、契約内容によっては数千万円以上の保険金が支払われることもあります。
少額短期保険は、あくまで葬儀費用の補填が目的です。
ですから、保険金も50万円〜200万円ほどのものがほとんどです。
また、一般の生命保険の場合は解約すると解約返戻金が戻ります。
一方、少額短期保険の場合、一部を除いて解約返戻金はなく貯蓄性はありません。
有効期間に注意
少額短期保険では、保険が適用されるのは契約した月の翌々月の1日からです。
そのため、申し込んでから1ヶ月は保険金が支払われないので注意が必要です。
元本割れの可能性がある
少額短期保険は基本的に掛け捨てなので、保険期間が長くなると元本割れになる可能性があります。
保険会社が倒産した時の保証がない
少額短期保険の場合、万が一葬儀保険を扱う会社が倒産してしまうと契約者が保護されません。
加入している会社の経営状態をよく確認しておかなくてはなりません。
タイプの見極めが必要
葬儀保険には、「保険金定額タイプ」と「保険料一定タイプ」があります。
保険金定額タイプは、契約を更新する、つまり年齢が上がるごとに保険料が上がっていきます。
しかし、亡くなった際には一定の受け取る金額を受け取れます。
保険料一定タイプは、契約期間は保険料が変わりません。
代わりに、死亡時に支払われる保険金が年齢に応じて下がっていきます。
どちらが自分に向いているのか、見極める必要があります。
まとめ
近年、終活を始める人が増えたことにより、老後のみならず、死後にどのくらい費用がかかるのかを具体的に意識する人が増えてきました。
その中で、家族に負担をかけないために、葬儀保険に加入する人が増えています。
しかし、一般の生命保険と短期少額保険では、契約内容も保障内容も異なります。
自分の年齢や目的に応じて、どの保険を選ぶか判断しましょう。