遺品整理に保険が適用されるケースがあります

遺品整理に保険が適用されるケースがあります

一人暮らしの高齢者の数が、ますます増えています。
賃貸物件で生活する人も少なくありませんが、単身高齢者の入居には、孤独死などのリスクがどうしてもついてまわります。
賃貸の大家さんには、事故物件となってしまうことや、原状復帰にかかる費用などの心配が尽きません。
このようなリスクを軽減するには、どのような方法があるのでしょうか。
今回は、万一のリスクに対する備えについて見ていきましょう。

遺品整理に保険が適用されると知った女性

増える単身者問題とは?

孤独死保険を検討する単身者

内閣府の資料によると、65歳以上の一人暮らしは男女ともに増加傾向にあります。
1980(昭和55)年には男性約19万人、女性が約69万人。
65歳以上人口に占める割合は男性が4.3%、女性11.2%でした。
しかし、2015(平成27)年には男性約192万人、女性約400万人と大幅に増えています。
割合にすると、65歳以上人口で男性13.3%、女性21.1%といずれも大きく増えています。

これらの単身高齢者には、さまざまな問題が起きています。
たとえば、自分の身の回りのことをすべて放棄してしまう「セルフ・ネグレクト」。
生活状態や、自身の栄養状態がどれだけ悪化しても、それを改善しようという気力を失い、周囲に助けを求めることもしなくなる心の病です。

セルフ・ネグレクトに陥ると、積み上げられたゴミや排泄物などの汚物の中で生活するようになってしまいます。
体調が悪くなっても、病院にもかからないため、誰にも知られることなく亡くなる孤独死を引き起こす可能性が高くなります。
このような孤独死は、亡くなってから何週間も経ってからようやく発見されるようなケースも少なくありません。

また、近年、孤独死は高齢者だけでなく、若い世代にも起こっています。
生涯未婚率や離婚率の増加、核家族化などによる単身世帯の増加にともない、若い単身者の孤独死も増加しています。

孤独死の処理と保険

賃貸住宅を運営している大家さんにとって、孤独死は大きな問題です。
孤独死が発見されるまでに時間がかかればかかるほど、現場の復旧費用は大きくなります。
さらに、故人の部屋が大量のゴミや遺品であふれていた場合、遺品の整理や処分にも時間と費用がかかります。
ある日突然、自分の物件で孤独死が発生したら?
遺品整理や原状回復の費用はどうすればいいのでしょうか。

孤独死の現場の復旧や整理の費用を負担するのは、基本的には故人の遺族や相続人です。
しかし、このような場合、遺族も亡くなった本人と長く疎遠にしていたり、極端な場合は面識がほとんどないような遠い親戚しかいないというケースもあります。
このようなことから、遺族の費用支払い拒否や減額の交渉からトラブルに発展したりすることもあるようです。
また、故人の家族と連絡がつかない場合には、大家さんが費用を負担することになってしまいます。

こんな時に頼れるのが、実は「保険」なのです。
遺品整理に保険が適用されることをご存じでしょうか。
まず、故人が生前、火災保険などに加入していなかったか調べてみましょう。
たとえば、賃貸物件で孤独死などを迎えてしまった場合、遺品整理や修理・修繕費用に保険金が支払われることがあるのです。

遺品整理に適用される保険とは?〜現在の保険を確認しよう

遺品整理に適用される保険

では、どんな保険が遺品整理などに適用されるか見ていきましょう。

火災保険

故人が火災保険に加入していた場合、保障内容によって、遺品整理や原状復帰に対して保険金が下りる可能性があります。
ただし、汚損などの特約が必要なケースが多いので、契約内容をよく確認しましょう。

生命保険

死亡した際に下りる保険金を遺品整理に充てることを目的として、生命保険を契約する方法もあります。
最近では、主要な生命保険会社でも、一口10万円〜100万円ほどで、糖尿病の人でも加入できる生命保険や、満89歳まで加入できる保険などがあります。

家賃保証会社

近年、入居の際に連帯保証人を立てるケースが減り、代わりに家賃保証会社(賃貸保証会社)の利用を必須条件としている物件が増えているようです。
孤独死の増加から、家賃保証会社の保証内容の中に孤独死による損失補償が組み込まれているケースがあります。
もし家賃保証会社を利用している場合、補償が入っていないか確認してみましょう。

遺品整理にも使える保険「孤独死保険」とは?

孤独死保険の適応

では次に、孤独死のリスクを回避するための保険「孤独死保険」について見ていきましょう。
孤独死保険とは、孤独死現場の原状回復が必要になった大家さんの金銭的損失を補償するための保険です。
これは「少額短期保険」というもので、掛け金が少額で保険期間が1年以内、2年以内と短いのが特徴です。

賃貸に入居する際、この少額短期保険を契約することがあります。
孤独死保険は遺品整理に対応することができ、遺品整理の費用をほぼまかなえる額の保険金が下りる商品もあります。

孤独死保険は、万が一、孤独死などが起きてしまっても、遺品整理や特殊清掃、リフォームに充てることができるため、大家さんにとってもリスク回避につながります。
入居者や入居者の保証人に遺品整理や修繕費用の支払い能力がなかったり、保証人が不在であるような場合、入居時孤独死保険を契約するケースもあるようです。

孤独死保険には、大きく分けて2種類あります。

家主型

家主型は、大家さんや管理会社が加入する保険です。
部屋ごとの契約で、掛け金は家賃の総額から算出します。
入居者が亡くなった際、大家さんがこうむる遺品整理、原状復帰、家賃の損失に対して保険金が支払われます。

家主型の最大のメリットは、家賃の損失がカバーできることです。
日本少額短期保険協会が発表する「第4回孤独死現状レポート」によると、家賃保証費用として支払われた保険金額は32万円です。
空き室期間ができ、その間、収入が途絶えてしまうことを考えると、これだけの金額が補償されれば心強いでしょう。
デメリットは、家主や管理会社が掛け金を支払うため、支出が増えることです。

入居者型

入居者型では、家財保障・賠償責任補償だけの場合と、修理費用補償もつく保険があります。
遺品整理や特殊清掃の費用は、家財補償や修理費用補償に含まれます。

家財保障・賠償責任補償の場合、家財保障に400〜500万円、賠償責任補償に1億円の補償が相場となります。
修理費用補償もつく場合は、家財補償に130〜300万円、賠償責任補償に1億円、修理費用補償に100〜200万円が相場です。
契約期間は2年で、掛け金は入居者が負担し、2年で1万3000円〜2万円ほどの商品が多いようです。

入居者型のメリットは、大家さんが保険料を負担しなくて済むことです。
また、入居者が加入する家財保険の特約として契約するため、孤独死以外に災害などもカバーできます。
デメリットは、家賃の損失が補償内容に含まれていないことです。
そのため、孤独死による家賃減額や空き室期間の家賃損失はカバーできません。
また、保険契約者が入居者のため、原則として原状回復後の保険金請求は入居者の相続人が行うことになります。
そのため、相続人がいない場合には保険金の支払いがされません。
大家さんや管理会社が保険金の請求を行える特約があるかどうかを必ずチェックしておきましょう。

孤独死保険の選び方とは? チェックすべきポイントとは

孤独死保険が適応されるか心配な男性

孤独死保険は、各保険会社によって補償内容に細かい違いがあります。
そこで、加入前にチェックすべきポイントをご紹介します。

補償範囲

保険によって補償される範囲が異なります。
繰り返しになりますが、入居者型の場合、家財保険に伴う特約となるため、火災や落雷、水災など孤独死以外の事由による損害もカバーすることができます。
また、家主型であっても、火災や落雷、水災などの自然災害によってリフォームなどが必要になった場合、復旧期間中の家賃収入の損失を補償してくれる商品もあります。

孤独死保険は、契約した部屋の中で居住者が亡くなった場合に保険金が支払われるのが原則です。
しかし、病院で亡くなった場合など、契約している部屋以外で亡くなった場合にも遺品整理費用の支払いがある保険もあります。
加入前によく検討しましょう。

補償金額

補償金額には限度額があり、会社によって額も違います。
「第4回孤独死現状レポート」では、孤独死発生時の残置物処理費用は平均で21万円ほど。
最大で180万円ほどとなっています。
また、原状回復費用は平均で36万円ほど、最大で410万円ほどです。
補償金額の少ない入居者型でもカバーできそうか、家主型で最大限のリスク対策をするか検討しましょう。

家賃の補償期間・内容

家主型の孤独死保険を選ぶ際には、家賃の補償期間を比較しましょう。
「事故発生日から最長12カ月間」、「事故発生日から最長6カ月」など、商品によって補償期間が異なります。
また、家賃の減額による損失を補償する保険や、リフォーム完了日までの空き室による家賃損失のみを補償対象とする保険もあります。
管理物件が事故物件となってしまった場合は家賃を下げるのが一般的なため、値引きによる損失を補償してくれる保険を選ぶと安心です。

加入条件

家主型の場合、基本的には1棟単位、または保有物件全ての加入が必要だったり、所有戸室数が一定数以上なければ加入できない場合があります。
保険金の支払いを鑑みて、どの保険に加入するか検討しましょう。

まとめ

単身者世帯の増加によって、大家さんのリスクも増えています。
死後、周りに迷惑をかけないためにも、住居を借りる際は将来を見据えての補償も同時に考えるべきではないでしょうか。
また、孤独死は高齢者だけの問題ではなくなってきています。
大家さん側は、早めに検討し、コストとリスクとのバランスを考えながら、孤独死対策を進める時代になってきています。

この記事の監修をしたゴミ屋敷の専門家

氏名:新家 喜夫

年間2,500件以上のゴミ屋敷を片付け実績を持つ「ゴミ屋敷バスター七福神」を全国で展開する株式会社テンシュカクの代表取締役。ゴミ屋敷清掃士認定協会理事長。