家族が亡くなったあと、やらなくてはならない遺品整理。
一般的に、残された配偶者や子世代がやるイメージが思い浮かぶ人も多いかもしれません。
そのイメージは間違ってはいませんが、実は完全な正解でもないのです。
では、遺品整理とは、誰がやるものなのでしょうか。
そして、遺品整理にかかる費用は誰が負担するのでしょうか。
今回は、遺品整理は誰がやるべきなのかについて見ていきましょう。
目次
遺品って誰のもの? 遺品整理は誰がやる?
まずは、遺品について基本的なことから見ていきましょう。
遺品とは誰のもの?
「遺品」とは、亡くなった人が生前に持っていたものや使っていたものを指します。
では、遺品は一体誰のものなのでしょうか。
故人の持っていたものだから、故人のもの?
でも、もう持ち主は亡くなっています・・・。
この場合、遺品の所有権は宙に浮いた形になります。
正確に言うと、遺品は相続人の相続財産であるため、故人から所有権を引き継いだ人が所有者となります。
これは民法に置いて定められており、「法定相続人」が、相続後に遺品の所有権(そのモノを使ったり、売ったり、処分したりする権利)を持つことになります。
遺品整理は誰がやるの?
「遺品整理」とは、遺品を要・不要に仕分けし、不要なものを処分することです。
モノを捨てたり処分したりする権利があるのは、そのモノの所有者。
つまり、遺品整理をできるのは遺品の所有権を持っている人です。
法定相続人が複数いる場合は、遺産分割が終了するまで全員が共有することになります。
法定相続人には血縁関係によって順位があり、配偶者や子供が上位なので、遺品の所有権は配偶者や子供が持つことが多くなります。
そのため、遺品整理は配偶者や子供が行うイメージが強いのでしょう。
相続する? しない?
遺品整理を誰がやるのかもう少し詳しく見ていきましょう。
相続の意思の有無は?
繰り返しになりますが、遺品の所有権は、「相続人」全員が共有します。
ということは、相続を受け入れる意思のある人が遺品の権利を持ち、その人たちで遺品整理を行うことになります。
遺言書がない場合
もし故人が遺言書を遺していない場合は、民法によって定められた人が相続人(法定相続人)となります。
従って、遺品整理は、遺産相続の考えがある相続人で行います。
法定相続人の立場にあっても遺産を相続しない場合は遺品に対しての権利はありません。
遺言書がある場合
故人が遺言書を遺している場合は、遺言書に書かれた人が書かれているものや割合で遺産を相続します。
遺言書がある場合、血縁関係にない法定相続人ではない人も含まれていることがあります。
この場合も、遺言書で相続人として指定されている人で、相続の意思のある人が遺品整理を行います。
相続人がいない場合
もし、相続の権利を持つ人がみんな相続放棄してしまったら遺品整理はどうなるのでしょうか。
相続放棄をする理由には、故人と軋轢があり相続したくないなどという気持ち的なものもあれば、借金やローンなどマイナスの財産が多いという理由もあります。
遺産を引き継ぐと、マイナスの財産も相続することになってしまい借金を抱え込んでしまうことになります。
そのため、相続人の立場にあっても相続の権利を放棄するわけです。
このように、相続人が誰もいない場合には、所有権がなくなるのに伴い、遺品整理をする必要もなくなります。
また逆に言えば、相続放棄をしたら遺品の処分はできません。
もし、遺品を処分してしまうと「相続する」と見なされ、遺産を相続しなくてはならなくなります。
市場価値のあるものは相続の対象となるため、勝手に処分してはいけません。
もちろん、実家の解体や、貴金属・土地の売却などは絶対にやめましょう。
生ゴミや賞味期限切れの食品など明らかなゴミを捨てる程度なら行えますが、できれば、相続人以外の人は遺品に手をつけず、片付けにも参加しないのがおすすめです。
所有権がなくなった財産は、家庭裁判所で選ばれた相続管理人が財産の調査・管理・処分まで行ってくれます。
遺品整理を行うときの注意点とは?
複数の相続人で遺品整理を行うことになった場合、どのような点に注意すればよいのでしょうか。
最も大切なのは、遺品整理は必ず相続人全員で行うことです。
相続する人が確定したら、遺品整理は誰か1人にやらせるのではなく、遺産を引き継ぐ意思のある相続人全員で行いましょう。
これは、のちにトラブルが起きるリスクをできる限り避けるためです。
もし、相続人のうちの誰かが1人で遺品整理をしてしまうと、他の相続人に遺品を隠しているのではないかと疑われてしまう可能性が考えられます。
そのため、遺品整理は相続人全員で行うのがベターです。
また、何を残すか、処分するかの判断も全員で行いましょう。
全員で確認しながら整理していけば、どのようなものが残されているか全員が把握することができます。
何か探したいものがある場合も、誰か1人で探すより複数人で探す方が見つけやすいでしょう。
遺産相続は、どのような財産があるのかを明確にする必要があります。
見落としをしないためにも、複数人で行うのは有効です。
遺品整理をしながら、何を相続したいか考え、遺産分割協議で相続人それぞれが相続したいものを話し合いましょう。
遺品整理、自分たちでできない場合はどうする?
遺品が多すぎたり、ゴミなどが大量にあったりする場合は相続人が複数いてもかなりの手間や時間がかかります。
ましてや、仕事があったり、実家から遠いところに住んでいる相続人がいたりと、なかなかみんな揃って遺品整理ができないケースは少なくありません。
また、故人が賃貸に住んでいたため、早々に遺品整理をして部屋を明け渡さなくてはならないというケースも多いようです。
「これは大変だ・・・」となった時は、遺品整理の専門業者に依頼することも選択肢に入れてみるとよいでしょう。
遺品整理を専門業者に依頼する最も大きなメリットは、体力や手間が必要ないことです。
業者は遺品の仕分けから不用品の運搬・処分まで全てやってくれます。
大きくて重い家具や家電も全て運び出してもらえるため、負担がかかりません。
さらに、時間がかからないのも大きなメリットでしょう。
相続人が全員揃うことが難しい場合でも、業者に依頼すれば短時間で片付けることができます。
そのため、遺産分割協議にも早く入ることができるでしょう。
また、遺品整理したい現地が遠方であっても、地元の業者に依頼できるので、そこまで出向く必要がなくなります。
遠方であっても、スマホで片付けの様子を生配信したり、画像で知らせてくれる業者も増えています。
近年、遺品整理業者はオプションサービスを数多く展開しているため、基本のサービス以外にも遺品の買い取り、供養、形見分けのサポートなどさまざまなサービスを利用することができます。
遺品整理で発生する費用はどうする?
遺品整理を行う場合、さまざまな費用が発生します。
主なものは
- ゴミや不用品の処分費用
- 遺品整理業者の料金
- 故人宅の公共料金
- 故人の携帯などの通信費
- 賃貸物件であった場合、日割の家賃
など。
遺品は相続人全員の旧友財産であるため、これらの費用は相続人全員で平等に負担します。
ただし、このとき故人の財産に現金があったとしても、そこから支払ってはいけません。
相続前に故人の財産から支払いをすると、財産放棄ができなくなることがあるからです。
実際、遺品整理の段階では、相続財産がどのくらいあるか確定していないことがほとんどです。
つまり、プラスの財産とマイナスの財産、どちらの方が多いのかわからないことが多いので相続放棄をこの時点ですぐに決めるわけにはいきません。
そのため、相続人各人が自分のお金から出すのが無難です。
もちろん誰か1人が立て替えて、あとから清算しても構いません。
どちらにしても、後からトラブルにならないよう、費用を支出したら必ず領収書を受け取り、大切に保管しておきましょう。
まとめ
遺品整理は、相続の権利を持つ人全員で行うのが基本です。
相続トラブルを防ぐため、誰か1人がやるのではなく、相続人全員で行いましょう。
相続人が遺品整理を行えない場合は、専門業者に依頼する方法もあります。
業者に依頼すれば、労力を使わず、短時間で遺品整理を終わらせることが可能です。
業者の料金をはじめ、遺品整理にかかる費用は相続人全員が平等に負担します。
気持ちよく遺品整理や遺産相続ができるよう、協力して行いましょう。