空き家となった実家。遺品整理はどうすればいいか解説

空き家となった実家。遺品整理はどうすればいいか解説

実家を相続したものの、遠方で就職しているため、住む予定がない。
親が亡くなったあと、なかなか片付けることができず、実家の中には遺品などが残ったままになっている。
このような空き家の増加は、近年、大きな社会問題となっています。
急速に増える空き家をめぐり、どのような問題が起きているのでしょうか。
今回は、空き家に関する基本的な問題から遺品整理の必要性、方法などについて見ていきましょう。

「空き家問題」とは?

空き家の遺品整理は難しい

空き家って、どのくらいあるの?

空き家は、いま全国にどのくらいあると思いますか?
総務省統計局が行った「平成30年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家数は、なんと過去最高の846万戸という結果が出ました。
空き家率は13.6%と、こちらも過去最高となっています。
空き家率は、統計を取り始めた1963年以降、上昇し続けており、1963年に2.5%だった割合が2003年に9.8%、2018年には13.6%となっています。
2033年ごろには、日本の3軒に1軒が空き家になる可能性があるという研究も。

空き家の種類

実は、空き家には種類があります。

  • 賃貸用:432万7千戸(総住宅数に占める割合6.9%)
  • 売却用:29万3千戸(同0.5%)
  • 別荘やセカンドハウス:38万1千戸(同0.6%)
  • その他の住宅:348万7千戸(同5.6%)

このうち、問題になっている空き家は「その他の住宅」です。
賃貸にも売りにも出さず長期にわたって人が住んでいない住宅、転勤・入院などで長期間不在になっている住宅、建て替えのために取り壊すことになっている住宅、空き家の区分の判断が困難な住宅などが含まれます。

空き家における問題とは?

空き家の一番の問題点は、地域社会にとって危険な存在となる可能性があることです。
放置された庭木や植栽は、蚊をはじめとした害虫の発生源に。
伸び放題になれば、落ち葉や枯れ葉が道路に散乱して近隣住民に迷惑をかけることになります。
また、老朽化により建材の落下や建物倒壊の危険性が高まります。
管理されない空き家は、街の景観を損なうだけでなく、見通しが悪化するため、放火や不法投棄などの犯罪を誘発することにもなりかねません。

空き家が増える原因とは?

これから遺品整理を行う空き家

なぜ、空き家は増え続けているのでしょうか。
その原因について見ていきましょう。

少子高齢化などの社会変化

近年、深刻な社会問題となっているのが少子高齢化です。
人口の減少が急速に進んでいるために、総住宅数が総世帯数を上回り、さらにその差が徐々に開いていっていることが空き家増加の大きな理由のひとつです。

また、日本人の寿命が延びたことも原因のひとつと考えられるでしょう。
高齢者が増えることで介護施設の利用が増え、利用者が元々住んでいた家が空き家として残されてしまうのです。

さらに、核家族化が進んでいること、子どもの数が少なくなっていることから、実家が空き家になるとそこに戻って来られる人がいなくなってしまいます。

家の解体に踏み切れない

実際に住むことはなくても、自分の生まれ育った家がなくなってしまうのは寂しいものです。
そんな気持ちから、相続した家をなかなか解体できないという人もいます。
また、解体すれば費用も大きな負担になります。

住宅数の増加

日本人は、中古住宅より新築住宅を好む傾向にあるようです。
そのため、世帯数の増加以上に新築の住宅数が増加していると考えられます。
国土交通省の調査「既存住宅流通を取り巻く状況と活性化に向けた取り組み」(2013年)の「既存住宅流通シェアの国際比較」によると、日本は新築住宅着工戸数98万戸に対し、既存住宅の流通量は17万戸と、わずか14.7%ほどにとどまっています。

国や自治体の取り組み

空き家の遺品整理について話し合う家族

空き家問題に対し、国や自治体ではどのような取り組みが行われているのでしょうか。

国による取り組み

2015年5月、「空き家対策特別措置法」が施行されました。
これは、危険な空き家に対して、自治体が撤去や修繕などを命令できるというものです。
国は、特に問題のある「特定空き家」の持ち主に対して、修繕や撤去の指導や勧告・命令ができるとし、従わなかった場合は、行政が強制的に撤去し、その費用を持ち主に請求できるとしました。

さらに、2016年度以降は、固定資産税の優遇処置も受けられなくなりました。
以前は、土地の上に建物が建っていると、固定資産税が最大6分の1に軽減されるという軽減制度がありました。
そのため、とりあえずそのままにしている人が多いことも、空き家が増える一因となっていました。
そこで、これを解決するため、

  • 倒壊の危険性、保安上危険となるおそれのあるもの
  • 衛生上、著しく有害となるおそれのあるもの
  • 管理がされておらず、著しく景観を損なっているもの
  • 周辺の生活環境に影響をあたえるおそれのあるもの

など各自治体の定める条件を満たした場合、「特定空き家」に認定されます。
「特定空き家」として認定された場合、市町村による勧告や命令が可能となり、指導に従わない場合には固定資産税の優遇措置をなくすということになったわけです。
もちろん、特定空き家に認定されなければ優遇措置はそのままですが、使用していなくても、きちんと管理を行わなくては認定されてしまいます。
管理には費用もかかるので、持っている場合は、家族で早めに話し合っておきましょう。

自治体・民間による取り組み

近年、全国の自治体、不動産や住宅整備会社、また住民有志の間で、空き家の見守りという取り組みが進んでいます。
これは、空き家を巡回し、状況報告などを行うというものです。

また、空き家情報を収集し、所有者と利用希望者のマッチングを行う「空き家バンク」というシステムが全国で普及し、空き家を少しでもなくそうという取り組みも進んでいます。

最近では、空き家を「シェアハウス」として利用する動きも広がってきました。
シェアハウスは、入居者1人1人と契約を結ぶため、1人が退去しても残りの入居者から賃料を徴収することができます。
そのため、空き家をリフォームしてそのまま1世帯に貸し出すよりも、収益が高い賃貸モデルとして注目されています。
キッチンやお風呂などを共用部分とするため、同じ敷地面積でも部屋数を多く取ることができ、通常の単身向け賃貸物件より効率的なのです。

空き家の遺品、そのままでいいの?

空き家の遺品整理について悩む高齢の女性

片付けよう! 空き家の遺品

現状、空き家は余ってはいますが、できればなんとか活用したいものです。
将来的に実家を売却したい、または解体したい場合も、あらかじめきれいな状態にしておく必要があります。
特に売却の場合は、第一印象が大切だといわれています。
物が散乱していては、買い手がその家での生活をイメージできません。
きれいに整理整頓され、ものがない状態の方が買い手はイメージしやすいため売りやすく、また高く売却できる可能性が高まります。
何年も着ていない洋服や着物、カバン、パンパンに物が詰まった押入れ、使われていない家財道具、思い出のアルバム、放置された物置や倉庫の不用品などをそのままにしておくと、不法侵入や放火など犯罪の温床になったり、食品などは衛生上の問題も出てきます。
できるだけ早く片付けましょう。

片付けの方法その1〜売却先や賃貸先に委託する

最も楽でスムーズに整理できますが、必ずしも売却先や賃貸先が見つかるとは限りません。
また、空き家内にある荷物の所有権も放棄しなければならないため、ある程度、片付いた状態でないとおすすめできません。

片付けの方法その2〜自分で片付ける

まず、兄弟や親族など、片付けメンバーを決めましょう。
みんなが集まれる日を話し合い、片付けの日程や片付ける順番、それぞれの役割分担など片付けの計画を立てます。
不用品やごみを自治体のごみ回収に出す場合は、可燃や不燃など出す日を確認しておき、計画的に捨てましょう。
片付けの当日は、まずは必要なものと不用品、ごみに仕分けていきます。
中には大切な書類や、形見分けしたいものもあるかもしれません。
メンバーで確認し合って分類しましょう。
ものがなくなったら、最後に家の中をきれいに掃除して終了です。
自分で片付けをする場合は、きちんと計画を立てるのがおすすめです。

片付けの方法その3〜遺品整理業者に依頼する

遠方に住んでいるために、なかなか実家の片付けができない、また、物が多すぎてどうしたらいいのかわからない場合は、遺品整理業者に依頼するのがおすすめです。
遺品整理業者は、遺品整理のプロです。
素人にはわかりにくい重要書類や形見分けとなるものをきちんと分類してもらえます。
また、探してもらいたいものがあれば依頼できますし、遺品の供養やまだ使えるものの買い取り、不用品の運搬・処分まで一括で行ってもらえます。
遺品整理は基本的に立ち会いが必要ですが、近年はスマホなどで整理の様子を動画で見たり、写真を送ってもらったりすることもできるので安心です。
時間がない人や、体力のない人、遺品整理に自信のない人は活用しましょう。

まとめ

誰も住んでいない空き家をそのまま放置していると、建物が傷んで資産価値が下がるだけでなく、近隣とのトラブルを引き起こす危険性があります。
放置されている空き家が特定空き家に認定されると、固定資産税の優遇処置も受けられなくなります。
空き家を持っている場合は家族と話し合い、できるだけ早めに整理するのがおすすめです。
片付けは、それぞれの事情に合わせて行いましょう。
自分で片付けが行えない場合は、無理をせず業者を活用しましょう。

この記事の監修をしたゴミ屋敷の専門家

氏名:新家 喜夫

年間2,500件以上のゴミ屋敷を片付け実績を持つ「ゴミ屋敷バスター七福神」を全国で展開する株式会社テンシュカクの代表取締役。ゴミ屋敷清掃士認定協会理事長。