すっかり社会に浸透した「終活」。
終活に関するアドバイスを受けられる講座には、毎回多くの人が集まっています。
受講者は40~50代で、親が亡くなった時、葬儀社に仕切られて親の希望を叶えられなかったために、自分は準備をしておきたいと思う人が多いそうです。
「終活」に関する利用者側の意識が変わるのと同様、終活に関するビジネスにも変化が出てきています。
いったい、どんなサービスが登場しているのでしょうか。
また、それらを利用するにあたって、そのような点に注意すればよいのでしょうか。
目次
終活とは?
終活とは、人生の最後を迎えるための活動のことです。
いつか来る自分の死を意識し、人生の最後を迎えるにあたって、これまで歩んできた道を振り返り、残りの時間を自分らしく生きていくために行います。
たとえば、自分の死後、家族が困らないように、自らの葬儀やお墓について考えたり、遺産について明確にしたり、また身辺整理素したりなどして、「その時」に備えます。
従来は、死んだ後のことを話題にするのは縁起が悪いとされ、生前から家族間で相談することなどとんでもないという空気が一般的でした。
しかし、現在では、「終活」は死後に向けた準備活動だけではなく、人生の終わりについて考えることによって、「今」をより良く生きるための活動であり、未来を見つめた人生設計の足がかりであるというポジティブな意味もあるということが知られるようになっています。
終活ビジネスとは?
終活ビジネスとその背景
終活が身近なものになり、多くの人が関心を持つようになってくると、終活にまつわるビジネスというものが生まれてきます。
現在持っている資産・財産の整理や、相続・遺言の準備、葬儀・お墓の手配などのビジネスは、まとめて「終活ビジネス」と呼ばれています。
終活ビジネスが広がっている大きな背景には、「2025年問題」があります。
現在、約800万人いるといわれる「団塊の世代」(1947年〜1949年生まれの世代)のが、一斉に後期高齢者に入るのが、ちょうど2025年なのです。
この年、日本は、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上となり、かつてない超々高齢化社会に突入します。
また、内閣府「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(平成27年)によると、高齢者の6割近くが「蓄えがなく、今後が不安」と答えています。
日本の個人貯蓄の8割は高齢者が持っているといいますが、経済状態も人それぞれのようです。
終活ビジネスの興隆は、これらの社会状況が背景となっています。
少し前のことになりますが、2017年8月に行われた「エンディング産業展2017」というイベントは、2万5千人以上が来場する盛況ぶりでした。
終活ビジネスは、まさに活況を迎えていると言っていいでしょう。
終活ビジネスの特徴は?
近年の終活ビジネスの特徴は、サービス内容が多様化・細分化していることでしょう。
お葬式を例にとってみましょう。これまでは、人が亡くなったら、斎場やお寺などに血縁者や関係者が集まり、お坊さんがお経をあげて、参列者が焼香をして・・・というのが当たり前でした。
しかし、最近では「形にとらわれない自由葬」として、生きているうちにお葬式をあげる「生前葬」、通夜やお葬式などを含めた一般的な葬儀の過程を減ることなく、火葬だけで済ませてしまう「直葬」、故人が好きだった食べ物や趣味などを取り入れた葬儀、プロジェクションマッピングや映像などを活用しショー化されたお葬式など、細かいニーズに対応したさまざまな商品が打ち出されています。
終活ビジネス 最新アイテム
各社がこぞってアイディアを出し、さまざまなものが生まれている終活ビジネス。最新のアイテムを見てみましょう。
新タイプの仏壇
部品を組み合わせることによって、自分で自由にレイアウトできる仏壇が発売されています。
仏壇の中に故人の思い出の品を置く場合、サイズによっては不安定になったり、置きにくかったりすることがあります。
しかし、自由なレイアウトが出来る仏壇は、置くもののサイズや形に応じて須弥山の形を変形させることで、安定して置くことができるのです。
液体火葬
「火葬」とはいっても、通常の火葬とは全く違うプロセスで荼毘に付す方法です。
「アルカリ加水分解」という処分法を使ったもので、熱と圧力、そして水酸化カリウムや水酸化ナトリウムといったアルカリ性物質で通常よりも速いスピードで遺体を腐敗させます。もちろん、骨は残ります。
通常の火葬では、二酸化炭素が排出されますが、液体火葬は省エネルギーできる上、環境に優しい方法です。
現在はアメリカの一部の州でしか認められていませんが、今後広がっていくかもしれません。
バーチャル祭壇
CGで祭壇や遺影、生花などを映像として再生します。
実際の祭壇を設置する必要がないので、棺や位牌を設置して花を飾るだけでOK。
要望に応じてさまざまな演出も可能です。
読経ロボット
「ペッパー導師」は、さまざまな宗派の経典を読むことができる人型ロボットです。
人手不足の寺院や、葬儀を行わない「直葬」で利用したいという葬儀社、また、菩提寺のない人や檀家制度にとらわれたくない人なども利用者に想定しているそうです。
ドライブスルー葬儀場
車に乗ったまま気軽に焼香ができる、ドライブスルー葬儀場が登場しました。
焼香をするには長い列に並び、時間もかかるため、高齢者には身体的負担がかかります。
しかし、このドライブスルー葬儀場では、芳名帳も車内で操作できるタッチパネル方式のため、車を乗り降りする必要がありません。
ドライブスルー参列者はすべてリスト化できるので、喪主側にとっても便利なシステムとなっています。
葬儀社と利用者のマッチングサービス
葬儀、仏壇、介護、相続などに関するサービスを提供する業者とその利用者を、インターネットを介してつなぐサイト運営会社が業績を伸ばしています。
それぞれジャンル別にポータルサイトを運営しており、地域別のマナーなどを紹介するとともに、エリアごとに業者を検索できます。
具体的なプランを確認するだけでなく、利用者の口コミや評判を見て検討することもできるので、見積もりや依頼がしやすくなっています。
終活ビジネスの注意点と活用法は?
終活ビジネスにおけるトラブル
「終活」が浸透するにつれ、契約をめぐる相談も増えています。
高齢者が「周りに迷惑をかけたくない」と生前に契約したものの、解約したいと言った相談も消費生活センターなどに寄せられています。
また、葬儀や墓を準備しておこうと葬儀社に相談し、説明不足で不安になったなどという例もあるようです。
お墓など、葬儀まわりの出費は高額になりがちです。事前に複数の業者から見積もりを取ったり、納得が行くまで質問をしたりすることが大切です。
インターネットを介するビジネス
終活ビジネスの多くは、インターネットを利用して発展していく傾向が強くなっています。
そのため、これまでは、利用者の立場からは不明瞭だった業界の問題点が浮き彫りになってきています。
従来、葬儀には莫大な費用がかかるのは当たり前でした。負担を少しでも軽くするためには互助会に入り、毎月一定額を積み立てなければ、突然の大きな出費に対処できなかったのです。
しかし、今では、事前にインターネットで検索することで、葬儀にかかる費用は明瞭になり、どこにどんなお金が必要なのか把握することができます。
また、安価に行える葬儀プランも発売され、選択肢が広がっています。
葬儀以外に関しても、各社が打ち出すプランは、ほとんどがインターネットで検索でき、動画などを使ったデモなども行われています。
手元供養品や自由葬、お墓の申し込みからデザイン選定、イベントへの参加申し込みなど、これからの終活ビジネスはインターネット抜きには考えられません。
近年では、通販サイトによるお墓掃除代行の注文、芳名帳のデジタルデータ化などのサービスも登場しています。
しかし、このような状況は、スマホやパソコンを使うのが苦手な人にとっては、厳しい状況です。
克服するのは大変かもしれませんが、苦手意識を捨て去り、インターネットに慣れていくようにしたいものです。
まとめ
近年、終活の必要性や重要性が認められるようになっており、誰もが考えるべきことであるという意識が高まっています。
インターネットの普及に伴い、葬儀周辺のさまざまなことが明確になるとともに、当然ながら、利用者は正当な料金、細やかなサービスを求めるようになっています。
良い終活をするためには、まずパソコンやスマホでしっかり情報収集を行うことが大切です。
インターネットに対する苦手意識がある人は、基本的な操作だけで構わないので、慣れていくようにするとよいでしょう。