現在、全国に約1万社もの遺品整理業者が存在しているといわれています。
少子高齢化という社会現象が背景にありますが、今後、団塊の世代が後期高齢者となる2025年に向け、需要を見込んで新規参入する業者はさらに増えていくことでしょう。
最近は、他社と差別化するため、さまざまな特色やサービスを打ち出す業者も増えています。
利用者にとっては選択の幅が広がりますが、いいことだけではありません。
業者が増えれば増えるほど、業者間でサービスや作業の質に差が出たり、トラブルが起こったりするケースも増えているのです。
遺品整理業者にまつわるトラブルにはどんなものがあり、どう回避すればよいのでしょうか?
目次
遺品整理に関するトラブル件数は?
まず、遺品整理に関するトラブルがどのくらいあるのか? 独立行政法人 国民生活センターの資料を見てみましょう。
国民生活センターは、国民生活の安定及び向上に寄与するため、総合的見地から国民生活に関する情報の提供及び調査研究を行うとともに、重要消費者紛争について法による解決のための手続きを実施している法人です。
相談件数は、2013年度73件、2014年度109件、2015年度90件、2016年度114件、2017年度105件と、上下しながら少しずつ増えている印象です。
この資料での「遺品整理サービス」は、亡くなった親族の遺品を整理・処分するために事業者に作業を依頼したもののほか、廃品回収サービスなどで遺品を処分した場合の相談を含みます。
100件前後の相談というのは、少ない気がするかもしれませんが、遺品の買い取りに関する相談は含まれていないこと、また、相談されていない事例も相当あると考えられることから、実際にはもっと多くのトラブルが起きていると予測できます。
遺品整理のトラブル~お金・契約編
- 見積もり外の料金請求
- 高額なキャンセル料請求
- 不当な価格での買い取り
見積もり外の料金請求
遺品整理は、業者が事前に現場を見て見積もりを出し、依頼者が納得したところで契約するのが基本です。
実際に、さまざまな業者のホームページでは、「見積もり以外の料金は請求しません」とうたっているところが多数見られます。
しかし、理由をつけて見積もり以上の料金を追加請求する業者が存在します。
さらには、見積もり自体を出さない悪質な業者もあるようです。
料金トラブルを回避するためには、見積もりを必ず出してしてもらうことが大切です。
その上で、見積書の内容について、
- 物品の搬出だけなのか清掃も含まれるのか
- 家電リサイクル料金も含まれているのか
- 当日の作業進行状況によって追加料金がかかるのか
- 現金や貴金属などが発見された場合の買い取りなどについて明確になっているか
など、作業内容とその費用を明確にしておきましょう。
また、口頭だけでなく、必ず書面で確認し、怪しい部分がないか確認しておくことも必要です。
高額なキャンセル料請求
一度契約を交わしても、事情でキャンセルせざるを得ない場合もあるでしょう。
こういった場合、キャンセル料が発生することがあります。
たとえばホテルや旅館などを予約しても利用できなくなった場合、予約日までの時間によってキャンセル料が発生するのと同様です。
この金額には、決まった基準はなく、いつからどの程度のキャンセル料が発生するのかは一般的に事業者自身が定めています。
この基準が事業者から明確に説明されていない場合、不当と思われるような高額のキャンセル料金を請求されてしまうケースがあるのです。
必ず契約書をよく確認し、不明な点は見積もりの段階で明らかにしておきましょう。
不当な価格での買い取り
最近、「遺品の買い取り」をプランに含めている遺品整理業者がかなり多くなっています。
依頼側としては、遺品を買い取ってもらえれば、遺品整理費用が浮くことにもなるので助かりますよね。
ただし、遺品を買い取るには「古物商許可証」という許可が必要です。
遺品整理を依頼する際、買い取りを希望するなら、この許可を持っている業者かを確認しておきましょう。
素人には、中古品の相場はなかなかわからないもの。
ここにつけ込み、不当に安く買い叩こうとする悪質業者も現れています。
しかし、遺品整理の現場ではなかなか言い出せないこともあります。
美術品や骨董品、貴金属、ブランド品などの高価な遺品を売却したい場合は、いくつかの買取業者を回り、価格を比べた上で売るのも防衛策の1つですね。
ちなみに、買い取りの合意をしていない遺品を買取業者が無断で持ち去る行為は、相続人の所有権侵害行為となります。
所有権に基づく返還請求、返還されない場合には損害賠償請求が可能です。
遺品整理のトラブル~作業編
- 遺品の不法投棄
- 遺品の盗難
- 遺品の廃棄
遺品の不法投棄
ほとんどの業者は、遺品整理で出た不用品を回収・処分することを業務の1つに加えていますね。
不用品として仕分けした遺品は、当然、自治体のルールに従って適切に処分されなくてはなりません。
遺品整理業者が遺品を運搬・廃棄するには「一般廃棄物収集運搬許可」という許可証が必要です。
この許可を受けていない業者は回収が認められていないため、正規の処分ができず、山林などに投棄するケースが起きています。
「産業廃棄物収集運搬許可」を持つ業者もありますが、「産業廃棄物」とは、会社や事業所などから出る事業系ごみのこと。
遺品整理で出る不用品は、一般家庭から出る「一般廃棄物」ですので、「産業廃棄物収集運搬許可」であ運搬・処理することはできません。
間違えやすいのですが、遺品整理に必要な許可は「一般廃棄物収集運搬許可」です。
契約をする際に、この許可を持っているかを確認しておきましょう。
遺品の盗難
遺品は、どんなところに紛れ込んでいるかわかりません。
金利の低下で「タンス預金」をしている人も少なくなく、本当にタンスや本棚の中から現金や貴重品が見つかることがあります。
通常は、これらは全て依頼者に報告する義務があるのにも関わらず、こっそりと持ち帰る悪質な業者が存在しています。これは窃盗罪にあたります。
こうした窃盗行為は、依頼者の目が届かないところで行われる傾向があるので、できる限り作業には立ち会うほうが無難です。また、作業前に写真を撮っておくのもよいでしょう。
立ち会いを必要としないプランを打ち出している業者もありますが、事前によく話し合い、信頼できる業者かどうかを見極めましょう。
遺品の廃棄
遺品整理の中で、業者が必要なものと不必要なものを区別することは困難です。
何が大切なのかは、人によって違うからです。
そのため、通常は、依頼者に立ち会ってもらい、要不要を1つ1つ確認しながら作業を進めていきます。
しかし、この作業を怠り、確認不足で大切な遺品が処分されてしまうケースが起きています。
一度廃棄されてしまったものを取り戻すことは、大変困難です。
焼却されてしまえば、二度と取り戻すことはできません。
土地の権利書や証券の証書など、重要な書類が廃棄されてしまったら、遺産相続をするにも大変な手間がかかってしまいます。
業者によってプランに組み込まれているか、オプションになるかの違いはありますが、ほとんどは「遺品捜索サービス」を行っています。
これは、遺品の中でも特に重要なものや大切なものを探してもらうという作業です。
これらのサービスを利用しつつ、作業に立ち会って自ら確認するのが最も安心です。
遺品整理のトラブル~個人情報について
遺品には、個人情報がたくさん詰まったものもあります。
大きく分けると、
- 写真や手紙、書類などアナログ系のもの
- パソコンやスマホ、デジカメなど、データとして個人情報入ったデジタル系のもの
の2つが挙げられます。
書類などからは、住所氏名をはじめとした個人情報が漏れることがあります。
アナログ系の場合は、個人情報が書かれている書類などはシュレッダーにかけて処分しましょう。
会社の書類など、大量に出てきた場合は、融解処分をしてくれる専門業者に処理を依頼しましょう。処理して欲しい箱に詰めて送るだけでOK。先方ではそのまま封を開けずに処分してくれるので、個人情報が漏れることはありません。
パソコンやスマートフォンのデジタルデータは、適切に処理しないと、そこから個人情報を引き出され、悪用されることがあります。
しかも、画面上で削除したとしても、HDの中には残っている可能性があり、書類のように簡単に処分できません。
デジタル機器に詳しくない場合は、専門の業者にデータを確実に消してもらうほうがよいでしょう。
個人情報を専門に処理してくれる個人情報処理業者に依頼するのも一つの方法です。
個人情報処理業者は、故人のあらゆる個人情報を適切に処理してくれます。
どの業者を選べばよいか迷ったときには、廃棄物を適正に処理すると認証されている事業者のみが使える「ISOマーク」や、的確に個人情報を扱える事業社が使える「Pマーク」があるかどうかを確認しましょう。
まとめ
今はまだ早いですが、悪質業者は、人の判断が鈍る夏を狙うことが多いそうです。
猛暑の中では人の判断力が鈍ること、また、暑い中ご苦労さま、と思う人の情に訴えかけてくるのだそうです。
特に高齢者が、悪徳業者の格好のターゲットになっているようです。
賃貸の空け渡しなど急ぎの遺品整理でない場合は、ゆっくり構え、タイミングを見計らって依頼するとよいでしょう。