「遺品整理」。耳では聞いてなんとなく知ってはいても、実際に利用したことがあるという人は少ないのではないでしょうか?
また、「ごみ屋敷」もよく耳にする言葉ですね。
あまり関係なさそうな感じのするこの2つのワードですが、実は深い関係があるのです。
「遺品整理」という言葉だけ聞けば、故人が遺したものを整理する仕事かな、と思いますよね。
でも、実際の現場で、遺品だけを仕分けして終了というパターンはほとんどありません。
遺品整理とごみ屋敷清掃、不用品搬出が切っても切り離せない関係にあるからです。それは一体なぜなのでしょうか。
目次
遺品整理業者とは?
まずは、遺品整理業者がどんな仕事なのか、みていきましょう。
- 遺品整理の仕事内容とは?
- 「遺品整理業」の資格とは?
遺品整理の仕事内容とは?
人が亡くなると、遺族は故人の残した荷物を片付けたり、処分したりしなくてはなりません。このお手伝いをするのが遺品整理業者です。
故人の遺した品々を不要物とそうでないものに仕分けし、故人の住んでいた家の中をきれいにします。最近では、仕分けと清掃以外にも遺品整理業者の業務は広がってきています。
遺品整理の作業を大きく分けると、
- 遺品の仕分け
- 部屋の清掃
- まだ使えるものの査定
- 不用品の搬出・運搬
- 不用品の処分
の5つになります。
一見、単純に見えますが、実は公的資格がなければできない作業があります。
清掃では、部屋にしみついた臭いを除去・消毒するために特殊な薬品を使わなくてはなりません。それには、薬品を取り扱う資格が必要です。
査定では、いろいろなものに関する知識が必要なだけでなく、それらを買い取って販売するために古物商の許可が必要となります。
不用品を搬出し、運搬するには、一般廃棄物収集運搬業の許可が必要です。
さらに処分では、処分するものそれぞれのルールを把握していなくてはなりません。
エアコン・冷蔵庫・テレビ・洗濯機の「家電4品目」をはじめとする法律を理解していなければ、不用品を正しく処分することはできません。
また、これらを処分するにも「一般廃棄物収集運搬業の許可」が必要なのです。
このように、遺品整理のさまざまなニーズに応えるためには、にはさまざまな知識や資格が必要です。
「遺品整理業」の資格とは?
多彩な内容を含む遺品整理業ですが、この仕事自体にも、遺品整理士認定協会が定める「遺品整理士」という資格があります。
この資格は、遺品整理業に一定のガイドラインを定め、各種関連法令を遵守する必要性を指導し、遺品を「供養」という観点から扱う姿勢を学ばせることで、遺品整理業界の健全化をはかることを目的としています。
遺品整理士認定協会は、遺品整理をより法規制に遵守した形で行うために、遺品整理の取り扱い手順や遺品整理に関わる法規制などの知識を身につけるためのセミナーを運営しています。
このセミナーを受講したのち、リポートを提出することで「遺品整理士」の資格を得られます。
民間の資格ではありますが、遺品整理業者としての心構えや必要な知識を学ぶことができます。
遺品整理業者選びの際、遺品整理士の資格の有無は1つのポイントとなり得るでしょう。
遺品整理とごみ屋敷の関係
ここまでで、遺品整理の仕事と部屋の清掃・不用品回収は、基本的にセットになっていることをご説明しました。
いろいろな遺品整理業者のホームページなどを見ても、ほとんど清掃がセットとなっています。
これは、特殊清掃が必要な場合だけでなく、遺品を片付け、物を出した後に清掃を行うということです。
もちろん、そのお宅がごみ屋敷かどうかは関係ありません。
けれど、現代において、遺品整理を請け負ったお宅が「ごみ屋敷」であることが非常に多くなっているのです。
「ごみ屋敷」居住者には様々な世代の人がいますが、なかでも高齢者が多いようです。
なぜ、高齢者の家はごみ屋敷になりやすいのでしょうか。
- 孤独死の増加・高齢者の孤立化
- 高齢者の世代感覚
- 体力的問題
孤独死の増加・高齢者の孤立化
「孤独死」。これも、よく耳にする言葉なのではないでしょうか?
今や、日本全国で3万人もの人が孤独死していると言われています。
長く続く不景気や、非正規雇用の拡大によって生活が不安定な人が増え、そのために50歳になった時点で未婚である「生涯未婚率」も上昇しています。
さらに、既婚でも子供を持ち育てることが難しくなり、少子高齢化に拍車がかかる一方です。
その結果、核家族化が進行を早め、1人暮らしの「独居老人」が増えているのです。
昔は、近所の人との立ち話や地域の活動など、ご近所付き合いが密でした。
しかし、現代ではマンションなどの集合住宅の増加によって、昔はあった近隣コミュニティが姿を消し、周辺との関わりが薄くなっています。
このような高齢者は、人との関わりが極端に少ないために、だんだん自分の身に構わないようになっていきます。
誰も家に来ないので、汚れていても気にしなくなっていきます。
さらに、現代はコンビニがどこにでもありますね。
特に男性の場合は、自炊をせず、コンビニのお弁当で食事をすませる人も少なくありません。
孤独死をした高齢者の家には、コンビニ弁当の空き容器や、飲料の空きペットボトルが散乱していることが少なくないようです。
高齢者の世代感覚
高齢者がものを溜め込むのは、空き容器などだけではありません。
現代の高齢者は、戦争や、ものが少ない時代を経験してきているので、ものを大切にしなければという意識の強い人が多いようです。
また、年齢的な理由によるもの忘れなども始まり、何度も同じものを買って捨てられなかったり、期限切れの食品が冷蔵庫に詰まっているというようなことになるケースも少なくありません。
体力的問題
日本人の平均寿命は伸び続けています。
長生きはおめでたいことですが、長寿であるからといって、健康であるとは限りません。
高齢になれば、当然、体力が落ちてきます。
また、膝や足腰に痛みがあったり、何か持病を抱えたりするようにもなります。
さらに、視力などが落ちてくると、どうしても片付けるということが億劫になってしまいます。
こういったことから、「片付けなくては」という意識があっても、なかなか行動に移せない高齢者が増えています。
以上のような理由から、自分で片付けができない高齢者が増えており、その結果、高齢者の住居が「ごみ屋敷」や「汚部屋」になっていくケースが増えているわけなのです。
なぜ「ごみ屋敷」を清掃しなくてはならないのか?
ごみ屋敷は、さまざまなトラブルを引き起こします。
- 近隣とのトラブル
- 家族間のトラブル
- 相続トラブル
近隣とのトラブル
ごみが溜まると、生ごみの腐敗臭や部屋に発生したカビ臭が漂い、苦痛を与えることになります。
また、臭いだけでなく、ネズミや害虫の温床にもなります。
さらに、ごみがたくさんあるために火災が発生しやすくなります。
家族間のトラブル
遺族が故人と離れて暮らしている場合、誰がごみ屋敷を整理すればいいのでしょうか?
親の家の片付けは、近年大きな問題となっています。
ただでさえごみに埋もれ、どこから手をつけたらいいかわからない状態です。
素人が清掃をするのはほとんど無理と言っていいでしょう。
しかし、害虫や火災などのリスクを避けるためにも、できるだけ早い対応が必要です。
そこで、プロの手が必要となるわけです。
相続トラブル
遺品整理には、遺産相続の問題も絡んできます。
ごみ屋敷状態の中から、通帳など遺産に関する重要書類などを探し出すのは至難の業です。
さらに、相続人全員で遺品整理をすることなどほとんどないでしょうから、もしも誰かだけが遺品整理や清掃をした場合、「遺産を隠しているんじゃないか?」「黙って何か持ち出したのではないか?」という疑心暗鬼が起きるケースは少なくありません。
それならば、プロに遺品整理と清掃を依頼したほうが、のちのちトラブルに発展する可能性が低くて済むのです。
遺品整理のプロは、たとえ封筒1枚でも必ず中を確認し、仕分けしていきます。
その結果、素人では思いつかないような場所から現金が見つかったり、遺言書が出てきたりするケースが多いのです。
遺品整理のさまざまサービスを利用しよう
これらの理由から、遺品整理と清掃、不用品搬出は切っても切れない関係にあると言えます。
最近では、生前から定期的に家の清掃をするサービスなども出てきています。
いざという時にごみで困らないように、また、清潔で快適な生活を送るためのサービスです。
さまざまなサービスを行う業者が増えていますので、「こうしてほしい」という希望をぜひ相談してみるとよいでしょう。