介護予防・日常生活支援総合事業とは? 高齢者の自立した生活のために

介護予防・日常生活支援総合事業とは? 高齢者の自立した生活のために

2006年、介護保険法が改正され、国の制度として「介護予防」の考え方が導入されました。
その目的は、高齢者がなるべく介護を必要とせず自立した生活を送れるよう、早期に予防することです。

さらに、2015年の介護保険法改正により、高齢者が要介護状態にならないよう総合的に支援する「介護予防・日常生活支援総合事業」が創設されました。
2017年4月からは、全国のすべての市区町村においてさまざまなサービスが開始されています。

この介護予防と総合事業について見ていきましょう。

介護予防とは?

少子高齢化が急速に進む日本。
全人口における高齢者の割合は、今後ますます高くなっていきます。

内閣府の「平成29年版高齢社会白書」によると、高齢者の人口は、団塊の世代がすべて65歳以上となった2015年に3387万人に上り、総人口の27.3%を占めるまでに増加しました。

その団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年には、65歳以上の高齢者は3677万人となり、総人口の3割を占めると推計されています。
なんと、2025年の日本では、国民の4人に1人が75歳以上の後期高齢者となるのです。

また、認知症患者の数も、2025年には5人に1人の割合になると予想されています。
今後、高齢者の数と認知症の人の数は確実に増えると予想されることから、国は人生100年時代にふさわしい社会への転換を図ったのです。

厚生労働省の資料によると、介護予防とは「要介護状態の発生をできる限り防ぐ(遅らせる)こと、そして要介護状態にあってもその悪化をできる限り防ぐこと、さらには軽減を目指すこと」と定義されています。
つまり、「介護が必要な状態にならないよう予防する」ということです。

また、介護予防は、運動機能や栄養状態の改善だけが目的ではありません。
心身の機能の改善や生活環境を整えることによって、高齢者一人一人の生活機能を向上させることも大きな目的です。

さらには、生きがいや自己実現のための取り組みを支援し、生活の質(QOL)の向上を目指します。

これによって、国民の健康寿命(日常的・継続的な医療・介護に依存しないで自分の心身で生命を維持し、自立した生活ができる生存期間)をできる限り延ばし、老いても元気に過ごせる社会づくりを目指します。

地域包括ケアシステムとは?

多くの人が望むのは、最後まで住み慣れた土地で暮らし続けることではないでしょうか。

施設や病院に入院せず自宅で暮らし続けるには、まず健康でいることが必要です。
さらに、そのために必要な医療、介護、福祉サービスなどが一体的に受けられたり、すべての世代が支え、支えられる地域づくりを進めることが必要となります。

そのための仕組みを「地域包括ケアシステム」といいます。

厚生労働省では、住民の日常生活の場であり、何かあった場合に30分ほどで駆けつけることができる範囲を「地域」と定めています。
そして、生活のベースとなる住居、生活を支える福祉サービスを確保した上で、医療や介護、介護予防を総合的に行えるようにしようというのが「地域包括ケアシステム」です。

介護予防・日常生活支援総合事業とは?

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2015年の介護保険法改正では、「地域包括ケアシステム」の具体的な事業の一つとして「介護予防・日常生活支援総合事業」が導入されました。

「介護予防・日常生活支援総合事業」(以下、総合事業)とは、市町村が中心となり、地域の実情に応じて、ボランティア、NPO、民間企業、社会福祉法人、協同組合、住民などさまざまな人や団体が参加し、多様なサービスを充実させることです。
これによって、地域で支え合う体制づくりを推進し、高齢者に対する効果的で効率的な支援を行うことを目指しています。

国が介護予防事業を見直した理由は、いくつかあります。

必要な支援の多様化

これまで、介護保険の予防給付によるサービスでは、掃除や買い物、調理といった家事支援を行ってきました。
しかし要支援者には、普段の見守りや、生活上のちょっとした困りごとを解決するなど、実にさまざまな生活支援サービスが必要です。
ですが、介護保険の予防給付だけでは必要なサービスを十分提供できません。

サービスの拡大の必要性

また、介護予防という観点から、要支援者にだけでなく、これまで要介護認定を受けなかった高齢者にまで範囲を拡大してサービスを提供することによって、国民全体の介護予防につながると考えられます。

介護保険制度の維持が困難

さらに、介護保険の給付は増え続けており、将来はさらに増大することが容易に予想されます。
そのため、将来にわたって現状の介護保険制度を維持し続けるのが困難になることは明らかです。

これらの課題を解決するためには、介護サービス事業所だけでなく、NPOや民間企業、ボランティアなどによるサービスを充実していくことが効果的であり、効率的であると考えられるようになりました。

そこで、介護予防事業が大きく見直され、高齢者本人に対してだけでなく、高齢者を取り巻く環境や地域も含めてのアプローチができる「総合事業」が導入されたのです。

総合事業の取り組みとは?

総合事業は、2015年より「介護予防・生活支援サービス事業」と「一般介護予防事業」という区分を設け、地域の実情に即したきめ細かい介護予防を推進しています。

介護予防・生活支援サービス事業

介護予防・生活支援サービス事業は、ボランティアや民間企業などさまざまな方向から、住民が主体となって要支援者をサポートすることが目的です。

  • 訪問型サービス
  • 通所型サービス
  • その他の生活支援サービス
  • 介護予防支援事業(ケアマネジメント)

の4つのサービスがあり、要支援認定を受けた人、基本チェックリストに該当する人が利用できます。

一般介護予防事業

一般介護予防事業は、保健所や福祉会館で介護予防の知識を学び、通いの場や地域サロンなど、地域の身近な場所で人と人のつながりを通して介護予防の活動を継続できるように支援するための事業です。

  • 介護予防把握事業
  • 介護予防普及啓発事業
  • 地域介護予防活動支援事業
  • 一般介護予防事業評価事業
  • 地域リハビリテーション活動支援事業

の5つの事業があり、第1号被保険者の総ての人と、その支援活動にかかわる人に対して行われ、65歳以上のすべての人が利用できます。

総合事業のサービスを受けるには?

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まず、居住地域の市町村の地域包括支援センターに相談しましょう。

窓口の担当者が、具体的に総合事業のどんなサービスを利用するかや、要介護認定を申請するかなどについて、家族も含み、幅広い意味で相談を受け付けています。

相談後の流れは以下です。

65歳以上の被保険者、基本チェックリストを実施し「元気な高齢者」と判断された人

転倒予防教室、認知機能アップ教室、ふれあいサロンなど、「一般介護予防事業」の利用が可能です。

65歳以上の被保険者で、基本チェックリストを実施し「事業対象者」と判断された人

訪問型サービス、通所型サービスなど、「介護予防・生活支援サービス事業」の利用が可能です。

40歳以上65歳未満で、特定疾病により要支援1・2と判断された人

要介護認定を申請し、要支援1・2の人は、介護予防サービス計画を経て、介護予防訪問看護、介護予防通所リハビリなどの「介護予防サービス」と、「総合事業」(「一般介護予防事業」と「介護予防・生活支援サービス事業」)が利用できます。

40歳以上65歳未満で、特定疾病により要介護1〜5と判断された人

要介護認定を申請し、要介護1〜5の人は、居宅サービス計画を経て、訪問看護・介護、福祉用具貸与、短期入所サービスなど、「介護サービス」が利用可能です。

基本チェックリストとは?

25項目の質問に、原則として本人が回答します。
この基本チェックリストを実施して事業対象者となると、「総合事業」のサービスを受けることができます。

通常、要介護(要支援)認定を受けた人は、一定の期間が来ると、主治医による意見書作成や認定調査員の調査を受け、審査会で審査・判定する認定手続きをする必要があります。
しかし、このチェックリストを実施すると、認定結果を待つことなく、迅速にサービスを受けることができます。

また、基本チェックリストを実施して、基準に該当し、介護予防ケアマネジメントを受ける届け出をした事業対象者は、要介護(要支援)認定を受ける必要がありません。

介護サービス計画、居宅サービス計画とは?

地域包括支援センターの職員などが、心身の状況や生活に応じて、ケアマネジメントを行います。

まとめ

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今後も増加する高齢者人口対策として、介護の現場にはさまざまな策が講じられサービスも充実しつつあります。

高齢の親御さんがいる人や、自分の老後について考えている人は、将来を見据え、介護予防サービスの活用を考えてみてはいかがでしょうか。

この記事の監修をしたゴミ屋敷の専門家

氏名:新家 喜夫

年間2,500件以上のゴミ屋敷を片付け実績を持つ「ゴミ屋敷バスター七福神」を全国で展開する株式会社テンシュカクの代表取締役。ゴミ屋敷清掃士認定協会理事長。