ここ数年、日本で社会問題となっているもののひとつに、「孤独死」があります。
高齢化が進む日本では、一人暮らしをしている高齢者が多く、それに伴って高齢者が一人で亡くなる可能性も高くなってしまうのです。
この孤独死には大きな問題が潜んでいます。それは「発見」が遅れてしまうということ。
誰かが一緒に住んでいるわけではないため、亡くなってからしばらくは発見されないという事態に。
そして、この時必要となるのが特殊清掃というもの。特殊清掃とは一体どういったものなのでしょうか。そして、遺品整理業者と特殊清掃はどのような関係にあるのでしょうか。
目次
2030年問題と増加する孤独死
日本では以前より高齢化が問題視されていました。それがここ最近では、さらに問題意識が高まっています。
現在、高齢化に伴って日本が抱えている問題としては、主に次のものが挙げられます。
- 2030年問題
- 高齢者の一人暮らし
- 孤独死
2030年問題
ベビーブームの影響で出生率が高まった「団塊の世代」と呼ばれる人々。この団塊の世代が高齢者になる時代が迫ってきています。
2030年・・・東京オリンピックの10年後には「日本の人口の3分の1が高齢者になる」といわれているため、「2030年問題」という言葉も出てきています。
その頃には労働力の確保が難しくなるといった問題が懸念されています。
高齢者の一人暮らし
高齢者は家族と一緒に住んでいたり、老人ホームに入居したりするなど、他の誰かと生活を共にすることが理想的でしょう。
しかし、家族と一緒に住むことができなかったり、費用の面で老人ホームに入居することができない高齢者が増えています。そうなると、残された道は一人暮らししかありません。
体力面からみても一人暮らしができているうちは、それほど問題はないかもしれせんが、多くの高齢者は次第に自力で生活をすることが困難になっていきます。
そして、一人暮らしの高齢者が、誰かに気づかれることなく亡くなるという事態が増えています。それが「孤独死」です。
高齢化社会が進むなかで孤独死が増えているということは、団塊の世代が高齢者となる頃には孤独死が今以上に大きな問題に発展してしまっていることも考えられます。
孤独死
孤独死は高齢者が一人で亡くなってしまう、悲しい出来事です。ただ、「悲しい」の一言で片づけることができるものでもありません。孤独死には、もうひとつ大きな問題が潜んでいます。
それは「人知れず亡くなっていく」ことです。誰にも気づかれず亡くなるので、遺体の発見が遅れてしまうのです。
高齢者が孤独死に至る原因のひとつは、家族が一緒に住んでいないということです。
高齢者と家族のつながりが薄れているといわれる現代社会。高齢者となった親御さんと一緒に住まず、さらにほとんど連絡をとることもないという家庭も多くあります。
そのため、家族も親御さんが亡くなったことに気づかない、すぐに遺体を発見できないという事態に陥ってしまうことが多いようです。
そのような孤独死の場合は、近所の住民の通報によって遺体が発見されることもあります。
とはいっても、近所とのつながりも薄れている時代です。もちろんご近所さんが「最近、○○さん見ないわね・・・」と様子を見に行ったところ、亡くなっているというケースもあります。
一方で、部屋から異臭がただよっているため、部屋に入ってみると・・・なんてことも起こっているのです。
人がこのような最期を迎えるのは、とても悲しいことではありますが、これが今の日本の現実でもあるのです。
孤独死が増えると特殊清掃が必要になる
- 死後に遺体は変化する
- 血液は最も除去しにくい
- 部屋の清掃・・・特殊清掃とは?
死後に遺体は変化する
高齢化社会が進むにつれ、増加する孤独死。その現場の多くは、決してきれいなものとはいえない状態になってしまいます。
たとえば人間は亡くなると体(遺体)の腐敗が進み、異臭を発するようになります。
「墓地、埋葬等に関する法律」(埋葬法)では、亡くなってから24時間を経過しないと葬儀を行ってはならないと定められています。つまり、遺体は最低でも24時間は、そのまま安置しておかなければなりません。
さらに葬儀から火葬までにも時間がかかりますが、一般的に遺体はドライアイスを用いたりして、遺体が変化しないように処理が施されています。
ところが孤独死の場合、遺体がしばらく発見されず放置されているので、このような処理もなく、遺体の状態が変化していくのも当然でしょう。
血液は除去しにくい
孤独死は病気だけでなく、突然の怪我でも起こり得ます。その場合、部屋に血液が飛び散ることもあります。もちろん病気により吐血するケースもあるでしょう。
怪我をした際、血液が洋服についてしまった経験をお持ちの方は多いでしょう。ご存じのとおり、染みこんだ血液はなかなか洗い落とすことができません。
血液は布団や畳だけでなく、フローリングや家屋の基礎部分にまで染みこむことがあります。
孤独死の現場では、部屋に飛んでいる血液やそのものだけでなく、血液が染みこんだ箇所から発する臭いも除去しなければ、部屋を元の状態に戻すことはできません。
故人の部屋が賃貸物件の場合、清掃して貸し主に返す必要があります。そんなときにお願いしたいのが清掃業者、あるいは特殊清掃業者です。
部屋の清掃・・・特殊清掃とは?
遺体の状態は、環境によっても変わってきます。
夏場は室温が上昇してしまうので腐敗が進むのも速くなり、そのぶん現場の状態も荒れる可能性が高くなります。このような状態の部屋は清掃しなければならないのですが、特に遺体があった部屋の清掃は、「特殊清掃」と呼ばれる方法が必要となることもあります。
特殊清掃では、特殊な薬品や強力な消臭剤、オゾンを発生する特殊な機械によって除菌消臭を行います。
さらに血液などが床の奥深くにしみこむため、場合によっては汚染された部分を解体し、清掃を行ったうえでリフォームを行うこともあるほどです。
孤独死などの現場で必要となる特殊清掃は、とても遺族だけで行えるものではありません。そのため、特殊清掃を行いたい場合は、特殊清掃業者に依頼をしたほうがよいでしょう。するとしっかり除菌・消臭をして、家を元の状態に戻してくれます。
遺品整理と同時に特殊清掃も依頼?
特殊清掃は、専門技術を持った特殊清掃業者に依頼するのが一般的ですが、直接依頼するのはなかなか難しいかもしれません。
そこで遺品整理を行うとともに、現場で特殊清掃が必要になった場合は、遺品整理業者を通じて特殊清掃も手配してもらうことがあります。
遺品整理業者を通じて清掃・特殊清掃を依頼したほうがよい理由は、次のとおりです。
- 素早く対応してくれる
- 遺族の精神的負担が軽減される
- 遺品整理と一括して行える
素早く対応してくれる
ご家族が孤独死という最期を迎えたとしても、遺族は遺品を整理することになります。
故人が生活していた家には、あらゆる生活用品や衣類、貴重品やアルバムといった大切なものが多く眠っています。
故人が住んでいた家が持ち家であれば、遺品をそのままの状態で置いておくことも可能かもしれませんが、誰も住んでいない家は早く傷むため、維持が難しいものです。
もし故人の部屋が賃貸物件だとしたら、死後すぐに明け渡さなければいけない場合もあります。すると、遺品をそのまま置いておくことはできません。
さらに、遺品整理と同じく部屋の清掃も早急に行う必要性が生じますが、遺族だけで清掃を行うと、部屋の明け渡し日に間に合わない可能性もあるでしょう。
しかし専門業者であれば、素早くしっかりと対応してくれます。
遺族の精神的負担が軽減される
遺族にとっては故人に対する思いを整理するという意味でも、遺品整理は非常に大切な行為です。
しかし、遺族だけで遺品整理を行うことは、遺族にとっては負担になるでしょう。
モノが多ければ片付けも運搬も大変ですし、なにより大切な人が亡くなった悲しみがよみがえってしまい、さらに辛い思いをすることにもなります。
すると遺族が遺品整理を行うと精神的な負担も大きくなってしまうため、遺品整理業者に依頼する遺族も増えています。
同じ理由で、孤独死が起こった部屋で特殊清掃を行わなければいけない場合は、すぐに業者へ依頼したほうが、遺族が自身で清掃するよりは精神的負担を軽減することもできます。
さらに、清掃業者への依頼も気持ち的に辛い・・・という方は、遺品整理業者を通じて清掃・特殊清掃もお願いするとよいでしょう。
遺品整理と一括して行える
もともと「遺品整理」の作業工程には、清掃も含まれています。まず、現場にモノが多すぎたり、汚れていると清掃後に遺品を整理しなければいけません。
また、家の中の物を整理し、処分・売却、形見分けなどを行っていくと、たとえば家具が置かれていて高齢者だけでは掃除することが難しかった部分などの汚れがあらわになります。そういった部分を清掃することも、遺品整理作業のひとつです。
ただし、特殊清掃は特別な薬品を使用するため、様々な国家資格を持っている業者でなければ特殊清掃業務は行えません。依頼した遺品整理業者が、そうした国家資格を持っていないと、別の特殊清掃業者に仕事を依頼することになります。
そこで、特殊清掃と遺品整理をそれぞれの業者に依頼することを考えてみてください。
遺品整理も特殊清掃も業者に依頼することで、遺族の体力的な負担は減るでしょう。しかしいくつもの業者に連絡するための時間的な負担、さらに精神的な負担は増します。
加えて、業者探しの際に悪徳業者にあたってしまう可能性もないとは限りません。最初に数社から見積もりをとることは大切ですが、どの業者がよいのか判断することも遺族にとっては難しいでしょう。
この業者選びを、遺品整理と特殊清掃それぞれで行うと、2倍以上の労力かかかってしまうことになります。
しかし、遺品整理業者を通じて特殊清掃業者への依頼も行うと、その負担が減ります。信頼できる遺品整理業者は、信頼できる特殊清掃業者を紹介してくれるはずです。
さらに作業当日までに遺品整理業者と特殊清掃業者が連携し、遺族にとってできるだけ負担のない適切なスケジュールを組んでくれるなどのメリットも考えられます。
遺品整理における特殊清掃の意義
遺品整理は、故人の持ち物を整理していくことです。それは、遺族が故人の死と向き合う瞬間でもあります。もちろん、この瞬間は精神的な負担が大きいた、遺品整理業者に依頼をして手助けしてもらう場合もありますが、同時に遺族にとっては目をそらせない部分でもあります。
遺品整理を通して遺族が故人の死と向き合い、故人を想い出として残すことで、故人も喜ぶのではないでしょうか。
そして、特殊清掃は家を元の状態に戻すことが目的です。家は故人の持ち物のひとつであり、家をきれいに戻していくことが故人の喜びにつながります。
また、誰もが綺麗な形で最期を迎えたいと思うものでしょう。
病院で亡くなるのであれば、家族に看取られながら最期を迎えられますが、孤独死の場合は荒れた現場で亡くなるという、望んではいない最期を迎えることもあります。
このようにして亡くなった人は二度ときれいな場所で、きれいな状態で死を迎えることはできません。特殊清掃によって現場を元の状態に戻すことで、少しでも故人の想いを叶えたい・・・遺品整理と特殊清掃は、そんな遺族の願いも叶えることができます。
遺品整理も特殊清掃も、ただ作業をこなすだけではありません。
まず遺品整理業者は、遺族と故人との想い出を大切に、業務を行っていきます。
そんな遺品整理業者から特殊清掃業者を紹介することで、遺族の故人に対する想い出をきれいな状態で残すお手伝いができるのです。
つまり、遺族の負担が減るだけではなく、遺族と故人の想い出をきれいな状態で残すという意味で、故人に対しても遺族に対しても大切な業務だといえるでしょう。