「シューカツ」と言えば「就職活動」のことを指したのは、もはや昔のこと。2009年頃に生まれた「終活」という言葉は、2010年には流行語大賞の候補にノミネートされ、また、メディアでも取り上げられるなど、急速に注目されるようになりました。
さらに、終活の一環として「エンディングノート」「生前整理」「老前整理」「福祉整理」など、さまざまな活動に発展しています。
このような動きを受け、2011年には経済産業省が「安心と信頼のある『ライフエンディング・ステージ』の創出に向けた調査研究事業報告書」を発表しました。
ですが、実際に終活をしている人は、一体どのくらい存在しているのでしょうか。今回は、終活の実態を見てみましょう。
目次
「終活」が広まった理由は?
「終活」が広く知られるようになった背景には、団塊の世代の高齢化など社会状況が大きく影響しています。
WHO(世界保健機構)や国連では、65歳以上人口の割合は次のように定義されています。
7%超 | 「高齢化社会」 |
14%超 | 「高齢社会」 |
21%超 | 「超高齢社会」 |
これに当てはめると、日本は、平成25年で高齢化率が25.2%。4人に1人が65歳以上という「超高齢社会」です。総務省も、平成27年9月、統計トピックス「統計からみた我が国の高齢者」という調査で、日本の高齢者比率は世界の主要国と比べて最も高いと認めています。
国民が高齢化すれば、年間死亡者数も増えていきます。2007年に100万人を突破して以来、増加し続けており、2014年には127万3020人を記録しました。国立社会保障・人口問題研究所の推計によるとピークは2038年の167万人。団塊の世代が後期高齢者(75歳)に入る2025年ごろを境に、日本は『多死社会』に突入するといわれています。
さらに、平成23年6月の国勢調査では、日本の世帯数5,092万8千世帯のうち、1人暮らし世帯は1,588万世帯で、そのうち約3分の1が単身世帯。さらに、単身者世帯のうち65歳以上は457万世帯で、1人暮らし世帯の3分の1を占めています。単身者世帯そのものだけでなく、1人暮らしの高齢者が増え続けているのです。
こういった状況から、今の日本では、昔のように「死んだら周りが何とかしてくれる」とのんびりしていることが出来なくなりました。「家族や他人に迷惑をかけたくない、かけられない」という気持ちは差し迫ったものとなっています。「終活」という概念が生まれ、広まったんですね。
実際に終活をしている人はどのくらい?
経済産業省の平成23年度「安心と信頼のある『ライフエンディング・ステージ』の創出に向けた調査研究事業報告書」では、「家族以外で相談する人・頼る人」を調査していますが、年齢が高まるにつれて、頼る人がいないとする割合が高くなっています。
いわば「終活が必要な人たち」です。しかし、そういった高齢者は、実際に終活をしているのでしょうか。
- 生前準備の実態
- エンディングノートについて
- 遺言書について
生前準備の実態
報告書によれば、生前に行なう死後の準備として最も多く行なわれているのは「お墓の準備」で、24.7%。次いで「納骨や埋葬の準備」が10.2%、「終末期医療に関する希望」の割合が8.1%という結果が出ています。しかし、その他の準備はほとんど行われていないのが実態のようです。
エンディングノートについて
終活において、いまや主要な存在となっているエンディングノート。この存在を意識しているのは全体の63.5%と、高い認知度を示しています。
しかし、エンディングノートを実際に作成している人は、そのうちの2.0%に過ぎません。
遺言書について
遺言書を作成しようと思っている人の割合は32.6%を占めます。しかし、既に作成している人は1.7%と低く、その必要性を理解はしていても、実際に作成している人は非常に少ないことがわかりました。
終活を始められない理由は?
前項のデータから、終活で何をすべきなのかが何となく理解できても、実際にはなかなか手を付けられない人は多いということがわかりました。
元気なうちから葬儀などの準備をすることに抵抗があったり、改まって家族と葬儀の話をする機会がないなど、終活の必要性を現実としてとらえてはいるものの、実際に始めるには、まだまだ抵抗のある人が多いようです。
また、「死」について実感がないということも大きな理由です。
人間は誰でも、100%死にます。頭ではわかっていても、人は、自分は死なないとどこかで思っているものなんですね。
年齢を重ねていくにつれ、人生には終わりがあるということを悟っていきます。それでもまだ、「自分が死ぬ」ということまでは想像しにくいのです。「死ぬ」という体験は、人生で一度きり。“その時”までは分からないですし、その経験を持って生きていくこともありません。実感がわかないのは当たり前かも知れませんね。
終活を始めようと思うのは、どんな時?
では、終活をしている人が活動を始めたきっかけは、どんなことだったのでしょうか。
前出の総務省の調査では、「エンディングノート作成のきっかけ」についてアンケートを行なっています。その結果によると、「家族の死去や病気、それに伴う相続」と「書籍や雑誌、テレビなどで存在を知って」がそれぞれ39.6%で、半数を超えています。
その他には、「病気等で自身の健康に不安を感じたから」が22.6%、「家族や知人の薦め」が9.6%、「身近な事故や災害等」が5.7%という結果が出ました。これを踏まえ、終活を始めたきっかけをまとめてみました。
- 年齢・身体の衰えを感じた時
- パンフレットやセミナー
- 葬儀に参列して
- 入院して
年齢・身体の衰えを感じた時
年齢を重ねると、病気や怪我のリスクは高まります。身体のあちこちにガタが来て、若かった頃にように身軽に動けなくなることもあります。ちょっとした段差でつまずいたり、電車やバスで立っているのが怖くなったりすることもあるでしょう。
若いころは、親が「腰が痛い」「ヒザが痛い」と言うのを理解できなかったのに、今ではわかる、という人も多いのではないでしょうか。
以前は普通にできていたことが、いつの間にかできなくなるーーそれが「老い」です。それを自分の身の上に感じたとき、自分の人生に終わりが来ることを実感し、終活の必要性を感じる人が多いようです。
パンフレットやセミナー
さまざまな葬儀社から、葬儀やお墓についてのパンフレットが出ています。最近では、お葬式や終活に関するセミナーも開いているところが増えています。
こういったセミナーの中で、面白いものがあります。それは、入棺体験や模擬葬儀体験です。もちろん、もともとは自分がどんな葬儀をしたいかを考えることが目的ですが、面白い効果も生んでいます。それは、実際に体験した人が、終活を始めるきっかけになるということです。
入棺体験で、実際に棺に入って蓋が閉まると、狭い棺の中は暗闇になります。外の音も遠のき、1人ぼっちです。
すると、「まだ死にたくない」「〇〇をしておけば良かった」「××に行っておきたかった」「もう一度、あの人に会いたい」など、これまでの思い出が走馬灯のように浮かんでくるのだそうです。こうして模擬的に死を体験することで、改めて生きることの大切さが感じられ、残りの人生をより良く生きるために、終活をしておこうという気持ちになる人が少なくないようです。もし機会があれば、体験してみるのもよいかもしれませんね。
葬儀に参列して
知人・友人の葬儀に参列して、終活を始める人も多いようです。高齢であればあるほど、近い年齢の友人が亡くなったことで、自分にも最期の時が来ると実感するんですね。
また、配偶者の死がきっかけになったという人も多いようです。最も身近な存在であるご主人や奥さまに先立たれることほど、自身の死を強く意識するきっかけはないかもしれません。
また、配偶者が亡くなってしまうと、自分の葬儀の準備や死後のことを自分で片付けなくてはならないという現実問題にも直面します。こういったことから、終活を始めることになるわけです。
入院して
たとえ小さなケガや、重篤でない病気でも、入院するというのは不安なものです。今はまだ大丈夫でも、高齢になると、ちょっとした骨折から認知症に発展してしまったり、完全に回復できずに施設に入所するようなケースも出て来ます。
入院生活は自由も制限され、考える時間はたくさんあるもの。そこで、終活をしておくべきだと考える人は多いのです。
このように、「死」を身近に感じることが、終活を始めるきっかけとなるケースが多いようです。「自分の身にも死は訪れる」と実感すること。何よりも、自分自身の経験が、死について考え、終活を始めるきっかけになるんですね。
どうすればヤル気になる?
まだまだ少ない終活実践者。どうすれば始めることができるのでしょうか。
- 「死」を意識する
- 専門家に相談する
「死」を意識する
最期を迎える時や、自分を取り巻いている環境をイメージしてみましょう。第3項に挙げた、終活を始めた人たちは、さまざまな理由から「死」を意識したことで、終活を始めていましたよね。
大切なのは、自分が有限であるということを認識することです。そうすると、自分が今すべきことが見えてきます。まず、自分の死を想定して、その死の時点から現時点にまでさかのぼり、残りの時間内にやっておくべきことを明確にするわけです。
専門家に相談する
終活について考え始めると、お墓や葬儀のこと、相続や遺言のこと、介護や終末医療のことなど、さまざまな問題が次々に出て来て、自分だけでは解決できないことも少なくありません。しかし、前出の報告書にもあるように、高齢になるほど相談できる相手がいない人が増えてきます。
「終活といっても、何から始めていいのか分からない。でも、相談する人がいない」。
そんな時は、プロに相談してみましょう。
終活カウンセラー
終活カウンセラーは、終活に関して相談者の話を聞いて、的確なアドバイスをしてくれます。
終活カウンセラーは、終活に必要とされる幅広い知識を持っています。相談者と話しながら問題を整理し、終活について一緒に考えます。
終活に関する悩みというのは抽象的な場合が多いのですが、終活カウンセラーは、相談者の悩みがどういった分野のものであり、何が必要なのかを見極めることができます。
「自分の死」を1人で意識するのはつらいものです。しかし、他人に悩みを聞いてもらうことによって、前向きな気持ちになれる人も多いようです。身内でなく、かえって全くの他人と話す方がよいのかもしれませんね。
葬儀社の終活相談会や終活イベントに参加する
最近では、さまざまな葬儀社で「終活相談会」を開催しています。
葬儀社というと、お葬式のことだけだと思われがちですよね。しかし、相談会では、葬儀に関してはもちろん、介護や遺品整理、遺言書、相続、墓地墓石のことからエンディングノートの書き方まで、何でも相談することができます。
相談会では、自分の老後について悩んでいる人だけでなく、お子さんの立場の人が、親御さんの今後について相談に来るケースもあるようです。
また、葬儀社以外でも、「終活フェスタ」「終活フェア」などが開かれています。
終活そのものの重要性や、細かい1つ1つの悩みまで、専門的な知識を持つ専門家に話を聞いてもらうことができます。こういったイベントに参加して、「終活」について知ったり、悩みを相談したりするとよいでしょう。
まとめ
終活は、人生の終わりに関する不安から生まれました。しかし、終活の本当の目的は、自分のこれまでを振り返り、残された時間をより良く生きていくことです。
「自分の死」を考えるのはつらいことではありますが、実際に終活をしてみると、残された家族などに負担をかけずに済むという安心感のほうが大きくなるようです。また、自分の理想とするエンディングを考えることを楽しむ、という心境になれるのです。
遺品整理においても、事前にどういったものがあるのか、何を残してほしいのかがハッキリしていると、より故人のご希望に添えることになります。
また、遺品整理業者でも終活に関するご相談を承っております。豊富な経験からアドバイスをさせていただきます。また、どんな分野のご相談もうかがいますので、分野ごとの専門家に依頼するよりも、一括でお悩みを解決することができます。ぜひ、ご検討ください。
終活を始めることによって、晴れやかな気持ちで残りの人生を生き、自分らしいライフエンディングを迎えられるといいですね。