住まいの終活について考えていますか?今からできる準備と対策

住まいの終活について考えていますか?今からできる準備と対策

社会的認知度の高くなった「終活」。
しかし、実際に行動に移している人はまだ少ないようです。
ところが、今年の新型コロナ禍で高齢者が亡くなっていることから、やや変化が出てきています。
自身がコロナに感染した場合の対応策に加え、相続に関して事前に協議しておいた方がいいと考える人が増えているそうです。
そんな中、今住んでいる自宅をどうするか、「住まいの終活」についても考える人が増えています。
今回は「住まいの終活」について見ていきましょう。

実家をそのままにしていると、どうなるの?

生まれ育った実家には、たくさんの思い出が詰まっています。
親御さんが亡くなったあと、実家がなくなってしまうのはつらい、相続したいという人はたくさんいます。
自分がそこに住むのであればいいのですが、そうでない場合、どんなことになるのでしょうか。
ある例を見てみましょう。
Aさん(45歳)は地方都市の出身で、現在は都内の会社に勤務。
妻と小学生の息子2人の4人家族です。
Aさんは、10年前にお父さまが亡くなっています。
そのあとはお母さまが一人で暮らしていたのですが、お母さまも3年前に亡くなり、地方都市にある築35年、3LDKの実家は空き家になってしまいました。

お母さまが亡くなったあと、Aさんは実家を相続しました。
現金での相続もあったため、固定資産税くらいは払っていけるだろう、と軽く考えていたのです。
でも、それは甘い見通しでした。
誰も住んでいない実家を維持するために、Aさんが昨年支払ったお金は・・・

固定資産税7万円(年間)
管理費12万円(月額1万円×1年、家の外回り巡回のみ)
庭の剪定8万円(1回4万円×2回)
光熱費2万5千円(基本料金のみ、年間)
火災保険5万円(1年契約)
合計30万5千円

なんと、年間で30万円以上の費用がかかっているのです。
さらに、様子を見に行く交通費を加えると、
交通費=7万円(往復3万5千円×2回)
37万5000円と、40万円近い出費となってしまいました。

相続の際には、固定資産税のことしか頭になかったというAさん。
しかし、一軒の家を管理するには、固定資産税以外の費用がかかるのです。
庭木の落ち葉が散っているという近隣からのクレームで庭師を入れたり、ポストに入れられるチラシなどの管理のため、管理会社に巡回を依頼。
さらには、家の中に風を通す必要があると感じ、結局、家の中の巡回も依頼することになりました。
実際に住んでいるのであれば生活の中で掃除も風通しもできますが、遠隔地ではどうしても人に依頼するしかありません。
今までは相続した現金でまかなっていましたが、いつかは尽きてしまいます。
今後も“住んでいない家”に年間40万円近くのお金がかかります。
さらに年月が経てば建物が劣化し、ますます多くの費用が必要になるでしょう。
Aさんは今、親御さんが元気なうちに対策を話し合っておくべきだったと後悔しています。

空き家問題と住まいの終活の必要性とは?

空き家同然の実家

近年、日本では「空き家問題」が深刻です。
人が住んでいない空き家は、近隣や地域へ悪影響を与えます。
庭の木や雑草が伸びて景観が悪化したり、不衛生な状態となって悪臭が発生したり、老朽化によって家屋が倒壊するなどという問題が起こっています。
さらには、不法侵入や不法占拠、放火などの犯罪リスクも高くなり、近隣の治安を悪くすることにもつながるのです。

総務省統計局の「平成30年住宅・土地統計調査」によると、平成30年の全国の空き家は846万戸、全住宅に対する空き家の割合は約13.5%と発表されています。
つまり、日本の住宅の1割以上は空き家になっているというわけです。

ではなぜ、このように空き家が増えているのでしょうか。
その背景には、不動産の所有者が自宅の終活をせずに亡くなっていることがあると考えられています。

社会状況の変化から、子どもが生まれ育った実家を離れ、親と同居しない生活が珍しくない現代。
実家が空き家予備軍になる可能性も視野に入れておきたいところです。
親が存命中であっても、認知症にかかってしまったり、怪我や病気で長期入院を余儀なくされる可能性は十分考えられます。
こうして親御さんが高齢者施設や病院などに入ると、実家が空き家同然になる期間ができてしまうことになるのです。
このような場合も含めて、実家が空き家になってしまったとき、どのように管理をしていくかは、家族で十分話し合っておきたいもの。
さまざまな選択肢を想定し、家族の意向に沿った「住まいの終活」の方法を考えていく必要があるのです。

住まいの終活の進め方って?

住まいの終活をする家族

では、住まいの終活の進め方について見ていきましょう。

住まいの終活をする前に確認しておきたいポイントは?

家の履歴を確認する

まずは、現在、家の登記がどうなっているかを確認しておきましょう。
近年、相続登記の義務化が検討されています。
もしも適切な登記が行われていないと、権利関係が複雑になって相続手続きがなかなか進まない恐れがあります。
相続人を過去に遡る必要もあり、その際に親御さんの記憶が頼りになるケースもあります。
スムーズな話し合いのため、登記関係は早めに明らかにしておきましょう。

家の資産価値を確認する

それと同時に、家の資産性がどのくらいのものなのかも確認しておきます。
これによって、売却、賃貸に出す、建て替えるなどの選択肢が考えられます。

親世代の希望を確認する

一番大切なのが、親世代がどこで最期を迎えたいかという希望です。
今まで住んできた家がいいのか、医療が充実している施設が安心なのか、家族に見守られたいかなどによって、終の住処が変わってきます。
自分はどこで人生の終焉を迎えたいか考えて、人生の終焉を迎えるにふさわしい住まいを選びましょう。

親子で話し合う

実家を将来どうするか。
実家に限らず、相続関係について親御さんが元気なうちに話し合う家族は少ないようです。
子供世代からすれば、親が元気なうちから親の死後のことを話題にするのはちょっと・・・という気持ちが大きく、なかなか言い出せないようです。
それを見越して、こんな時代だからこそ、と親の側から住まいの終活について話し合うきっかけを作りましょう。
まずは、親世代、子世代それぞれの、実家に対する思いや考え方を確認し合うことが大切です。
また、住まいの登記関係や資産価値などについての情報を親子で共有します。
その上で、お互いの落としどころを探り、具体的にどのようにしていきたいかを相談しましょう。
方向性が決まれば、専門家に相談する際にも話がスムーズに進みます。

住まいの終活、選択肢は?

終活としての家のその後

住まいの終活にあたり、住まいを将来どうするかの選択肢を考えてみましょう。

リフォーム・建て替え

長く住んできた家に愛着があり、ここで最後を迎えたいという人は、リフォームや建て替えを検討しましょう。
住み慣れて使いやすい家ですが、高齢になると身体の調子も変わってきます。
そのために、以前は気にならなかったところが思わぬ大ケガにつながるような場合もあります。
リフォームや建て替えをする場合は、たとえばトイレを寝室から近いところに作ったり、浴槽を浅めのものにする、車椅子になった場合のことを考えてバリアフリーにするなど、高齢になっても生活しやすい間取りや空間を考えましょう。
また、二世帯住宅に建て替えて、子供世代と生活するという選択肢も生まれてくるでしょう。

賃貸に出す

高齢者施設などに移りたい場合は、賃貸に出すという方法もあります。
人が住まない家はすぐに荒れますが、誰かに住んでもらえばその心配はありません。
さらに、家賃収入が入るため、自分の生活する施設にかかる費用の足しにもなるでしょう。
空き家を改修し、学生用のシェアハウスとして活用している埼玉県鳩山町のような例もあります。

また、市町村が運営する「市町村空き家バンク」を利用するのもよいでしょう。
「空き家バンク」は、空き家の賃貸・売却を希望する人から申し込みを受けた情報を、空き家の利用を希望する人に紹介するものです。
空き家を有効活用することができます。

売却する

遺産相続の際、最も面倒なのが土地建物など不動産です。
不動産の場合、その家や土地がどのくらいの価値があるのかを算出して相続財産とします。
しかし、実際には現金として目の前にあるわけではないので、不動産を相続する人は、ほかの人に相当分の現金を支払わなくてはならないケースも出てきます。
どうしても実家に住みたいという希望や、誰か特定の人に家を相続させたいという希望がないのであれば、売却して現金にした形で遺産相続をすれば面倒がありません。

まとめ

終活で実家に集まる家族

「実家」は、いくつになっても懐かしいものです。
でも、いつかは老朽化するもので、いつまでも昔のまま置いておくことはできません。
快適な老後を過ごすために、住まいの終活を行うのは大切です。
残された家族に負担がかからず、自分自信も後悔なく最期の時を迎えられるような終活ができたらいいですね。

この記事の監修をしたゴミ屋敷の専門家

氏名:新家 喜夫

年間2,500件以上のゴミ屋敷を片付け実績を持つ「ゴミ屋敷バスター七福神」を全国で展開する株式会社テンシュカクの代表取締役。ゴミ屋敷清掃士認定協会理事長。