おひとりさまだからこそきちんと考えたい、生前整理

おひとりさまだからこそきちんと考えたい、生前整理

独身生活を謳歌する「おひとりさま」。
バリバリ仕事をして、1人で食事や旅行を楽しんで、身軽に生きている独身女性・・・そんなイメージがあるのではないでしょうか。
しかし、現代の「おひとりさま」は、独身女性だけではありません。
日本の生涯未婚率は年々高くなり、一人暮らしの高齢者も増えています。
老後のことを考え始めると、あれもこれもと心配が増えるもの。
ましてや、おひとりさまなら尚のことです。
今はまだ実感が湧かない人も、切実な人も、良い老後を過ごすため、生前整理について考えてみませんか。

「おひとりさま」とは?

「おひとりさま」とは、一人で生活している人のこと、同居人がいない人のことをいいます。
「おひとりさま」という言葉は、もともとはお店に入ったときなどの人数、単なる「数」として使われました。
しかし、女性が社会に進出し、1人でも食事をしたり、行動したりするようになると、「一緒に食事をする相手のいない女性」「婚期を逃した女性」というような、揶揄の意味がこもった言葉に変わっていきました。

しかし、近年「おひとりさま」は、もっと広い意味を持つようになっています。
独身であるという意味で言えば、「おひとりさま」は、実際には男性の方が多いという統計結果が出ています。
50歳までに結婚したことがない人の割合を「生涯未婚率」といいますが、2015年の国勢調査によると、生涯未婚率は男性で23%、女性は14%と、男性の方が多いのです。
核家族化など社会の変化や、所得の低下や保育園不足・教育費の高騰など、子供が育てにくくなっている現代。結婚の必要性を感じない人も増え、男女ともに、今後も生涯未婚率は高くなっていくと予想されています。

おひとりさまの高齢者

また、一人暮らしをする高齢者も増えています。
平成30(2018)年の総務省統計局の発表によれば、総人口が27万人減少する一方、高齢者は44万人増加しており、総人口に占める高齢者人口の割合は28.1%と、過去最高を記録しました。
さらに、65歳以上の一人暮らしの人も、昭和55(1980)年には男性約19万人、女性約69万人、65歳以上人口に占める割合は男性4.3%、女性11.2%でしたが、平成27(2015)年には男性約192万人、女性約400万人、65歳以上人口に占める割合は男性13.3%、女性21.1%と大幅に増えています。
また、昭和55(1980)年には三世代世帯の割合が最も多く、全体の半数を占めていましたが、平成28(2016)年になると、夫婦のみの世帯が約30%と最多となっています。つまり、単独世帯予備軍も増えているということなのです。

生前整理のススメ

家族と離れて暮らし、配偶者も子供もいない。
もし自分が死の床についたら、誰が自分を看取ってくれるのだろうか。また、後始末は誰がしてくれるのだろうか。
30代くらいまでは、仕事に没頭し、趣味など1人の時間を楽しむこともできるでしょう。
しかし、40代・50代に入ると、体調を崩したときなどに、「もしこのまま1人だったら、どうなるのかな・・・」と、不安が頭をよぎる人も多いようです。

また、近年、高齢者の孤独死が社会問題になっています。
高齢の「おひとりさま」は、仕事もリタイアし、近所づきあいや友人とのつきあいも少なくなる傾向があります。
その結果、発見が遅れてしまうリスクが高く、また、遺品整理なども問題になっているのです。

気がつけば、自分の老後や死後を託す人がいない・・・。
一人暮らしについて回る不安をなくすには、どうしたらよいのでしょうか。
一つの方法として、生前整理があります。
生前整理といっても、難しいものではありません。
自分の老後を一度イメージし、不安な点をピックアップしましょう。
そして対策を立て、不安を解消するのが生前整理です。

生前整理・こんなことをやっておきましょう

モノの整理

おひとりさまの生前整理

今、自分が持っている「モノ」について見直してみましょう。
洋服や靴、バッグ、趣味の道具、本やCD、写真や人形など、家の中にはさまざまなモノがありますが、その中で、使っていないモノはありませんか?
モノが溢れかえっている家は、つまずいて転倒するなど、怪我の原因になりかねません。
全てを捨てる必要はありませんが、不要なものを減らすと身軽になり、同時に心の整理もできるものです。
また、新しいモノを買うときは、それが本当に必要なのかをよく考えましょう。
1つ買ったら1つ捨てるようにするのも、整理の第一歩です。

財産の整理

預金・カード類

お財布の中を見てみましょう。銀行のカード、クレジットカードなど、何枚ものカードが入っていませんか?
銀行やクレジットカードは、持ち主がいなくなったら、残された誰かが何らかの形で銀行やクレジット会社に連絡を取らなくてはなりません。
そのため、どうしても必要なものだけ残し、できるだけ数を減らしましょう。
不要なカードや使っていないカードを解約すると、現在のお金の流れもシンプルに、わかりやすくなります。
預金口座やカードを整理し、まとめて記録しておきましょう。

保険・年金関係

生命保険をかけたり、ローンなどを組んでいたりする場合は、それに関わる書類一式や連絡先などを整理してまとめておきましょう。
年金についても、どんな年金に加入しているのかも、わかるようにしておきます。
よく分からない場合は「ねんきん定期便」を見て確認しましょう。

不動産

土地・建物がある場合は、それに関する書類もまとめておきます。

遺言書

おひとりさまであっても「遺言書」を作ることは大切です。
孤独死をした人の財産は、相続する人がいない場合、国の財産になります。
もし財産を相続させたい人がいる場合は、しっかり遺言書を残しておきましょう。

ネット関連の整理

おひとりさまの生前のデータ整理

インターネットが発達した現代では、ネットショッピングやSNSを利用している人も多いでしょう。
こちらも、利用している人が亡くなった場合、解約する必要があります。
IDやパスワードがわかりやすいように、書き留めておきましょう。

また、スマホやパソコンの中に残されたデータ「デジタル遺品」の整理も忘れてはいけません。
パソコンの場合、見られたくないデータを自動的に削除するソフトなどを利用すると良いでしょう。
スマホやデジカメなどのデータは、バックアップしているクラウドがあればその情報を記録しておいたり、また、メディアに移しておき、破棄できるようにしましょう。

手続き・サービス

1人暮らしが難しくなった場合の選択肢やその条件などについて知識を得ておけば、いざという時に役に立ちます。
介護保険や在宅医療、成年後見制度、行政のサービスなど、老後の生活に関する情報収集をしておきましょう。

葬儀やお墓などについては、「死後事務委任契約」を結ぶ方法があります。
死後事務委任契約とは、自分の死後、葬儀・埋骨・遺品整理等の諸事務の代理権を第三者や専門家に与え、死後の事務を委託する契約のことです。
委任する内容や業務は自由なので、「葬儀の手配や永代供養」「病院や施設の退院・退所手続き」「預貯金整理や家の売却」など自分の希望通りの死後手続きを一括して任せることができます。
葬儀は、葬儀社と葬儀の生前予約をしておく方法もあります。
また、遺品整理に関しても、生前予約を行っている遺品整理業者があります。
このようなサービスを利用すれば、万が一の場合も行政や親族に迷惑をかけずに済みます。

コミュニティづくり

1人で生活はできても、病気や怪我で生活が困難になったり、認知症を発症しても気づいてもらえずに悪化してしまうケースがあります。
また、近隣や友人との交流がないために、孤独死が発見されないケースも増えています。
日頃から趣味などで会う人や、近所の人とのコミュニケーションも大切にしましょう。
世帯としてはおひとりさまであっても、地域や社会とつながることで、心豊かな老後を過ごしたいものです。

上手な生前整理をするには?

エンディングノート

自分の死後に必要な情報や、希望などを「エンディングノート」に書いておきましょう。
普通の大学のーとでもかまいませんし、パソコンで書いてもかまいません。
エンディングノートには遺言書のような法的効力はありませんが、その代わり、いつでも書き直すことができます。
状況や気持ちが変わったら、気軽に書き直すことができるので、いま現在の自分の意思や希望を伝えるのに役立ちます。
また、財産の内容や、知人・友人の連絡先、カードやネットの暗証番号など、変更される可能性のあるものもメモしておきましょう。
これは、生きている間にも役立ってくれますよ。

自治体の終活サポート

近年、自治体でも終活のサポートを行うところが増えています。
たとえば、神奈川県大和市では、「私の終活コンシェルジュ」として、自身の死後に不安を抱えるひとり暮らしの人、夫婦や兄弟姉妹のみで暮らす世帯などを対象に、葬儀や納骨などの終活に関する相談に乗ってもらえます。
不安がある人は利用すると良いでしょう。

まとめ

おひとりさまの老後

人は誰でも「死」から逃れることはできません。
同じ死ぬのであれば「立つ鳥あとを濁さず」といきたいもの。
おひとりさまだからこそ、老後を楽しく豊かに過ごすために、生前整理を始めてはいかがでしょうか。

この記事の監修をしたゴミ屋敷の専門家

氏名:新家 喜夫

年間2,500件以上のゴミ屋敷を片付け実績を持つ「ゴミ屋敷バスター七福神」を全国で展開する株式会社テンシュカクの代表取締役。ゴミ屋敷清掃士認定協会理事長。