遺品整理で処分に困るもの

遺品整理で処分に困るもの

遺品整理作業のなかで、遺族としては意外なものや処分しにくいものが出てくることは、多々あります。
突然死を迎えた故人の部屋ですと、生前に片付けが行われていない状態で遺品整理が始まるのですから、致し方ないことしょう。
もしかしたら遺族も知らなかった故人の生活が見えてくるかもしれません。
今回はそんな遺品整理で出てくる意外なものや処分しにくいものが出てきた場合の対処法をご紹介します。

意外と多い現金や商品券

デジタル化が進み、電子マネーが普及した現代は、給与もほぼ銀行振込です。
多くのお店でクレジットカードが使えますし、PASMOやSuicaなど交通系ICカードで買い物ができるようになりました。スマートフォンの普及も、そんな状況に拍車をかけています。
いまや昔のような「給料袋」を見たことがないという人のほうが多いでしょう。結果、手元に高額の現金を残しておくことは、ほとんどありません。
それでも遺品整理の際に、故人がしまっておいた現金が見つかることはあります。特に故人がキャッシュカード、ATMを使う機会の少ない世代であったらなおさらです。
当然、現金を人目につく場所に放置していることはなく、タンスの奥や引き出しなどに「隠している」ようなケースが多い。しかも高額です。作業中に、タンスの奥から十数万の現金が出てきたこともあります。
また十数万円ぶんの商品券や、ビール券が何十枚も見つかった現場もありました。きっと故人は多くの人からお中元やお歳暮などが贈られる、交友関係の広い方だったのでしょう。
そういった故人の人柄が偲ばれる品々ではありますが、遺族にとっては対応に困るものだとも言えます。

まず現金は、高額であれば相続の対象となる場合もありますが、十数万円であれば遺族の間でしっかり分けるようにすると、後々のトラブルを防ぐことにも繋がります。
商品券やビール券も同様ですが、こちらは金券ショップに持ち込むこともできます。
例を挙げると、全国百貨店共通商品券は大手の金券ショップであれば98%前後で買い取ってくれます。有名百貨店の商品券も最低でも96~97%で取り引きされています。
ビール券はほとんど額面と変わらない価格で買い取ってくれる店もあるほどの人気商品。
ただし、券が折れ曲がっていたり、汚れていたりすると買い取り価格は下がります。
片付ける時に誤って商品券をグシャっとまとめたりすることのないように。
遺品整理においては、何でも一つひとつ丁寧に片付けていくことが重要です。

食品・調味料は基本的に全て廃棄!

遺族が引き取りにくいものの代表例が、食品や調味料、油といったものです。
食品は生のものや賞味期限切れのものなど悪臭のもととなり、ご近所の方たちに迷惑をかける要因ともなります。
これらは基本的に「全て廃棄」と考えて良いものでしょう。

まずは冷蔵庫・冷凍庫の中身をチェック。生鮮食品の賞味期限を確認し、期限切れのものからどんどん処分していきます。
特に大きなものから捨てていくと冷蔵庫・冷凍庫の中がスッキリし、作業効率もさらに高まります。
続いて調味料ですが、「長持ちするものだから取っておこう」という考えは禁物です。
ほとんどの調味料はどの家庭にも置かれているものなので、引き取っても結局使わず、ごみになることが少なくありません。
であれば、遺品整理の時点で処分しておくほうが、後々の面倒な手間も省けます。

注意しなければならないのは、その処分方法です。
液体の調味料は新聞紙やボロ布に吸い込ませて、それを可燃ごみとして処分できます。必ずペットボトルをはじめとする入れ物とは別にしましょう。
油も市販の凝固剤で固めてしまえば可燃ごみになります。
排水溝に流して捨てるのは厳禁です。油が排水溝に付着して火事の原因となることもあります。
もちろんそのまま流れても環境破壊のにも繋がります。油を使う飲食店や工場などの業者であれば、廃棄方法は「廃棄物処理法」で規定されており、違反するともちろん罰則が与えられるほどなのです。

油といえば、昔の家屋にはたいてい備え置かれていた灯油は、「特別管理廃棄物」にあたります。環境省のサイトでは、次のように規定されています。

「廃棄物処理法では、『爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有する廃棄物』を特別管理一般廃棄物及び特別管理産業廃棄物(以下、「特別管理廃棄物」という。)として規定し、必要な処理基準を設け、通常の廃棄物よりも厳しい規制を行っています」

特別管理廃棄物の多くは、一般家庭ではなく工場や飲食店、あるいは病院に置かれているような特殊な薬品、爆発のおそれのある油などです。処分にも専門の資格が必要です。
しかし灯油のように一般家庭でも使われているものも特別管理廃棄物として指定されてる場合もあるので、処分は必ず専門業者にお願いしましょう。

医薬品は必ず専門家に相談を!

医薬品は市販のものであれ、病院で医師に処方されたものであれ、これも基本的には「全て廃棄」が望ましいでしょう。
処方薬はもちろん、市販の薬でも人によって合うもの・合わないものがあります。未開封ならまだしも、開封後の医薬品は食品と同じリスクがあるので廃棄します。
病院から処方された薬であれば、どう処分すれば良いのかその病院に問い合わせてみてください。
自分で廃棄して良いものもあれば、病院や薬局に戻したほうが良い薬もあります。
薬の投与のため、自宅に注射器を置いている方もいます。
病院であれば法律により「感染性廃棄物」として廃棄物処理法に基づき専門業者が処分しなければなりませんが、一般家庭では「在宅医療廃棄物」となり、一般ごみとして廃棄することができます。
いずれにしても遺品整理は何事も全て自分で判断することなく、専門家に相談することも大切です。

消火器はリサイクルに!

昔は多くの家に必ずひとつ、消火器があったのではないでしょうか。
もし遺品整理で消火器が出てきた場合も、特別な対処が必要となります。
消火器の使用期限は10年。期限内のものであれば他の人が引き取ることもできます。
期限が切れている場合は、国内メーカーの商品であればリサイクルが可能です。
まずは「消火器リサイクル推進センター」に問い合わせ、引き取り・持ち込みが可能な日時や場所を決め、費用を確認し、処分することになります。

自動車・バイク・自転車は名義や登録に注意!

これは高額な遺品全てに言えることですが、自動車やバイクについても考えなければいけないのは、相続です。
故人の自動車やバイクについては、最初に「相続」か「廃棄」かを決めます。その後、どちらを選ぶにしても法的な手続きを行わなければいけません。
自動車の場合、まずは名義変更ですが、元の所有者が亡くなった場合の名義変更は手続きがやや複雑になってしまうのでご注意ください。
通常の名義変更に加えて、故人や遺産に関する書類も必要となってくるのです。
故人の戸籍謄本、印鑑、住民票、遺品相続人全員の実印が押されている遺産分割協議書が、その必要書類にあたります。
これは「相続」でも「廃棄」でも同じ。自動車車を廃棄、廃車にする場合も、一度相続人の名義に変更し、その相続人しか廃棄処分を行えないからです。

一方、バイクは引き取るにも廃棄するにも、一度「廃車」の手続きが必要です。
バイクに付いているナンバプレートを管轄する市区町村の役所で手続きを行うと同時に、保険会社に対して自賠責保険の解約も行うことになります。

上記の自動車やバイクは、中古業者が引き取るうえで法的な手続きを行ってくれる場合もありますので、問い合わせの時に確認したほうが良いでしょう。

所有率が最も高い自転車は、リサイクルショップに売るか、粗大ごみとして廃棄することになりますが、どちらの場合も「防犯登録の抹消」が必要です。
各都道府県の警察署の生活安全課へ、防犯登録カードと登録者の身分証明書を持っていき、手続きを行います。
自転車を購入する際、そのお店で防犯登録を行ってくれているケースも多いので、購入したお店がわかれば問い合わせてみましょう。

故人の趣味①刀剣、銃

遺品のリサイクル・リユースについては、各業者に問い合わせたり、査定をお願いして買い取り・回収を行ってもらいます。
しかし、一部には大きなトラブルの要因となるものがあります。その代表例が刀剣、銃といった類いのものです。
趣味として日本刀や猟銃を持っている人は多いのですが、基本的にそれらは許可を得ているものであり、許可を得ずに所持している場合は「銃砲刀剣類所持等取締法」(いわゆる銃刀法)違反となり、罰則が課されます。

故人が許可を得て所持しているものは、まず警察に届け出て、教育委員会の審査に通れば、遺族が保管することもできます。許可証などがあれば、名義変更も行えます。
ただ、この届け出を行わないまま長期間に渡って遺族や他の人が持ったままだと、銃刀法違反となってしまう可能性もあるので気をつけてください。
もちろん法律に乗っ取り、許可証を返納し、刀剣や銃そのものも手放すことも可能です。警察に処分をお願いすることもできますので、遺品のなかに刀剣や銃があった場合は必ず速やかに警察署へ届け出ましょう。

故人の趣味②わいせつ物

もうひとつ、遺品整理で実際にあるのは、故人の遺品から「わいせつな雑誌やDVD」が見つかるケースです。
故人が趣味としてそういった物を持っていることを遺族がご存知の場合は、特に問題はありません。
ところが、たとえば「亡くなったお父さんは、そういうものに一切興味がないと思っていたのに」と、生前のイメージと異なるため遺族がショックを受ける、といった実例があるのです。
紙類は可燃ごみとして処分しますが、DVDやそのケースは専用シュレッダーなどで細かくする必要もあるでしょう。

さらに遺族が困るものとして、故人の写真やパソコン、携帯電話などのデータがあります。
何かといえば、そこに遺族が知らなかった故人の人間関係が残っているからです。
極端な例としては、知らない異性との関係が写っている写真、あるいはメールといったものです。
遺族としては知りたくなかった事実かもしれません。特に父親が亡くなった際、そうしたものが出てきても、ただでさえ気持ちが落ち込んでいる奥様には見せられないでしょう。
その場合は、見つけた人が誰にもわからないようにコッソリと捨てておくこともあります。

とはいえ、見つけた人にとっても悲しい事実かもしれません。
遺品整理とは、故人の人生に関する新たな発見を伴います。それが良いものであっても、知りたくないことであったとしても。


遺品整理士も、このような場面に遭遇することはあります。
しかしプロフェッショナルの遺品整理士は事前に故人や遺族の生活や人間関係を把握し、それを踏まえて何かを発見してもその場に応じた対応を行います。
現場で遺族に見せないほうが良いものは一度、遺品整理士のほうで保管し、後日遺族に処分をご相談させていただくこともあります。
遺品整理において最も重要なのは、故人と遺族の気持ちです。これを無視して作業を進めることはできません。時に作業だけでなく、心のケアに関するご相談も受けます。
そうした配慮もまた、プロの遺品整理士にとって重要な資質なのです。

遺品整理でお困りのことがあれば、まずは遺品整理士や専門業者に相談してみてください。

この記事の監修をしたゴミ屋敷の専門家

氏名:新家 喜夫

年間2,500件以上のゴミ屋敷を片付け実績を持つ「ゴミ屋敷バスター七福神」を全国で展開する株式会社テンシュカクの代表取締役。ゴミ屋敷清掃士認定協会理事長。