遺品整理における仕分けのポイント

遺品整理における仕分けのポイント

遺品整理において、最初の作業は分別・清掃です。
最初の時点でどれだけ上手く分別できるかで、以降の作業が効率良く行えるかどうかが決まる、といっても過言ではないでしょう。

とにかく遺品を段ボールに積めていく、といった方法は最もやってはいけないことです。
しっかり整理して分別しておかないと、後々遺品のなかで何か必要なものがあっても、再度探す時間と労力がかかります。
その手間を考えた場合に、最初の分別を正しく行っていたほうが効率的であることは言うまでもありません。

一般的な片付けとは異なり、遺品整理は分別・清掃のあとにも様々な作業が控えており、遺品整理ならではの分別方法、「仕分け」というものが存在します。
今回は遺品整理の際にはどんな仕分けを行えばよいのかを、具体的にご紹介しましょう。

まず遺品整理のために何を探し、何を処分し、そのために段ボールをどう分ければいいのかといったプランを事前に立てておきます。
以下は遺品整理における仕分けのポイントとなりますので、事前計画の参考にしてください。

まずは貴重品を探しましょう

ここで言う「貴重品」とは、法的な対応が必要となってくるものを指します。
法律が関わってくるものは、届け出などの期限が定められていることが多いので、早く対処することが重要です。
そんな「貴重品」にはどんなものがあるのか、主要なものは次のとおりです。

・印鑑
・銀行の通帳、キャッシュカード
・年金手帳や年金に関する書類
・生命保険、損害保険など加入している保険に関する書類
・土地や家など不動産の権利関係書類
・有価証券、金融資産に関する書類
・貴金属や金塊など資産価値の高いもの
・健康保険証、運転免許証、パスポート
・電気、水道、ガスなど公共料金の領収書、ならびに請求書
・電話、インターネットの領収書、ならびに請求書
・借入金に関する書類、契約書、証文など

これらは相続や権利関係に関わるものでもあり、また年金の受給や公共料金の支払い状況なども早めに確認しないと、トラブルの要因になるものばかりです。
同時に、最初にこれらを探したほうが望ましい理由がもうひとつあります。
それは「探しても見つけにくい」ものだからです。

ご自身の場合で考えてみると、一番わかりやすいかと思います。
自分のお金に関すること、権利関係の書類、個人情報に関わるものを人目につく場所に置いておくでしょうか。
テレビ番組などではよく「夫(あるいは妻)や恋人の携帯電話のなかを覗くか」といった話題が取り上げられます。
相手に対して隠し事が無ければ話は別ですが、きっと多くの人が携帯電話にはパスワードなどでロックをかけているはずです。
誰しも隠したいことはあるでしょうから(笑)。

それは冗談としても、たとえ家族であっても見せたくないものは、少なからずあるはずです。
お金に関わることであれば、なおさらのこと。家族以外の誰かが偶然見てしまうこともあります。
こういったものは人目につかない場所に保管するので、持ち主が亡くなった時、遺族ですら見つけにくくなるのです。

貴重品の探し方・見つけ方

ここで、上記の貴重品を見つけるポイントをいくつかご紹介しましょう。

タンスの引き出しに衣類が詰まっている場合、ほとんどは一気に取り出し、片付けてしまうことでしょう。
本棚も同じです。本が多いと、流れ作業で段ボールに詰めていくかと思います。
しかしこのような場所、引き出しにしまっている衣服の奥に書類を隠していたり、本の間に領収書など小さい紙が挟まっていることも多いのです。
ベッドの下なども見ないまま掃除機を入れたりすると、落ちている貴金属類などをそのまま吸い込んでしまったりします。
もしくは隠している書類や箱を傷つけてしまうこともあるでしょう。
自分だったら貴重品をどこに置くか。あるいは故人の性格であればどこに置いているか、イメージを膨らませながら探すことも、とても大切です。

家具・家電を仕分ける4つのポイント

次に整理のポイントとなるのは、上記の貴金属類なども一部含まれますが、家具や家電など。その分け方は次のとおりです。

・遺族が引き取るもの
・査定を依頼するもの
・リサイクルに回すもの
・ごみとして処分するもの

遺族が引き取るのは「本当に必要なもの」

まず家の整理を行う際、大部分は処分することが前提となります。
「あったほうがいいかな」と思って残しておいた遺品は、そのまま使うことなく置き場に困ったり、結局は処分することになるケースがほとんど。
残すものは、明確に使い道がハッキリしているもの、本当に必要なもの、思い出の品々などに限定します。
家具・家電は、テレビや冷蔵庫などご自身の家にあるものより性能が良いものが遺品にあれば残して引き取る、といった基準で考えるとわかりやすいかと思います。
これは衣服や食器類も同じで、故人の遺品は全て思い出が詰まっていて当然です。
かつ、数があればあるで役に立つこともありますが、いずれ自分自身が処理に困るようになることがないよう、必要ないものはバッサリ処分することも大切なのです。

貴金属、宝飾品はまず査定!

指輪、ネックレスといった貴金属、宝飾品はまずプロに査定を依頼することをお勧めします。
その理由は、これも高価なものになれば相続問題に関わってくるからです。法的トラブルはできるだけ避けるため、まずは遺品の価値を把握しておきましょう。
また、宝飾品は時代によって流行がありますので、価値だけでなく好みも分かれるもの。
形状を変えずそのまま保管しておいたほうが良いかどうか、まず査定してみなければわかりません。
もし遺族が引き取る場合には、リフォームという方法もあります。
よくドラマなどで、両親や恋人が残してくれた指輪を、ネックレスにして大切に持っておくという設定が見られます。
あるいは指輪のデザインそのものを、好みの形に変えることもできます。
リフォームについては、宝飾品店に相談してみてください。プロの目と技術で、全く新しいものに生まれ変わるかもしれません。

電化製品のリサイクルと法律

電化製品のような大きな品は、処理も大変になります。まず遺族に引き取り手がいるかどうかを確認し、いない場合は、まだ使えそうな物をリサイクルに、使えなさそうな物はごみとして処分する。まずこの仕分けを行います。
ここで把握しておかなければならないのは、「リサイクル法」の内容です。
電化製品を廃棄する場合、「家電リサイクル法」「小型家電リサイクル法」という法律があり、対象や処分の方法まで細かく規定されているのです。
経済産業省の公式サイトには、家電リサイクル法(正式名称は特定家庭用機器再商品化法)について、次のような説明が掲載されています。

「特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)は、一般家庭や事務所から排出されたエアコン、テレビ(ブラウン管、液晶・プラズマ)、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機などの特定家庭用機器廃棄物から、有用な部品や材料をリサイクルし、廃棄物を減量するとともに、資源の有効利用を推進するための法律です。」

この説明文にもあるように、「家電リサイクル法」の対象となるのは

エアコン
テレビ
冷蔵庫・冷凍庫
洗濯機・衣類乾燥機

であり、これらは「家電4品目」と呼ばれます。
なぜ法律で細かく決められているかといえば、ここ数年で廃棄物の不法投棄や悪徳業者による被害が多発しており、それを未然に防ぐためです。
買い取り、リサイクル、回収など方法は様々ですが、いずれもしっかりとした業者選びが重要です。

次に「小型家電リサイクル法」とは何かをご説明します。
これは環境省の管轄となる法律で、「政府広報オンライン」では下記のようにわかりやすく紹介されています。

「小型家電(携帯電話、デジタルカメラなど)は、金や銅など、有用金属が多く含まれる一方で、鉛などの有害な金属も含みます。また、希少なレアメタルも含まれています。このため、使用済み小型家電の回収・リサイクルを推進するため、平成25年4月1日から「小型家電リサイクル法」がスタートしました。回収体制の整備ができた市町村から順次、使用済み小型家電の回収が始まっていますので、ご協力をお願いします。」

対象となるのは前述の「家電4品目」以外の物と規定されています。たとえば携帯電話、デジタルカメラ、ゲーム機、時計、炊飯器、電子レンジ、ドライヤー、扇風機などがそれにあたります。
遺族による引き取りではなく回収となれば、市区町村が定めた公共施設やスーパー・家電販売店、学校などに専用の「回収ボックス」を設けられていたり、町内の資源ごみ集積所に「回収コンテナ」を設置されていたりといった回収方法があります。
これも「家電リサイクル法」と同じく、不法投棄や悪徳業者による回収を防ぐために作られた法律です。
詳細や不明な点は、お住まいの市区町村に問い合わせてみてください。

ひとつ注意しなければならないのは、携帯電話などに入っている個人情報の取り扱いです。
故人をはじめ、生前に関わっていた方々の個人情報が携帯電話には詰まっています。デジタルカメラの写真データも同じです。
回収の場合には、事前に必ず全てのデータを処理しておきましょう。

さらに個人情報の問題が大きく関わってくるのはパソコンです。
パソコンは自治体では回収・処分を行っておらず、平成13年より施行された「資源有効利用促進法」という法律に基づき、各メーカーによるリサイクルが義務づけられています。
その対象はパソコン本体(ディスプレイも含む)のみで、キーボード、マウス、プリンターなどパソコンの周辺機器は含まれませんので、ご注意ください。

ただし、ここまでご紹介した内容に関しては法律が関わってきたり、細かすぎて対応しきれないという方も多いかと思います。
その場合は、遺品整理士のような専門家に依頼することも、時間と労力を短縮する方法のひとつだと言えます。

ごみの処分方法は自治体によって異なる

最後に、ごみとして処分するものについて。
衣類や食器、日用品、雑貨などのほとんどは、ごみとして処分することになります。
その際「燃えるごみ」「燃えないごみ」「資源ごみ」と分別することは当然ですが、分別方法も自治体によって大きくことなります。
分別の詳細は役所・役場などに、一目で理解できる表などが置かれていることが多いと思います。
必ず事前に遺品整理現場がある自治体の分別方法を確認し、当日はその方法に沿って作業を行いましょう。
特に分別方法だけでなく、ごみの回収日に従って出さないとトラブルの原因となりますが、遺品整理当日から回収日まで数日ある場合は、敷地内にまとめて、ブルーシートで覆っておくなどもケアも必要です。

ごみ袋は小さな20リットルから大きな90リットルまで様々なサイズがありますが、大量のごみを片付けて処分するうえでは、45リットルのものを使うと便利です。
もちろん各自治体がしていするごみ袋叩を使用しましょう。


以上が遺品整理における仕分けの主なポイントとなります。
遺品整理はごみを出したら終わり、ではありません。
不要なトラブルを避けるため、後に続く作業を効率的に進めるために、まずはしっかりと仕分けを行ってください。

この記事の監修をしたゴミ屋敷の専門家

氏名:新家 喜夫

年間2,500件以上のゴミ屋敷を片付け実績を持つ「ゴミ屋敷バスター七福神」を全国で展開する株式会社テンシュカクの代表取締役。ゴミ屋敷清掃士認定協会理事長。