生前準備

遺品整理業・最新事情~生前予約とは?

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『人生論ノート』を書いた哲学者の故・三木清さんは、「孤独は山になく、街にある。一人の人間にあるのではなく、大勢の人間の『間』にある」という言葉を残しています。
地方の過疎化が進み、都会に人口が集中している現代。それだけ人が多いはずなのに、コミュニケーションの希薄化が叫ばれています。
いまや都会では、まわりにはたくさんの人が住んでいても、丸1日、誰とも口を利かずに生活することもできるでしょう
コンビニエンス・ストアで24時間、いつでも気軽に買い物ができます。そしてインターネットの発達により、家を一歩も出なくても情報が得られ、クリックひとつで買い物もできます。
現代は、体を動かすのは最小限、部屋にいながらにして、ほとんどのことができてしまう時代なのです。

一人暮らしの人が、誰とも交流することなく生きて行ける世界は、同時に、死亡しても誰にも気づかれない世界でもあります。
誰にも看取られることなく自室で死亡し、死後何日も経過してから、ようやく死亡したことに気づいてもらえる。あとに遺されたのは膨大なゴミと遺品だった――。
これがまさに、三木さんの言う「大勢の人間の『間』にある孤独」というものなのかもしれません。
今回は、孤独死が大きな社会問題になるとともにクローズアップされてきた、遺品整理業の最新事情をお伝えします。

町並み

孤独死が起きた部屋の“その後”

ケース1:都内アパート

ある木造アパートで、80代の女性が亡くなっているのが発見されました。死後1カ月ほど経っていたようです。
室内はゴミが散らかり放題の「汚部屋」で、臭いもすさまじかったそうです。これでは、とても次の借り手はつきません。
大家さんは、壁紙や床の全面張り替えはもちろん、流しや風呂、トイレまで全て入れ替える大規模な修繕をせざるを得ませんでした。
女性は身寄りのない単身者だったため、この費用をどこにも請求できなかったそうです。

ケース2:都内マンション

事業用ローンを組んでマンションを購入した、ある大家さん。
その中の1戸で、高齢男性の孤独死が見つかりました。
現状回復と遺品処理で、300万円ほどの費用がかかってしまいましたが、亡くなった男性に遺族・親族はおらず、まだローンが残っている大家さんが修繕費用を支払うしかありませんでした。
にもかかわらず、事故から半年以上たっても新たな貸借人は決まっていないそうです。
こういった事情から、高齢者の入居を避ける(避けざるを得ない)大家さんも出てきているのが現状です。

孤独死のリスク回避のための保険商品が登場

  • 増え続ける孤独死・孤立死
  • 家主のための保険
  • 借り主のための保険

増え続ける孤独死・孤立死

増え続ける高齢者の孤独死・孤立死。2013年、東京23区で孤独死した人は4500人にものぼります。
そのうちの半数以上は、配偶者と死別したり、熟年離婚で独りとなった65歳以上の高齢者です。
こうした人たちは、体力が衰えるにつれて、だんだん外出することも減っていき、少しずつ社会と疎遠になっていきます。
結果、誰とも連絡を取ることなくひっそりと暮らしているうちに、病気・事故・老化、そして時には自殺によって、人知れずこの世を去るというわけです。

今、孤独死してしまった人の部屋の後片付けが、大きな社会問題となっています。
もしも賃貸住宅で孤独死が起きてしまったら、発見までの期間が長ければ長いほど、部屋自体の損傷と、他の住人や近隣への影響が大きくなります。
居住者が亡くなった場合、火葬などは自治体の福祉予算で行われたり、補助されたりします。しかし、遺品整理や部屋の原状回復にかかる費用まではまかなうことができません。
家財の処理や清掃などは遺族や相続人が行うのが一般的ですが、近年、遺族・親族に拒否されたり、そもそも親族そのものがなかったりして、大家さんが行わざるをえないケースが激増しているのです。

家主のための保険

前の賃借人がその部屋で亡くなったなんて、大家さんからすれば、できれば言わずにおきたいところでしょう。
でも、次にその物件を借りる貸借人に対しては告知する義務があるのです。
「前の住人が亡くなっている」と聞けば、ほとんどの人は敬遠してしまうので、どんな一等地であっても家賃を大幅に値下げするしかなくなってしまいます。それでも借り手が見つからず、長期間、空き部屋になったままというケースも少なくありません。
それどころか、孤独死によって遺体が死後何日も経過していた場合、遺体の腐敗によって物件が汚損してしまいます。部屋を元の状態へ回復するためには特殊な技術が必要で、大家さんは大きな出費を強いられることになるのです。

また、高齢者に多い「汚部屋」「ゴミ屋敷」問題もあります。
年齢を重ねるごとに体力・気力が衰え、自炊しなくなり、コンビニ弁当の空きパックや、ペットボトルをまとめて捨てることさえしなくなる。こうしたゴミが散乱する部屋は、高齢者に多いようです。
この大量のゴミを、誰が処理するのでしょうか。亡くなった人が天涯孤独だった場合、部屋の現状回復から遺品処理、ゴミ処理に至るまで、結局、すべてを大家さんが背負うことになるケースが非常に多いのです。

そんな社会状況を背景に、2011年ごろから、家主が貸借人の孤独死で被るリスクをカバーする保険が登場しています。
ある保険では、1戸あたり月300円ほどの保険料で、孤独死や自殺が起きた部屋の原状回復に最大100万円、事故後の空き室や家賃値引きに対して最長12カ月間、最大200万円まで補償してくれます。
これなら、たとえば10部屋あるアパートであれば、月3000円、1年にすると3万6000円の保険料で、もしもの時にかなり大きな補償が返ってくるわけです。
こういった保険は、大手保険会社も扱うようになってきています。今後さらに、様々な商品が発売されると予想されます。

保険を考える

借り主のための保険

逆の立場で、高齢者が、死後、他人に迷惑をかけないために、自分で備える孤独死対策保険や特約も販売されるようになってきました。
これまでは、火災が起きた場合などのために、少額短期保険に加入するのが一般的でした。
しかし2014年頃から、この火災保険に「孤立死原状回復費用特約」を付加できるものが出始めました。この特約で、賃借人に万一の事態が起こった時、大家さんが行う原状回復費用を補償してもらえるわけです。

また、少額短期保険会社と共同で保険商品を開発したNPO法人もあります。
保険料を払うのは居住者側で、加入時の年齢によって金額は違います。
この保険は、本人が亡くなったあとの遺品整理や修繕だけでなく、葬儀や納骨までカバーしています。また、身寄りがない人のため、この法人など第三者を保険金の受取人とすることができます。

このように、入居者が保険料を負担することで孤独死のリスクを軽減できれば、大家さんが高齢者の入居を敬遠する理由が減ります。つまり、増え続ける一人暮らしの高齢者が入居できる賃貸住宅の幅が広がるわけです。
現在は若い単身者でも、そのまま入居し続けていれば、当然いつかは高齢の単身者になるわけです。孤独死対策保険は、大家さん向けの商品も、入居者自身が備える商品も、今後さらに増えていくでしょう。

遺品整理の生前予約

  • 遺品整理の生前予約とは?
  • 生前予約では、どんなことをするの?
  • 生前予約のメリットは?

遺品整理の生前予約とは?

保険加入とは別の方法として、「遺品整理の生前予約」があります。
近年、生前に自分の葬儀やお墓を予約しておくというシステムが注目されているのをご存じでしょうか。
お葬式を行なったりお墓を建てたりするのは、大きな費用と労力が必要になります。「自分の死後、子供たちや周りに、金銭的・精神的に迷惑をかけたくない」という理由から、まだ元気なうちに、自分のお葬式やお墓について決め、予約しておくわけです。
これと同じ理由から、遺品整理にも生前予約のサービスが生まれました。

生前予約では、どんなことをするの?

依頼した会社のスタッフが、家を訪問し、実際の家の間取りや、家財・荷物の状況を見て見積りを行ないます。これは、引っ越し前の見積もりをする時に似ています。
料金は、品物の量や作業にかかる労力、人手によって変わります。また、大きな家具や、リサイクルしなくてはならない家電などの適切な処分をしてくれるかどうかをきちんと確かめておきましょう。
その上で、今後の段取りや手配について説明を聞き、話し合うことになります。

生前予約のメリットは?

a.大幅に手間が省ける

家族が同居していない場合、特に遠方に住んでいるケースでは、故人が、家のどこに、何を、どのように片付けていたか把握するのは難しいでしょう。
生前予約をしておけば、依頼人の死亡後、その片付けに奔走しないで済みます。貴重品などがどこにあるのかを探す手間もありません。

また、現在は環境問題への配慮から、簡単にゴミを捨てることができません。遺品整理のような場合、膨大な量のゴミを捨てるのは大変なこと。特に、大型家具や家電の処理にはひと苦労です。
まずリサイクルや処理の費用がかかります。適切に廃棄する必要もあります。これを個人で行うには、多大な労力と時間が必要となります。
しかし、生前予約をしておけば遺族や近隣の人に迷惑をかけず、素早く適切な処理をしてもらえるのです。

さらに、遺品整理業者のなかには、不用品のうち、まだ使えるものをリサイクル品として買い取ってくれるところもあります。
遺品の搬出作業だけでなく、宅配や分配もしてくれるので、残された家族の手を煩わせることなく、遠方も親族にも形見分けができるわけです。見積もりの際に、ぜひ相談してみましょう。

b.自分の意思を反映できる

たとえば、配偶者に遺したいもの、子供に受け継いでほしいもの、友人への形見にしたいものなどがあっても、それを死後に実行してもらうのは難しいものです。
しかし、生前予約の場合、遺品に関することを自分の意思で判断し、業者に託しておくことができるので安心です。
あとに問題を残さず、遺族が争ったりすることのないよう先に考えておくという点では、遺産相続などと同じです。
残される家族の幸せを考え、負担を減らす――遺品整理の生前予約は、家族への大きな愛情のカタチなのです。

c.大切なものの整理の方法を教えてもらえる

古いものを片付けようと思っても、いざ手に取るといろいろな思い出が浮かんで、捨てられなくなってしまうものです。そこで、遺品整理の生前予約の際、モノの上手な整理方法について聞いてみましょう。

d.エンディングノートを併用しよう

近年、「終活」の一環として注目されている「エンディングノート」。自分にもしものことがあった時のための備忘録です。
たとえば、介護が必要になった時どうするのか。延命治療を受けるか、受けないか。どんなお葬式をやりたいのか。など、死後に関する自分の希望を書いておくのです。
これは、遺品整理に関しても活用できます。財産の詳細や、遺品をどう処分するか、何を誰に形見として渡すのかなど、希望を書いておきましょう。
自身にもしものことがあった時にエンディングノートがあれば、家族が困ることなく、希望に添った遺品整理を行うことができるのです。
生前予約と併せて、エンディングノートにも希望を書いておけば、さらに安心です。

エンディングノート

遺品整理の現在

これまで、一般的に遺品整理は遺族がするものであり、他人にとっては不用品回収と変わらないというイメージがありました。
しかし、近年、断捨離やミニマリストが注目され、また、ゴミ屋敷や汚部屋が社会問題になるにつれ、「遺品と不用品は似て非なるもの」という観点に変わってきたのです。
他人から見れば、ただのゴミにしか見えないようなものでも、実は故人の大切な思い出が詰まったものである場合があります。
大切な人の遺品を見ることすら辛いと言う遺族もいます。逆に、遺品を片付けることによって気持ちの整理がつくという人もいます。
遺品とは、そんなデリケートなもの。だからこそ、遺品整理の専門業者が注目されています。
そして近い将来、社会が超高齢化、未婚・晩婚の人が増えることにより、独居、孤独死の問題も待ったなしです。プロの遺品整理業者のニーズは今後ますます高まっていくことでしょう。

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