書籍の出版や雑誌での特集、ドラマ化、テレビ番組で特集されるなど、メディアに取り上げられることの多くなった遺品整理。
断捨離ブームも追い風となって遺品整理サービスの利用者は年々増えており、遺品整理業者の数も全国で増加しています。それに伴い、遺品整理に関するトラブルも同時に増えているのが現状です。
残念なことですが、モラルに欠ける業者や、知識不足の業者なども少なくなく、消費者センターなどには、悪質な業者による被害の報告や利用者からの相談が寄せられているのです。
遺品整理士認定協会によると、業者全体の5〜6%が悪質な業者だそうです。
今回は、遺品整理業者による代表的なトラブル事例と、トラブルを回避するための対策について解説します。
遺品整理業者への依頼を検討している方、遺品整理業者との間で何らかのトラブルが起こってしまった方は、ぜひ記事を最後までチェックしてみてください。
目次
遺品整理業者と依頼主の間で起きるトラブル7つを対策とセットで紹介
遺品整理業を始めるのは簡単です。国が定めた資格などはなく、誰でもすぐに遺品整理業者を名乗ることができます。
しかし実際に遺品整理業務を行うためには、様々な資格取得が必要です。業者自身が資格を取得したり、資格を持っている別業者と連携しなければ進められない業務内容もあるのです。
また、遺品整理は単なる片付けではありません。全てを故人の大切な遺品として取り扱う精神や、依頼者にとって必要な書類やものを見分けるなど、遺品に関する豊富な知識や経験も必要とされる仕事です。
しか、遺品整理業界は法整備もまだ進んでおらず、発展途上の業種といえます。
そんな中、大切な家族を失った遺族の悲しみにつけ込み、金品をだまし取ったり、高額な請求をするような悪徳業者がはびこっています。
これまでに起こった遺品整理に関する被害と対策を知っておくことで、トラブルを未然に防ぎましょう。
ここでは、以下6つの遺品整理トラブルについて、対策と共に紹介します。
- 不当な高額請求
- 高額なキャンセル料
- 強引な営業
- 遺品の勝手な処分
- 盗難/ネコババ
- 不当な価格での買い取り
各トラブルについてそれぞれ詳しく見てみましょう。
遺品整理業者と依頼主の間で起きるトラブル①不当な高額請求
遺品整理業者と依頼主の間で起きるトラブルの中で最も多いのは、料金に関するトラブルです。
遺品整理を依頼するときは、現場で訪問見積もりを取り、その金額や内容を確認した上で契約するのが一般的です。
しかし作業が終わったあと「最初の想定より物が多かった」「やってみたら、特別な作業が必要だった」などと言われ、見積もりになかった料金を勝手に追加請求するというケースが多く報告されています。
不当な高額請求への対策
見積もりは、合計額だけでなく、何の作業にいくらかかるかの明細を出してもらいましょう。その上で、追加請求をしない旨を契約書に入れておくと安心です。
そうすることで、料金に関するトラブルを避けられます。もしこれらを拒否されたら、その業者には依頼しないようにしましょう。
また見積もりは、3社ほどから相見積もりを取るのもポイントです。料金を比較することによって、適正な料金の目安をつけることができます。
遺品整理業者と依頼主の間で起きるトラブル②高額なキャンセル料
一度契約したものの、事情が変わって契約を取り消したいと申し出たところ、高額なキャンセル料や違約金を請求されるというケースも増えています。
中には、契約時に一部前払いした内金を返還してもらえなかったということも。
契約書を出さない業者に依頼をしてはいけません。また書面に記された内容は、細部までしっかり読んでから契約するようにしたいものです。
遺品整理の契約・解約には、一定のルールや規制がありません。
一般的に、キャンセル料や違約金は事業者ごとに決められています。たとえば「○日前まではキャンセル料○%」のように、支払請求が発生する期間や料金などの条件を明確にしていない業者には注意が必要です。
高額なキャンセル料への対策
このようなトラブルに遭った場合、「クーリング・オフ」制度が利用できる可能性があります。
訪問見積りを要請した事業者と交わした契約は「訪問販売」にあたり、期間限定(8日間)で契約を無効にするという「クーリング・オフ」制度が適用できるかもしれません。
クーリング・オフは、ハガキなど書面で行います。「次の契約は解除します」とし、契約日、商品名(遺品整理サービス)、契約金額などを記入し、ハガキの両面をコピーして控えを保管します。
書いたハガキは、郵便局の窓口で「特定記録郵便」または「簡易書留」など記録に残る方法で、契約した事業者の代表者宛てに送付します。必ず受領証を受け取り、保管しておきましょう。
そうすることで、遺品整理におけるキャンセル料に関するトラブルを避けられます。
遺品整理業者と依頼主の間で起きるトラブル③強引な営業
半ば脅しのような手口で契約を迫ったり、しつこく営業電話を繰り返したりされるようなケースも増えています。
特に高齢者や女性を狙い、居座る・言いがかりをつける・声を荒げるなど相手に恐怖感を与え、断れないように仕向ける場合が多いようです。
このようなケースでは、契約締結だけでなく、不当な費用請求や高額なキャンセル料要求など二次被害に繋がりやすいのが特徴です。
また「今決めれば安くなる」などと契約を急かすような業者にも気をつけましょう。
強引な営業への対策
訪問見積もりの際は、家族や友人などに立ち会ってもらうのがおすすめです。
1人で対応すると、どうしても断りづらくなってしまいがちです。複数で対応することで断りやすい状況をつくり、トラブルを防止しましょう。
また依頼者を心理的に不安な状態に追い込んだり、不当に契約を締結したりといった悪質な営業行為は、特定商取引法において禁止されています。
迷惑・過剰な営業を受けたら、消費生活センターなどに報告しましょう。あまりに怖いと感じるようであれば、その場で警察に通報するのもアリです。
遺品整理業者と依頼主の間で起きるトラブル④遺品の勝手な処分
遺品の中には、現金・貴金属・土地の権利書など、遺産相続に直結する重要なものが含まれています。また、思い出の品や、形見の品が含まれていることもあります。
このような貴重品をきちんと仕分けて依頼者に渡すのが遺品整理の仕事です。そのため、遺品整理は基本的に依頼者の立ち会いのもと行います。
しかし、いい加減な業者は、依頼者への確認をすることなく、どんなものでも不用品として処分してしまい、大切なものが捨てられてしまったというケースが報告されています。
遺品の勝手な処分への対策
まず事前に、許可なく遺品を引き取らないよう、業者に厳命しておきましょう。最近は立ち会いなしでも作業を行う業者が増えていますが、できる限り時間を取り、立ち会うのが一番です。
遠方に住んでいるなど、どうしても立ち会えない場合は、スマホを通じて作業の様子を中継してくれる業者を選ぶとよいでしょう。
業者に仕分けをしてもらった段階で、保管する・しないの判断は必ず自分で行うようにしましょう。
また写真や思い出の品などは、ありかが分かっていれば事前によけておきましょう。
そうすることで、遺品整理における遺品の勝手な処分に関するトラブルを避けられます。
遺品整理業者と依頼主の間で起きるトラブル⑤盗難/ネコババ
遺品整理は、業者を家に入れなければできません。これを利用して、依頼者の見ていない隙に貴金属や金品などを盗むような悪質業者が存在します。
遺品の中から現金や貴金属が発見されても、報告せず懐に入れてしまいます。
盗難/ネコババへの対策
業者を入れる前に、貴重品はよけておいたり、金庫にしまっておきましょう。また作業に立ち会い、盗難が起こらないように目を光らせるのも有効です。
遺品整理業者と依頼主の間で起きるトラブル⑥不当な価格での買い取り
近年、遺品整理業者のサービスは多様化しており、まだ使える不用品をその場で買い取ってくれる業者も増えています。
適正な価格で買い取ってもらえれば、結果的に遺品整理の料金を抑えられていいのですが・・・。
骨とう品や美術品など、適切な価格をつけてくれるならいいのですが、相場以下の値段をつけられてしまうケースがあります。
不当な価格での買い取りへの対策
多くの良心的な遺品整理業者の場合、訪問見積もりの際に買い取り品の査定額も出してくれます。
遺品を売却したい場合はその場ですぐ決めないようにしましょう。
そして、見積もりを参考にしながら、リサイクルショップや専門店などで査定してみると、だいたいの価値が把握できます。
宝石や貴金属・ブランド品・趣味の品・骨董品・美術品など、市場価値が分かりにくいものは、専門の買取業者の方が高く買い取ってもらえる可能性があります。
比較検討してから売却するのがおすすめです。
実際にあった遺品整理業者に関する事件
ここまで遺品整理業者との間に起こり得るトラブルを6つのケースに分けて紹介しました。
実は遺品整理業者と依頼主との間でのトラブルは、実際に何件も起きています。
例えば2017年11月には、遺品整理業者Bが400キロ分の廃棄物を札幌の資源ゴミ回収施設に不法投棄し、廃棄物処理法違反で逮捕されています。
また2017年の12月には、「期日中に作業が終わらなかったため解約を申し出たところ、『これまで回収したものを全て送り返す』と言われた」といった声が、国民生活センターに寄せられています。
このように遺品整理業者選びを間違えると、思わぬトラブルに発展するケースが少なくないため、信頼できる遺品整理業者を選ばなければなりません。
遺品整理業者とのトラブルに巻き込まれた際の相談先
遺品整理業者とのトラブルに巻き込まれた際の相談先には、以下の3つがあります。
- 国民生活センター
- 警察
- 弁護士
それぞれ詳しく見てみましょう。
国民生活センター
独立行政法人国民生活センターは、消費者基本法に基づき、国や全国の消費生活センター等と連携して、消費者問題における中核的機関としての役割を果たしています。
遺品整理業者との間に何らかのトラブルが起きて、緊急性がない場合は、ひとまず国民生活センターに相談をしてみるといいでしょう。
警察
遺品整理業者から脅しのような営業を受けている場合など、緊急性が高い場合は警察に連絡をしましょう。
110番通報をするのは気が引けるという方は、警察相談ダイヤルの「#9110」に電話をかけるのもおすすめです。
弁護士
遺品整理業者とトラブルがおき、裁判を起こすと言われた場合や、何らかのトラブルを起こした遺品整理業者に損害賠償を請求したい場合などは、弁護士に相談しましょう。
ただし弁護士に依頼をするには、それなりに費用がかかることを頭に入れておかなければなりません。
トラブルを避ける!遺品整理業者のおすすめ選び方
遺品整理業者とのトラブルを避けるには、以下2つの点に注意して遺品整理業者を選びましょう。
- 相見積もりをする
- ホームページや事例をチェックする
それぞれ詳しく解説します。
相見積もりをする
遺品整理業者とのトラブルを避けるには、相見積もりをしましょう。相見積もりをすることで、不当に高い値段を突きつけてくる遺品整理業者への依頼をせずに済みます。
また相見積もりの際には、見積書に業務ごとの値段が細かく記載されているか、後から追加で請求されることはないかを確認しましょう。
ホームページや事例をチェックする
遺品整理業者とのトラブルを避けるには、ホームページやこれまでの作業事例をチェックしましょう。
直感的に、「ホームページの作りが簡易的だな」と感じる遺品整理業者は、よくない業者であるケースが多いです。ホームページ等、細部にまで力を入れている遺品整理業者を選ぶことで、トラブルを避けられます。
また作業事例をチェックすることで、実際にその遺品整理業者への依頼者がいることと、どのくらいの費用がかかったのかを確認できます。
まとめ
遺品整理業者に関するさまざまなトラブル事例をご紹介しましたが、これらはあくまでほんの一部で起こっていることです。
全ての遺品整理業者が悪徳なのではなく、大多数の遺品整理業者は、誠実に作業を行っています。トラブルに巻き込まれることも滅多にありません。
しかし遺品整理に関しては、まだ法もガイドラインも定められていないのが現状です。このような例を参考にして、トラブルに巻き込まれることなく納得のいく遺品整理ができたらいいですね。