少子高齢化・核家族化が社会的な問題となって久しいですが、これにともない、さまざまな状況が派生しています。 ひとり暮らしの高齢者の増加も、その1つです。 複数の世代が一つ屋根の下で生活するスタイルは、特に都市部では非常に少なくなりました。
子どもと同居せず、ひとりで生活する高齢者が増えています。 また、生涯未婚率も増加しており、伴侶も子どももおらず、ひとりで生活する人も多くなりました。 このような状況で、一人暮らしの人が亡くなった場合、遺品整理はどのように行えばよいのでしょうか。 今回は、ひとり暮らしで亡くなった人の遺品整理について見ていきましょう。
一人暮らしの人が亡くなる孤独死とは?
一人で生活している人が、自分の家の中で誰にも看取られずに亡くなることを孤独死といいます。 孤独死という言葉は、高齢化が社会的問題となり始めた1970年代、マスコミが作った造語です。公的文書では孤立死という言葉が使われます。 特に、1995年に起きた阪神・淡路大震災の際に被災者の孤独死がメディアに取り上げられて以降、よく使われるようになったようです。
孤独死はどのような人が多い?
孤独死してしまう人には、男性の高齢者、配偶者と死別した独身者が多いとされています。 また、家族や地域との交流が希薄で、経済的余裕がない人が孤独死に追い込まれやすいと言う調査結果があります。
孤独死はどのように発見される?
誰にも気づかれずに亡くなる孤独死は、多くが発見までに時間がかかっています。 そのため、遺体が腐敗しているケースが多く、独特の臭気によって周りに発見されることが多いようです。 また、大量に溜まった郵便物や新聞などにより、周囲が不審に思うことから発見されるケースもあります。
孤独死の後始末は?
孤独死のあった部屋は、腐敗した血液や体液が壁や床に飛び散ったり染み込んだりしていることも多いようです。そのため、その臭気は一般的な脱臭剤で消せません。
腐敗臭にも対応している消臭剤や除菌剤を使い、徹底的に掃除をする必要があります。 このような部屋の原状回復のスペシャリストに「特殊清掃業者」があります。
特殊清掃業者は専門的な消臭剤や消臭機を使い、衛生的に作業を行います。 また、最近では、遺品整理業者の中にも特殊清掃作業を行なっているところがあります。
孤独死した人の遺品整理は誰が行う?
遺品整理は、誰がやらなくてはならないという決まりはありません。 しかし、故人の配偶者や子どもなど、家族が行うのが一般的です。 なぜなら、故人の遺品は法律的には相続人の相続財産だからです。
トラブルを避ける意味でも、遺品整理は法定相続人となる家族が行うのが良いでしょう。身寄りが不明の場合は、役所が故人の戸籍をたどり、親族を探して連絡します。
故人に身寄りがいない、つまり相続人が明らかでない場合は、利害の関係のある人が家庭裁判所に「相続財産管理人」を選任してもらいます。 そして、この相続財産管理人が遺品整理(財産の管理・清算)を行うことになります。
一人暮らしの人の遺品整理での困りごとは?
家族や社会とつながりの薄かった一人暮らしの人の遺品整理は、どんなポイントが難しいのでしょうか。
遺産の把握が困難
故人が残したものの中で、現金、預貯金、不動産、有価証券など資産価値があるものは、遺産として相続の対象となります。 相続人がこれらを相続するには、故人がどんなものをどれだけ持っていたのかを把握する必要があります。
これらを調べるには、かなり時間がかかります。 また、資産価値のある「プラスの財産」だけでなく、借金やローン、未払い金など「マイナスの財産」も把握する必要があります。 相続の際は、プラス。マイナスどちらの財産も引き継がれるので、全てを明確にしなくてはならないのです。
遺産かどうか判別しにくいものがある可能性
持ち主の亡くなったあとには、さまざまなものが残されます。 たとえば、美術品や骨董品、趣味の道具など、興味のない人には価値がわからないけれど、実は市場価値の高いものがあるケースは少なくありません。 市場価値のある遺品は相続財産としてリストに入れなくてはならないので、誤って捨ててしまわないよう注意が必要です。 また、これらの市場価値がどのくらいなのか、専門家に鑑定してもらう必要があります。
大量の遺品がある可能性
歳を重ねると、体力や気力が落ち、まめな掃除や片付けができなくなる人が少なくありません。 物の少なかった時代を生きてきた高齢者は、年代的にものを捨てられない傾向が強いようです。 また、認知症や心の病気などの影響から、ものを溜め込んでしまう人も多くみられます。
ですから、大量の遺品を仕分けしなくてはならないケースは少なくありません。 さらに、故人が長く生活してきた実家で亡くなったり、一戸建てに居住していた場合、遺品が膨大な量になル場合が多いようです。
一人暮らしの人の遺品整理の流れは?〜身寄りがある場合
故人に身寄りがある場合は、その親族が遺品整理を行うのが一般的です。 親族の中でも、故人の遺産を引き継ぐ権利が法律で認められている「法定相続人」が行うのがベストです。
法定相続人が複数いる場合は、トラブルを避けるため相続人全員で遺品整理をするのが望ましいでしょう。
いつ遺品整理を行うか
また、相続税の申告と納付は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に行わなくてはなりません。 期限を過ぎてしまうと、延滞税が課せられたり、相続税の軽減制度が利用できないなどのデメリットがあります。
遺品整理は早めに済ませて、遺産分割協議を行いましょう。
遺品を仕分けする
相続人が揃ったら、遺品を仕分けしていきましょう。 まず、法的な手続きが必要になる以下のような「遺産となるもの」を抜き出します。
- 現金
- 銀行の通帳・印鑑
- クレジットカード・キャッシュカード
- 不動産の権利書類
- 有価証券
- 貴金属や美術品
判断が難しいものは、専門家に鑑定してもらいましょう。 思わぬところに重要書類や現金などを置いていることがあるので、慎重に探しましょう。
また、忘れてはならないのは遺言書の探索です。 遺言書の内容によっては、遺産を引き継ぎ方や、引き継ぐ人が大きく変わる場合があります。
形見分けの品を取っておく
家族や、故人と親交のあった人に贈る形見分けの品も選り分けておきましょう。 ただし、あまりに高価過ぎるものを選んではいけません。 市場価値の高いものは、遺産として計上しなくてはならないからです。
リサイクルできるものは?
故人の遺した家具や家電などは、まだ使えるものがあればリサイクルショップやフリマアプリなどで売却しましょう。 また、リサイクルやリユースを行なっている団体などに寄付するのもよいでしょう。
残ったものを処分する
残りの遺品はすべて処分しましょう。 居住自治体のルールに従ってごみを分類して捨てます。 大きな家具や壊れた家電などが多かったり、処分に時間がかけられない場合は、不用品回収業者に回収してもらうのも良いでしょう。
一人暮らしの人の遺品整理の流れは?〜身寄りがない場合
身寄りがない人の財産は、民法959条によると最終的には国庫に入ることになります。 そのため、民法の制度上は、相続人がいることが明らかでない場合の遺産は、相続財産管理人が選任され、管理することになります。
孤独死した人に借金・負債がある場合は?
相続財産管理人は、債権者や受遺者に対して公告・催告をし、申し出があれば遺産から弁済します。 この時点でも相続人がわからない場合は、公告によって相続人を探します。
孤独死した人の遺産は最終的に国庫に入る
負債を解消して、まだ遺産が残っている場合は、家庭裁判所の審判に従って特別縁故者(故人と特別親しい関係にあった人)に遺産を分与します。 以上を行った上で、まだ遺産が残っている場合は国庫に帰属することになります。
身寄りがない孤独死の遺品整理は時間がかかる
身寄りがない孤独死の遺品整理手続きを行うには、短くても1年以上の時間と、相続財産管理人を選任するための数十万円以上のお金がかかります。 このことから、相続権のない関係者が相続財産管理人選任の申し立てをするケースはそれほど多くありません。
まとめ
遺品整理は、時間も手間もかかる大変な作業です。 あまりにも遺品が多かったり、遺品の仕分けに不安があったりする場合は、遺品整理業者に依頼するのも良いでしょう。 経験豊富な遺品整理業者は、大切なものを見落とすことなく仕分けしてくれます。
さらに、使える遺品の買い取り、清掃、形見分け配送サービス、遺品の供養、不用品の回収まで、一気に済ませることができます。 身寄りが遠方にいて立ち会いできない場合は、画像や動画で遺品整理の様子を知らせてもらえます。 費用はかかりますが、時間がない人や急いでいる人、遺品整理を行う体力がない人などは利用を検討してみるとよいでしょう。