さまざまな相談が寄せられる全国の消費生活センターには、葬儀サービスに関する相談も寄せられています。
この数は増加傾向にあり、2015年には年間700件を超えています。
高齢者の増加とともに、今後、葬儀の件数も増加していくと予想されます。
その中で、葬儀を行った人はどのような後悔をし、相談しているのか、また、後悔しないためにできることは何か、見ていきましょう。
目次
葬儀に関する「後悔」とは?
現代において、特に都市部では、以前のように家庭や近隣だけで葬儀を行うことは少なくなり、葬儀社を通し、斎場で葬儀を行うことがほとんどとなっています。
葬儀は急に行うことが多いので、その現場は慌ただしいものです。
葬儀を執り行ったり喪主になったりなんて、一生にそう何度もあることではありません。
しかも、大切な家族を亡くした悲しみのただなか、完全に満足のいく葬儀や、完璧な葬儀を行うのは、とても難しいことです。
葬儀を経験している人の6割以上は「もっとこうすれば良かった」と後悔しているという調査もあるようです。
一体、どんな点に関して後悔しているのでしょうか。
いくつか事例を見てみましょう。
料金が・・・
Aさんは、葬儀後に受け取った請求書を見て驚きました。
「お葬式って、こんなにかかるの?」
葬儀会場に始まり、祭壇や棺、飲食や返礼品などの費用など参列者の数によって変動する費用も、見積もりである程度の金額を出すことができます。
しかし、事前に複数の葬儀社を比較検討する間がなく、また、葬儀に関する知識もないままバタバタと決めてしまったため、このようなことになってしまいました。
Aさんのように、葬儀の種類による価格のイメージと、実際にかかる費用とのギャップを感じる人は多いようです。
情報不足で・・・
Bさん家族は、Bさんが病院で亡くなったあと、病院から紹介された葬儀社で葬儀を執り行いました。
そのため、他の葬儀社と内容や価格を比較することなく葬儀を行うことになりました。
ふたを開けてみれば、打ち合わせが十分でなく、段取りが今ひとつ。
お料理の内容や返礼品なども期待外れで、葬儀の最中から後悔していたそうです。
他社と比較することなく葬儀を行ったため、あとから他社の葬儀プランを知って「ここは、こうしたかった」「あちらの方がよかった」と、後悔しています。
簡素な葬儀を選択したのに・・・
一般的な葬儀の場合、参列者が多いために葬儀が終わるまで打ち合わせや挨拶でバタバタと慌ただしく、ゆっくりと故人の死と向き合う時間が取りにくいものです。
そのため、Cさん家族は家族や一部の親族のみで行う家族葬を行うことにしました。
家族葬なら、堅苦しい挨拶や会葬者の応対は最小限で済むため、落ち着いて故人を送ることができると考えたのです。
葬儀は、思った通り少人数で、ゆっくり故人を送ることができました。
葬儀の際は良かったのですが、参列者を絞った簡素な葬儀を行ったために、葬儀後、故人の友人や知人など呼ばれなかった人が次々と弔問に訪れたのです。
「葬儀に参列できなかったので、お線香をあげさせてください」「お世話になったので、お別れを言いたいです」と言われれば、断るわけにはいきません。
このような弔問客が、バラバラと自宅を訪れることに。
また、葬儀に呼ばれなかった人が気分を害し、人間関係が悪くなってしまいました。
Cさん一家は、葬儀当日の煩わしさは軽減できたものの、かえって面倒な事態になってしまいました。
インターネットで選んだら・・・
Dさんは、ご主人が亡くなり、インターネットで葬儀プランを検索しました。
葬儀のパッケージ商品を作ってインターネットで集客し、提携する葬儀社が現場を担当するというもので、近年増えているスタイルです。
「全国展開」「追加料金不要」をうたっていたため、Dさんは「格安葬儀パック」を選びました。
このようなパック葬儀は、どこの葬儀社が担当になるか、当日までわからないケースもあります。
そのため、自宅から遠い会場に安置することになってしまうことも。
また、格安パックのため、時間がない中オプションサービスをあの手この手で付けさせようとしてくることも少なくありません。
「追加費用は一切なし」にひかれて格安葬儀を選んだDさんですが、食事や香典返しは別であることに気がつかず、結局、想定よりも高い料金を支払うことになってしまいました。
葬儀に関する問題点とは?
では、葬儀に関する問題点をまとめてみましょう。
家族は短時間でさまざまな判断をしなければならない
たいていの場合、故人が亡くなってから葬儀までは時間が少ないものです。
早い場合は、亡くなった翌日にお通夜、2日後に葬儀ということも。
家族は、時間がない中、葬儀に関するさまざまなことを決め、行わなくてはなりません。
このために、どうしても、希望通りにはいかなかったり、目をつぶったりしなくてはならないところが出てきてしまうのです。
情報や知識の不足
現代の葬儀は葬儀社を通して行うため、事前に担当者と十分な打ち合わせが必要です。
しかし実際には、葬儀に関する知識不足から、担当者の勧めをそのまま受け入れてしまったり、時間のなさから納得のいかないプランで行わざるを得ないことがあります。
葬儀社は数多くあります。また、葬儀のプランや規模もさまざまありますが、事前に細かく比較検討することなく、担当者の勧めに従って当日を迎えるという事例が多いようです。
そのため、その時はこれでいいと思っても、あとからいろいろな情報を知り、後悔することになってしまいます。
請求金額が高額になることがある
葬儀費用の内訳は、葬儀基本セット(祭壇や花などの設備)、宗教費用(お布施など)、飲食などおもてなし費用、ホールなどの施設利用料です。
葬儀基本セットの中身は葬儀社によって異なるため、内容を確認しておくことが大切です。
宗教費用については、菩提寺がある場合は、お布施を直接お寺に確認しておきましょう。
食事や返礼品などのおもてなし費用は、参列者の人数によって大きく変動します。幅をもたせて心づもりしておくと良いでしょう。
葬儀で後悔しないために
葬儀は、人生の最後のセレモニーです。
故人を気持ちよく送り、後悔のない葬儀を行うにはどうすればよいのでしょうか。
情報収集しておこう
事前に、葬儀の希望やイメージを考えて、さまざまな情報を収集しておきましょう。
近年では、葬儀にもさまざまなプランがあります。
音楽葬や無宗教葬、お別れの会などの自由葬や、火葬直前まで自宅で過ごすものなど、以前では考えられなかったような新しいプランや演出がたくさん出てきています。
できれば、親や家族が元気なうちに希望を聞いておくのがベストです。
また、ある程度の年齢になったら自分で理想の葬儀を考え、エンディングノートに記入したり、家族と話し合ったりしておくと良いでしょう。
遺影に使いたい写真やBGMなどを事前に用意しておくのもいいですね。
葬儀社を比較検討しておこう
葬儀社はたくさん存在します。
病院などで紹介されたから、というのではなく、費用や希望を叶えてくれる葬儀社を選びたいですね。
葬儀社では、さまざまな相談に乗ってもらえます。
インターネットで葬儀社を検索し、サービス内容や費用などを比較検討しておきましょう。
気になるところがあれば、電話や面談で相談に乗ってもらいましょう。
元気なうちに、自分の希望通りの葬儀を行える葬儀社を探しておくのが大切です。
打ち合わせは入念に行おう
もし、葬儀が急に決まった場合でも、打ち合わせはできる限り入念にしておきましょう。
葬儀社との打ち合わせは、喪主1人で行のではなく、親族など第三者に同席してもらい、複数で行うのがお勧めです。
また、必ず見積書をもらい、内容を確認しましょう。
忙しい中ですが、内容をきちんと把握し、あとから余分な料金を請求されないようにすることが大切です。
特に、食事や返礼品など参列者の人数によって増減する項目には注意しましょう。
打ち合わせの際には、納得いくまで担当者と話すことが大切です。
また、インターネットでパックを選ぶものは、できる限り、どの葬儀社か、会場がどこかなど、細かく確認しましょう。
まとめ
できるだけ後悔しない葬儀を行うためには「事前の情報収集」と、「葬儀社との綿密な打ち合わせ」に尽きるでしょう。
情報や知識を持っていれば、バタバタと慌ただしい中での葬儀社選びも、プランの選択も、失敗が少なくなります。
時間に余裕があれば、複数の葬儀社に相見積もりを出してもらい、比較検討するのもお勧めです。
見積書は細かく把握し、曖昧な点があれば納得いくまで質問しましょう。
また、終活をしている人は、葬儀に関する希望があれば家族に伝えておきましょう。
家族に負担をかけず、後悔させないためには、葬儀の生前予約をしておくのも安心です。