遺品整理業者に許可は必要?おすすめの業者の選び方

遺品整理業者に許可は必要?おすすめの業者の選び方

今年6月、無許可で作業を行い、数千万円もの利益を得ていたとされる遺品整理業者を名乗る男が、廃棄物処理法違反などの疑いで書類送検されたというニュースが報道されました。
近年、同様の事件が増えており、環境省をはじめ横浜市、いわき市など全国の自治体でも注意を呼びかけています。
実は、遺品整理サービスを行うには、さまざまな許可や資格が必要であることをご存じでしたか?
今回は、業者選びを間違えないためにも、遺品整理業者にはどんな許可が必要なのかについて見ていきましょう。

遺品整理は許可が重要

遺品整理業者には、なぜ「許可」や「資格」が必要なの?

許可取得した遺品整理業者のトラック

遺品整理サービスを行うには、「許可」や「資格」が必要です。
なぜなのでしょうか。
家庭から出たごみは、市区町村の責任のもとで適正に処理する必要があります。
そのため、市区町村の許可や委託を受けていない業者は、家庭のごみを収集できません。
無許可の業者に廃棄物の処分を依頼すると、法律を遵守した適切な処理がされたかどうか確認できないからです。

無許可の業者は正規の処理場や廃棄所に廃棄物を持ち込むことができません。
そのため、河原や山などへ不法投棄をすることが多くなります。
また、環境対策を行わずに廃家電を破壊することで、フロンガスや鉛などの有害物質が放出され、環境汚染につながるリスクが非常に高くなります。
さらに、廃家電は電池やプラスチックを含んでいるため、発火の危険性があります。実際に、不適正な管理による火災が発生しています。

特にテレビ、エアコン、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機の「家電4品目」は、「家電リサイクル法」に従って廃棄する必要があります。
無許可の業者は、必要な手順を踏まず、不法投棄をしている可能性があります。

遺品整理業者に必要な許可とは?

遺品整理は誰に頼むか悩む夫婦

では、遺品整理業を行うにあたって、必要な許可とは何なのでしょうか。

一般廃棄物収集運搬許可

ごみは「産業廃棄物」と「一般廃棄物」の2つに分けられます。
家庭から出たごみは「一般廃棄物」です。
これらを収集・運搬するために必要なのが「一般廃棄物収集運搬許可」です。
どんなに小さなものであっても、一般家庭のごみを正しく運搬・処理するには、この「一般廃棄物収集運搬許可」が必要です。

注意したいのは、「産業廃棄物処理運搬業許可」との違いです。
「産業廃棄物」は、会社や事業所などから、事業によって出たごみのことで、これを運搬・収集を収集するには「産業廃棄物処理運搬業許可」が必要になります。
言葉が似ているので間違えやすいのですが、産業廃棄物収集運搬許可では一般家庭からのごみの収集・運搬はできません。
業者に依頼する際には、「一般廃棄物収集運搬許可」を持っているところを選びましょう。

古物商許可

近年、遺品整理で出た不用品の買い取りサービスを行う業者が増えています。
遺品整理の際には、貴重品や骨董品など市場価値のある者、買い取りの対象になるものが多く出てきます。
この、不用品を買い取るのに必要な許可が「古物商許可」です。
依頼者にとっては、不用品が片付いた上にお金も入って便利なサービスですが、この許可がない業者は、不用品を買い取ることができません。

古物商許可は、申請に必要な書類が多く手続きが煩雑ですが、比較的取得しやすい資格と言えるでしょう。
もし、一般廃棄物収集運搬許可を持っていない業者でも、古物商許可を取得していれば、遺品の仕分けや買取りサービスをメインに行い、廃棄物の処理は他の一般廃棄物収集運搬業者に委託することも可能です。
業者に依頼する際は、このあたりをよく確認しましょう。

資格の有無を確認するには?

業者が、これらの許可を取得しているかどうかを確認するには、どうすればよいのでしょうか。

ホームページで確認する。

許可を持っている業者の場合、サイトの隅や会社概要に「○○市一般廃棄物収集運搬許可」「古物商許可」と記載されています。

市区町村の名簿で確認する

市区町村のサイトには、一般廃棄物収集運搬許可業者の名簿が掲載されています。
ここに社名があれば、その会社は許可を持つ優良業者と考えてよいでしょう。
繰り返しになりますが、一般廃棄物収集運搬許可は取得が難しく、優良な遺品整理業者でも取得できないこともあります。
自社でこの資格を持っていなくても、一般廃棄物収集運搬許可を持つ業者と提携していれば違法にはなりません。
もし、どうしてもその業者に依頼したい場合は、提携しているかどうかを確認しましょう。

公安員会で確認する

古物商許可に関しては、公安委員会のサイトから確認できます。

提示を求める

遺品整理業者は、一般的に現地で見積もりを行います。
この時にも買い取り業務を行うことがあるため、古物商許可は常に携帯しています。
訪問見積もりをする際に見せてもらうのが最も確実です。

許可が必要ないサービスはあるの?

遺品整理業のサービスは多岐にわたり、許可が必要ない業務もあります。

遺品の仕分け

遺品整理の最も基本的なサービスです。
故人の残したものを、手元に残すもの、不要なもの、形見分けするもの、リユース品として買い取るものなどに仕分けします。
遺品整理で最も重要な作業ですが、依頼者宅で品物を整理・分類するだけなので、特別な許可は必要ありません。

貴重品などの探索

遺品整理の際、遺品の中に埋もれている貴重品や遺言書、土地家屋の権利書、年金手帳や通帳などの重要書類を探してほしいという依頼を受けることがあります。
こちらも、依頼されて家の中を探索するだけですから、特別な許可はいりません。

ハウスクリーニング

許可取得済みの遺品整理業者

ほとんどの遺品整理業者では、遺品整理の作業が完了したあと、簡単に室内の掃除をしてくれます。
孤独死後の特殊清掃の場合は、特別な薬品を使ったりするため、それに見合った許可の取得が必要になることがあります。
しかし、掃除機や雑巾などを使って通常の範囲の掃除をするだけなら、特別な許可は必要ありません。

遺品の供養

たとえ不要な者であっても、全ては故人の使っていた遺品です。
使えないけれど、かといって、そのままごみとして処分するのは心苦しい・・・という場合、遺品を処分する前に供養を行うサービスをする業者が増えています。
この「供養」は、他の依頼者の遺品と一緒に供養を行う合同供養や、自宅に僧侶を招いてお経をあげてもらうというものもあります。
読経後の遺品は「お焚き上げ」を行い焼却されますが、この供養そのものに許可は必要ありません。
遺品の供養は日本社会の慣習の一つなので、この場合、遺品は「廃棄物」ではないと考えられます。
そのため、供養に関しては、寺院や業者が一般廃棄物処理業許可を取得する必要はありません。

遺品整理士

遺品整理業界には「遺品整理士」という資格があります。
しかし、これは一般社団法人遺品整理士認定協会という民間の団体が業界健全化のためにスタートさせたもので、遺品整理業に関する国家資格は存在しません。
そのため、遺品整理業を営むにあたって、遺品整理士の資格は必須ではないのです。
とはいえ、この資格は、定められた教本や講義を通して遺品整理について学び、取得するものです。
そのため、この資格を持っている業者は、遺品整理サービスを行う上で基本的な事柄や姿勢を身につけていると言えるでしょう。
必須ではありませんが、業者を選択するときに参考にしたい資格です。

上手な業者選びとは?

遺品整理の許可業者担当の女性

遺品整理業者を選ぶ際は、必要な許可を持っている業者を選びましょう。
では、そのほかに、業者選びで注意したいポイントは何でしょうか。

サービス圏

まず最初に、遺品整理が必要な場所がその業者のサービス圏内に含まれているかを確認しましょう。
サービス圏外でも対応してくれる業者もありますが、別途、出張費が必要になります。

サービス内容

遺品整理業者で提供しているサービスは、業者によってさまざまです。
たとえば形見分けの配送や、遺品の供養などを希望する場合は、その業者がそのサービスを行っているかを確認しましょう。

電話やメールの対応の良さ

遺品整理業者は、故人の大切な遺品を扱う仕事です。
それだけに、その業者との相性も大切になってきます。
電話やメールの対応で感じが良くなかったり、違和感を抱いたりしたら、その業者は避けるのが無難です。

訪問見積もり

悪質な遺品整理業者で最も多いのは、最初は安く見積もっておいて、後から高額の追加料金を請求するという手口です。
このような被害に遭わないために、実際に現地を訪問して見積もりを行う業者を選びましょう。
また、訪問前に質問事項をまとめておき、納得いくまで聞くことも大切です。
その上で明細をしっかり確認し、曖昧な点や不明な点がないかを確認しましょう。
また、1社だけでなく、複数の業者に相見積もりを取り、しっかり吟味してから業者を決めましょう。
その際、スタッフの服装や対応がきちんとしているかどうかも大切なポイントです。

まとめ

遺品整理業を正しく行うには「一般廃棄物収集運搬許可」が必要です。
また、買い取りなどを行うには「古物商許可」も必要となります。
遺品整理を依頼する際には、必要な許可を持っているかをしっかり確認し、気持ち良い遺品整理を行いましょう。

この記事の監修をしたゴミ屋敷の専門家

氏名:新家 喜夫

年間2,500件以上のゴミ屋敷を片付け実績を持つ「ゴミ屋敷バスター七福神」を全国で展開する株式会社テンシュカクの代表取締役。ゴミ屋敷清掃士認定協会理事長。