遺産相続トラブルが多発! お金の生前整理の方法を教えます

遺産相続トラブルが多発! お金の生前整理の方法を教えます

お金の管理、どうしていますか?
普段あまり使わず、自分でも忘れている銀行口座などはありませんか?

遺産相続の際に財産がどのくらいあるのか分からないと、残された親族間で争いが起こったり、正しく相続が行われず面倒なことになったりする場合があります。

できれば、元気なうちにきれいに整理したり、まとめたりしておきたいもの。
トラブルを防ぐため、お金の整理についてみていきましょう。

遺産相続でこんなトラブルが起きている!

平成25年度の司法統計によると、家庭裁判所が受け付けた「遺産分割審判の件数」は、昭和60年には5,141件でしたが、平成14年から1万件を突破。
平成25年には12,263件にものぼっており、この10年あまりで約2.3倍も増加したことになります。
しかも、これはあくまで家庭裁判所に持ち込まれた件数なので、裁判にならなかったものも含めると、大変な数になると考えられます。

遺産分割に関する争いは、たとえ小さなものでも家族間に亀裂を生み、修復できない溝となってしまうことがあるのです。

  • トラブル例1:使い込みを疑われる
  • トラブル例2:遺産隠匿を疑われる
  • トラブル例3:相続後に借金や連帯保証が発覚
  • トラブル例4:デジタル遺品

トラブル例1:使い込みを疑われる

相続が発生すると、相続人の間で遺産を使い込んではいないか、という疑念が生まれることがあります。

家族間のお金に関するトラブル

Aさんは3人兄弟です。3人のうち長男であるAさん夫婦が実家で父と同居し、面倒をみていました。

Aさんのお父さまが亡くなり、葬儀も終えて相続の話をすることになったとき、同居していなかった兄弟が、Aさんが同居している間に父の預貯金などを使い込んでいたのではないか、と言い始めたのです。

もちろんAさんは使いこみなどしておらず、否定しました。
しかし、疑いの気持ちでいっぱいになっている兄弟は、聞く耳を持ちません。
「使い込んでいないなら証拠を出せ」などと言い、譲らないのです。

長年、父と同居して世話をしてきたAさんにしてみれば、こんなに腹の立つことはありません。揉めに揉め、泥沼の争いに発展してしまいました。

こういった例は、兄弟のうち誰かが親と同居していた場合によくみられるケースです。

トラブル例2:遺産隠匿を疑われる

遺品整理では「タンス貯金」もトラブルの元に・・・

遺品整理の作業中には、いろいろなものが見つかります。
いわゆる「タンス預金」などの現金、貴金属、預金通帳や株券など、家族も知らない遺産が見つかることは案外多いものです。

Bさんは、お母さまが亡くなったあと遺品整理をしました。
作業後、親族に連絡をすると、親族は、Bさんが何か遺産を隠しているのではないかと疑い始めたのです。

「母から聞いたこともない株が出てきた。
ということは、他にも何かあって、Bが隠しているんじゃないか?
その証拠に、遺品整理はBだけが立ち会った」

というわけです。

また、このようなパターンのほか、相続財産の中で想像より預貯金が少なかったり、口座の残高がほとんどなかったりすると、「他の口座をBが隠しているのではないか」なとど兄弟から疑われたりすることがあります。

ないものを、ないと証明することはできないので、Bさんは困り果てています。

トラブル例3:相続後に借金や連帯保証が発覚

Cさんは、お父さまが亡くなったあと、無事に遺産相続を済ませることができました。
すべてが終わって「やれやれ……」とホッとしたとき、なんとお父さまは生前、知人の借金の連帯保証人になっていたことが発覚したのです。

亡くなった後に連帯保証人であることが発覚

このような場合、相続放棄をしない限り、お父さまが負っていた連帯保証人としての責任は、相続人が負うことになります。
つまり、知人がお金を返せなかったら、相続人が返済しなくてはならないのです。

Cさんはすでに相続を済ませていたため、かなりの額の弁済をしなくてはならなくなりました。
「相続前に分かっていたら、相続放棄をしたのに……」と後悔しても、後の祭りだったのです。

トラブル例4:デジタル遺品

インターネット上で取り引きできるネット銀行は、自宅にいながらにして出入金や残高照会ができるので、とても便利です。
こういった口座は資産価値があるため「遺産」として扱われます。
しかし、多くが通帳を発行しておらず、家族は故人が預金口座を持っていたことを知らないケースが多いのです。

もし知らない請求書が届いたら?

Dさんは、ご主人を事故で亡くしてしまいました。
葬儀から数日後、FXの取引会社から連絡を受けました。
心当たりのないDさんでしたが、話を聞いてみると、なんと亡くなったご主人が、2000万円もの損失を出したというのです。

ご主人がFX口座を持っていたことすら知らなかったDさんは、声も出ないほどショックを受けました。
けれど、損失分を埋めるお金などありません。
Dさんは、マイナスから逃れるため、相続放棄をするしかなくなってしまいました。

遺産相続のトラブルを回避するには?

上で挙げた例は、すべて、遺産の全容が明らかになっていないために起こったトラブルです。
もし、故人が生前に、どんな遺産がどのくらいあるのかを明確にしておいてくれれば、兄弟が争うこともなかったでしょう。

また、すでに遺産を相続・分配し終わった後に新たな遺産が発見されたりすれば、再び争いが起こる火種になりかねません。
こういったトラブルを回避するためにも、生前整理で、遺産の全容を明らかにしておきたいものです。

遺産相続トラブル回避のための生前整理

「終活」という言葉が浸透するとともに、「生前整理」も注目を浴びています。

生前整理とは、自分が死んだあと、残される家族のことを考えて行なう身辺整理のこと。
現代の日本では、社会の変化とともにライフスタイルも変わり、家族と生活をともにせず、一人で暮らす独居老人が増えています。その結果、孤独死、空き家などの問題がクローズアップされるようになりました。

お金の生前整理を!

そんななか、高齢者は「自分が死んだあと、残される家族や周囲に迷惑をかけたくない」という意識が高まってきました。
そこで「終活」や「生前整理」という概念が生まれたのです。

自分がいなくなったあと、葬儀やお墓のこと、片付けなどで負担をかけたくない。
子供たちや親戚を、遺産相続などで争わせたくない。自分がいつどうなるか分からない不安がつきまとう世代にとって、終活をすることは、子や孫に負担をかけずに済む安心感につながります。

そのために行うのが「生前整理」なのです。

お金を生前整理しておこう!

では、お金や財産に関する生前整理のやり方をみていきましょう。

  • 銀行口座
  • クレジットカード
  • 生命保険・共済など
  • 有価証券
  • デジタル遺産(ネットバンク・ネット証券など)
  • 不動産
  • マイナスの遺産

銀行口座

いくつか銀行口座を持っている人は、できるだけまとめておきましょう。
銀行口座は持ち主がなくなると、使い込みなどを避けるために一旦凍結されます。
その上で遺産分割協議を行うことになるので、細かい口座がいくつもあると、相続するときの手続きに大変な手間がかかってしまうのです。

銀行口座の確認・整理

もし、少額しか入っていない口座や使っていない口座があれば、生きているうちに本人が引き出して、ひとつの口座にまとめておきましょう。
その際、自分の葬儀費用は現金として分けておくことをお勧めします。
万が一の場合、口座は凍結されてしまうので、遺族が葬儀費用を引き出すことはできないからです。

クレジットカード

割り引きがあるとか、ポイントが貯まるということで、ついつい複数枚作ってしまいがちなクレジットカード。
確かに便利なのですが、近年はスキミングなどで勝手に引き出されたりするケースが急激に増えています。
カードをたくさん持てば持つほど、リスクも増えることになるのです。

クレジットカードの持ちすぎに注意

一度、自分の持っているカードを見直し、不要なカードは解約しておきましょう。
利用していないのに毎月引き落とされている会費などの整理にも繋がりますよ。

また、年会費が高いカードには、損害保険などの機能が付与されていることがありますので、カード会社に確認しましょう。

クレジットカードで貯まるポイントは相続の対象になりません。
貯まっているポイントは、早めに商品に交換するか、支払いに利用してしまいましょう。

生命保険・共済など

生命保険などに入っている場合は、どこの保険会社のどんな保険に入っているのかをリストアップしましょう。
保険証券をしまってある場所も明確にしておきます。

自分を被保険者としている生命保険に会社が加入している場合、退職金、弔慰金など会社から家族がいくらもらえるかを確認しておきます。
現役の会社員なら、会社の就業規則を確認するか、人事課に問い合わせて、万が一の場合の死亡退職金や弔慰金の内容を確認しておきましょう。

有価証券

有価証券を持っている場合は、証券会社から定期的に送られてくる運用報告書を見ながら、保有資産のリストを作ってみましょう。
投資などをはっきりと覚えていない場合は、必ず証券会社に確認しましょう。

また、経営しているか、後継者に譲った会社の株式を保有している場合は、会社の登記簿謄本で発行済み株式数と名義を確認します。
友人の会社に出資しているようなケースでも、業績が好調な場合は思わぬ資産になっているようなことがあります。必ず確認しましょう。

デジタル遺産(ネットバンク・ネット証券など)

ネット銀行は通帳が発行されないため、家族には分かりにくい財産です。
利用会社名と連絡先を一覧表にしておきます。

また、ネット銀行やネット証券などはインターネットを通じて取り引きを行うので、パソコンに関するデータも明らかにしておく必要があります。
パソコン起動や、サイトに入る際に必要なパスワードをまとめた一覧表を紙で用意しておきましょう。

念のため、データやファイルはUSBなど外部記憶メディアに保存し、パスワードの一覧表とともに金庫や貸金庫に保管しておけば安心です。

不動産

まずは、所有している不動産リストを作ります。
その上で、名義、所有権か借地権か、抵当権者などの担保設定者がいないかなどを確認しましょう。

不動産は専門家に相談しましょう

不動産の相続でとても重要なのは名義の確認です。
代々受け継いでいるものだからと気にしないでいると、土地に関する利害関係者が数十人に膨れ上がってしまうことがあります。

相続人が名義変更をするときに大変な時間と手間がかかることになります。
もし、このようなことが判明したら、すぐ司法書士や弁護士に相談しましょう。
また、土地と建物の評価額を概算でいいので把握しておくことも大切です。

マイナスの遺産

ローンや借金の未返済で遺族に迷惑をかけないために、マイナスの遺産となる未返済内容を明らかにしておくことはとても大切です。
相続が発生したときにローンや借金があると、相続放棄をしない限り、ローンや借金も一緒に引き継ぐことになってしまうからです。
家族には言いにくいものかもしれませんが、未返済の内容を隠さず一覧表に記入することが重要です。

まず持っているクレジットカードの存在とローン残高、返済額を記録します。
カード番号と暗証番号を記入したメモは金庫などで厳重に保管しましょう。

また、金融会社への借金や知人への借金なども借りた金額、返済内容などを明確にしておきます。
他人の借金の保証人や、賃貸住宅の保証人になっている場合も忘れず表にしておきましょう。
現時点では負債を負っていなくても、万が一の場合、返済の義務が生じるからです。

マイナスの遺産の記録は、相続人にとって非常に大切な情報です。
これらの金額によって、相続するのか、相続を放棄するのか、限定承認などを選ぶのかの分かれ道となるからです。

お金の生前整理で最も大事なことは・・・

以上のように、お金に関する生前整理で大事なのは

  • どんな財産があるか
  • どこに口座があるのか

をきちんとリストアップしておくこと。

財産を「見える化」しておくことで、万が一の場合、相続人間の争い、少なくとも疑心暗鬼を生じさせることは防げるはずです。

生前整理で家族も笑顔に

また、遺産を所有する本人にとっても、現在の資産を効率的に運用することに繋がります。
お金の問題は日々変わっていきますので、取りまとめた一覧表は絶対ではありません。定期的に更新するようにしましょう。

この記事の監修をしたゴミ屋敷の専門家

氏名:新家 喜夫

年間2,500件以上のゴミ屋敷を片付け実績を持つ「ゴミ屋敷バスター七福神」を全国で展開する株式会社テンシュカクの代表取締役。ゴミ屋敷清掃士認定協会理事長。