2018年、遺品整理業界を取り巻く環境に、いくつか変化が起きました。
高齢化社会を迎え、遺品整理業に対して多くの問い合わせがあるのと同時に、有名人・芸能人の方からも「遺品整理」あるいは「終活」という言葉が聞かれるようになっています。
ここで、2018年の遺品整理に関するニュースをまとめてみましょう。
目次
日本の遺品整理業、年間売上高5000億円超
遺品整理士認定協会の調べにより、約8000の加盟企業の年間売上高は合計で約5080億円にも上ると発表されました。
これは、高齢化と人口減少が進み、需要が拡大していることが理由とみられています。
日本の2017年の出生数は94万6060人、死亡者数は134万433人で、7年連続で人口が減少しています。
今後50年間で、日本の総人口は3分の1減る可能性があるという試算もあり、我が国の人口減少傾向に歯止めがかかる気配がありません。
このような状況から、遺品整理のニーズは今後ますます高まっていくと思われます。
ネットセキュリティ会社がデジタル遺品整理サービスを開始
2018年7月、ネットセキュリティ事業を行う「クロスアンドクラウンセキュリティインテリジェンス合同会社」が、デジタル遺品整理サービス『ミチノリ』を開始しました。
パソコンやスマホなど、近年のデジタル機器発達に伴い、人が亡くなった後に残る「デジタル遺産」の扱いが問題となっています。
デジタル遺産は、思い出の画像や動画、アドレス帳などプライベートなものだけではありません。
相続手続きの中で必要となるネット証券会社、ネット銀行や仮想通貨口座情報など、その存在を早急に把握し取引状況を確認しなくてはならないケースが急増しています。
こういった状況に対応するため、同社では、相続トラブルの回避や、取引口座不明ゆえの損失などを避けられるよう、データ保護と調査を行います。
サービス内容は、パスワード解除や、画像・動画など各種ファイル、その他ネットサービスアカウントなどの内部データ抽出・調査など。2018年7月25日より東京都港区、大阪府大阪市の二拠点でサービスを行っています。
デジタル遺品セミナー&データ復旧見学会が開催
5月、デジタルデータソリューション株式会社、一般社団法人デジタル遺品研究会ルクシー、日本デジタル終活協会が3社合同で、「第1回デジタル遺品セミナー&データ復旧見学会」を開催しました。
「デジタル遺品」の問題点についての解説や、「デジタル遺品」の時間経過ごとに注意すべきポイントや発生し得る問題などについての講義や、デジタル遺品のスムーズな相続方法の紹介など、現代ならではのデジタル遺品問題に切り込みました。
また、デジタルデータソリューション株式会社における「デジタル遺品」の復旧現場となるデータ復旧ラボの見学も実施し、デジタル遺品に関する知識や理解を深めました。
故人のスマートフォンやインターネット上に残された「デジタル遺品」に関する依頼が急増しているだけにニーズも多く、7月には第2回、第3回セミナーも開催されました。
「終活」の認知度が7割超
経済産業省公認団体・全国石製品協同組合(全石協)が、昨年11月、「“終活”に関するアンケート調査」を行いました。
対象は全国の40代~70才以上の男女2370名で、インターネットによって実施されました。
この結果によると、終活について「知っている」48.1%、「聞いたことがある」30.3%を合わせると78.4%と、8割近くの人が「終活」という言葉を知っているということがわかりました。
これは、「知らなかった」の21.6%を大きく上回る数字で、終活が一般的に定着してきていることをうかがわせます。
ただ、実際に終活を行っている人は11.7%と少なく、2年前の10.9%からほぼ横ばいでした。
しかし、年代別で見ると、終活を行う人は60代で3.5ポイント上昇、70代で8.5ポイント上昇と、年代が上がるにつれて実行している割合が高くなっています。
「終活」は、言葉だけが独り歩きするようなムーブメントの段階を超え、特にシニア層にとって身近な問題になっているようです。
今後、高齢化はさらに進んで行きます。終活の情報収集や進め方がさらに理解されていけば、終活を実際に行う人も増えていくのではないでしょうか。
遺品整理がテレビ番組のテーマに
11月18日、TBS系ドキュメンタリー番組「ゲンバビト」で、遺品整理とごみ屋敷の片付けが取り上げられました。
ごみ屋敷の片付けでは、大量のごみで埋もれて生活ができなくなり、引っ越した40代女性のマンションを取り上げています。
2009年から放置したままの家を片付けることによって、依頼人はようやくマンションを引き払うことができました。
遺品整理では、亡き両親の思い出の品でいっぱいの実家を片付けるお話。
依頼人は母の死を受け入れられず、家を手放したくない気持ちからも、半年間手をつけることができなかったほどでした。
それでも前へ進もうと心を決め、大切な思い出の品だけを残すことにしたそうです。
そんな思い出の品を丁寧に整理したり探したりする遺品整理業者の姿を取り上げ、遺品整理の作業現場や、業者の取り組みを描いています。
有名人・芸能人の遺品整理2018
有賀さつきさん(アナウンサー、享年52)
女子アナブームの火つけ役の一人、元フジテレビアナウンサーの有賀さんは、2018年の1月30日、逝去されました。
有賀さんは、闘病中である事実を周囲の人々に一切公表せず、亡くなる1ヶ月前まで仕事を続けていました。死後は死因も非公表となっています。
また、自分の死期が近づいていることを感じたとき、銀行口座など自分しかわからないものをきちんと整理していたそうです。
終活の概念が広まってきている今だからこそ、最後まで人に心配や迷惑をかけないように徹底した有賀さんを見習いたいものです。
樹木希林さん(女優、享年75)
2018年9月15日、がんで亡くなった女優の樹木希林さん。樹木さんは、2013年に「全身がん」であることを告白し、世間を驚かせました。
さらに、2016年には「死ぬときくらい、好きにさせてよ」という衝撃的なキャッチコピーの新聞広告に登場し、世間を二度びっくりさせました。
樹木さんは、この広告の中で「死を疎むことなく、死を焦ることもなく。ひとつひとつの欲を手放して、身じまいをしていきたいと思うのです。」と、終活宣言をしています。
そんな樹木さんが行った終活は、遺影の撮影など葬儀関連のこと、断捨離、死に場所を決めることでした。
樹木さんは、娘婿である俳優・本木雅弘さんに、遺影は撮影済みと伝えていたそうです。
その遺影は、少し斜めから撮られた紺色の着物姿でした。
断捨離に関しては、TBSの番組「ぴったんこカンカン」で自身の自宅を公開。
すでに断捨離は行われ、家具やテーブルなど必要最低限のものがあるだけのスッキリした部屋でした。
女優として受賞したトロフィーを照明として使用したり、拾ったものも活用したりしており、リユースやリサイクルを上手に取り入れた断捨離をしていたようです。
また、生前、慣れ親しんだ自宅で死にたいと希望していた樹木さん。
亡くなる直前は病院に入院していましたが、「家に帰りたい」と希望。24時間見守れる体制を整えた上で帰宅したところ、その日に容体が急変しました。
家族に看取られてこの世を去った樹木さん,
自身の最期の時を予感したのでしょうか。
穂積隆信さん(俳優、享年87)
味わい深い脇役として活躍した俳優・穂積さん。
娘との葛藤をつづったベストセラー「積木くずし 親と子の二百日戦争」でも知られています。
著書の印税収入が3億円を超えたといわれ、当時、俳優業はもとより教育評論家としての所得も億単位で入っていた穂積さん。
しかし、詐欺事件に巻き込まれて家族は崩壊し、離婚に至る過程ですべてを無くしてしまっていたのです。
のちに再婚したものの、妻が脳梗塞でケアハウスに入居、最後の8年は一人暮らしをしていました。
さらに、年金をスタッフが着服して未納となっていたため、年金を受給できないことも発覚。生活保護を受けることを余儀なくされました。
その際、安いアパートに住み替えるにも年齢で苦労するなど、現代の典型的な高齢者問題に苦労した晩年でした。
穂積さんは2018年10月19日、胆嚢ガンのため、神奈川県内の病院で亡くなりましたが、最期を見とったのは、唯一の肉親である姪と最後の付き人、そして元付き人の3人でした。
亡くなる2年前からの本人の希望で遺体は献体され、葬儀や告別式は行われなかったということです。
津川雅彦(俳優、享年78歳)・朝丘雪路(俳優、享年82歳)夫妻
2018年8月に亡くなった津川雅彦さんと、4月27日に亡くなった朝丘雪路さんの「合同葬お別れの会」が、11月21日、東京都港区の青山葬儀所で行われました。
共演者や映画製作の仲間、各界の著名人、またファンが多数参列しました。
津川さんの「葬儀は華やかにしてほしい」という意向を受け、祭壇はカーネーションなど、ピンク、紫、黄色の4000本もの花々で飾られました。
芸能界きってのおしどり夫婦と言われたお二人。花とともに、穏やかな表情を浮かべた2人の写真が並べられ、参列者らは別れを惜しみました。
まとめ
さまざまなニュースを見てわかるのは、「人は一人では死んで行けない」ということです。
どんな人も、何ひとつものを持たずに去ることはできませんし、誰一人の手も煩わずに逝くことは不可能なのです。
さらに、希望通りの最期を迎えるためには、周りの人のサポートが必要であり、生前整理や終活が重要になってきます。
元気なうちに考え、家族としっかり話し合っておきましょう。