自宅で、誰にも看取られることなく息を引き取る「孤独死」が増えています。
東京都監察医務院の統計によると、2015年に、東京23区内において孤独死した65歳以上の人は、3116人にものぼりました。前年よりも230人増えており、2003年にこの統計を取り始めて以来、初めて3,000人を超えました。2003年と比べると、なんと2.1倍にもなっています。
たった1人で旅立つ「孤独死」。
一番問題なのが、死後、何日も遺体が発見されないことです。郵便受けに新聞や郵便物が溢れ、異臭が漂い……という風景は、ニュースなどで見たり聞いたりしたことのある人も多いでしょう。もし、そんな場面に遭遇したら? 離れて暮らす身内がそうなったら?
今回は、そんな「孤独死」について考えていきます。
目次
孤独死が増えたのはなぜ?
全国で、年間3万人とも言われる孤独死。なぜ起こってしまうのでしょうか。
主に次の要因が挙げられます。
- 現代日本の社会背景
- 近隣住民や地域コミュニティとの付き合いの減少
- 日常生活の困難
現代日本の社会背景
長く続く不景気や、非正規雇用の拡大によって生活が不安定な人が増えています。
自分1人食べて行くので精一杯で、結婚など無理と、50歳になった時点で未婚である「生涯未婚率」は上昇。
また、既婚でも子供を持ち育てることが難しくなり、少子高齢化に拍車がかかっています。
さらに、核家族化が進行しています。家族から離れ、遠方で暮らしているために、親族との関わりが、昔ほど密でなくなってきました。
会ったり連絡を取ったりする機会が少ないと、家族の体調を感じ取ることができません。こういったことが孤独死を招く一因なのです。
近隣住民や地域コミュニティとの付き合いの減少
昔は、近所の人と立ち話をしたり、地域の活動をしたり、ご近所付き合いが頻繁にありました。お互いに声を掛け合い、高齢者や子供も、近隣コミュニティで見守られていたのです。
しかし、現代では、マンションなど賃貸住宅に住む人が増え、ご近所付き合いが薄くなりました。
隣にどんな人が住んでいるか知らないのも珍しくありません。周辺との関わりが薄くなることで、孤独死が増加しているようです。
日常生活の困難
孤独死のあった家は、ゴミ屋敷化しているケースが多々見られます。高齢になると、体を動かすことが億劫になります。
また、足腰が弱り、ごみを捨てに行くことが困難になるため、ゴミ屋敷になりやすいわけです。
体調を崩しても病院に行くことが難しくなり、次第に家にこもるようになります。これらが負のスパイラルとなり、孤立してしまうのです。
あなたは大丈夫? 孤独死を招きやすい人とは
孤独死は、亡くなる前から始まっていることが多いようです。
あなたは孤独死しやすい? チェックシート
孤独死を招く可能性のあるポイントを挙げてみましょう。
あなたは以下の項目に、どれだけ当てはまるでしょうか?
1. | 1人暮らしですか? |
---|---|
2. | あなたは男性ですか? |
3. | 自炊はせず、外食やコンビニなどで買った食事が中心ですか? |
4. | 部屋の掃除など家事が苦手、怠りがちですか? |
5. | 生活スタイルは不規則ですか? |
6. | 新聞や牛乳など、毎日配送されるものを取っていますか? |
7. | 郵便受けを毎日確認せず放置していますか? |
8. | お付き合いしている恋人はいますか? |
9. | 仕事以外で一緒に出かけるような友人・知人がいない方ですか? |
10. | 無職か求職中、またはSOHOなど人に会わないような仕事をしていますか? |
11. | 家に人を招くのは嫌いですか? |
12. | 外に出るより、家にいるほうが好きですか? |
13. | SNSやLINEなどでの交流はしないほうですか? |
14. | 近所の人については、ほとんど知りませんか? |
15 | 誰かと一緒に過ごすより、1人の時間の方が大切だと思いますか? |
16. | ヘビースモーカーですか? |
17. | お酒が好きですか? |
18. | 自分は肥満かなと感じていますか? |
19. | 睡眠時間は十分に取っていますか? |
20. | 便秘、高血圧、糖尿病などの体調不良や持病がありますか? |
いくつくらい当てはまりましたか?
当てはまる数が多いほど、孤独死するかも知れない可能性が高いといえます。
実際に孤独死した人に多い傾向は?
1人暮らしの男性
孤独死は、女性より男性の割合が高い傾向にあります。
配偶者との離婚や死別、別居などで1人暮らしとなった時、家事や炊事が出来ないために生活の質が著しく低下する人は、男性に多いのです。
また、生活が不規則になったり、衛生状態が悪くなったりして健康を損ねることもあります。
こういった生活クオリティの低下が、孤独死の入り口となるのです。
苦手だからと掃除をしなくなり、家がゴミ屋敷になるケースも。山のように溜まったゴミが崩れ落ちて圧死する事故も起こっています。
こういった問題は、高齢者だけでなく、働き盛りの中高年男性も注意が必要です。たとえ既婚であっても、配偶者が亡くなって「おひとりさま」になることがあります。
つまり、現代においては、誰にとっても孤独死の可能性が潜んでいるのです。単身世帯が増えることによって、今後も孤独死の数はますます増えていくと予想されています。
人との関わりが苦手な人
他人とのコミュニケーションが得意でない人、手助けが必要な時に話を聞いてくれたり、頼ったりできる友人がいない人も要注意です。
さらに、家族と同居しておらず、疎遠になっている場合はなおさらです。
社会と接しなくなり、外に出ない生活を送っていると、孤独死の発見が遅れる可能性も高くなってしまいます。
持病がある人、生活苦で困窮している人
最近、景気が回復してきたと報道されていますが、不況にあえぎ倒産する会社やリストラを行う会社もまだまだ多く、貧困に陥っている人は少なくありません。生活苦から生活保護に頼る人も増加傾向にあります。
また、年齢が高くなるほど持病を抱えている人も多くなります。病気によって社会復帰が難しく、社会と関われなくなっていくわけです。さらに、経済的理由から、健康を維持することも困難になっていきます。
こういったことから、閉鎖的な生活をせざるを得なくなり、孤立しやすくなってしまうのです。
孤独死はどのように発見されることが多いのか
孤独死が発覚するのは、近隣住民など一般の人からの通報からがほとんどです。
- 部屋から異臭がする
- 新聞や郵便が郵便受けにたまって溢れている
- 配達の牛乳や給食サービスを数日に渡り利用した様子がない
- ベランダに、何日も洗濯物が干しっぱなしになっている
- 害虫が多数発生している
などのことから発見されることが多いようです。
もし、あなたが孤独死を発見したら、まず真っ先に警察に通報しましょう。
その際、ご遺体や部屋の中のものに触れたり動かしたりしてはいけません。病院以外で人が亡くなった場合、警察が現場を調べ、事件性がないかを確認しなくてはならないからです。
むやみに現場のものを動かしてしまうと、場合によっては事件性を疑われ、証拠隠滅の疑いをかけられてしまうことがあります。
ご遺体を目にしたショックで動転していても、遺体や周りのものには絶対に触れず、速やかに警察へ連絡しましょう。
孤独死が発見された後の流れは?
では、孤独死が発見された後どのようなことが行われるのか、ご紹介しましょう。
- 遺体の発見
- 現場検証・検死
- 警察が親族を調査
- 遺品の受け取り
遺体の発見
通報により、住宅管理会社などの立ち会いのもと、部屋の鍵を開け、警察が遺体確認にあたります。
現場検証・検死
警察によって、現場検証が行なわれます。また、家宅捜索をおこなって事件性の有無が判断されます。この時、金品、貯金通帳、印鑑などは一時預かりとなります。
その後、死因を調べる検死が行われ、本人確認が難しいほど遺体の損傷が激しい場合は、DNA鑑定などにより身元の確認を行なうこともあります。DNA鑑定の結果が出るまでは約2週間ほどかかります。
警察が親族を調査
警察は、住民票や賃貸契約書から故人の親族を調べ、血縁関係が濃い順(親子→兄弟→親戚)に連絡をして行きます。
遺族が判明すると、警察から連絡が来ます。引き取りを承諾するか、拒否するかを尋ねられます。
遺品の受け取り
遺族は、警察に出向き、故人が死亡した状況や今後の手続きについて説明を受けます。
その後、身元の確認がされていれば、死体検案書とともにご遺体が引き渡されます。
さらに警察による家宅捜索が行なわれ、事件性がないと判断されれば回収された現金・通帳・遺品など、家宅捜索の際に預かりとなっていたものが返却されます。
もしも、身内が孤独死してしまったら……
もしも、あなたの身内の方が孤独死してしまったら、どうすればよいのでしょうか。
警察や不動産会社から遺体発見の連絡を受けたあと、やるべきことを知っておきましょう。
- 葬儀・火葬の準備
- 部屋の清掃
- 手続き・届け出
- 遺品整理
葬儀・火葬の準備
警察による遺体確認が済んだら、葬儀の手配を行います。警察での手続きなどの合間に、葬儀社を探し、決めておくとよいでしょう。
警察で死体検案書を受け取ったら、数枚コピーをしておきましょう。何通か必要になる場合があります。
ご遺体は警察で解剖された後、自治体や葬儀社の霊安室へ運ばれることになります。搬送や解剖の費用は自治体が負担してくれますが、地域によっては遺族が負担するところもあるようです。
また、遺体の状況を踏まえて、葬儀の内容を決めなくてはなりません。
孤独死では、遺体の損傷が激しい場合が多いため、亡くなった地区で火葬されるのが一般的です。この場合、葬儀はお骨のみで行われる「骨葬」となります。
火葬に関しては、住民票のある地区で火葬する場合、無料または低価格になる自治体も多いですが、他の地区で火葬する場合は、搬送費用がかかってしまいます。事前に確認しましょう。
火葬の際には、死亡届の提出が必要です。通常、葬儀社が手続きを代行してくれますが、孤独死では遺族による提出を求められるケースもあります。その場合は、死体検案書を持参し、死亡の連絡を受けた日から7日以内に死亡届を提出します。
まずは、早急に葬儀社を探すことが重要です。わからないことは、担当者と相談しながら進めます。
部屋の清掃
葬儀を終えたら、すぐに手配しなくてはならないのが部屋の清掃です。
孤独死の場合、害虫の発生や悪臭、感染症などの問題から、専門業者による特別な清掃が必要です。警察の家宅捜索が済み、立入り許可が出たら、専門業者に依頼し、見積もりをしてもらいましょう。
業者が室内の状況を確認し、遺品の量や汚れの程度、室内の汚染状況(悪臭や体液などのシミ)を確認し、作業内容や日数、費用を決めます。遺族が現場に行くことは心的ダメージを伴うことが多いので、同行は必要ありません。
特に、賃貸契約しているアパートやマンションは、入居者が亡くなったら速やかに明け渡さなくてはなりません。
また、たとえ持ち家であっても、近隣住民に迷惑をかけている可能性が高いため、早急に行なわなくてはなりません。なるべく早い段階で部屋の清掃を終えるようにしましょう。
手続き・届け出
個人の名義で契約していたものは、名義変更や解約が必要になります。特に、世帯主の変更や公共料金などに関しては、葬儀後できるだけ早く行いましょう。
- 住民票…世帯主の変更届けです。死後14日以内に市区町村役場に届け出ます。
- 公共料金…管轄の電気会社、ガス会社、水道局に届け出て名義変更または解約します。
- 固定電話…NTTなど契約している会社に届け出ます。
預貯金や不動産、株式、自動車などは、故人の死亡直後から相続人の共有財産となるため、名義変更は相続が確定してからしかできません。遺言書などない場合がほとんどなので、まずは相続人間で協議を行い、相続を確定する必要があります。
年金や健康保険の状況も調べ、死亡を届け出なくてはなりません。国民健康保険に加入していた場合は、葬儀を行なった人に「埋葬費」が支給されます。
また、クレジットカードやインターネット関連、携帯電話などの解約も必要となります。
遺品整理
部屋の清掃と併せて、生活用品の処分と遺品整理を行います。相続に関わるものや、残しておきたいもの、必要なもの不用品を仕分けしなくてはなりません。
しかし、個人で遺品整理を行なうのは大変なことです。また、孤独死の現場に行くだけでも耐えられないという方もいるでしょう。
ただでさえというショックが大きい時に、遺品整理を自分で全部やろうとするのは非常に困難です。そんな時、心強い味方となってくれるのが遺品整理業者です。
プロは、つい見逃しがちな書類などもしっかり仕分けてくれます。プロに相談して、安心・早急に遺品整理するとよいでしょう。