誰にも気づかれないまま亡くなる「孤独死」。
死後かなりの時間が経ってから発見されるケースも少なくありません。
NHKが2010年に放送した「無縁社会-無縁死3万2千人の衝撃」は、孤独死、所在不明高齢者など社会的孤立状況にある人々の姿を伝え、社会に大きな衝撃を与えました。
それから20年が経とうとする現在、家族のつながりや隣近所との付き合いはますます希薄になってきています。
今や、孤独死は、高齢者だけでなく誰にでも起こりうる身近な問題になっているのです。
一人暮らしの高齢者を家族に持つ人、また、本人は、どのようなことを心がければ孤独死を防ぐことができるのでしょうか。
目次
日本の孤独死問題
日本人の社会における孤立問題は、国内だけでなく、世界的に見ても深刻です。
先進35カ国が加盟するOECD(経済開発協力機構)の調査によると、友人や同僚など家族以外の人と「全く、あるいはめったに付き合わない」と答えた人の割合は日本が最も高く、15.3%を占めました。これは、2.0%で最下位であるオランダの8倍弱もの数字となっています。
なかでも、高齢化が進行する日本では、高齢者の孤独死の問題が年々深刻化しています。
東京都福祉保健局「東京都監察医務院」の資料を見ると、東京23区内の「一人暮らしで65歳以上の人の自宅での死亡者数」は、2003年には1451人でした。
しかし、その後、概ね右肩上がりで増えており、2015年には2倍以上の3127人に上っています。
この数を単純計算すると、65歳以上の孤独死者数は、全国で年間およそ3万人と考えられます。
孤独死に多いのが「65歳以上の一人暮らし」です。
しかし、現在は夫婦で暮らしている世帯も安心はできません。
いずれ単独世帯になる可能性が高いからです。
内閣府の「高齢社会白書(2015年)」では、65歳以上の単独世帯数は約624万世帯、夫婦のみの世帯数が約747万世帯となっており、過去30年ほどの間にそれぞれ5〜7倍に増えています。2035年には、世帯主が65歳以上の単独世帯数は約762万世帯になるとみられています。
高齢者の孤独死問題は、急速に進む高齢化の中でさらに悪化することが懸念されています。
孤独死は、どのように発見される?
孤独死の発見は、ほとんどの場合、近隣住民などの通報によるものです。
部屋から異臭がする・ベランダに洗濯物が干しっぱなしになっていることから近隣住民が異変に気づいたり、新聞の配達員などが、新聞や郵便が郵便受けにたまって溢れていることなどから通報することが多いようです。
孤独死の遺体が発見されると、警察が部屋の鍵を開け、住宅管理会社などの立ち会いのもと遺体を確認します。
さらに、現場検証と家宅捜索を行い、事件性があるかどうかを判断します。
また、医者により、死因を調べる検死が行われます。
その後、警察は、住民票や賃貸契約書から故人の親族を調べ、連絡します。
連絡を受けた遺族は、警察署で、故人が死亡した状況や今後の手続きについて説明を受けます。
身元の確認がされていれば、死体検案書とともに遺体が引き渡されます。
また、事件性がないと判断された場合、家宅捜索の際に預かりとなっていた現金・通帳・遺品などが返却されます。
孤独死が親族や周りに及ぼす影響は?
先に挙げた孤独死発見の過程では、遺族だけでなく、賃貸住宅の大家さんや管理会社、近隣住民にも大きな影響を及ぼします。
遺族
残された遺族は、孤独死という結果を招いてしまったこと、また、すぐに見つけてあげられなかったことや、最後を看取ってあげられなかったことに対して、深い後悔の念を抱くことが多いようです。
特に、長く見つからなかった場合には、現場がひどい状態になっていることが多く、大きなショックを受けることも。
さらに、警察が複数人数で現場検証に来ることで近所の目にさらされ、苦い記憶として刻まれることになります。
また、賃貸住宅で亡くなった場合、補償金・原状回復費として高額請求をされる場合があります。
亡くなった場が分譲マンションや一戸建ての場合、「事故物件」という扱いになると、相場で売却することは難しくなります。
家を相続した遺族は、処分できない空き家の固定資産税や都市計画税、マンションの管理費や修繕積立金を支払い続けなくてはなりません。
また、遺品整理や不用品の処分などを依頼する場合、悪徳業者から高額請求されるようなケースもあります。
住居の家主
故人が孤独死したのが賃貸住宅だった場合、家主や管理会社にも大きな負担がかかります。
部屋の清掃や遺品の処分、原状回復工事には多大な費用がかかることがあります。
しかし、遺族が引き取りを拒否したり、保証人と連絡が取れなかったりした場合、部屋の現状回復から遺品処理、ゴミ処理に至るまで、すべてを大家さんや管理会社が背負うしかなくなってしまいます。
また、孤独死した住居の状態により、近隣住民への対応もしなくてはなりません。
さらに、その部屋が「事故物件」になれば、次の賃借人が入らず、長期間にわたって空き室となり、大きな損失をこうむることになります。
分譲マンションなどでは、近親者が相続したものの、管理費などが滞納されてしまうこともあるようです。
近隣住民
孤独死が起こると、近隣にも大きな影響を及ぼします。
現場の近隣住民は、腐臭や害虫の発生などにより、衛生上も、また心理的にもストレスを受けることが多いと言えます。
また「ここで孤独死があった」という記憶は、精神面でのストレスになることもあります。
賃貸アパートなどの場合は、建物自体が「事故物件」とされ、風評被害を受けることもあるようです。
孤独死を起こさないためには?
遺族にも、周りにも大きな影響を及ぼす孤独死。
孤独死を防ぐには、どのような対策をすればよいのでしょうか。
家族とこまめに連絡を取る
孤独死を防ぐ最大の方法は、家族と連絡を取り合うことです。
普段から、積極的に電話で連絡を取り合いましょう。
テレビ電話などもいいですね。
また、スマホやパソコンを使う高齢者も増えているので、メールやLINEなどを利用するのも良いでしょう。
特別な用事がなくても、普段から連絡を取っていると、異変に気づきやすくなります。
もし不幸にも孤独死が起こってしまっても、長期間気づかずにいる最悪の事態を防ぐことができます。
「見守り家電」を利用する
仕事に子育てにと忙しい子供世代に遠慮して、なかなか連絡しづらい高齢者もいるかもしれません。
高齢者の生活を見守る方法として、カメラを設置するものがありますが、監視されているような感じで抵抗がある人も多いようです。
そんな場合は「見守り家電」を利用しましょう。
「見守り家電」とは、遠隔地に住む家族に、様子を伝えられる家電です。
たとえば、コンセントで消費電力を計測し、普段と違う不自然な電気使用パターン(長時間のON/OFF)を検知した場合は、家族に知らせるものや、無線通信機を内蔵した電気ポットを使うことで、遠くに暮らす家族の安否確認ができるものなどがあります。
これらの家電は、いちいち電話をしたりメールをしたりすることなく、日常生活を送っているだけで元気である通知がいくため、お互いに気を使うこともなく便利です。
訪問サービスを利用する
近年、高齢者向けに日用品や食事、クリーニングなどの宅配サービスなどが増えています。
このような「自宅に来てもらえるサービス」を利用していると、異変があったときに気づいてもらいやすくなります。
また、訪問介護などを受けていれば、何かあったときにすぐに気づいてもらうことができ、もしも家の中で転倒して動けなくなったときにも助けを呼んでもらえます。
自治体の制度やサービスを利用する
孤独死の発生を防ぐため、国や自治体でもさまざまな対策が講じられています。
法制面では、高齢社会対策基本法などにより、総合的な高齢者問題への取組みが進められています。
また、2017年10月25日には「新たな住宅セーフティネット制度」が施行され、自治体と民間が協力して高齢者などの見守りを含むサービスを実施しています。
また、全国で、自治体・民生委員や社会福祉協議会、NPO団体、自治会・町内会、民間事業者などが連携した見守り活動が増えています。
ボランティアが定期的に戸別訪問や電話などをしたり、配食サービスや郵便、新聞、宅配などの配達事業者が通常業務の中で異常がないか見守るようなものもあります。
居住自治体の地域で行っている孤独死対策を知り、利用しましょう。
まとめ
高齢化が進み、孤独死の問題が深刻になっている現代。
今は家族に恵まれ、職場で活躍していても、いつか自分もそうなってしまうのではないかという不安を、多くの人が抱えているのではないでしょうか。
孤独死は、家族や周りにも多大な影響を及ぼします。
また、家族の悲しみやショックにつけ込む悪徳業者もあとを絶ちません。
ぜひ早いうちから対策をしておきましょう。