最近、「実家の片づけ」「整理術」といった書籍が多数出版されています。
「親の家を片付ける」を略した「親片(おやかた)」などという言葉も生まれていますね。
久しぶりに実家に帰ると、モノが溢れていて驚くことはありませんか?
単純に“汚屋敷”になっているということ以外にも、「介護などの準備として、家を整えたい」「親の健康状態が心配なので、暮らしやすい家にしたい」「遺品整理に困っている」など、実家の片付けをしなくてはならない理由はたくさんあります。
親御さんの家の片付けも、いわば生前整理のひとつ。
そこで親の家・実家をどう片づけるかについて考えてみましょう。
目次
「実家の片付け問題」はなぜ起きるの?
子どもが就職や結婚などで親元を離れ、同居をせずに生活していく核家族化が進んでいます。
そのため、家がだんだん「汚屋敷」になっていくのがわかっていても、遠方に住んでいたりすると、なかなか片付けを進めることができません。
そこで、親に何かあったときや親が亡くなってから、実家の片付け問題に直面する人も多いでしょう。
近年は平均寿命が延び、高齢者の一人暮らしも増えてきました。同じ場所での生活が長くなると、モノは知らず知らずのうちに増えていきます。
また、高齢になると体力が衰え、掃除や片付けが億劫になります。
ごみ出しに必要な身体能力が低下し、不用品かどうかの判断能力も衰えてきます。
こういった理由から、どんどんモノが増え、片付けもどんどん厄介になっていくのです。
さらに、認知症などを発症してしまうと、片付けはますます困難になっていくでしょう。
こういった状況から、生前整理をしないまま亡くなる人は多く、家族は親が亡くなった後に残された「汚屋敷」に呆然とする、という事態になるわけです。
実家の片付けの必要性
- リスクを減らし、健康な生活を送るため
- スムーズな相続のため
リスクを減らし、健康な生活を送るため
高齢者のいる家は、モノを減らしてスッキリとした部屋づくりを心がける必要があります。
モノが多いと掃除がしにくいため不潔になりやすく、ウイルスや雑菌の温床となり、感染症などの心配が高まります。
体力の衰えている高齢者にとっては、健康を損ねる原因となるのです。
モノが多いと換気が悪くなり湿気がこもりやすくなるので、カビが発生しやすいといったリスクもあります。
また、ごちゃついているために家の中でモノをなくしやすくなります。
モノが見つからないために、また新しくモノ買う、という悪循環にも陥ります。
年を取ると、ちょっとしたものにもつまずきやすくなるので、床に落ちているペットボトルや、何かのコードなどに足を引っかけて転倒する高齢者は多いようです。
打撲程度で済めばいいのですが、骨折して入院、そこから痴呆症になるといった例もあります。
そして、散らかった部屋で生活していると、無意識にイライラしやすくなります。
肉体的な側面だけでなく、精神衛生上も、スッキリした部屋で生活することは大切です。
家の中でのリスクを低くし、健康に長生きしてもらうためにも不用品やゴミを片付けましょう。
スムーズな相続のため
親御さんが遺言書などを残さずに亡くなった場合、遺産相続のために資産調査が必要になります。
そのためには、家を片付けて遺品整理をしなくてはなりません。
遺産相続の申告には期限がありますので、すぐにでも片付けて遺産の内訳を明確にする必要があります。
そんなとき、家が「汚屋敷」になっていると、ただでさえ時間がかかる片付けなのに、さらに急がなくてはならなくなります。
また、住居が賃貸であった場合などは特に、契約の問題から早めに片付けなくてはならないケースがほとんどです。
こういった場合、自分たちで全てを片付けるのは難しいのと同時に、遺品の整理もしなくてはならないので、遺品整理業者などを利用するのがお勧めです。
経験豊富な遺品整理業者は、モノを片付けるだけではなく、床に落ちている封筒1枚も見逃さず、全て確認して大切な書類などを仕分けします。
業者に遺品整理を依頼して、誰も存在を知らなかった遺産や遺言書などが出てくる可能性もあります。
もし遺産に不動産があった場合、遺産相続は難しくなります。
遺産を配分するには、不動産の価値を調べ、具体的な金額として出さなくてはならないため、調査に時間がかかります。
また、不動産をそのまま引き継ぐのか、何らかの形で分配するのかも決めなくてはならず、遺産分割協議にも時間がかかることになるわけです。
遺品整理の場合だけでなく、親御さんがご存命中であっても片付けを依頼することはできます。
そのときの状況に応じて、業者を利用することも選択肢に入れておくとよいでしょう。
実家の片付け方① 捨てる方法
では、実際に実家を片付ける方法をみていきましょう。
- 実家に残している自分のものを捨てる
- 片付けの終わりをイメージする
- 家の中を「見える化」する
- 部屋ごとに片付ける
- 完璧を目指さない
実家に残している自分のものを捨てる
実家に、自分の持ち物を置いている人は少なくないでしょう。
もともとの自分の部屋に、趣味のものや洋服、本、人形やぬいぐるみなど、捨てたくないけれど自分の家には置けない、というモノはありませんか?
また、子供の頃の作品や、テスト、制服などを思い出として親御さんがしまっていることもあります。
まずはこういったモノから整理を始めましょう。
これなら、自分の部屋やモノを片付けるだけなので、抵抗は少ないはずです。
片付けの終わりをイメージする
片付ける目的、そして片付けた結果どうなるかということを具体的にイメージしましょう。
たとえば「キレイな家にする」「安全な家にする」といっても、“キレイ”や“安全”の基準は人それぞれです。
漠然としたイメージではなく、「窓を開けて部屋が明るくなるように、モノをなくしましょう」とか、「モノにつまずいて転ばないように、床には何も置かないようにしましょう」というように、具体的な理由や結果をイメージします。
すると、どこまで何をどうすればいいのかがハッキリし、終わりがないように思えていた片付けに明確な目標ができます。
家の中を「見える化」する
モノを整理して、捨てて、片付けた後、親御さんにはどのように過ごしてもらえばいいのでしょうか?
せっかく片付けても、またモノが溜まってしまえば元の木阿弥です。
「生活しやすい部屋」とは、実は「見た目が美しい部屋」ではありません。
これから年を重ねていく親御さんは、体力や認知力が低下していきます。
そういった高齢者が生活しやすい部屋は「使いやすい部屋」「わかりやすい部屋」です。それには、家の中を「見える化」するのが有効です。
たとえば、中身が見えないタンスをやめ、透明なケースに洋服や小物を入れるようにします。
こうすれば、すぐ何がどこにあるかわかるようになります。
中身が見えないタンスや収納用品を引き続き使用する場合は、引き出しにラベルを貼り、何が入っているかを書いておきます。
そうすれば、どこに何があるか一目瞭然になります。
こういった「見える化」は、正直なところオシャレではありませんし、見た目もいいとは言えません。
しかし、高齢者にとって最も大切なのは見た目ではなく、認知能力が低くなっても暮らしやすいことです。
モノの位置を把握しやすくしておけば、そこにまたモノをしまえばいいので、再び散らかることもありません。
今は、オシャレなラベルが作れるラベルライターもありますし、100均一でもちょっとオシャレなラベルが買えます。
こういった小物を活用して、親御さんと一緒に楽しみながらわかりやすい部屋をつくりましょう。
部屋ごとに片付ける
モノを捨てるときは、分別して可燃、不燃などに分けなくてはなりません。
また、粗大ごみなどもありますよね。そのため、モノの種類別に整理し、捨てるというのが本来は合理的です。
しかし、親御さんの家が広かったり、遠方に住んでいて頻繁に通えない場合、家じゅうにあるモノを可燃、不燃ごとに分けて捨てるのは大変な作業です。
少しずつしか進められないので、いつまでやっても片付かないという状態にもなりかねません。
そこで、一部屋ごとに片付けていきましょう。
一部屋だけを片付けるのであれば、そこまで時間はかかりません。
この方法なら、断続的に片付けを続けることができます。
完璧を目指さない
他人の目からはくだらない、価値のないものに思えても、本人にとっては大切なものもあります。
親御さんが迷わず「捨てたくない」と言うモノや、同じモノが大量にあるモノ、また、その人の人生に通じるモノは、触れずにそのままにしておきましょう。
なかには、「どうしてこんなものが大事なの?」と疑問に思うようなモノもあるでしょう。
でも、その価値は、持ち主本人にしか分からないもので、場合によっては人生に関わるほどのモノであることもあるのです。
そういったモノを「こんなもの、あっても仕方がないでしょ」と一刀両断することはNGです。
無理に捨てて部屋がスッキリしたとしても、そのために親御さんの生きがいや潤いを奪うことになっては本末転倒だからです。
実家の片付け方② 捨てない方法
片付けといえば、とにかく「捨てる」こと、と思いがちですが、それとは真逆の「捨てない」片付け方もあるのです。
- 捨てずにどんどん詰め込む!
- 親御さんとのコミュニケーションを大切にしながら進める
捨てずにどんどん詰め込む!
本来、親の家を片付ける目的は、安全で衛生的な生活をしてもらうこと。
それならば、安全と衛生さえ確保できれば、無理にモノを捨てる必要はないと言えます。
高齢者には、モノを捨てることに強い抵抗感を感じる人が少なくありません。
まだ使えるモノを捨てるのはもったいない、バチが当たる、という感覚をもつ人が多いのです。
このような高齢者にとって、モノがなくなるということは、お金がなくなることよりつらいことのように感じるのだそうです。
この価値観を理解せずに実家を片付けようとしても、親御さんと衝突するだけで終わってしまいます。
そこでモノを捨てるのではなく、整理してしまい込むという「片付け方」があります。
子どもの目からは「これ、絶対に使わないんだろうな……」と思うモノであっても、段ボール箱などに詰め込んで押し入れの天袋にしまいます。
親御さんは家の主は取り出せないでしょう。でも、それでいいのです。
もともと使わないものなのですから。そして、親御さんは、それが天袋にあるということで安心できるのです。
まずは、実家に自分の部屋があれば、そこから片付けを始めましょう。
実家に置いていた自分のモノを処分すれば、親御さんのモノを入れる場所ができます。
親御さんとのコミュニケーションを大切にしながら進める
捨てる片付けと同様に、この方法でも親御さんとのコミュニケーションが特に大切になります。
まず、片付けをする目的は、親御さんの安全と清潔の確保であると説得しましょう。
その上で、モノは捨てないこと、ただしまとめて保管することを納得してもらいます。
この時、「汚い」、「みっともない」という言葉は絶対に言ってはいけません。
子どもから見れば古くて汚い不用品であっても、親御さんにとっては意味のあるものかもしれません。
親御さんの気持ちを傷つけず、親御さんが望めば不用品であっても捨てずに収納しましょう。
また、使えそうなモノは「ちょうだい!」とねだってみるのも手です。
子どもが使ってくれるのであれば、喜んで手放す親御さんは多いものです。
上手におねだりしながら、実家のモノを減らしましょう。
「片づけ」は早めに・気長に
実家の片付けは、とてもデリケートな問題でもあります。
生前整理はとても大切なことですが、全ての親御さんがその必要性を感じているとは限りません。
また、遺産相続の問題などを出すと、「早く死ねというのか」などと逆鱗に触れてしまう可能性もあります。
だからこそ、早いうちに、少しずつ気長に進めていくことが大切です。