自由葬とは? トラブルを避けるために知っておきたい事前準備

自由葬とは? トラブルを避けるために知っておきたい事前準備

「お葬式」というと、どんなイメージが思い浮かびますか?

日本では、お葬式の8割以上が仏式で行われています。
従来のお葬式は、斎場や会館で、お坊さんがお経をあげて、焼香をして・・・というように、ほとんど形式が決まっています。

しかし、最近では、特定の宗教・宗派の形式や作法に則ることなく、自由な式次第で行う「自由葬」を行うことができます。

自由葬の一番の特徴は「故人らしさを演出できること」。
たとえば、読経の代わりに故人の好きだった音楽を流したり、花輪ではなく故人の作品や愛用品を飾ったりなど、お葬式をその人らしいオンリーワンの儀式にするわけです。

そこで、自由葬を行うために必要な準備についてみていきましょう。

自由葬を行う前に気を付けるべきこと

自由葬を行う場合、まずはどんなことに気をつけるべきでしょうか?
「自分の最後なんだから、好きにさせてほしい」と思っても、実際には思い通りにいかないことがあるのです。

  • 自由葬のトラブル例
  • トラブルを避けるためには?

自由葬のトラブル例

お墓に入れない!?

堅苦しい葬儀は嫌だ、という考えのAさんは、生前から準備をし、「お別れ会」を行いました。
その後、ご遺族が、菩提寺にある先祖代々のお墓にAさんの遺骨を収めようとしたところ、なんと「納骨はできません」と拒否されてしまったのです。

檀家なのに、菩提寺に知らせることなく勝手に葬儀を済ませておいて、遺骨だけはお墓に・・・というのは通りません。

自由葬 墓

宗旨・宗派不問の公営墓地や民営墓地に納骨したり、散骨などをするのであれば、自由葬でも問題はありません。
でも、先祖代々のお墓がお寺にある場合、菩提寺と檀家との間には守らなければならないルールがあります。

必ず、事前にお寺と相談しておくことが必要です。

葬儀に参列してもらえない!?

お葬式というと、静かで厳かなものというイメージがありますね。
でも、自由葬にルールはありません。
バンドの生演奏を流したり、映像システムを使った派手な演出をすることも可能です。

Bさん家族は、賑やかなことが大好きだったBさんのために、入り口にウェルカムボードを飾り、大きなスクリーンにBさんの生前の姿や好きだった風景などを映し出す演出を行いました。

しかし、このような内容を聞き「不謹慎だ」「こんな葬儀では成仏できない」と、大勢の親戚に参列を拒否されてしまったのです。
せっかくの演出にも関わらず、葬儀は理解してくれる知人だけの寂しいものとなってしまいました。

自由葬 トラブル

形式にとらわれないのが自由葬の良いところですが、受け入れることができない人もまだ多く、特に年配者や格式を重んじる人から「非常識だ」という批判を受けるケースは少なくありません。

どのような人が参列してくれるかを考え、節度をもった葬儀にすることが大切です。

トラブルを避けるためには?

先に挙げた例のように、自由葬を行なったことによるトラブルはよくあります。
トラブルを起こさずに自由な葬儀を行うには、どんなことに注意すればよいのでしょうか?

周囲の理解を得る

「自由葬」という言葉は徐々に知られてきていますが、実際に行う人はまだ全体の1%ほどに過ぎません。
そのため、故人や遺族が「変わり者」とみられたり、親戚に大反対される可能性は高いでしょう。
のちのち非難されないためにも、事前説明をしておく必要があります。

また、お寺にお墓がある場合は、どこまで自由にすることができるのか、お寺と相談しながら進めなくてはなりません。
住職と相談し、儀式を伴う仏式の大切なポイントをおさえた上で自由にできる部分を見つけ、すり合わせましょう。

法要について相談しておく

仏式では四十九日、一周忌などの法要があります。
これをどのように行うのかも考えておく必要があります。

通常の形で行うのか、違った形で行うか、行わないのかなど。
自由葬を行った場合でも、これらの法要をお寺で執り行ってもらえるのか相談しておきましょう。

自由葬に強い葬儀社を選ぶ

自由葬 葬儀社

近年、ほとんどの葬儀社で自由葬を引き受けてもらえます。
しかし、自由葬にはマニュアルがありません。
そのため、葬儀社によって企画力や演出力、実行力にかなり差が出ることがあります。

また、企画内容によって経費も大きく変わります。
一社だけでなく、数社を比較・検討しましょう。

終活の一環として準備する

自由葬の相談は、亡くなってから行うのでは間に合いません。
どんな内容にするのか、どういう雰囲気にしたいかなど、イメージを明確にし、エンディングノートにまとめましょう。

最近では、理想の葬儀を生前予約できる葬儀社も増えています。
実際にその時が来るまでプランの見直しもできるので、納得がいくまで相談しましょう。

自由葬では何ができるの?

では、いよいよ自由葬の行い方について考えていきましょう。

自由葬は宗教的な形にとらわれませんが、その分、葬儀の内容をしっかり組み立てる必要があります。
思い出に残る自由葬を行うには「企画力」が不可欠になってくるのです。

  • 個性を出すポイントは?
  • 式次第を考える

個性を出すポイントは?

自由葬には何もルールがないため、かえって戸惑うことが多いかもしれません。
そこで考えやすいのが、従来のお葬式を部分的に変える方法です。

祭壇

故人(生前準備であれば自分)が好きだった生花をふんだんに使ってアレンジしたり、キャンドルの灯りで幻想的な雰囲気を演出したりします。

故人の好きな色で統一するのも素敵ですね。
最近では、祭壇に故人の思い出の品やコレクションを展示する人もあるようです。

棺・納棺

従来、仏式や神式では樅や桐などを使った木棺、キリスト教式では白か紫の布張りで船形のものがよく使われています。

対して、自由葬では祭壇のデザインや式のコンセプトに合う棺や、布張りのものがよく使われます。
また、故人に着せる衣装も、死装束(白い着物)ではなく、故人らしい服装・好きだった服装にします。

献花・焼香

最近はさまざまな香りのお香が出ていますので、香りにこだわった焼香もいいですね。
また、自由葬では、ご焼香の代わりに献花をする場合も多いようです。

会場内の飾り付け

会場内のディスプレイは、その人らしさを出しやすいところです。
写真や絵、手芸などの作品を展示したり、スポーツや社会活動で受けた賞状や盾などを飾ったり。

遺品展示というような重い雰囲気ではなく、参列してくれた人が「そうだそうだ、こういう人だったなあ」と故人を偲び、思い出話が弾むような空間づくりを心がけましょう。

自由葬 祭壇

演出

たとえば、受付脇に思い出の写真を貼ったウェルカムボードを置いたり、故人の映像を式中に流す、生バンドで故人の好きだった音楽を流すなど、さまざまな演出が考えられます。

最近では、親族や弔問客が生演奏を披露するといった、まるで結婚式のような演出もあるようです。

お料理

通夜振る舞いや精進落としでは、仕出し屋さんなどにお料理を注文するのが一般的です。
でも、ここに故人が好きだったものを一品加えると、食事をしながら思い出話もはずむのではないでしょうか?
時間的な問題もありますが、料理屋さんに相談してみる価値はあるでしょう。

式後のお礼や香典返し

会葬御礼の品やお香典返しの品に、故人が好きだったブランドのハンカチやタオルなどを選ぶという方法があります。

お返しにはコーヒーやお茶などもよく選ばれます。
故人好みの銘柄のものを送るのもよいでしょう。

式次第を考える

自由葬だからとあまり複雑にしてしまうと、進行に余裕がなくなったり混乱に繋がったりします。
型破りな葬儀もいいのですが、参列する人のことも考えた、無理のない式次第を組み立てましょう。

自由葬 式次第

式次第の例

  1. 開式のことば
  2. 黙祷
  3. 故人の経歴紹介
  4. スライドや映像の上映
  5. 遺族・友人からのお別れのことば、思い出の曲の演奏など
  6. 献花
  7. 遺族(喪主)あいさつ
  8. 閉式のことば

式次第だけ見ると、普通のお葬式とあまり変わらないように見えますが、たとえば流す音楽ひとつでイメージは全く変わります。
スポーツマンなら、黙祷の時にテンカウントゴングを鳴らすなどといった演出も考えられますね。

また、映像上映や演奏、お別れのことばなどは順番を入れ替えても構いません。このような式次第に関しても、生前に決めておくとスムーズです。

自由葬を行うことになったら・・・

  • 案内状
  • 喪主(遺族代表)挨拶
  • 位牌や仏壇・仏具
  • 参列時の服装

案内状

無宗教のお葬式でも、案内状を出す場合は一般的な葬儀の案内状と変わりません。
故人の死去の事実、葬儀日程、場所を簡潔に記載し、郵送します。

喪主(遺族代表)挨拶

自由葬でも、参列してくれた人に感謝するのは普通の葬儀と同じです。
式次第に必ず盛り込みたいものです。

また、ナレーターをつけずに司会・式進行を喪主が行う場合は、その場にふさわしい挨拶を覚えておきましょう。

位牌や仏壇・仏具

自由葬でも、位牌を用意することはできます。
ただ、無宗教の場合は、戒名を入れるのではなく、俗名(生前の故人の名前)を入れます。

また、位牌に魂を入れる開眼供養は、無宗教の場合は行わないことが多いようです。

参列時の服装

自由葬 服装 喪服

自由葬は宗教的な作法にとらわれない葬儀です。

とはいえ、故人を悼む場であることには変わりありません。
案内状に「平服でお越しください」と書かれている場合以外、喪服を着るのが無難です。

また、平服だからと言って、カジュアルな服装で参加するのはマナー違反です。
色を抑えた地味な服装・メイクで参列しましょう。

まとめ

自由葬とは、決して型破りな葬儀のことだけではありません。故人らしさを演出するチャンスは、あらゆるところにあります。
参列者にとって、故人との最後の思い出となるようなお葬式を行えたらいいですね。

この記事の監修をしたゴミ屋敷の専門家

氏名:新家 喜夫

年間2,500件以上のゴミ屋敷を片付け実績を持つ「ゴミ屋敷バスター七福神」を全国で展開する株式会社テンシュカクの代表取締役。ゴミ屋敷清掃士認定協会理事長。