どこの家にもある風邪薬や頭痛薬、胃腸薬。いつの間にか期限が切れていたことはありませんか?
定期的に病院へ通っている人は、病院で処方される薬があるでしょう。
特に高齢者の場合「いつもの薬」を持っている人が多いものですが、こういった高齢者が亡くなった場合、薬が大量に遺されることがあります。
病院で出された薬は、その人の症状に合わせて処方されたものですから、本人以外が使うわけにはいきません。
となると、捨てるしかないわけです。
そのとき、皆さんはどのように医薬品を捨てていますか?
医薬品を捨てるときは、どのように処分すればよいのでしょうか?
液体の飲み薬は流しに捨てOKなのか。錠剤や粉薬は、ゴミ箱に捨ててよいのか。また、大量の薬がある場合、普通に捨てて大丈夫なのか……
意外と知らない医薬品の捨て方についてご紹介します。
目次
薬を捨てたらどうなるの?
モノを捨てるには、ルールがあります。粗大ゴミも、生活で出るゴミも、捨てるときはルールに従って処分しなくてはなりません。なぜなら、適切な処理をしないと、生体や環境に悪影響を与えてしまうからです。
遺品のなかには、もしかしたら処分に困るものも多数出てきます。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
もちろん薬も同じです。薬がきちんと処分されなかった場合、こんな事態を招いてしまうかもしれません。
- 薬の誤飲・悪用
- 環境の汚染や破壊
薬の誤飲・悪用
薬を捨てるとき、最も気を付けなければならないのは、悪用されたり、誤飲されたりしないようにすることです。
血糖値を下げる薬や血圧を下げる降圧剤、また睡眠薬や向精神薬など、使い方を誤ると非常に危険な薬はたくさんあります。
もしも、そんな薬がゴミ袋から持ち去られてしまったら、どう悪用されるかわかったものではありません。犯罪に発展してしまう可能性も考えられます。
また、カラスやネコがゴミを散らかして道に散乱していることがあるでしょう。その中に危険な薬があったら、子供が拾って遊んだり、興味本位で誤飲したりする可能性があります。
最悪の場合、命を落としてしまうかもしれません。
環境の汚染や破壊
海外では既に大きな問題となっているのが、医薬品の廃棄による河川の水質汚染です。
特に、抗生物質や抗ウイルス薬を排水口に流すのは厳禁です。抗生物質や抗ウイルス薬が川に流れると、自然界において「耐性菌」を発生させることがあるからです。
自然界には、さまざまな特徴をもつ細菌が存在しています。抗生物質は、これらの細菌を死滅させるものですが、中途半端に使用すると、薬が効きにくい細菌だけが生き残ることがあります。
するとその後は、この“薬が効きにくい”という特徴を持った細菌がベースとなり繁殖していきます。
河川に頻繁に薬が流されると、この薬が効きにくい細菌が生き残るという淘汰を繰り返し、最終的に細菌は、“薬が全く効かない”耐性を獲得してしまうのです。これが「耐性菌」です。
さらに懸念されているのが、細菌の拡散です。こうした薬剤耐性を備えた細菌やバクテリアが人間に感染すると、人間の移動と一緒に細菌も移動していきます。
すると、あっという間に、世界中にこの危険な細菌が撒き散らされることにもなりかねません。
薬は、たとえ少量であっても、河川の生態系に大きな影響を与えます。排水口には絶対に薬を捨てないようにしましょう。
期限切れの薬はどう処分する?
薬は、基本的に具合の悪いときにだけ集中して飲むものなので、期限についてあまり考えることはないかもしれません。しかし、もちろん薬にも期限があります。
薬は、そう安いものではありません。もったいないという気持ちから、飲み残した薬を再利用できないかと調剤薬局で聞く人もいるそうです。もちろん、答えはNO。一度、人の手に渡ったものは廃棄するしかありません。
病院や薬局では、その月に期限切れになる薬が大量に箱に入れられているそうです。確かにもったいないですね。それでも、期限が切れたら捨てなくてはなりません。それには理由があるのです。
- 期限切れの薬を飲んでも大丈夫?
- 期限切れの薬は効くの?
期限切れの薬を飲んでも大丈夫?
病院で処方された薬。無駄にしたくないし、せっかくまだ薬が残っているのに、病院に行くなんて面倒くさい。受診料だってかかるし……。
ドラッグストアで購入した薬。いつ買ったか忘れたけれど、まだあるのに買うのはもったいない。
こんな理由から、期限切れの薬を飲んだことはありませんか?
医薬品の「期限」は、『その医薬品の有効性と安全性が最大限保証できる期日』です。
つまり、期限を過ぎたからといって薬の効力がゼロになったり、即有害になったりするというわけではありません。
だからといって、期限切れの薬を飲むことはお勧めできません。
一般的に医薬品の期限は、ものによって製造日から2~5年と幅があります。しかも製薬会社は、期限を過ぎた医薬品の正確な有効性・安定性を示す義務がありません。
期限を過ぎた薬を飲んだらどうなるかは、「わからない」のです。
また、薬は古くなるほど副作用が強くなるといわれています。
このような理由から、製薬会社のサイトでも、古いものが見つかっても飲まないこと、その薬が必要なら再受診して処方してもらうことを勧めています。
もし、自己判断で誤った使い方をしたり、他人に譲ったりすると、もし何かあっても補償制度を受けることができません。
自分自身はもちろん、譲った相手に後遺症が残るような深刻な副作用が起こった場合、その責任をあなた1人で負わなければならないことになります。自己判断による勝手な使い方や、人に譲ることは絶対にやめましょう。
期限切れの薬は効くの?
錠剤やカプセル、粉薬など固形のものは比較的安定性が高いようですが、液体や、複数のものを混ぜて作った調剤は、期限が切れたら本当に効力が落ちるものがあるそうです。
液体の目薬は、形状からして使っているうちに雑菌が入る可能性が高いので、もしたくさん残っていても使用期限を守りましょう。注射剤も、期限が切れると濁りや変色が出て来ますので廃棄してください。
最も注意が必要なのは、『ある症状に特化した薬』です。
抗けいれん薬、心不全などで心臓が弱っているときに使うジゴキシン、血液を固まりにくくし血栓を予防するワーファリンなどが、その代表例です。
抗てんかん薬のフェノバルビタール、狭心症薬のニトログリセリン、喘息薬のテオフィリン、血圧を上げるエピネフリン、糖尿病薬のインスリンなどは、期限が過ぎると効果が落ちるのが早いようです。
また、甲状腺関連の製剤、低用量ピルも期限切れのものは服用しないようにしましょう。
こういった薬はデリケートなものが多く、ちょっとしたズレが治療や体調に大きな影響を与えかねません。
薬の期限はどのくらい?
薬は化学物質です。どんなに良い環境で保管していても、湿気や温度、酸素や光などの影響を受けたり、薬に含まれる水分が触媒の役目をしたりして分解が進み、時間とともに劣化していきます。
そのため、飲み忘れなどで残っても、あとで同じような症状の時に使ったり、他の人に勧めたりするのは禁物です。
自己判断で使用すると、効果がなかったり、症状が悪化したり、思わぬ副作用が出たりすることがあるからです。
薬の期限は、次の購入経路によって異なります。
- ドラッグストアなどで購入した薬
- 病院や薬局で処方された薬
ドラッグストアなどで購入した薬
ドラッグストアで購入した薬には外箱に記載がありますので、その期限を守りましょう。
薬によって、また保管方法によっても使用期限は異なります。
未開封の場合
外箱に期限の記載がなく、開封していない場合では、製薬会社で作られてから3年が使用期限の目安となります。
開封した場合
- 散剤、顆粒剤……3~6カ月
- カプセルや錠剤、軟膏、座薬など……6カ月~1年
- 目薬……約1カ月
- 液剤……変質したり、細菌が繁殖したりしている恐れがあるため、残ったものは処分しましょう。
病院や薬局で処方された薬
病院などで処方された医療用医薬品は、製造後、未開封の状態で3~5年が使用期限です。
ただし、これはあくまで「製造した直後から」のこと。どのくらいの期間、薬局に置かれていたかで、当然、期限は変わってきます。
また、同じ薬でも何の病気に対する薬かで、期限が違うことがあります。薬を受け取る時点で、薬剤師に確認するとよいでしょう。
正確な使用期限を知りたい場合は、薬の番号から調べる方法もあります。
薬のシートの表や裏を見てください。ロット番号やバーコードが記載されていますね。実は、製薬会社のWebサイトで、この番号やバーコードから使用期限を照会することができるのです。ひとつの方法として知っておくとよいでしょう。
薬の正しい捨て方は?
ここまでで、期限が切れた薬を飲んではいけないことがお分かりいただけたと思います。
古くなった薬は捨てるしかありません。でも、薬って、普通にゴミ箱に捨てるだけでいいのでしょうか?
誤飲や環境汚染しない、正しい捨て方をみていきます。
- 一般的な薬の捨て方
- 通常のゴミとして廃棄できない薬
一般的な薬の捨て方
薬を捨てるときは、まず容器から取り出して、以下のような方法で廃棄します。
錠剤
いらない封筒や紙袋などに入れたり、紙に包んだりして外から見えないようにして捨てます。子どもが拾って服用してしまうことのないよう注意しましょう。
軟膏
紙に包み、可燃ごみへ。
目薬、ドリンク、シロップなど液剤
新聞紙や古布に吸収させてから、可燃ごみへ出します。
スプレーなどエアゾール剤
火気のない屋外に出て、容器に表示されているガス抜き方法で中身を出し切ってから不燃ごみに出します。
各種ごみの捨て方については、こちらの記事をご覧ください。
通常のゴミとして廃棄できない薬
麻薬や毒薬、生物由来製剤など
麻薬や毒薬、生物由来製剤など一部の特殊な薬は、個別に指定された特別な方法で廃棄処理をする必要があります。。
何らかの事情で廃棄しなければならなくなった場合には、薬を調剤してもらった薬局へ連絡し、回収してもらいましょう。
向精神薬
心の病に使われる薬を「向精神薬」といいます。
向精神薬は第1種から第3種に分けられています。第1種と第2種は、統合失調症や重いうつに使われる極めて強い薬で、専門の医師の下に慎重に使う必要があります。
これらの薬は副作用が強く、また、フラフラするような感覚になる薬もあるので、麻薬代わりに使われる恐れがあります。法律で製造・販売・使用が厳重に決められています。
第1種・第2種向精神薬を廃棄する場合は記録が必要で、2年間保存しなくてはなりません。
第3種についてはそれほど厳しくなく、廃棄記録の義務はありません。焼却や、酸・アルカリによる分解、希釈など、回収が困難な方法で処理をしてから捨てます。
使用済みの注射針
使用済みの注射針などは、怪我や感染症の原因となる「医療廃棄物」や「在宅医療ゴミ」に該当するため、いわゆる普通のゴミとして扱うことはできません。
近年、家庭において、注射薬を自ら注射する治療療法が広まっています。これに伴い、薬剤師会などが、自己注射に使った使用済み注射針の回収を行なっていることがあります。
この場合、「使用済み注射針回収薬局」で注射針を購入するときに、使用済みの注射針を入れる回収容器をもらいます。
回収容器が使用済み注射針でいっぱいになったら、注射針を購入した「使用済み注射針回収薬局」に持ち込めばOKです。
注射針を購入する際、回収を行なっているか薬局で確認するとよいでしょう。
医薬品の廃棄で迷ったときは?
薬は「医療廃棄物」として適切な処理が必要です。非感染性廃棄物として分別し、焼却処理しなくてはなりません。
まずは薬を余らせないことが第一です。病院で受診して薬を処方されたら、その決められた期間に飲み切りましょう。調子が良くなったと感じても、最後まで服用します。
薬も、できるならば生前整理をしておきたいものです。とはいえ、持病がある人だと、今ある薬をすぐに処分してしまうわけにもいきませんよね。
また、「長期処方箋」により、長期間の処方ができる薬もあります。こういった薬を処方されている人が亡くなった場合、どうしても大量の薬が遺ってしまうことになります。
もしも、どうやって捨てたらいいか迷ったり、残された薬があまりにも大量だったりする場合は、遺品整理業者にご相談ください。あなたの「困った」、解決します。