いつかはやらなくては……と思いながら、なかなか手を付けられないのが生前整理です。そんな生前整理をしようと思い立つのは、どんな時でしょうか。
実際に行った人の話を聞くと、身内のかたにご不幸があったときや、60歳、70歳など節目の年齢になったときがきっかけとなることが多いようです。
ある俳優さんもそうでした。この人は、70歳になったことを機に、生前整理をしようと思い立ったとテレビで話していました。
ご本人が語るように「ゴミ屋敷に近い量があった」お宅の荷物の総重量は、約33トン。なんとトラックを8往復もさせる大がかりな作業だったそうです。
その結果、お宅にはほとんどモノがなくなり、非常にきれいになったようなのですが……。片付け過ぎて、普段の生活に使うものまで捨ててしまい、生活必需品をまた買いそろえたというオチがついていました。
せっかく整理をしても、これでは意味がありませんよね。生前整理は、これからの生活をシンプルかつ有意義にしていくためのものなのですから。
今回は、生前整理の基本的なやり方についてお話していきましょう。
目次
生前整理とは?
まず、「生前整理」について、おさらいしておきましょう。
生前整理とは、自分が生きているうちに、身の回りのものを整理することです。
自分の死後、家族など残された人たちが、膨大な遺品に囲まれて処分に困ったり、相続などでトラブルを起こすことのないよう、不要なモノを捨てたり、遺産となるものを整理したりします。
また、生前整理は、身の回りを整理することによって自分自身の気持ちをスッキリさせ、残りの人生をより身軽に、前向きに生きていけるようにすることでもあります。
さらに、不用品のない部屋は、モノが崩れて来てケガをしたり、何かにつまずいて転倒したりといったリスクを避けることもできます。
生前整理の心構え
生前整理をするときは、どのような心構えで取り組めばよいのでしょうか。
明るくポジティブに取り組もう
今では「終活」や「生前整理」という言葉も、広く知られるようになりました。しかし、あまり良い印象を持てない人もあるようです。終活や生前整理は人生の終わりに目を向けることですから、気の進まない人がいても当然かもしれません。
そこで、視点を少し変えてみましょう。生前整理は、自分史をひもとくようなもの。自分のモノや情報を整理しながら「自分も、けっこうよくやって来たんじゃないかな」と、過去の自分を肯定してあげませんか?
いろいろなことがあった人生。時に自分を誉め、自分を許し、モノと一緒に心の整理もしましょう。
生前整理は、「終わり」に向かうものではなく、新しい人生をスタートさせるためのものです。明るい気持ちでポジティブに取り組むのが吉です。
思わぬ危険に気をつけよう
片付けの際には、重いものを持ったり、踏み台を使ったりすることがあります。こうした時に、事故を起こさないよう気をつけましょう。ケガをしてしまっては元も子もありません。
手伝ってもらうのもアリ
生前整理は、必ずしも自分1人でやる必要はありません。1人では片付けが難しいものは、家族や親しい人に手伝ってもらうのもアリです。
複数なら、片付けながら一緒に思い出を振り返ることもできます。無理はせず、誰かの協力をあおぎましょう。
自分のペースで進めよう
生前整理は、一気に完了できるものではありません。一度で済まそうとあまり時間をかけると、疲れてしまって、続きを行う気力がなくなってしまいます。
完璧にしようと気張り過ぎず、一つひとつを着実に片付けていきましょう。
自分のペースを保って、楽しみながら少しずつ行うのが上手な生前整理のコツです。
生前整理の始め方
それでは、生前整理の手順を紹介していきます。
所持品と頭を整理する
生前整理を始める前に、簡単に書き出すだけでいいので、所持品のリストを作成しましょう。
大体どんなものがあるのか簡単に書き出すだけで構いません。何があるのか最初に確認しておくと、頭の中が整理され、生前整理もスムーズに進められます。
遺産の整理を含め、エンディングノートを書いておくのもよいでしょう。
また、何を残し、どんなモノに囲まれて暮らしたいかをイメージしてみましょう。自分の中で捨てる基準を設けて、本当に必要な物だけを残すようにします。
たとえば、雑誌なら“2年以上前のものは捨てる”、衣類なら“サイズが合わないもの、似合わなくなったものは捨てる”などの基準を作ります。特に衣類は、「また流行が巡ってくるかも」「痩せたら着よう」など、ついついたまってしまいますよね。
なかなかモノを捨てられない人も、この基準に沿って進めれば、案外あきらめがつくものです。
逆に、残したい物を選び、それ以外を捨てるという方法もあります。自分の考え方、感じ方で仕分けの基準を決めましょう。
ひとまず、ざっくりと仕分ける
整理する場所・部屋にしまってあるものを全て出し、床に並べます。その中から、「明らかに使うもの」を元のところにしまいましょう。
こうすると、残ったものが「処分するもの」です。これらをまとめて捨てます。
不要かどうか判断できないもの、もしかしたら使うかもしれない、と思うものが出てきたら、いったんダンボール箱に入れます。
この箱は1年くらい寝かせておきます。もちろん、使うものは途中で出しても構いません。寝かせていた1年間で使わなかったものは、自分にとって不要だったということ。処分しましょう。
スタートは、大きなもの・重いもの・たくさんあるものから
まず、体力が必要なものから始めましょう。大きな家具や家電、重い本、大量の服など、年を取れば取るほど自力での片付けが厳しくなります。なるべく早めに片付けておくとよいでしょう。
また、体積の大きい物を先に処分するとスペースが空くため、その後の作業がはかどります。
特に、収納用品・家具が置いてあると、ついつい物を入れたくなってしまうもの。せっかく整理しても、またモノを買って収めていては意味がありません。モノの“逃げ場所”を早めになくしておくのが賢明です。
大きいモノは、粗大ゴミに出すなど、捨てるのに日数や手間がかかることも多いので、先にやっておきましょう。
様々なものの上手な処分方法
片付け始めてみると、家の中には実に雑多なものがあるあらためて実感するものです。ちょっと迷うものがあった時、参考にしてください。
思い出の品
片付けの際に一番悩むのが、思い出の品ではないでしょうか。記念品だったり、誰かにもらったものだったり。思い入れのあるものを捨てるのは、つらいものです。
なるべく精神力を削られずに捨てるためには、基準を決めるとよいでしょう。
捨てるものと残すものの間に線引きをして、仕分けていきます。
あまり時間をかけると迷いが出てしまうので、どんどん分けていきましょう。たとえば、
- 残す理由が「○○さんにもらった物だから」というだけのものは捨てる
- トロフィーや賞状など、過去の栄光は捨てる
- 写真は非常時(火事や災害の時など)に持ち出せる量だけを厳選する
- 見た時、触れた時に心が動かない物は捨てる
など。
人形やぬいぐるみなどは、解体して人や動物の形でなくして捨てるのが最善です。量が多かったりして難しい場合は、布や紙に丁寧に包んで捨てるとよいでしょう。
また、お寺や神社で人形供養をお願いすれば、かわいがってきた人形たちに感謝しながら送り出すことができます。
何らかの形で残しておきたい場合は、デジタルカメラなどで撮影しておきましょう。かえって後ろ髪を引かれてしまうという人は、そのまま捨てます。この辺りの感覚は人によって違いますので、自分が納得いく方法をとりましょう。
デジタル情報
本人以外には非常にわかりにくいものに、デジタル情報があります。
- パソコンやスマートフォンの中にあるデータ
- SNSやブログのIDやパスワード
- ゲームのアカウント
- インターネット銀行の口座
などは、家族でもほとんど知らないものではないでしょうか。こういった情報を整理し、一覧表にしておきましょう。死後にブログやSNS、ゲームなどは、すみやかに解約・退会できます。
パソコンのハードディスクにあるデータに関しては、自動削除ソフトを入れておけば安心です。
指定した日数が過ぎた後や、パソコンを最後に起動した日から何日間か起動されなかった場合に、自動でパソコン内のファイルを削除してくれるので、認知症になってしまったり、急に死んでしまったりした場合、パソコン内のデータが見られるリスクを避けられます。
CDやUSB、メモリーカード、SDカードなど、データが記録されているメディアは、まとめて一ヵ所に保管しておきましょう。あちこちからメディアが出て来ると、確認するのに時間と手間がかかります。他人が見てもわかりやすいように分類・整理して、一ヵ所にまとめておきましょう。メディアやスマホの中に、人に渡したい写真があれば、早めに送っておきます。
財産
現金や預貯金、株、年金、保険、不動産などを整理しておきましょう。
遺品整理の現場では、あちこちから「タンス預金」が出て来ることがよくあります。また、相続終了後に負債が発覚したりすると、遺族や相続人にとって大変面倒ですので、プラスの財産もマイナスの財産も分かりやすく整理しておきます。
もちろん、1円単位で記録する必要はありません。預金なら、支店名と口座番号などを整理しておきます。また、使っていない口座や期限切れの証書など、処分できる物は処分するとスッキリします。
不動産は、住所・名称と建物の種類、面積などをメモしておきましょう。
財産を整理すると、今後のお金の使い方のヒントになります。また、高齢となったときのことを考えて利便性の高いマンションへ引っ越すなど、より計画的に、より身軽な人生を送るきっかけにもなりますよ。
人間関係
アドレス帳やSNSでのつながりも見直してみましょう。
もしも、その人の名前を見ただけで憂うつになるような知人がいたら、思い切ってアドレス帳から削除してしまいましょう。
また、SNSでは、顔も知らずに「友だち」になっている人も多いのではないでしょうか?
リアルで知らない人にはコメントを付けるのをやめたり、書き込みを表示しないようにするなど、それとなく距離を置いていきます。相手にとっては気分の良いものではありませんので、あくまでも「目立たないように」「少しずつ」行うのがポイントです。
年齢を重ねると、毎年、年賀状を書くのも負担になってくるものです。年賀状をやめたいなら、ご挨拶状を送りましょう。この時、
- 新年ではなく、12月までに届くようにする
- 「どなた様にも年始のごあいさつを控えさせていただきます」と、“すべての人”の年賀状をやめると伝える
- 「寄る年波を感じ……」など、年賀状をやめる理由を書き添える
など、相手を不愉快にさせないよう必ず配慮します。
ただし、こういった挨拶状自体が失礼だと考える人もいます。相手によって、挨拶状を送るか、自然消滅にするかを熟慮することが重要です。
生前整理は計画的に
荷物の片付けや不用品の処分は、正直言って憂うつなものですよね。長い間に蓄積したモノは、一朝一夕に片付くものではありません。一気に片付けてしまおうと焦らず、気長に少しずつ進めていきましょう。やる気が出ない日は、休んでもいいのです。ただ、中断してしまわないで、続けることが大切です。
そして、やはりエンディングノートをつけることをお勧めします。エンディングノートには、遺言書のように法的効力はありませんが、意思を伝えるには十分です。
預貯金や不動産などの財産目録をはじめ、残しておきたい人だけの住所録、インターネットのIDやパスワードなどのデジタル情報、また、形見分けについてなどを1冊にまとめておけば、自分の中での整理になるだけでなく、残された人たちも大変助かる情報です。
計画的な生前整理を進めるためにも、ぜひ前もって情報の整理をしておきましょう。そのことによって、これからの人生をどう生きるかを前向きに考えるきっかけとなるでしょう。
生前整理についても、なにか分からないことがありましたら、ぜひ私どもにご相談ください。遺品整理業者の立場から、プロの目で見たアドバイスをさせていただきます。