遺品整理とお焚き上げ~何を・どんな方法で供養できる?

遺品整理とお焚き上げ~何を・どんな方法で供養できる?

ご家族が亡くなった場合に持ち物を整理する遺品整理。高齢化が進むにつれ、遺品整理のニーズもますます高まっています。
遺品の数が多い場合は、全てを手元に残しておくということはできず、本当に必要なもの以外は処分することになります。ところが、遺品の中には仏壇や位牌、さらに現代ではスマートフォンなど、そう簡単には処分しにくいものも多く含まれています。
そのような遺品が出てきた際は、「お焚き上げ」という方法で供養します。その一方で、燃やすことができないスマホなどは、どのように供養を行うのでしょうか。
今回は遺品整理の際に必要となる供養ついて、様々な方法をご紹介しましょう。

遺品整理とお焚き上げ

モノが豊かな国・日本の「どんど焼き」

日本は世界的に見ても、非常にモノが豊かな国です。そのため、個人の持ち物も多種多様で、数も多くなっています。それに伴い、不要なものも増えています。
不要なものが出た場合、ほとんどはゴミとして捨てるでしょう。
最近では衣類や家電、本などはリサイクルショップで買い取ってもらい、改めて他の人に使われるようにすることで資源の無駄をなくすことも、一般的となってきました。

ただ、なかにはゴミとして処分したり、リサイクルショップに買い取ってもらったりすることが難しい、あるいは気持ちの部分で抵抗を感じるモノも存在します。

「どんど焼き」という日本の風習をご存じでしょうか?
お正月に神社へ行くと、必ずといっていいほど目にする、高く燃え上がる炎。これは正月に使用したしめ縄などの正月飾りを、各家庭から持ち寄って焼いている炎です。
また、神社で買ったお守りは1年経てばまた同じ神社に返しに行きます。
正月飾りもお守りも、その持ち主を守っていたものです。ゴミとして捨てられるのではなく、どんど焼きなどの方法を使って処分されるのです。
このように、日本では昔から仏教・神道に関わらず、宗教的な物は独特の方法で処分しています。これは遺品にも同じことがいえます。

遺品には、家電や家具、食品などがあります。これらの多くは一般廃棄物・粗大ゴミとして処理されますし、廃棄方法も法律で細かく定められています。
この他に、衣類や写真など故人を思わせる物も出てきますし、なかには故人の自宅に置かれていた仏壇や位牌も遺品として整理しなければならないこともあります。
正月飾りなどはもちろんのこと、こうした宗教物も単純にゴミとして廃棄できません。特に仏壇や位牌に関しては魂が宿っているものなので、ゴミとして捨てることは避けたいところです。
とはいえ仏壇は大きいものなので、遺族の自宅のスペースも限られているため、遺族が引き取って手元に置こうと思っても難しいかもしれません。
そこで、宗教物に限らずゴミとして処分することに抵抗を感じる遺品、あるいは捨てるべきではない遺品は、「お焚き上げ」という方法で供養をします。

お焚き上げで供養

モノに宿る故人の魂を天に還す「お焚き上げ」

お焚き上げとは、遺品を火で焼くことです。
遺品は故人が生前にお世話になった物であり、ひいては故人の魂が宿っている物です。
火の神の力によって、そういった遺品に宿った魂を天に還すという意味があります。
このお焚き上げという慣習には、物を大切にし、物に対して感謝の心を持つ日本人の気持ちが表れているといえるでしょう。

遺品整理を行う場合にはお焚き上げについても同時に考えておかなければいけません。
ただ、お焚き上げで供養できる遺品と供養できない遺品にはどのようなものがあるのかがわからないという人も多いものです。
では、どのような遺品をお焚き上げで供養することができるのでしょうか。

お焚き上げで供養できるものとその方法

お焚き上げの多くは、お寺で行われますが、お寺によってお焚き上げができるものと、できないものは異なります。
お焚き上げで供養するべき遺品として代表的なものが、仏壇と位牌です。仏壇と位牌は魂が宿っているものですので、そのままゴミとして処分するわけにはいきません。
とはいえ、仏壇や位牌などの宗教物は、そのまま燃やせばいいというものでもないのです。

  • お焚き上げ前の「魂抜き」
  • 近年増加中の永代供養
  • 写真や人形のお焚き上げ
  • 燃やせないモノのお焚き上げは?

お焚き上げ前の「魂抜き」

一般的に仏壇・位牌などの宗教物は、お焚き上げの前に「魂抜き」(閉眼供養)という儀式を行います。
仏壇や位牌などの宗教物には、故人の魂が宿っています。そこで魂抜きの儀式を行うことで、宿っていた魂は天に還され、仏壇や位牌は「ただのモノ」へと変わります。
そして、その遺品をお焚き上げで供養します。
まずは故人の菩提寺があれば、そのお寺に仏壇や位牌などの魂抜きとお焚き上げを相談してみましょう。

近年増加中の永代供養

仏壇や位牌については、お焚き上げ以外の方法でも整理することができます。最近では「永代供養」という方法が注目を集めています。
最も一般的な永代供養の例は、お墓です。「永代供養墓」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
「自分のお墓を管理してくれる親族がいない」
「親族が遠くに住んでいて、なかなかお墓参りに来ることができない」
「お墓の購入や維持のために、子供に負担をかけたくない」
といった事情から、代わりに寺院あるいは公営・民営の霊園が管理してくれるのが、永代供養墓です。
同じように、仏壇・位牌も遺族が引き取ることができなければ、永代供養をお願いするという方法もあります。
もちろん、いずれも費用はかかりますが、高齢化社会・核家族化が進む日本では、永代供養墓を検討する方が増加中のようです。

写真や人形のお焚き上げ

また、写真や人形もお焚き上げをすることが一般的です。
遺品のなかでも、最も処分しにくいのは故人が写っている写真でしょう。しかし、写真は量が増えれば保管するためのスペースもとるため、遺族はどう扱えばいいのか困ってしまうことが多いかもしれません。
今では写真をデータ化してDVDなどで手元に残すという方法をとる場合もありますが、それでも元のプリントアウトされている写真は処分しなければなりません。この時、お焚き上げを行います。

また、人形やぬいぐるみは故人の想い出が詰まっているものです。さらに日本では人形やぬいぐるみには持ち主の魂が宿っていると考えられています。
そのため、遺品として出てきた人形やぬいぐるみもどう処分していいものか困ることもありますが、これらもお焚き上げによって供養するのです。
お寺によっては写真や人形のお焚き上げを専門に行っているところもあります

ぬいぐるみの遺品

燃やせないモノのお焚き上げは?

お焚き上げは遺品を燃やす供養方法です。そのため、お焚き上げできないと思われるかもしれません。
もちろん、ゴミの処分については、各自治体の条例によって可燃物・不燃物が決められています。不燃物のなかには、燃やすと有害物質が発生するものもあるので、注意が必要です。
燃やせないモノの場合は、まず読経・魂抜きを行ったあと、故人の魂が込められたお札をお焚き上げします。
お焚き上げで燃やせるもの、燃やせないものについては、お寺や専門業者などに確認してみてください。

パソコン・スマホなどIT機器の供養方法

現代は情報化が進んでおり、ほとんどの人が携帯電話を持っており、その多くはスマートフォンです。また、一家に1台はパソコンがある時代です。しかし、自分が亡くなった場合、パソコンやスマホはどのように処分されるのでしょうか。

パソコンやスマホは自分しか使わないため、自分自身しか知り得ない情報が保存されています。写真なども含め、多くの個人情報が入っているはずです。
一方で、なかには遺族に知られたくない情報も含まれているでしょう。そのままの状態で放置してしまうと、情報がインターネットを介して流出する危険性も全くないわけではありません。
遺族にとってはPCもスマホも、故人が頻繁に使っていたものなので供養したいと思うでしょう。
とはいえPCもスマホも「燃えないモノ」です。この場合、お焚き上げや供養は、どのようにして行えばよいのでしょうか。

  • パソコン供養とは?
  • 個人情報への対応は?
  • 小型家電リサイクル法

パソコン供養とは?

21世紀に入り、パソコンが一般家庭に普及するにつれ、その処分方法も課題として取り上げられていました。
そこでただPCをゴミとして処分するのではなく、「パソコン供養」を行ってくれるお寺が登場します。なかには、インターネットを通じて画面上でパソコン供養を提供するサービスもあるようです。
ここ数年でPCだけでなく、スマホやタブレットも普及し、IT機器の処分・供養について知りたいというユーザーも増加中です。
最近では、遺品整理のニーズが高まるなかで、お焚き上げを請け負う遺品整理業者も増えました。
また、ごみ処理場などの処理能力も向上し、以前は不燃物であったものも可燃物として、環境問題も考慮しながら焼却される場合もありますし、パソコンのお焚き上げを行う業者も登場しました。

個人情報への対応は?

PCやスマホ、タブレットなどを処分する場合、最大の問題は中に保存されている個人情報の取り扱いです。
故人にとっては遺族にも見られたくないものが、そうした機器の中に入っているかもしれません。
そのため、パソコン供養の際は機器の中のデータを全て処分してくれる業者もあります。さらに本体を破壊してからお焚き上げを行うことで、故人の情報が漏れることなく供養されるのです。
他にも遺品の中にPCやスマホなどのIT機器があった場合の対応について、詳しくはこちらをご参照ください。(※「こちら」で31―「デジタル遺品」のページへ飛ぶようにリンクを貼ってください)

小型家電リサイクル法

平成25年(2013年)4月1日、「小型家電リサイクル法」という法律が施行されました。
これは平成13年(2001年)より施行されていた「家電リサイクル法」で定められた家電4品目(エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機)の他に、リサイクルするべき小型家電を指定したものです。
対象品目と回収方法は、各自治体によって異なりますが、多くの自治体でパソコン、スマートフォン、タブレットなどのIT機器は、この「小型家電」に含まれています。
回収された小型家電については、資源としてリサイクルすべき部分は回収され、機器の中に保存されている個人情報・データも適切に処理されます。
小型家電リサイクル法については市区町村などの行政機関、もしくは回収の専門業者にお問い合わせください。

デジタル遺品のご相談

上記のように、IT機器が普及していくなかで、その処分・供養方法も整ってきています。
高齢者でもパソコンやスマホを持つ人が多くなっている現代、さらに高齢化社会が進んでいく日本においては、さらにIT機器への対応の必要性が高まっていくでしょう。

供養・お焚き上げも遺品整理業者へご相談を

遺族はご家族が亡くなれば遺品整理を行い、供養すべきものはお寺などに持ち込んで供養をする必要があります。
しかし、遺族にとってはご家族を亡くして精神的にも負担が大きくなる時期。葬儀の準備に加えて、遺品の整理や供養を行うのは困難な場合が多いもの。
遺品整理業者は、大型の遺品の運搬や処分を、多くの経験と知識を活かして遺族に代わり行ってくれます。そのため、的確で素早い遺品整理が可能です。
また、ここまで見てきた遺品の供養についても、遺品整理業者に一括して依頼することも可能です。

遺品整理業者のなかには、段ボール数箱分の遺品であれば合同供養をするサービスが遺品整理の業務の中に含まれています。
合同供養として、他の家庭の遺品と一緒に、読経やお焚き上げなどしっかりとした方法での供養が行われます。
また、大型の遺品や大量の遺品を供養したい場合には、別料金が必要とはなるものの訪問しての供養を行ってくれる遺品整理業者もあります。

お焚き上げなどの供養は、しっかりとした知識を持って、きちんとした方法で処分をしなければなりません。それは遺品整理業者も同じことです。
また、遺品整理業者は数が増えている分、悪徳業者も増えています。遺品整理業界はこの状況を問題視し、遺品整理士という知識や技術を認定する資格を発行するようになりました。

遺族にとって大切なことは、遺品整理の依頼であれ、遺品供養の依頼であれ、それぞれ専門の資格を参考に、信頼できる業者を探し、仕事を依頼することです。
遺品整理も遺品の供養もきちんと行うことで故人も喜んでくれるでしょう。
つまり、きちんとした業者を探すこともまた、遺族が故人にしてあげられる供養ともいえるのです。

この記事の監修をしたゴミ屋敷の専門家

氏名:新家 喜夫

年間2,500件以上のゴミ屋敷を片付け実績を持つ「ゴミ屋敷バスター七福神」を全国で展開する株式会社テンシュカクの代表取締役。ゴミ屋敷清掃士認定協会理事長。