粉骨って何? 散骨・洗骨とは?

粉骨って何? 散骨・洗骨とは?

もし自分が死んだら、どのように埋葬して欲しいか、考えたことはありますか?
これまでは、遺骨は先祖代々のお墓に納めるのが普通でした。
しかし近年では少子化の影響もあり、子供に迷惑をかけたくないと、お墓の世話をしないで済む埋葬方法を選ぶ人も増えています。

その代表的な方法が、遺骨を海や山にまく「散骨」です。
散骨をする際には、遺骨を細かく砕いてパウダー状にしなくてはなりません。
この、骨を細かく粉砕することを「粉骨」といいます。そこで、粉骨について見ていきましょう。

粉骨とは?

なぜ粉骨するの?

散骨

近年、埋葬や供養に対する考え方が変化し、これまでとは違う埋葬方法が出てきています。
山や海などに遺骨を撒いて埋葬する「散骨」や、宇宙に散骨する「宇宙葬」、風船に遺骨を乗せて成層圏で散骨する「バルーン葬」、樹木のもとに埋葬する「樹木葬」など、その方法はさまざまです。
これらの新しい埋葬を行うには、遺骨を粉々に砕く必要があります。

散骨などお墓に納骨しない埋葬方法に関しては、法律や条例などの規定がありません。そのため、業者や個人が独自のルールで実施しているのが現状です。

業者間では、散骨をする際には、自然環境に配慮し、遺骨を2mm以下に粉砕しなければならないと定めています。
なぜなら、それ以上の大きさでは、第三者に発見された際に死体遺棄として事件に発展する恐れがあること、また、散骨を行う場所の周辺で生活する人々への精神的な負担や、漁業などに関する風評被害も考慮する必要があるからです。

手元供養

また、お墓に納骨せずに自宅に遺骨を置いたり、墓じまいをしてお墓から遺骨を取り出し、自宅に安置する「手元供養」では、遺骨をコンパクトにまとめるために粉骨します。

粉骨をすると、遺骨のかさは4分の1から5分の1に減らすことができると言われています。これにより、遺骨を納める骨壺や骨箱のサイズも小さくすることができるわけです。
遺骨を納める骨壺は場所を取るだけでなく、見た目に圧迫感があるため、遺骨を破砕することで、タンスの上やリビングにも違和感なく安置することができるようになります。

粉骨は違法行為にならない?

遺骨を砕くという行為は、法律上はどのような行為となるのでしょう。
刑法には「死体損壊罪」という罪がありますが、遺骨を破壊する行為は、この犯罪にあたるのではないかと心配になる人もいるかもしれませんね。

実は、遺骨を破壊することは、刑法190条の死体損壊罪に該当すると考えられます。ですが、散骨に必要な範囲の行為であれば、違法とは見なされません。

非公式ではありますが、法務省は散骨について「節度をもって散骨が行われる限り、違法ではない」という見解を示しています。
“節度をもって”とは、それが遺骨と分からないように、という意味です。

散骨の際には、人体を想像させるような大きさの骨をそのままでまくのではなく、細かいパウダー状にしたり、布で包んで骨と分からない状態にしてからまくよう法務省が求めているというわけです。

つまり、「粉骨」は、散骨をするために不可欠な行為と言えます。ですから、散骨が目的で行う粉骨には違法性はなく、処罰されることもありません。

粉骨の方法とは?

粉骨とはどのような方法で行うのでしょうか。

自分で粉骨する

繰り返しになりますが、粉骨に資格や許可、認可などは必要ありません。そのため、自分の手で行うことができます。
まず袋に遺骨を入れ、ハンマーなどで細かく砕きます。砕いたものを、すり鉢とすりこぎを使ってすりつぶしていくだけです。
手作業用の粉骨道具や、電動の粉骨機をレンタルしている業者もあります。

粉骨は簡単なように思えますが、実は体力も必要であり、時間もかかります。何より人の骨を砕くといいう心理的な負担も大きいので、あまりお勧めはできません。

業者に依頼する

近年、お骨を粉砕する「粉骨サービス」を行う業者が増えています。
粉骨専門の業者以外には、散骨業者にも粉骨を依頼することができます。また永代供養墓を運営している寺院では、お寺で粉骨をしてくれるところもあり、永代供養とセットで送骨を受け付ける寺院の数も増加しています。

粉砕の手順は?

粉骨の手順は、以下のようになります。

  1. 計量
    骨壺から中身を取り出し、総重量を量ります。
  2. 混入物の除去
    遺骨に混じっているお棺の金属片や副葬品などの混入物をすべて取り除きます。
  3. 洗骨
    付着物や汚れをブラシで洗い落し、さらに超音波洗浄機で細部や奥の汚れを浮かせてきれいにします。
    焼骨には、発がん性物質である六価クロムが、環境基準の数倍から数十倍も含まれている場合があります。
    このため、散骨など遺骨を自然に還す場合は、環境汚染に配慮し、遺骨に含まれる六価クロムの含有量を測定します。基準値を上回る場合は、薬品で無害化処理をします。
  4. 乾燥
    遺骨を変色させないよう、低温で緩やかに乾燥させます。

遺骨は、これらの工程を終えたのちに粉砕されます。

粉砕の方法は?

業者による粉砕の方法は、どのようなものなのでしょうか。

手作業による粉骨

乳鉢と乳棒を使い、手作業で丁寧に粉骨していきます。乳棒と乳鉢をゆっくり回し、遺骨同士の摩擦でつぶしていきます。
手作業は、機械に比べて時間や費用がかかります。しかし、丁寧で気持ちがこもっている感じがあるため、手作業を選ぶ人も多いようです。

機械による粉骨

専用の機械で粉骨します。粉骨機による粉骨は、手作業粉骨に比べて短時間・低価格で粉骨をすることができます。また、パウダーの粒子が均一で細かくなるというメリットもあります。
機械による粉骨の際は、他の人の遺骨と混ざらないよう、粉骨機は1件終了するごとに洗浄・消毒をします。

郵送で粉骨ができる!?

最近は、業者に出向くことなく粉骨を依頼できるキットがインターネットで販売されています。
申し込むと、業者へ遺骨を送るための「送骨キット」が送られてきます。ここに骨箱ごと遺骨を入れて郵送すると、粉骨したのち送り返してもらえるというものです。

ちなみに、遺骨を送ることができるのは「ゆうパック」のみです。
ヤマト運輸と佐川急便は「紛失時の責任が取れない」として遺骨を引き受けていませんが、日本郵便は「輸送に適した状態であれば引き受け可能」としています(ただし、海外送付は不可)。
もちろん、遺骨をゆうパックで送ることは、法律的にも問題ありません。

粉骨された遺骨の保存方法は?

粉状のものは、湿気で固まりやすい性質を持っています。
そのため、業者では、遺骨をいつまでもサラサラな状態で安置できるよう、真空パックやアルミの防湿パックなどを用いて固まりにくい状態で返還します。

手元供養など遺骨を自宅に安置する場合は、この、しっかり密封された真空パックが使われます。真空パックは湿気を寄せ付けず、カビや臭いを防ぐので、長期の保管に向いています。このパックを骨壺に入れて安置します。

散骨する場合は、水に溶ける素材で作られた水溶性紙袋に詰めて返還されます。
水溶性紙袋に入れた遺骨は、袋のまま散骨でき、自然環境への配慮ができます。まくときに風で飛び散らないのも便利です。

また、分骨したいときや、遺族全員で散骨したい場合などは、遺骨を小分けにしてもらうことも可能です。

粉骨サービス業者の選び方は?

知識や経験があるか

粉骨には、届出や許可が必要ないため、誰が行っても問題なく、誰でもいますぐ開業できます。
つまり、長い経験を積んでいる業者もあれば、これが初めての仕事だという業者もあるということになります。
ある程度の知識がある業者でないと、分骨するのに喉仏がどの骨か知らなかったり、お遺骨を物として雑に扱ったりすることがあるようです。
出来れば、アルバイト的な業者ではなく、本業としてやっている業者を選びたいものです。

身元を明らかにしているか

業者が身元を明らかにしているかどうかも選択のポイントです。粉骨は作業にそれほど場所をとらないので、マンションの1室などでも行うことができます。会社や代表者の情報がきちんと公開されていない業者は避けるようにしましょう。
マスコミにどれだけ出ているかという点もチェックの目安になります。マスコミは、情報として出す前にその業者の身辺調査をするからです。インターネットで検索する場合にも、これらのポイントを押さえておきましょう。

立ち会いが可能か

粉骨を機械で行っているか、手作業かについては、それぞれメリットとデメリットがあり、一概にどちらがよいとは言えません。ただ、粉骨という作業は、場合によっては人に見せられない方法で行っていることがあります。そのため、粉骨への立ち会いを歓迎しているかどうかは、業者選びの重要なポイントと言えます。
遺族からすれば、粉骨も大切な葬送の一部です。可能であれば立ち会って見届けたいところではないでしょうか。
遠方に住んでいるなど立ち会いが困難な場合でも、遺族の立ち会いに前向きかどうかについて、しっかりチェックしましょう。

まとめ

粉骨は、葬儀の1つとも言えます。
本来、遺骨はゆっくりと自然に還っていくものです。それを、遺族の都合で早めてしまうのが粉骨です。早く、安く遺骨を粉にするサービスが増えていますが、早さや安さだけでなく、遺骨を大切に扱い、丁寧に粉骨してくれる業者を探しましょう。

この記事の監修をしたゴミ屋敷の専門家

氏名:新家 喜夫

年間2,500件以上のゴミ屋敷を片付け実績を持つ「ゴミ屋敷バスター七福神」を全国で展開する株式会社テンシュカクの代表取締役。ゴミ屋敷清掃士認定協会理事長。