葬祭ディレクターとは、故人や遺族の希望に沿って葬儀をプランニングし、式場の準備や式次第を進行させる仕事です。
葬祭ディレクターは民間資格ですが、厚生労働省から技能審査として認められています。
葬祭ディレクターの資格を取るには「葬祭ディレクター技能審査協会」が実施している「葬祭ディレクター技能審査」を受験する必要があります。
今回は、葬祭ディレクターの仕事内容や資格審査について見ていきましょう。
目次
「葬祭ディレクター」とは?
「葬祭ディレクター」は、1996年に創設された資格です。
葬祭業界の2大組織である「全日本葬祭業協同組合連合会」と「全日本冠婚葬祭互助協会」が設置しました。
葬祭業に従事する人々の知識や技能の向上と、葬祭業の社会的地位向上を図ることが目的です。
葬祭ディレクターは民間資格ですが、厚生労働省から技能審査として認められています。
認定資格認定の審査は「葬祭ディレクター技能審査協会」が運営しています。
認定される内容は?
葬祭ディレクターとは、葬儀を運営・進行していくために必要な知識や技術を持っていることを証明するものです。
そのため、葬祭ディレクターになるには葬儀に関する知識や技能が必要です。
試験は学科試験・実技試験の2つがあります。
実務経験も必要となるため、取得は簡単ではないと言えるでしょう。
資格には種類があるの?
葬祭ディレクターには「2級」と「1級」があります。
「2級」は、個人の葬儀を執り行える知識と技能を持っていることを証明します。
「1級」は、個人の葬儀から社葬まで、すべての葬儀を執り行える知識と技能を身につけている人が持つことができます。
葬祭ディレクターの仕事とは?
故人や遺族の気持ちに寄り添い、葬儀を行うのが葬祭ディレクターの仕事です。
お葬式は、急に執り行われることが多く、しかも短期間で準備しなくてはなりません。
遺族は大切な家族を失い、悲しみのさなかにあることでしょう。
その中で、故人や遺族の気持ちや希望に寄り添い、葬儀を行うのが葬祭ディレクターです。
何をするの?
葬祭ディレクターの仕事は、以下のように多岐にわたります。
- ご遺体の搬送・納棺
- 遺族との打ち合わせ
- 僧侶や神父などの手配・打ち合わせ
- 葬儀会場の手配や設営
- 供花・遺影写真・返礼品・料理など必要なものの手配
- 通夜・葬儀・告別式の進行
- 式司会
- 死亡届など手続きの代行
- 火葬場の手配
- 遺族のケアやサポート
- 見積書・請求書の作成
要するに、葬儀一般に関するすべての仕事に携わります。
このほか、四十九日の法要など葬儀が終わってからの仕事や、自分の葬儀について生前に相談をしておきたい人への対応なども仕事に含まれます。
また、コロナ禍にある現在では、オンライン葬儀など新しいサービスにも対応することも必要です。
このように、葬祭ディレクターになるには、葬儀というものに関してあらゆる知識と技術をもったプロフェッショナルでなくてはなりません。
どんな人が向いているの?
葬祭ディレクターには、以下のような人が向いていると言えるでしょう。
- 肉体的・精神的にタフである
- 冷静な判断ができる
- 細やかな気遣いができる
人は、いつ亡くなるか分かりません。
夜中に依頼が来ることも少なくなく、葬儀に関わる仕事は24時間体制であると言えるでしょう。
葬儀の準備期間は非常に短いため、突発的なできごとにも柔軟に対応しなければなりません。
スムーズに葬儀を執り行うためには、冷静な判断と迅速な行動が求められます。
また、悲しみ、動揺している遺族に濃やかな心遣いをし、寄り添うことが大切です。
その上で葬儀を組み立てていかなくてはなりません。
人によっては、生前に葬儀に関する希望を持っていることもあります。
ですから、故人や遺族の要望にできる限り応えていく精神と、それを実現する知識や技術も必要です。
葬祭ディレクターには、肉体的にも精神的にもタフで、人の人生の最後に寄り添う仕事を誇りに思える人が向いていると言えるでしょう。
資格を持っていた方がいい?
もちろん、資格を持っていなくても葬儀社やセレモニー会社で働くことはできます。
経済産業省による 2018年の調査によると、全国で葬儀業に携わる人は11万5070人でした。
現在、葬祭ディレクターの資格を持つ人は3万4千人ほどです。
ですから、葬儀業に携わる人の中での有資格者の割合はまだそれほど高いとは言えません。
高齢化社会の進行に伴い、葬儀社間の競争は激しくなると考えられます。
葬祭ディレクターの資格の有無は、その葬儀社の実力を判断する基準となるでしょう。
そのため、業界で生き残っていくために、この資格を取得する人や推奨する葬祭業者は増えると予想されます。
価値観の多様化でますます需要が高まる
近年、核家族化などライフスタイルの変化により、さまざまな形での葬儀が行われるようになってきました。
終活ブームから、生前に自分の葬儀について考える人も増えています。
このような価値観の多様化に柔軟に対応し、葬儀をプランニングできる葬祭ディレクターの需要は、今後高まっていくでしょう。
このような状況から、葬儀業界で働くには、葬祭ディレクターの資格は取得した方が良いと言えるでしょう。
葬祭ディレクターの資格を取るには?
では、葬祭ディレクターの資格を取得するには、葬祭ディレクター技能審査協会が行う試験を受験します。
受験の条件は?
葬祭ディレクターを受験するために必須となる学歴などは特にありません。
ただし、受験には実務経験が必要です。
「1級」「2級」の2種類があります。
1級の場合、5年以上の葬祭実務経験、2級の場合は2年以上の葬祭実務経験が必要となります。
ただし、協会が認定した葬祭教育機関の所定のカリキュラムを修了(見込含む)した場合は、2級の受験時、その期間を葬祭実務経験に算入できます。
受験前に、事業主から実務経験年数証明書を出してもらいましょう。
受験の内容は?
学科試験と実技試験があります。
学科試験では、葬儀に関する知識のほか、一般常識・宗教・法律・公衆衛生など幅広く出題されます。
実技試験では以下の実践的技術を審査します。
- 設備の設営技術を見る「幕張」
- スムーズな司会進行や丁寧・適切な言い回しができるかを見る「司会」
- 遺族の気持ちを汲み取りながら葬儀をコーディネートする能力があるかを見る「接遇」
1級の場合
- 学科試験
- 正誤判定問題50問
- 多肢選択問題50問
- 解答時間50分
- 実技試験
- 幕張(制限時間7分)
- 接遇(制限時間2分)
- 司会(制限時間6分)
- 実技筆記試験(60問、解答時間30分)
2級の場合
- 学科試験
- 正誤判定問題25問
- 多肢選択問題25問
- 解答時間30分
- 実技試験
- 幕張(制限時間7分)
- 接遇(制限時間2分)
- 司会(制限時間4分)
- 実技筆記試験(60問、解答時間30分)
合格の基準は?
1級、2級ともに以下の合格基準が定められています。
- 学科試験
70%以上の得点- 実技試験
幕張・接遇・司会・実技筆記のいずれも30%以上得点し、合計70%以上の得点
ただし、学科試験と実技試験のいずれか一方が基準点に達している場合は「一部合格者」となります。
同じ等級を再受験する場合には、合格している科目の受験が免除されます。
合格すると、1級はゴールド、2級はシルバーのIDカードが授与され、これをつけて業務にあたることができます。
受験の期日は?
技能審査試験は1級、2級ともに毎年1回以上実施しています。
災害など、やむを得ない事情で試験が実施不可能となった場合はホームページで告知されます。
合格するには?
葬祭ディレクターの資格試験には実務経験が必要なので、まずは葬儀社で働くことが必要です。
働きながら実務経験を積み、実技試験の練習を行い、資格試験に向けて勉強しましょう。
学科に関しては、葬祭ディレクターの資格取得に向けた参考書や問題集も発売されているので自分で勉強できます。
また、専門学校で勉強して知識を身につける方法もあります。
専門学校を出ていれば、葬儀社などへの就職もしやすくなるでしょう。
合格率は?
葬祭ディレクターの試験の合格率は以下のように比較的高いと言えるでしょう。
- 1級 約58%
- 2級 約67%
1級・2級ともに、参考書や問題集などで勉強すれば、学科試験での合格点はクリアできるでしょう。
ただ、実技試験に関しては、実務経験をどれだけ積んでいるかにかかってくるので、日々の業務をいかに身につけるかが大切です。
まとめ
日本の葬祭業は、許可を取得したり、何らかの届け出をしたりしなくても営業することができます。
また、葬祭ディレクターのような資格を取得する義務はありません。
しかし、葬儀は、故人の人生における最後の儀式です。
それだけに、葬儀に関する知識や技術、遺族や参列者にもきめ細かく対応できる質の高いサービス力を求めるのは自然なことでしょう。
もちろん、資格を持っていなくても、豊富な経験を持ち、遺族をサポートしてくれる葬儀社はあります。
逆に、葬儀ディレクターの資格さえ持っていれば、申し分のない葬儀を執り行ってくれるという保証はありません。
しかし、有資格者は、合格できるだけの経験と技術を持っています。
葬儀社を選ぶ際、資格の有無は参考の一つになるでしょう。