近年話題となっている終活。そのなかでも「エンディングノート」という名前を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
しかし、名前を聞いたことはあっても、実際にはどのようなことを書くノートなのかを知らないという人もいるかもしれません。または、エンディングノートについて少し知っていても、遺言書との違いを知らないという人もいます。
そこでエンディングノートはどのようなものなのか、遺言書との違いはどんなものなのか、ご説明します。
目次
「終活」生前整理とエンディングノート
代表的な「終活」・・・生前整理
最近、テレビや雑誌、新聞などメディアを通じて、「終活」という言葉を知ったという人も多いかと思います。
特に、高齢の方のなかには、実際に「終活」を意識している人もいるかもしれません。
終活とは、人生の終わりに向けた活動のことです。
生きている間に、自身の人生の終わりについて考えるのは、なかなか気が進まないという人も多いはずです。
しかし、人生の終わりはいつか来るもの。誰にとっても避けられないものであるがゆえに、最期を迎えるまでにどのような人生を送るか、亡くなった後に家族に何を遺すか……といったことを考え、行動に移すのが「終活」です。
終活のなかでも、現在広まっているのが生前整理です。
たとえば、家族が亡くなった後に遺品整理を行うことになった場合、遺品の処分や相続の問題など、作業量は膨大なものになります。
また、量の問題だけでなく、遺品整理は故人の遺志を尊重する形で進めなければいけませんが、持ち主が亡くなっている以上、どう対応すべきかわからないものも多々あります。
近年は一家庭における子どもの人数が減っており、子どもが1人しかいないという家庭も珍しくありません。
兄弟が複数人いれば、遺品整理作業も手分けをして行うことができますが、子どもが1人しかいなければ、全ての作業が1人に集中することもあります。
遺族の負担を選らすためのエンディングノート
生前整理とは、自身に「もしものこと」が起こる前に、自らの持ち物や情報を整理しておくことをいいます。
生前整理を行うことで、遺族は故人の遺志に基づき遺品を整理することができますし、どこに何が置かれているかわかると、遺品整理の際に遺族の負担は減るでしょう。
特に、遺された家族に負担をかけたくない。このような思いから、生前整理に至る高齢者の方が増えています。
この生前整理のなかでも、最も知られているもののひとつが、エンディングノート。「もしものこと」が起こった時に必要な情報を書き記しておくノートのことです。
現在では書店でもエンディングノートや、エンディングノートの書き方をレクチャーする書籍も販売されています。
一方で、エンディングノートは専用のものを使わなくても、市販されている一般的なノートを使っても構いません。
そのため、終活の第一歩としてエンディングノートに書き記し始めるという方も多いようです。
エンディングノートと遺言書の違い
エンディングノートには、自身が亡くなった後のために様々な情報を書き記しておく、という側面があります。
同様の性格を持つものとしては、遺言書が挙げられます。もちろん遺言書を作成することも、終活のひとつです。
とはいえ、どちらも自身が亡くなった後のために書くものであるとはいえ、遺言書とエンディングノートには大きな違いがあります。
その大きな違いとは、
- 遺言書…法的拘束力がある
- エンディングノート…法的拘束力がない
遺言書は法的拘束力がある
遺言書は主に、遺産の相続について故人の意思を表示するものです。
遺産相続については法律で定められていますが、遺言書の内容は法律よりも優先されます。
故人の遺言を無視した相続を行うことはできません。遺言書には、それだけの法的拘束力があるのです。
この「法的拘束力がある」という点が、遺言書とエンディングノートとの最大の違いではないでしょうか。
ただし、遺言書に書かれている内容全てに法的拘束力があるわけではなく、主に次の事項について遺言書で指定することができます。
- 財産処分
- 子どもの認知
- 相続人の廃除、または廃除の取り消し
- 相続分の指定
- 遺産分割方法の指定、または遺産分割の禁止
また、遺言書には次の3種類があります。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
自筆証書遺言
家庭裁判所の検認は必要ありませんが、ワープロやパソコンではなく、必ず自筆で書かなければいけません。
公正証書遺言
公証役場で作成します。ワープロやパソコンで作成されたものでも大丈夫です。家庭裁判所の検認も必要ありません。
秘密証書遺言
自筆証書遺言と公正証書遺言の特徴を合わせた形式です。遺言者本人が遺言書を作成し、公証役場で確認してもらいます。遺言書はワープロ・パソコンで作成しても大丈夫です。ただし、家庭裁判所の検認が必要です。
自筆証書遺言と秘密証書遺言は、形式に則って書かなければ無効になる可能性があるほど、厳しいものです。
また、公正証書遺言は、財産の価格によって作成費用を公証役場に支払わなければいけません。価格によっては費用も高額となります。
いずれの形式でも遺言書の作成にあたっては、弁護士など法律の専門家に相談したほうがよいでしょう。それだけ時間と労力が必要となるからです。
エンディングノートに法的拘束力はない
遺言書と異なり、エンディングノートには法的な拘束力はありません。そのため、「法的に向こうになる」ということがないので、特に決まった形式で書く必要もありません。
そもそもエンディングノートには、必ず書かなければいけないこと、あるいは書いてはいけないことなど、その内容が決められているわけではありません。
全て、書く人に委ねられています。
こういったところも、「エンディングノートは書きやすい」と感じられる部分ではないでしょうか。
とはいえ、「書くべき内容は決められていない」となると、反対に「何を書けばよいのかわからない」と思う人も、少なくないようです。
エンディングノートとは、遺族に自身の意思を伝えるためのものです。
自分が亡くなってしまった後では、遺族に伝えたいことがあっても伝えられません。そんな自体に備えるために、エンディングノートを書くことが大切なのです。
それを踏まえたうえで、エンディングノートに書く内容を考えてみましょう。
- 病気を患った時の対応
- どんな葬儀を行ってもらいたいか
- 遺品の取扱い
病気を患った時の対応
最近では病院のことや、病気を患った時にどんな対応をしてほしいのかを書く人も増えています。これは認知症などによって意思表示ができなくなった時に備えるためです。
どんな葬儀を行ってもらいたいか
自身のなかに「どんな葬儀を行ってもらいたいか」「葬儀には誰を呼んでほしいか」という希望があれば、その内容をエンディングノートに書いてみましょう。
遺品の取扱い
遺品のなかでも、「処分してよいもの」「形見分け・家族や親族に引き継いでもらいたいもの」など、取扱いに希望があれば、その内容も詳しく記しておいたほうがよいでしょう。
加えて、生年月日や自分史、友人関係など「エンディングノートに自分の全てを託す」といった気持ちで書いていくと、しっかりとしたエンディングノートが完成するかと思います。
注意しておかなければいけないのは、エンディングノートへ相続について記しても、法的拘束力はありません。
遺言書に書くべき「法的拘束力が必要なもの」と、「自身の希望」を記すエンディングノートの内容をはっきりと区別しておくことで、亡くなった後のトラブルも避けることができるはずです。
スマホでエンディングノートを書く
エンディングノートは「紙のノートに書く」のが一般的ですが、デメリットがないわけではありません。
紙の場合、濡れる・燃える・風化していく、といったことで、遺族が読めなくなってしまう可能性もあります。そのノート自体を紛失してしまうこともあるでしょう。
そこで最近は、スマホでエンディングノートを書き、データを保存しておくという人も増えているようです。
スマホのメモ帳アプリやワープロソフトを使って、同じ内容を紙ではなくデータに記しておくのです
もちろん、スマホ自体を紛失してしまう可能性もありますが、できればPCなど他の端末にデータをバックアップしておくとよいでしょう。
さらにエンディングノートのアプリも登場しています。内容も「エンディングノートに書き記しておくべきこと」に特化しているため、それに従って内容を埋めていくだけで完成します。
アプリを使えば、エンディングノートはスマホ本体ではなく、アプリを配信している会社に保存されるため、遺族のスマホからエンディングノートを閲覧することも可能です。
スマホや写真や動画も保存できるので、紙のノートだけでは実現できなかった文章以外の情報も含まれたエンディングノートを作ることができるという利点があります。
いまやスマホでなんでも行うことができる時代。終活もスマホで行えるようになっています。
自分に合った方法でエンディングノートを残しておくことにより、無理なく遺族に意思を伝えることができるでしょう。
エンディングノートの書き方に迷った時は……
エンディングノートは、基本的にどのようなことを書いても問題ありませんが、それでもエンディングノートの書き方に迷うこともあります
その場合は、「終活セミナー」を利用してみることもご検討ください。
「終活セミナー」とは全国各地の葬儀社などを会場として開催されているもので、終活としてどのようなことを行うべきなのかを学ぶことができたり、他の参加者と一緒にセミナー内で終活を進めていくこともできます。
もちろん、終活セミナーのなかには、エンディングノートの書き方に関するセミナーも含まれています。
このセミナーでは「エンディングノートとはどのようなものなのか」「エンディングノートを書く際に押さえておきたいポイント」などを専門家から教えてもらいながら、一緒にエンディングノートを作っていくというものです。
このセミナーに参加することで、終了時にはおおよそのエンディングノートは完成していますし、ポイントがわかっているので、帰宅後でもすぐに書き加えていくことができます。
セミナーへの参加には、もうひとつ大きなメリットがあります。
それは「人と接することができる」という点です。
たとえば、高齢になるにつれ外出する機会が減り、人と接する機会も減ってしまうケースも少なくないでしょう。
終活を行ううえで悩みを持っていたとしても、相談する相手がおらず、なかなか終活を進めることができない、という状態になりかねません。
しかし、終活セミナーに参加している人たちは、同じ疑問や不安を抱き、それを解決するために参加している人ばかり。参加者同士で悩みや不安について話し合ったり、繋がりができたりすることもあるのです。
エンディングノートは終活のなかでも代表的なものであり、認知度は高くなりつつありますが、実際に書き始めている人の割合は、まだそれほど高くはありません。
その理由のひとつに、エンディングノートが実際どのようなものかわからず、内容を知るための勉強に時間をかけるくらいなら、エンディングノートは書かないと考える人もいるでしょう。
エンディングノートは、亡くなった後でも遺族にメッセージを残すチャンスです。そのチャンスを生かさないのは、もったいないこと。
もし終活・生前整理、エンディングノートについて悩みを抱えている方は、ぜひ一度、遺品整理業者にご相談ください。
お部屋にあるものをどう整理しておけばよいのか、エンディングノートに何を書き記しておくべきか、などプロの目からアドバイスいたします。
セミナーの参加と同様に、一人では解決できなかった悩みも、すぐに解消されるはずです。