すっかりお馴染みとなったワード「終活」。
芸能人にも終活を行っている人が多いと見聞きして、身近に感じている人もいるのではないでしょうか。
終活の内容にはさまざまですが、中でも所有している不動産は面倒ごとが起きやすい相続財産です。
不動産の整理をしないまま相続が発生してしまうと、残された家族や相続人がたいへんになってしまいます。
相続トラブルに発展したり、空き家問題につながるケースも増えているのです。
このようなトラブルを回避するためには、どうすればよいのでしょうか。
今回は、終活で考えておくべき不動産について見ていきましょう。
目次
不動産の相続方法は?
相続において、不動産がトラブルを起こしやすいのはなぜでしょうか。
不動産は、その価値を査定するのが難しく、また、現金などのようにすぐ、平等に分けることが難しいからです。
不動産を相続する場合、どのように分割するのでしょうか。
現物分割
「現物分割」は、1人の相続人が1つの不動産をそのまま取得する方法です。
相続手続きは、相続人が所有権移転の登記をするだけです。
相続人のうち誰かが不動産を引き継いで所有する現物分割は、不動産をそのまま残すことができるのが最大のメリットです。
また、現物分割は、不動産の厳密な評価を行う必要が基本的にありません。
それで、評価問題でトラブルになる可能性が比較的低くなるのも良いところです。
ただし、複数の相続人がいる場合、不公平になりやすい、ほかの相続人が納得しにくいというデメリットもあります。
代償分割
「代償分割」は、相続人のうちの1人がその不動産を相続し、その代わりに、他の相続人に現金などを支払う方法です。
たとえば、相続人が2人いたとして、時価1千万円の土地があるとします。
相続人Aがこの土地を相続し、相続人Bに500万円を支払います。
このように、代償分割では公平な遺産分割が可能です。
ただし、この方法を利用する場合には、不動産を取得する相続人に代償金の支払い能力がなくては成立しません。
換価分割
その家を売却して現金に変え、そのお金を平等に分ける方法です。
たとえば、売却すると1千万円になる土地があり、同じ割合で遺産を取得する立場の相続人が5人いるとします。
土地を売却して得た1千万円を5人で平等に分け、200万ずつ取得することになります。
非常に公平な方法ですが、不動産を売却することになるため、先祖代々の土地を売りたくないと思う人がいる場合、この方法を利用することは難しくなります。
また、不動産がスムーズに売却できるかどうか、また、売却できても、手数料などの負担が発生するという問題も出てきます。
共有分割
遺産である建物を、相続人の共有名義とする方法です。
将来、売却を考えた場合、相続人全員の同意が必要になるため、トラブルを招きやすい方法です。
土地の場合「分筆」によっていくつかに分けることもできます。
しかし、土地が小さくなると用途が限られてくるため、土地の価値が下がってしまうことがあります。
不動産の終活が必要な理由は?
終活は、老後の生活を安心して送るためのものです。
しかし、特に自宅の終活は、なかなか腰を上げられない人も多いのではないでしょうか。
なぜ、不動産の終活が必要なのかを見ていきましょう。
老後資金の調達
経済が不安定な中、老後資金に不安がある人も多いのではないでしょうか。
そんなとき、自宅を売却すれば、まとまったお金を一度に得られます。
そのお金は、老後資金として活用したり、施設に入居する際の初期費用や利用料に充てることができます。
相続対策
相続財産が基礎控除額を超える場合、相続時に相続税が課されます。
自宅を売却し、これを生前贈与に充てれば、少しずつ財産を移動させていくことができます。
生前贈与は、毎年110万円までは課税されないので、相続税対策になります。
不動産は分割が難しく、相続トラブルが起きることも少なくありません。
そのため、生前に、自宅を引き継いでもらいたい人に贈与しておくのも相続トラブルを避ける方法の一つです。
節税
財産の一部を不動産に変えたり、所有不動産を活用したりすると、節税になるケースがあります。
現金と不動産では相続税の評価方法が異なるため、資産を不動産に替えることで相続税を圧縮できるのです。
また、土地や建物を賃貸に出すことによって、評価額を低くすることもできます。
リフレッシュ
不動産の終活によって、現在の住環境をガラッと変えることもできます。
田舎暮らしを始めたり、逆に便利な都会に出たり、新しい生活を始めて老後を楽しむのも悪くありません。
また、二世帯住宅に建て替えるなどして、子ども世帯と同居するという選択肢もあります。
終活で不動産について考える際のポイントとは?
今後の暮らし方や住まいを考える際、まず確認しておくべきポイントとは何でしょうか。
相続した後、住むかどうか
不動産を相続したあと、相続した子や孫が住むつもりかどうか確認しておきましょう。
住む場合は、相続時のトラブルを避けるため、事前に相続人の間で話し合いをする必要があります。
住まない場合は、売却し、現金に換えておいたほうがよいかもしれません。
相続トラブルを起こさないために
対象の家に、住む相続人と住まない相続人がいる場合は注意が必要です。
住む予定の相続人は、住まない相続人に家賃分の現金など対価を支払うケースが出てきます。
しかし、住む予定の相続人に資金がなく代償金を支払えないと、不法占拠とみなされることもあるのです。
相続後のことについても、しっかり確認しておく必要があります。
不動産の終活方法は?
不動産に関するトラブルを避けるためには、終活で自宅不動産をどうするかを早めに考えておきましょう。
どのような選択肢があるのでしょうか。
そのまま住む
相続した人が住んでくれれば空き家になる心配はありません。
ただ、経年劣化していきますので、リフォームをしたり、二世帯住宅への建て替えを考える必要は出てくることがあるでしょう。
相続人の数が多く、自宅不動産を相続しない人がいる場合は、遺産分割対策として、金融資産や生命保険などの利用を考える必要もあるでしょう。
売却する
自分の死後、誰も住まないのであれば、生前に売却するのも1つの方法です。
高齢者夫婦には大きい家に住んでいるなら、コンパクトで利便性の高いマンションや高齢者向けの住宅、有料老人ホームなどへの住み替えを考えましょう。
死後に売却して相続人で分割する相続方法もありますが、その時に現在と同じ価値があるかどうかはわかりません。
また、買い手がつかない場合も考えられるので、生前に売っておくことも選択肢に入れましょう。
活用する
立地条件が良い場所なら、賃貸に出したり、マンション・アパートなど賃貸住宅などに建て替えるのも良いでしょう。
賃貸料が入るようになれば、老後の生活費として使うことができます。
ただ、建て替えの費用をどうするかを考えなくてはなりません。
また、相続人が複数いる場合は、その賃貸住宅を含めた遺産分割対策を考える必要があるでしょう。
住み続けながら家を処分する
自宅に住み続けながら、同時に活用する方法もあります。
リバースモーゲージ
不動産を相続させない、相続させる必要がない場合は「リバースモーゲージ」を利用しましょう。
リバースモーゲージとは、自宅(持ち家)を担保にし、そのまま住み続けながら銀行から融資を受ける仕組みのローンです。
リバース=「逆」、モーゲージ=「抵当・抵当権」という意味です。
一般的な住宅ローンは、一括で借り入れた融資額を月々返済していく形です。
しかし、リバースモーゲージは、毎月、あるいは一括で借り入れた分の残高を最後にまとめて返済する仕組みです。
借入人が死亡したとき、担保となっていた不動産を処分し、借入金を返済します。
現在の住居や生活圏は変わらないため、高齢になってからの引っ越しや、新しい環境での生活が不安な人は、この制度を利用すれば安心です。
リースバック
「リースバック」は、正式名称を「セール・アンド・リースバック」といい、いま住んでいる住宅を売却し、買った人から借りて住む方法です。
リースバックは、まとまった資金が一括で入手できるうえ、売却後も住み続けることができます。
家を売却して短期間でまとまった資金を調達可能です。
ですから、高齢者向け住宅などへの転居までのつなぎとしてリースバックを利用するのも良いでしょう。
まとめ
相続の中でも、不動産は手続きも煩雑で、面倒なことも多いものです。
愛着のある自宅が空き家となって荒れてしまったり、相続人同士のトラブルや争いになってしまったりするのは悲しいことです。
生前にしっかりと話し合い、早めに準備をしておきましょう。