仏壇の購入・設置・処分・供養まで~意外と知らない仏壇最新事情

仏壇の購入・設置・処分・供養まで~意外と知らない仏壇最新事情

夏休みにおじいちゃん、おばあちゃんの家に遊びに行って、仏壇に手を合わせて経験のある人は多いでしょう。
お盆などの行事を体験したことのある人も多いかもしれませんね。

でも、改めて考えてみると、仏壇って何のためにあるのでしょうか?
また、仏壇が家にない人も多く、日々の仏壇のお世話を知らない人もたくさんいます。
それでも仏壇は必要なものなのでしょうか。

歴史から意味まで、仏壇についてみていきましょう。

仏壇とは?

仏壇は、仏像や仏具を飾り、仏さまを祀る壇・台です。
家庭に置かれる仏壇は、寺院にある仏壇(内陣)を小型にして、厨子と一体化し、箱型にしたもの。
つまり、家の中にある小さなお寺のような存在なのです。
仏壇の中央にある台の部分は「須弥壇」と呼ばれます。

これは、仏教の宇宙観において、世界の中央にそびえるとされる山「須弥山」を表したもの。これより上は清浄な仏の世界、下は人間の生きる地上世界だと言えます。

仏の世界である須弥壇の上には「宮殿」がしつらえられ、この中にご本尊である仏像や仏画などが祀られます。

仏壇は、様々な彫刻や蒔絵などによって荘厳に装飾されています。
これらは汚れのない清浄な世界「浄土」を表しているのです。

このように、仏壇はもともと仏さまをお祀りするためのものでした。
そこに日本人の伝統的な習慣である先祖を敬う心、信仰が結びついて、現在のように変化して行ったのです。

こうして、仏壇は日本人にとって心の拠り所となっています。

仏壇の歴史

  • 仏壇の始まりは?
  • 日本最古の仏壇は?
  • 一般庶民が仏壇を置くようになったのは?

仏壇の始まりは?

仏壇の始まりは今から1千年以上前、天武天皇の時代といわれています。
「日本書紀・第二十九巻」に、「白鳳14(686)年『諸国の家ごとに仏舎を作り、仏像や経巻を置き、礼拝供養せよ』という天武天皇の勅が出された」と記されており、これが日本の仏壇の始まりとされています。

もっとも、ここで言う「家」とは一般庶民の家庭ではなく、国司の庁舎を指しているようです。
ちなみに、その勅が出された3月27日は「仏壇の日」に制定されています。

日本最古の仏壇は?

「玉虫厨子」をご存知の人も多いでしょう。
法隆寺に所蔵されている国宝で、歴史の教科書には必ず載っていますね。
飛鳥時代(7世紀)、鞍作鳥によって作られたこの厨子は、日本最古の仏壇といわれています。

日本最古の仏壇・玉虫厨子が置かれる法隆寺
法隆寺

玉虫厨子には、周囲の装飾の金具の下に約2500匹以上の玉虫の羽が使用されたといわれ、ここから「玉虫厨子」という名がつきました。
須弥座の上に宮殿が載っており、高さは233cm。檜材を使っていますが、蓮弁を彫り出した部分のみ樟材が使われています。
框などの細長い部材には金銅透彫の金具が施されています。

全面に漆が塗装され、扉、羽目板などには朱、黄、緑の顔料を用いた絵画が描かれています。
宮殿部の扉・須弥山部には、正面に「舎利供養図」、向かって左側に「施身聞偈図」、右側面に「捨身飼虎図」、背面に「須弥山世界図」が描かれています。

玉虫厨子は実際の仏堂建築の外観を模した造りになっており、飛鳥時代の建築、絵画、漆工芸を知るうえで貴重な資料とされています。

一般庶民が仏壇を置くようになったのは?

蓮如上人による布教

奈良時代、国策として仏教が発展しましたが、この頃の仏教はまだ貴族階級だけのもので、仏壇は一般庶民には縁がありませんでした。
鎌倉時代に入ると、仏教は一般庶民に少しずつ広まり始めました。
さらに時代が下って室町時代中期になると、庶民にも仏教が浸透していきます。

この時代、浄土真宗の蓮如上人は仏教の信仰を深めるために各地を回り、皆が仏壇を持つよう説きました。
そのため、一般家庭にも仏壇が置かれるようになっていったのです。

家屋構造の変化

仏壇の普及は家屋構造の変化から

家屋構造の変化も、仏壇が広まった一因と考えられています。

仏壇が普及する前は、一般家庭には祖先を祀る祭壇のようなものが置かれていました。
室町時代に入って、「書院造り」という住宅様式ができ、床の間という空間ができたのです。

書院とは、書斎を兼ねた居間のこと。書院造りとは、この書院を建物の中心にした武家住宅の形式のことです。
のちにこの書院が、物飾りのスペースであった押し板と一体化して座敷の「床の間」となり、ここに仏壇を祀るようになったのです。

仏壇を設置するときの注意点は?

では、現代において、仏壇を家庭に設置する場合の注意点をみていきましょう。

  • 寸法を測る
  • 宗派を確認する
  • 仏壇はどこに置けばいいの?
  • 仏壇は、どの方向に向けて置くべき?
  • 開眼法要を行う

寸法を測る

仏壇を購入する前に、まず仏壇を安置する場所を決めましょう。

仏壇を購入するときは必ず部屋の寸法を測っておきましょう

場所が決まったら、必ず高さ、幅、奥行きなどの寸法をきちんと測ってください。
特に、仏間や押入れの上部に安置する場合は注意が必要です。
仏壇の扉は観音開きなので、本体の寸法だけではなく、扉が左右に開くスペースも計算に入れておかなければ、買ったものの部屋に入らないという悲劇になってしまいます。

また、つい忘れがちなのが、マンションの玄関や部屋の間口の大きさです。
仏壇のサイズは部屋に適しているものの、部屋の入り口が狭くて入らなかったという事例が起こっています。
安置する場所だけでなく、玄関や部屋の間口の寸法も必ず測っておきましょう。

家の新築に合わせて仏壇を購入する場合は、先に仏壇を決めてから、そのサイズに合った仏間や安置スペースをつくるときちんと収まります。

宗派を確認する

仏壇は、宗派によって形や色が違ったり、中に収めるご本尊や仏具が異なったりします。まずは仏具店に相談しましょう。
自分の家の宗派がわからない場合は、菩提寺に確認しておきましょう。

仏壇はどこに置けばいいの?

仏壇を置く最適の場所は各家庭の間取りによって異なります。ポイントは、

  • 直射日光が当たらない、風通しがよくて湿気が少ない場所
  • エアコンの風が当たらない場所
  • 落ち着いて礼拝でき、人の出入りなど騒がしくない場所
  • お水やお供えなど給仕しやすく、おまいりしやすい場所

日常の生活空間から離れすぎていると、毎日の礼拝や給仕が面倒になってしまいます。
静かで、なおかつ行きやすい部屋が望ましいでしょう。
また、直射日光や湿気、冷暖房の風は仏壇を傷めてしまうので避けてください。

仏壇は、床の間や押入れの上部、タンスやサイドボードなどの上に置いても大丈夫です。
ただし、テレビやオーディオラックの上など、音がするものの上は避けます。

仏壇の高さにも気をつけましょう。
座っておまいりするとき、本尊の位置が自分の目の位置より少し上になるように置きます。
立っておまいりする場合は、ご本尊が胸よりも少し上くらいの位置になるように安置し、ご本尊を見下ろす形にならないようにします。

仏壇は、どの方向に向けて置くべき?

仏壇の方向は?

仏教では十方どの方角にも仏がいるとされているので、仏壇を置く方角に吉凶はありません。ただし、一般的に北向きは避けるようです。
仏壇を向ける方向については諸説あります。

南面北座

ご本尊を南向きに安置し、北に向かって礼拝します。北半球では南が明るい方向なので、南向きが上座とされています。そのため、仏壇は南向きに置きます。

西方浄土

仏壇を東向きに置き、西向きに合掌する形にします。ご本尊を礼拝すると同時に西方浄土を拝めるというわけです。

本山向き

ご本尊とともに、その宗派の本山に手を合わせられる方向におきます。つまり。本山に背を向ける形で仏壇を置きます。この置き方は、本山と自宅との位置関係で方向が変わります。

開眼法要を行う

新しい仏壇を購入したら、菩提寺の僧侶を招き、ご本尊や位牌に魂を入れてもらう「開眼法要」を行います。

仏壇に本尊と位牌を祀り、必要な仏具を飾ってから菩提寺の僧侶に来ていただき、読経をしてもらいます。
この法要を行うことによって、単なるモノに過ぎなかった仏像や位牌に仏さまやご先祖さまが宿るのです。

僧侶に家に来ていただくのではなく、本尊と位牌を持参して菩提寺に出向き、法要をお願いし、帰宅後、仏壇に安置するという方法もあります。

仏壇の処分について

コンパクトな仏壇が増えているとは言え、昔ながらの大きな仏壇もまだまだあります。
大きな仏壇を処分したいときは、どうすればよいのでしょうか?

仏壇には、故人やご先祖さまの魂が宿っています。
仏壇を処分する場合、必ず「閉眼供養」という法要を行わなくてはなりません。

閉眼供養は、仏壇から故人や先祖の魂を抜く儀式で、開眼法要と同様に僧侶を招き、お経をあげてもらいます。
この供養をすることによって、仏壇は「単なるモノ」に戻り、粗大ゴミとして処分することができるようになるのです。

仏壇まわりの用具に関しては、位牌・遺影は仏壇と同じく閉眼供養が必要です。
それ以外の花立てや、おりん、木魚などは単なる道具ですので、供養は必要ありません。
素材を確認し、自治体のルールに従って処分しましょう。

仏壇はお焚き上げするのが望ましいです

法要は菩提寺に依頼するのが一般的です。
菩提寺が分からなければ、葬儀や法要でお世話になったお寺に依頼するとよいでしょう。
また、仏壇を購入した仏具店に相談してみてください。

最近では、環境への配慮から、お焚き上げができないお寺も増えています。
こんな場合、遺品整理業者に依頼する方法もあります。
近年、遺品を仕分けするだけでなく、遺品の供養やお焚き上げを請け負う業者が増えてきました。
処分に困った場合は、相談してみましょう。ただし、宗派については必ず確認しておいてください。

現代の仏壇

仏壇と言えば、仏間に置かれた大きなものを想像するのではないでしょうか?
しかし、住宅事情や受け継ぎ手の事情によって、仏壇は変化しています。

マンションなど集合住宅に暮らす人が増え、畳の部屋はフローリングに変わりました。
そんな住宅事情の変化に合わせて、お仏壇も変わっています。

昭和40年代ごろから、核家族化やマンション世帯の増加に伴い「新型仏壇」と呼ばれるタイプのお仏壇が登場し始めました。
さらに特に大きく仏壇のデザインが変わったきっかけは、フローリングのブームでした。

確かに、マンションのフローリングに従来の仏壇を置いてもなんだか合わないですよね。
そこで、マンションのインテリアに合う家具風の仏壇が登場したのです。

仏壇も時代とともに変化します

これまでのような金色や黒ではなく、木目調のブラウンが主流になりました。
また、薄型テレビの普及に伴い、テレビボードと合わせやすいように奥行きをスリム化。
扉を開けても側面に収納できる省スペース設計を施し、さらには同じ素材の家具とコーディネートが可能なものまで出てきました。

しかし、考えてみれば仏壇という存在が消えるのではなく、現代の住宅事情とニーズに合わせながら残っていくのは喜ばしいこと。
従来の仏壇は、大切に受け継ぎたくてもできないケースが増えています。
インテリアにもマッチし、おしゃれな雰囲気で手を合わせられるのであればいいかもしれませんね。

この記事の監修をしたゴミ屋敷の専門家

氏名:新家 喜夫

年間2,500件以上のゴミ屋敷を片付け実績を持つ「ゴミ屋敷バスター七福神」を全国で展開する株式会社テンシュカクの代表取締役。ゴミ屋敷清掃士認定協会理事長。