親の生前整理、はかどらせる為の声掛け心掛け

親の生前整理、はかどらせる為の声掛け心掛け

親が暮らしている家がある限り、いつかは片付けをしなくてはならない時がきます。
しかし、親が亡くなった後に行う遺品整理では、故人が大切にしていたものや価値があるものを見極めるのは意外と難しいもの。
そこで、親が元気なうちから始めたいのが生前整理です。
しかし、親と一緒に生前整理をするのは簡単なことではありません。
よかれと思ってしたことが親を怒らせてしまったり、やる気を失わせてしまったりすることもあるようです。
そこで今回は、親の生前整理を進めるコツや、スムーズに勧めるためのポイントについて見ていきましょう。

親に生前整理をさせたい息子

生前整理とは?

「終活」のひとつとして認知度も上がってきた生前整理。
生前整理とは、存命のうちに持ち物や財産などを整理し、不要なものを処分しておくことです。

生前整理で行うことは?

生前整理では、どのようなことをするのでしょうか。

  • 不用品の処分など家の整理
  • 預貯金や不動産など財産に関して整理・目録作成
  • 遺言書の作成
  • スマホやパソコンの中にあるデータ、SNSのアカウント情報、オンラインサービスなどデジタル情報の整理
  • お葬式やお墓の準備
  • エンディングノートの作成

といったものが主な内容です。

生前整理のメリットとは?

生前整理を勧める娘

生前整理のメリットは、不要なものを処分できるだけではありません。
ものを減らすと、タンスや押入れ、部屋全体の風通しが良くなり、病気の元になるカビや雑菌の繁殖を抑えることができるので、清潔で健康的な生活を送ることができます。

また、家の中が片付くと動線が良くなるため、歩くたび何かにぶつかったり、つまづいたりするようなことがなくなります。
高齢になるほど体のコントロールが効かなくなり、ちょっとしたことでも大怪我につながってしまう可能性があります。
高齢者の骨折や入院は認知症の発症にもつながるため、生前整理を行って動きやすい室内にするのは大切です。

人一人が亡くなったあと、残されたものを片付けるのは大変なことです。
もしも在宅介護が始まったり、介護施設に入居することになったりした場合、それが決まってから片付けを始めるのでは大変です。
元気なうちから始めれば、親本人も納得のいく片付けができると同時に、暮らしやすい環境を整えることができます。

生前整理をスムーズに進めるには?

自分が育った家であっても、実家は自分のものではありません。
実家は親の所有物です。
したがって、実家の中にあるものは、親の許可を得てから処分するのが筋です。
親の許可を得ず勝手に物を捨ててしまうと、トラブルに発展してしまうこともあります。
親の生前整理は、どうすればスムーズに進むのでしょうか。
そのポイントを見ていきましょう。

親目線で考える

繰り返しになりますが、実家の片づけをするには親の承諾が必要です。
子どもの目からは、ゴチャゴチャとものの溢れる家に見えても、親本人は暮らしやすいと感じているかもしれません。
親であっても、感じ方や考え方はそれぞれです。
ましてや、長年生活してきたライフスタイルを変えるのは難しいもの。
きれいになるからといって、どんどん捨てればいいというわけではありません。
大切なのは、まず親の気持ちを考えることです。
その上で、「清潔にすると病気にかかりにくいよ」「こうした方が動きやすいんじゃない?」など、目的を共有しましょう。
あくまで、親のことを心配しているというスタンスで、コミュニケーションを取りながら進めることが大切です。

急がない

生前整理を先送りにする父

高齢者にとって、長時間の作業は、気力・体力的につらいものです。
無理に早く終わらせようとすると、体調を崩したり、生前整理自体が嫌になったりしかねません。
そうならないよう、親のペースに合わせて進めましょう。
たとえば、実家に帰省するたびに、一緒に片付ける習慣をつける、範囲を決めて行うなど、ゆっくり行うとよいでしょう。

保留箱を作る

生前整理で大変なのが、保管するものと捨てるものの判断です。
片付けながら、取っておくものと処分するものを仕分けしていきますが、中にはすぐに判断がつかないものもあります。
そんな時のため「保留箱」を作っておきましょう。
迷ったものは保留箱に入れ、時間をおいて処分するか、とっておくかを考えます。

専門業者を利用する

生前整理をスムーズに行うポイントとして、専門業者に依頼するという方法もあります。
親世代は、その道のプロや専門家に対して信頼をおく傾向が強く、子どもが言って聞かなくても、専門家の言うことなら聞いてくれるというケースも少なくありません。
生前整理に関しては、片付けのアドバイザーや遺品整理業者に依頼するとよいでしょう。
遺品整理業者は、本来は人が亡くなったあとに遺品の片付けを行う業者ですが、近年では生前整理のアドバイスや代行も行うところが増えています。
遺品整理の専門家だけに、何を残しておくべきか、また、何が必要かの判断に長けており、素人では分からないような点にも気付いてくれます。
また、まだ使えるものの買い取り、不用品の処分、捨てにくいものの供養、エンディングノートの書き方指導や、葬儀・お墓に関してまで、さまざまな相談をすることができます。
子ども世代が多忙でなかなか一緒に片付けができないような場合、問い合わせてみるとよいでしょう。

親をその気にさせる心がけとは?

生前整理を子供に勧められた夫婦

では、スムーズに生前整理を行うために心がけるべきポイントを見ていきましょう。

まず自分の持ち物を片付ける

独立したのに、自分のものが実家に大量に残ったままになっていませんか?
子どもが残したものは、親にとって大きな負担になります。
自分のものを放置しているのに、親に生前整理を勧めても説得力がありませんよね。
生前整理の前に、自分の部屋を片付けましょう。
その様子を見れば、親をやらなくてはという気持ちにさせやすくなります。

早い時期から勧める

年齢を重ねると、どうしても体力・気力は衰えてきます。
特に、ものを動かしたり、まとめて捨てたりという作業はこたえるものです。
また、生前整理の必要性を説明しても、親がその気になるまで時間がかかることも考えられます。
そのため、生前整理は、親が少しでも若く、元気なうちに始めましょう。

親の安全・安心のためと伝える

生前整理は、親が亡くなった後に心配がないために行うと説明しても、「そんな先のこと」と実感を伴わない親は少なくありません。
それどころか「縁起でもない」と怒らせてしまうケースもあります。
そこで、生前整理は、親の安全・安心のために行うのだと説明しましょう。
親を心配し、清潔で健康な生活を送ってもらいたい気持ちを伝えることが大切です。

メディアを利用する

近年、生前整理に関する情報は、雑誌やテレビ番組のメディアで取り上げられることが多くなりました。
これらのメディアを使い、「最近こういうのが流行っているんだね」などと、親が注目してくれそうな情報を伝えましょう。

家族全体で取り組む

兄妹姉妹がいる人は、一致団結して生前整理に取り組みましょう。
子どもたちが揃って生前整理を勧めれば、親もその気になってくれる可能性が高くなります。
家族みんなで協力することで、負担も減らせますよ。

生前整理がはかどる声がけとは?

生前整理を説得する日

生前整理をスタートさせたら、途中で嫌になったり、やめたりしないよう、親を励ましましょう。

「せっかくだから、飾っておこうよ」

高齢者にとって、ものは人生の証であり、それを捨てることは自分の過去や存在を捨ててしまうような気持ちになることがあります。
そこで、むやみに捨てるのではなく、整理整頓を促しましょう。

「必要な人に使ってもらおうよ」

戦後間もない時期を生きてきた高齢者は、ものを捨てることに罪悪感を感じる人もいます。
まだ使えるものであれば、誰かにあげたり寄付したりなど、別の使い道を提案しましょう。

「とりあえず保留しようか」

どうしても捨てられない、いつか価値が出るかもしれないと思っているものは、その場で無理に捨てさせず保留箱に入れましょう。

「売れたりするかもよ?」

よくよく考えれば不要なものでも、いつか使うかもしれない、高かったから、ブランドものだから、というような理由で捨てられない場合は、フリマアプリなどを勧めてみましょう。
最近、フリマアプリを楽しむ高齢者が増えています。
スマホさえあれば簡単に出品できるので、手軽に始められます。
自分でものを売買する楽しさがわかれば、片付けもスピードアップするかもしれません。

「腰痛が治ったから、片付けを手伝うよ」

高齢者になると、現在の状態や生活の変化を好まない傾向が強くなるようです。
また「自分はまだ若いし、先が長い」「病院のお世話になんて、なったことがない」などど、危機回避の意識が薄い人も多いようです。
その気になればいつでもできる、と思い込んでいる親には、子どももいつまでも若くないんだという現実をソフトに伝えてみましょう。

「今日は○○さんが来るよ」

やはり、“人の目”は大切です。
来客がなくなると、重い腰はますます重くなります。
来客のほか、たとえばエアコンのクリーニングを業者に依頼するなど、他人が自宅に来るのは良い刺激になります。
他人の目を考え、掃除をしたり身綺麗にしたりするのは大切なこと。
生活のハリにもなりますよ。

まとめ

生前整理は、親だけでなく、残される家族のためにも行うものです。
親とよく話し合い、親の気持ちを尊重しながら、楽しく型付けができたらいいですね。

この記事の監修をしたゴミ屋敷の専門家

氏名:新家 喜夫

年間2,500件以上のゴミ屋敷を片付け実績を持つ「ゴミ屋敷バスター七福神」を全国で展開する株式会社テンシュカクの代表取締役。ゴミ屋敷清掃士認定協会理事長。