「終活」という言葉が提唱され、社会的に浸透して久しいですね。さまざまな書籍が出版され、支援する団体ができ、終活のためのセミナーも活況を見せています。
ところで最近は、「老活」という言葉が新たに出てきているのをご存知でしょうか。
今回は、「老活」がどんなものなのか、見ていきましょう。
老活とは?
趣味を楽しんだり、運動をしたり、家に閉じこもらず、外で活動するシニア世代が増えています。
人生100年時代。もしもの時に備えて行う「終活」の必要性は頭で理解できても、心のどこかでは「でも、まだまだ元気なんだけどな・・・」と感じる人も少なくないのではないでしょうか。
人生、「まだまだ」と考えるか、「そろそろ」と考えるかは人それぞれ。「まだまだ」と思っているのに「最期の準備に入る」ということに、抵抗があるのは無理もないことです。
そこで登場したのが「老活」です。
人間、誰しも年をとるのが当たり前。そして、年齢を重ねても、豊かで幸せな生活を送りたいと願うのも当たり前。そこで、最後の時期のことを考えるのではなく、いかに自分らしく年齢を重ねるかにスポットを当てたのが「老活」なのです。
「亀の甲より年の功」といいますが、年齢を重ねるということは、経験を重ね、人間として豊かになっていくことです。たとえば、定年で会社をリタイアしたとしても、そこで得られたものが消えてなくなるわけではありませんし、捨てる必要もありません。
人生という道を歩む中で得たさまざまなことを活用し、人生をより良くしていくため、豊かなセカンドライフを過ごすために行う活動が「老活」なのです。
老活と終活の違いは?
では、老活に対する理解を深めるため、終活との違いを見ていきましょう。
終活
「終活」とは、人生の終わりに向けて準備をする活動です。
自分のお葬式やお墓のこと、財産をどうするかなどを考えておけば、いざというときに、自分の気持ちに沿った最後を迎えることができます。また、あらかじめ考えてあれば、残された家族や周囲の人々が困ったり、迷ったりすることがありません。
終活とは、自分の死にきちんと向き合い、生前にやっておきたいこと、遺したいものなどを見つめ直すことです。もちろん自分のためのものですが、家族や周囲の人のために行うという側面が大きいでしょう。
また、死の直前に関して考えるものなので、スパンとしては短い期間になります。
老活
「老活」は、素晴らしい老後を過ごすための活動です。
仕事人間だった人が、定年退職で無気力になってしまったり、家庭を顧みなかったのに「濡れ落ち葉」になったり、という話をよく聞きますが、長い余生を、そんな状態で過ごしてはつまらないですよね。
定年退職したあと、自分がどれだけ楽しく、健やかに暮らせるかを考えておけば、燃え尽き症候群などとは無縁のはず。
老活では、これからだんだん衰えていく老いの時代を、どう自分らしく生きるか、ということを考えます。そういう意味で、老活は自分のために行う活動です。
いつか訪れる死の直前という時期だけを取り上げて考えるのではなく、「これから終わりまで」という長いスパンでの生き方を考えます。
老活で行うことは?
老活のキーワードは「お金・健康・趣味」。自分らしく、豊かで幸せな老後を送るために必要なものです。
お金
当たり前のことですが、生きていくにはお金が必要です。老後のことを考えると、リタイアしたあとの老後資金が心配になる人は多いでしょう。
総務省統計局の2017年の調査では、高齢者無職世帯が1ヶ月で必要治するお金は26万3717円だそうです。それに対し、実収入は、社会保障を含め月20万9198円。つまり、毎月5万4519円も不足しているのです。
現在、国民年金や厚生年金に入っている人が、老後に満額受け取れた場合を仮定しても、老後を過ごすためには2000万円以上が不足すると言われています。貯金を切り崩しながら、やっていくしかないのでしょうか。
お金を増やすための方法として投資などの話もよく耳にしますが、副業という手段もあります。
働き方改革によって、副業をする人は増えてきています。インターネットを利用すれば、実店舗を持つことなく簡単に始められる副業もたくさんあります。
たとえば、「せどり」。せどりとは、自分で仕入れた品物を転売して、その手数料を収入にすることです。
と言っても難しいことではなく、フリマアプリやネットオークションで安く買ったものに高めの値段をつけて売れば良いのです。
最近、いらなくなったものを宅配で集めて査定し、転売する業者も増えていますね。通勤時間や、休憩時間など隙間時間にできるので、物を扱ったり他人とやり取りするのが苦手でない人は、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
また、得意なことを生かして副業にする方法もあります。
たとえば、ホームページやロゴなどの制作代行、ブログなどを書いてアフィリエイトを収入にしたり、写真を投稿して使用料をもらうなど、趣味を活かしたり、楽しみを兼ねてできる副業がたくさんあります。これらは定年退職後の趣味にもつなげることができるかもしれませんね。
健康
楽しく生きていくためには、健康でなくてはなりません。
高齢者に多いのは、生活習慣病です。生活習慣病の代表的疾患である糖尿病は、気がつかないうちに病気が進行していき、高血圧や脳卒中など、様々な病気を引き起こす原因になります。また、重篤化すると、失明したり、脚を切断したりするようなケースも。さらに、認知症の発症リスクも高まります。
このような状態にならないよう、普段から暴飲暴食をせず、適度な運動をする生活を習慣づけましょう。
健康を損なうと、医療費や介護費がかさむことにもなります。出ていくお金を減らすという意味でも、健康を保つのは大切です。自分らしい老後を過ごすためにも、自治体での健診を受けるなど、健康に対する意識を高めていきましょう。
趣味
仕事が忙しい現役時代は、趣味に時間を割くのは難しいですね。
特に男性の場合、学校を卒業してから40年以上働く中で、余暇の過ごし方について考えている暇もなかったという人は多いようです。
脇目も振らず仕事に心血を注いできた人が、定年退職後に何をして時間を過ごせばよいのかが分からず、社会から孤立してしまうことも。
なんとなく興味があったけれど、これまで時間がなくてできなかったことはありませんか?
そういった分野の勉強や資格取得は、もしかしたら新しい仕事につながるかもしれません。最近は、趣味と実益を兼ね、金融関係のセミナーに出席する高齢者も増えているそうです。
また、健康増進を兼ねて、ジムに通ったり、マラソンに挑戦したりするのもいいですね。
インドア派なら、読んだ本の感想や身の回りのことをブログに書いたりなど、SNSを活用するのもおすすめです。
また、ご夫婦でできる趣味を考えるのもよいでしょう。たとえば犬を飼って、毎日一緒に散歩するだけでも、夫婦の会話が増え、絆が強くなります。地域活動への参加で、社会に貢献するのはいかがでしょうか。
趣味を楽しむことは、新しい居場所を見つけることであり、精神的な健康にもつながります。
老活は、いつから始めればいいの?
老活には「老」の文字が入っているため、年をとってから始めるもののようなイメージがありますね。
繰り返しになりますが、老活のキーワードは「お金・健康・趣味」。
公的年金制度が向上する可能性が見えない現在、どこからかお金は降って湧いては来ません。健康も、一朝一夕にはつくれないものです。
また、趣味に関しても、高齢になってからいきなり始めるよりは、若いうちに少しずつ色々なものにチャレンジする方が良さそうです。
このようなことから、老活は、40代など早い時期から始めるのがおすすめです。
40代から資産形成や運用をしっかりと行っていれば、安心して老後を迎えられる可能性が高くなります。
生活習慣病に関しても、大切なのは継続です。体調が悪くなってから慌てて始めるのではなく、健康なうちに始めて、長く健康を保っていきたいところ。
また、老後を楽しく過ごすポイントの一つは、家庭や職場以外にも居場所を見つけることです。閉じこもりがちな高齢者にならないためにも、若いうちからさまざまなコミュニティに参加してみましょう。
まとめ
老活は、老後のためであると同時に、今現在を充実させる一助にもなる活動です。
最近では、さまざまな老活本も出版されています。このような書籍を参考にしてみるのもよいでしょう。
健康で楽しい老後を送るため、今から少しずつ行動してみませんか?