遺品整理や生前整理など「○○整理」という用語が増えています。
その中で、最近知られ始めたものに「福祉整理」があります。
どのようなものなのか、また、遺品整理や生前整理と何が違うのか、ご存じでしょうか。
今回は「福祉整理」について見ていきましょう。
目次
福祉整理とは?
近年「福祉整理」が注目され始めています。
福祉整理とは、主に高齢者や病気の人の自宅や居室を整理し、清掃する作業のことです。
年齢を重ねると、体力、気力の衰えから、住環境を自分で整えるのが困難になっていく人が少なくありません。
たとえば、家の中の掃除をするのが億劫になったり、ごみ回収の日に集積所までごみを持って行くことができないというようなケースが出てきます。
すると当然、家の中は乱れ、ごみでいっぱいになっていきますね。
そんな中で暮らしていれば健康も損ねますし、怪我などしてしまうことも十分考えられます。
福祉整理は、高齢者が健全な生活を続けるための住環境の整理です。
「福祉」という言葉がついているのでボランティアと思われることも多いようですが、そうではありません。
遺品整理や不用品回収などと同じように、事業・有料サービスとして行われています。
ボランティアとして行う清掃を福祉整理と呼ぶ例もありますが、ここではその意味では使いません。
福祉整理は何のために行うの?
では、なぜ、このような作業が必要なのかを見てみましょう。
1人暮らしが困難な人の住環境を整えるため
高齢となり、自分で身の回りのことができなくなると、住環境は劣悪になっていきます。
特に、認知症を発症してしまうと、室内を汚したり、外を徘徊してごみや不用品を集めてきたりという行動をするようになるケースも少なくありません。
その結果、ごみや汚物の中で暮らすということになってしまうのです。
また、高齢者に増えているセルフネグレクトによって、自分で身の回りの整理を放棄してしまう人もいます。
また、自分の生活だけでなく、ごみや悪臭・害虫の発生などで近隣にも迷惑をかけてしまうことも。
福祉整理では、1人暮らしが難しくなった高齢者が清潔で健康な生活を営めるよう、ごみを捨て、片付けをします。
また、定期的にハウスクリーニングを行うサービスもあります。
定期的に家に人が入ることで異変に気づきやすく、孤独死の防止にも役立ちます。
自宅介護のため
自宅で介護生活を送ることになった場合、介護がしやすいよう、住環境を整えます。
特に介護ベッドを入れるような場合、ある程度広い場所が必要となるため、ものを片付けてスペースを空けなくてはなりません。
また、あまりにものが多くて足の踏み場もないようでは、介護する人が家に入ることができません。
介護する人もされる人も、お互い気持ち良く生活するために片付けます。
入院・施設入居のため
末期ガンなどで病院やホスピスに入院したり、また、1人での生活が困難となって介護施設に住み替えたりすると、再び自宅に戻って生活する可能性はほぼないと考えられます。
そのため、これまで暮らしていた自宅の整理が必要になります。
本人自身で身辺整理をすることは難しいため、家族や業者が代わって家財道具を整理します。
福祉整理では、どんなことをするの?
では、福祉整理でどんなことを行うのか見ていきます。
片付け
福祉整理で一番大きいのは「家の片付け」です。
その人の家が「ごみ屋敷」や「汚部屋」のような状態の場合が多いようですが、「ちょっと散らかっているだけ」「少し汚いだけ」という場合もあります。
どちらの場合も、その人が自宅で快適に生活をしていけるよう、ごみを捨て、掃除をして、清潔な環境にします。
快適な生活のための提案
病気で手足が不自由になったり、足腰が弱って思うように動けなくなった時、生活に関する提案を行います。
たとえば、生活しやすいような家具の配置・模様替えの提案、室内の段差をなくすバリアフリーや、転倒防止のための手すり設置、トイレのリフォーム、バスルームでの事故のリスクを低くするためバスタブの高さを変更、布団で寝ている人には上げ下ろしの労力がなくなるようベッドの導入など、その人の生活にマッチした方法を提案します。
家財整理
自宅を出て入院したり、施設に転居したりするような場合、家財を必要なもの・不要なものに仕分けます。
入院や入居に必要なものや、のちの遺産相続などに必要なもの、貴重品などをまとめて運び、不要なものは処分します。
また、エアコンの取り外しや洗浄、賃貸の場合は原状回復に必要なリフォームなどの提案も行います。
「福祉整理」と「生前整理」の違いとは?
福祉整理について述べて来ましたが、「要するに片付けでしょう? しかも、本人が生きている状態で片付けるのだから、生前整理と変わらないのでは?」と思われた人もいるかもしれません。
しかし、そうではありません。
生前整理とは、本人が亡くなったあと、残された家族に迷惑をかけないため、生前に身辺整理をしておくことです。
つまり、生前整理の場合、整理を行うのは基本的に本人であり、本人が健康な状態で行うものです。
本人が亡くなったあとのことを見据えた片付けです。
それに対して福祉整理は、主に体の自由が利きにくくなったり、認知症で意思を正常に表せなくなった人のために行う整理です。
そのため、整理を行うのは家族や業者であり、本人は健康でない状態において行われることになります。
本人が、今現在を生きていくための整理と言えます。
福祉整理を依頼するには?
業者に依頼するメリットは?
福祉整理は、家族が行う場合もありますが、業者に依頼する人が増えています。
社会の変化により、同居していない場合も多く、家族が遠方に住んでいるなど部屋の片付けに時間を割くのが難しくなっているのが大きな要因です。
さらに、施設入居などで賃貸物件を出るような場合は、長引けばその分日割りの家賃が発生しますし、できるだけ早く片付けて部屋を明け渡す必要があります。
このような場合、業者に依頼することで素早く整理を行うことができます。
どんな業者に依頼すればいいの?
福祉整理を業者に依頼する場合、どのような業者にお願いすればよいのでしょうか。
住環境コーディネーターや、住まいのアドバイザーなどに依頼する方法もありますが、遺品整理業者にも依頼することができます。
遺品整理業者は、遺品整理だけでなく、さまざまなサポートを行っています。
福祉整理では、もしものことがあった場合に備えた整理をしなくてはならないケースもあります。
そんな時、遺品整理で培った経験が活きてくるわけです。
残された家族が困らないような整理を希望するのであれば、遺品整理業者に相談してみましょう。
また、遺品整理業者であれば、不用品を自分で運び出したり処分したりする必要がありません。
全て運搬・処理してもらえるので手間がかかりません。
さらに、不用品のなかにまだ使えるものがあれば、買い取ってもらえます。
買取が多ければ、結果的に費用が安く済むことにもなります。
福祉整理にかかる費用は?
福祉整理の料金は、基本的に家の間取りと広さで決まることが多いようです。
たとえば、
間取り | 料金 |
1K | 24,000円〜 |
1DK | 54,000円〜 |
1LDK | 70,000円〜 |
2DK | 99,000円〜 |
2LDK | 120,000円〜 |
3DK | 140,000円〜 |
こちらはあくまで目安で、ものの量や立地条件などによっても料金は異なるので注意が必要です。
ごみの量が多ければ、運び出すトラックも大型のものが必要となり、スタッフの数も増やさなくてはなりません。
また、運搬車が自宅近くに停めやすいか、マンションなどの場合、エレベーターの有無によっても料金が変わります。
最終的な料金は、見積もりのあとに決まります。
依頼するときは、必ず複数の業者から相見積もりを取り、納得のいく業者を選択しましょう。
業者に依頼する場合に注意すべきポイントは?
遺品整理・生前整理の実績が豊富な業者を選ぶ
福祉整理で行う作業内容は、基本的に遺品整理や生前整理と同じです。
片付けや必要なものの仕分けなど、主な作業はほとんど変わりません。
そのため、福祉整理を依頼する場合は、その業者の遺品整理・生前整理の実績が豊富な業者を選びましょう。
近年は「福祉整理」を前面に押し出している業者もありますが、福祉整理をうたっていない業者であっても、実績のあるところが安心です。
見積もり・支払いは判断力のある人が行う
高齢者の方の判断力が衰えている場合、足元を見られて「ぼったくり」の被害に遭うリスクが高まります。
また、頭はしっかりしていても、体が弱っていると、悪徳業者の高圧的な態度や恫喝に屈してしまう恐れがあります。
このため、契約や支払いなどはもちろん、作業にも、できるだけ家族の同席がおすすめです。
まとめ
混同しやすい「福祉整理」と「生前整理」ですが、福祉整理は、高齢者や病気の人の生活をより良くするものです。
生前の生活環境が良好なら、残される家族の負担も小さくなります。
福祉整理が必要と感じられる変化があったら、相談だけでもしてみるとよいのではないでしょうか。