2020年は、コロナ禍でさまざまな生活様式を変えざるを得ない年となりました。
夏の風物詩といえばお盆のお墓まいりですが、今年はお墓まいりどころか帰省すら出来なかった人がほとんどではないでしょうか。
下手に移動して感染を拡大させるわけにはいかないけれど、かと言ってお墓まいりをしないでいるのも申し訳ない気がする・・・ そんな気持ちから、今年は「お墓参り代行サービス」が大盛況だったようです。
今回は、「お墓詣り代行サービス」とはどんなものなのか見ていきましょう。
目次
お墓参り代行サービスとは?
お墓参り代行サービスとは、何らかの理由でお墓参りができない場合、お墓の掃除やメンテナンス、お参りなどを代行してくれるサービスです。
「引っ越ししてお墓が遠くなってしまった」「仕事が忙しくて、なかなかお墓にいけない」「高齢で足腰が弱くなり、お墓の手入れが困難」などの悩みを持つ人には便利です。
お墓参りを他人に代わってもらうなんて、何となく申し訳ないような気もちになる人もいるかもしれませんね。
でも、心配はいりません。
実は日本では、昔から本人の代わりにお参りする「代参」という風習があったのです。
代参とは「代理参拝」の略で、江戸時代から一般的に行われていました。
祈願したい本人の代わりに代理人が神仏に参拝することで、代参する人のことを「代人」と呼びます。
代理は人間だけではなく、何と犬まで行っていました。
飼い主が愛犬に参拝を託し、旅に向かわせたのです。
ご主人に代わって参拝する犬は「代参犬」と呼ばれました。
中でも讃岐の金比羅大権現に向かう犬は「こんぴら狗」と呼ばれ、「こんぴら参り」と書かれた袋を首にかけて代参しました。
また、伊勢神宮に向かう犬は「おかげ犬」と呼ばれ、首に袋をかけておかげ参りに出かけました。
犬たちが首にかけた袋の中には、飼い主を記した木札、初穂料、道中の食費などが入れられていました。
こんぴら狗やおかげ犬たちは、どうやって目的地にたどり着いたのでしょうか。
何と、道中で会った人々にエサをもらったり、寝床を用意してもらったりしながら歩いて行ったのです。
世話をした人は、お世話の代金として袋の中のお金をもらったり、逆に、犬にお金をあげて自分の分も参拝を頼んだりしました。
当時の人たちは、代参犬をサポートすることで徳を積めると考えており、誰も犬のお金を奪うようなことはしなかったそうです。
こうして、代参犬たちは旅人から旅人へと連れられ、街道筋の人々に世話をされながら、目的地にたどり着きました。
当時の浮世絵にも、人々に可愛がられながら目的地を目指す代参犬たちの姿が多く描かれています。
また、お墓の清掃についても、菩提寺が代わりに手入れを行うのはよくあること。
他人に依頼するということに、特に問題はありません。
昔から、一番大切なのは気持ちだったのです。
コロナ禍のもと、移動ができずにやきもきするよりは、サービスを利用してお参りする方が、ご先祖さまも喜んでくれるかもしれません。
お墓参り代行のサービス内容は?
では、一般的なお墓参り代行のサービス内容を見てみましょう。
サービス内容
お墓の掃除・手入れ
墓石をクロスやスポンジで水拭きし、砂やホコリを拭き取ってきれいにします。
また、水鉢や花台、香台などを掃除します。
墓石から取り外せるものは取り外して水洗いします。
業者によりますが、オプションメニューとして墓石のクリーニング作業を行っているところもあります。
墓石は、時間が経つと水垢や白カビがつくことがあります。
クリーニング作業では、これらを専用洗剤で落とします。
仕上げに撥水コーティングを行うので、墓石を長期間きれいに保つことができます。
墓石の掃除のほか、お墓の敷地内や周りの雑草を取り、ゴミを拾って掃き掃除をします。
作業が済んだらゴミをまとめ、指定の場所に捨てます。
供物や供花の交換
古くなったお供え物やお花を新しいものに交換します。
別料金となりますが、故人の好物をお供えしてもらうこともできます。
お供え物は、お墓が荒れないよう放置せず持ち帰ります。
サービスの流れは?
サービス前の挨拶
お手入れをする前に、お寺や霊園事務所に挨拶をします。
ご先祖さまへのご挨拶
作業を始める前に、お墓に合掌します。
また、お墓の状態を写真撮影しておきます。
お墓周辺の清掃
敷地内、お墓周辺の雑草を取り、掃き掃除をします。
墓石の清掃
墓石や花台などをきれいにします。
お参り
作業が済んだら、心を込めてお墓に手を合わせます。
また、きれいになったお墓の状態を写真撮影し、依頼主に確認してもらいます。
最近では、手持ちのスマートフォンで撮影データを受信したり、VR動画用の
ゴーグルで360度の映像を見ながらお墓参りを体験した気持ちになれるサービスもあります。
お墓参り代行サービスのメリット・デメリットは?
とても便利なお墓参り代行サービスですが、メリット、デメリットをまとめてみました。
メリット
遠くにいながら供養できる
自分で直接行けない場合も、欠かさず供養をすることができます。
お墓の現況が把握できる
お墓にいけないとお墓の様子が確認ができないので、倒壊していないか、雑草が増えていないか心配になってしまいます。
しかし、代行サービスを使えば写真で現況が確認できるので安心です。
お墓がきれいになる
専門業者が掃除を行ってくれるため、自分でお墓掃除を行うよりきれいになります。
デメリット
理解を得られない場合がある
まだ歴史の浅いサービスなので、親族などから「きちんと自分でお参りしなさい」と反対されてしまう場合があります。
ご先祖さまに顔を見せられない
お墓参りは、掃除やお供え、供養のほか、子孫である自分のことをご先祖様に報告する、という側面があります。
代行では、自分で直接、報告することができません。
お墓参り代行サービスの料金は?
お墓参り代行サービスには、どのくらいの費用が必要なのでしょうか。
業者や依頼内容によってかなり異なり、また、さまざまなサービスもあるようです。
お墓参りのみ
お墓の簡単な清掃と、お花と線香のお供えを行います。お墓周りの清掃は行いません。
相場:1万円~2万円
お参りと清掃
お墓参りとお墓の清掃)に加え、お墓の敷地内や周りの雑草除去や掃除を行います。
相場:1万5千円〜3万円
お参りと墓石クリーニング
お参りと敷地内・周りの掃除に加え、機械などを使って墓石の汚れを落とします。
相場:10万円〜
その他のサービス
墓石の修理
墓石の破損を直します。
相場:2万円〜
状況確認のみ
お参りや掃除などはせず、お墓の現況を確認するサービスです。お墓の写真を撮影し、どのような状況になっているかを知らせてくれます。
台風や地震などの自然災害が起きたとき、すぐに状況確認できない場合に便利です。
相場:3千円〜5千円
このほか、定期的に掃除やお墓参りをするコースや、1回のみのコースなどを設定している業者もあります。
クリーニングなどの料金は、墓石の大きさや状態によっても料金が変わります。
また、業者によって料金の設定が異なりますので、事前にしっかり確認しましょう。
お墓参り代行サービスを依頼するには?
お墓参り代行サービスを利用するには、どのような業者に依頼すればよいのでしょうか。
お墓参り代行専門業者
お墓参り代行を専門としている業者があります。
インターネットで検索してみましょう。
掃除サービス業者
掃除サービスの業者でも、お墓参り代行を行なっているところがあります。
石材店
墓石のプロである石材店もお墓参り代行を行っています。
全国の石材店で組織する「全国優良石材店の会」では、全国に約300社ある認定店を紹介する形でお墓参りを代行します。
石材店の場合、お墓参り代行以外にもお墓の修理も依頼できます。
ふるさと納税の返礼品
最近では、ふるさと納税の返礼品としてお墓参り代行サービスを依頼できる市区町村が出てきています。
岐阜県垂井町、岡山県里庄町、新潟県佐渡市、三重県伊賀市、宮崎県延岡市など多くの自治体が行っていますので、お墓が遠い人は利用するとよいでしょう。
まとめ
なかなか収束の気配が見えない新型コロナ禍。
これから秋のお彼岸や年末年始など、お墓参りをする機会が増えますが、なかなか動けない人が多いのではないでしょうか。
便利なお墓参り代行サービスですが、依頼の際は業者としっかり話し合い、きちんとした専門家に依頼しましょう。
墓石には、光沢のある特殊なコーティング処理が施されているものがあります。また、掃除の仕方によっては墓石に傷がついてしまうようなこともあります。
大切なお墓を守るためにも、業者は慎重に選びましょう。