40代・50代から始めたい、老前整理

40代・50代から始めたい、老前整理

終活の一環として、いま「老前整理」が注目されています。
『終』という文字が入っているだけに、終活を行うのは、死ぬ準備をするようなイメージがあるかもしれませんね。
そのために、70代や80代になってから始める活動のような感じがするかもしれません。
ですが、実は、老前整理は、40代、50代といった若いうちから始めるのがいいようです。
今回は、そんな老前整理について見ていきましょう。

老前整理とは?

老前整理とは、年を取って体力が衰える前に、身の回りの整理をすることです。
断捨離、終活、ミニマリストといった“不要なものを整理して、最小限のものだけで身軽に生きよう”というムーブメントの中で、老前整理も知られるようになってきました。
老前整理と混同しやすい言葉として「生前整理」がありますね。
しかし、生前整理と老前整理には違いがあるのです。

「生前整理」とは、自分の死後、残された家族に相続や遺品整理などで負担をかけないよう、財産などをあらかじめ整理することです。
つまり、「死」に備え、他人に迷惑をかけないことを目的としています。

一方、「老前整理」とは、老いに備えて行うものです。
自分がまだ元気なうちに、不要なものを整理して身軽に暮らすのが目的です。
つまり、今後生きていく自分のために行うものであり、「生」を意識しているという点が「生前整理」とは異なります。

「人生100年時代」といわれる現代。
70代、80代になれば、どうしても体力は落ちていきます。
それを見越して、元気なうちに、安心・安全な生活を整えておくのが老前整理なのです。

老前整理は、いつから始めればいいの?

老前整理を意識する40代

老前整理は、何歳から始めなくてはいけないという決まりはありません。
ですが、人生も半ばを迎え、そろそろ折り返し地点に入る40代、50代で始めるのが良いといわれています。

会社員であれば、定年のことがときどき頭に浮かぶのではないでしょうか。また、子どもたちも進学や就職をして、うすうす先の道もつくころ。
これまでは、子どもたちのことが最優先だったけれど、次は自分たちの老後のことを・・・と考えるようになる世代です。

もちろん、定年後に、時間ができてから考えればいいと思う人もいることでしょう。
しかし、夫婦で旅行をしたり、趣味に打ち込んだり元気で楽しく過ごしたりしていくためには、「お金」と「健康」が必要です。
それには、やはり少しでも早いうちから貯金をしたり、健康を保つ努力をしている方がいいですよね。
蓄えがない状態で定年を迎えても、「お金がないから何もできない」「健康じゃないから何もできない」ということになってはつまりません。
そこで、老前整理は、まだ体力・気力も十分な40代・50代のうちから少しずつ始めるのがベターなのです。

老前整理を40代・50代で始めるメリットとは?

それでは、早いうちからの老前整理のメリットについて、もう少し詳しく見ていきましょう。

今の生活がより楽しめる

老前整理を早くから始めると、老後の準備ができているという安心感によって、将来に不安がなくなります。
思い悩むことがなくなるため、現在の生活や仕事にストレスなく打ち込めるようになり、今の人生も、より楽しめるようになるのです。
子どもの頃、前もって時間割をきちんと調べ、用意してから寝ると、気持ちよく眠れませんでしたか? それと同じことなのです。

生き方やライフプランを見つめ直すきっかけになる

老前整理に限らず、身辺整理は、自分の人生で本当に大切なことは何か、という問題と直接向き合うことです。
何かを捨てていく中で、自分の好みや必要としているもの、捨てても良かったものなど、さまざまなことに気付き、自分がどういう人間だったのかということを改めて知るきっかけとなるわけです。
まだまだ若い40代や50代。生き方の修正が比較的しやすいこの時期に老前整理をすることによって、生き方を見つめ直し、さらに今後の人生について考える大きな契機になるかもしれません。

子どもに老後の心配をさせない

家族のために老前整理を考える夫婦

親御さんが50代に入ったころ、ふとした瞬間に「父さん、母さんも年を取ったな・・・」と感じたことはありませんか?
そんなとき、頭をかすめるのが「親の介護」のことではないでしょうか。
大切な親御さんのこと、しっかり恩返しをしたいという気持ちはあっても、どうなるんだろう・・・と、漠然とした不安を感じるものです。
そんなとき「心配するな」と自信をもって言ってあげるには、やはり、40代、50代から老前整理を始めるのが理想的と言えるでしょう。

安心・安全に生活できる

40代・50代ともなると、老眼でものが見えにくくなったり、膝や腰などを痛めたりしている人も少なくありません。
そのため、早いうちにものを整理すると、スッキリした家の中で安心・安全に生活することができます。
高齢になると、ものにつまずいて転倒するなどちょっとしたことでも大怪我につながりやすいものです。
また、ホコリやカビ、ダニなどが溜まらない清潔な部屋での生活は、当然、健康維持にもつながります。

老前整理を上手に行うポイントは?

メリットが多い老前整理。上手に整理するポイントをご紹介します。

仕分け

「いるもの」と「いらないもの」「保留」専用のダンボールを用意し、家にあるものを仕分けしていきます。
その場で要不要が決められないものは「保留」の箱に入れましょう。
「いるもの」は収納場所を決めて収納し、「いらないもの」は処分します。
「保留」は、期限を決め、残すか処分するかを考えましょう。

大きいものから処分する

大きいものがなくなると、「片付けた」という達成感を感じやすく、その後の老前整理のやる気につながります。
まずは、家具など大きいものから仕分けして、空間をスッキリさせましょう。

売却する

書籍や衣類、趣味のものなどは、インターネットのオークションサイトやフリマアプリで売却しましょう。
遺品整理と違い、時間がたくさんあるので、マイペースで行えます。
ものが売れれば、お金になると同時に処分する手間も省けます。

財産目録やエンディングノートを作成する

老前整理のためのエンディングノート

自分がいなくなったあと家族を争わせないためにも、どのような財産がどのくらいあるのかを記録しておきましょう。
特定のものを特定の人に譲りたい場合は、その旨も書いておきます。
また、友人・知人の連絡先、預貯金のある金融機関名と口座番号、保険・年金関係のデータ、クレジットカード、SNSなどを使っていれば、そのIDとパスワードなど、自分に関するデータをエンディングノートに書き始めましょう。
エンディングノートに法的効力はありませんが、自分のデータや意思を伝えるのに便利なアイテムです。
何度でも書き直せるので、書いているうちに自分の考えも整理できます。

大まかなスケジュールを決めて行う

老前整理は、あわてて行う必要はありません。しかし、ダラダラとやっているといつまでも終わらず、途中でやめてしまうことも。
つらくならず、無理のないスケジュールを決めましょう。
ざっくりとした、ゆるいスケジュールで十分です。

リバウンドさせない習慣をつける

せっかくきれいになった部屋も、リバウンドしてしまっては意味がありません。
新たにものを溜め込まないよう余裕をもった収納を心がけましょう。
持っている物を定期的に見直し、整理していくことも大切です。
また、ものの定位置を決め、出したら必ずそこに戻す習慣をつけます。
ものの定位置が決まれば、部屋が乱雑になりません。

無理をしない老前整理には・・・

タンスやベッドなど、大きいもの、重いものを処分したい場合はどうすればよいのでしょうか。
大きくて重い家具は、運ぶのが大変なだけでなく、家から出すこと自体が重労働です。
粗大ごみに出すのも一苦労ですね。
そんな時は、遺品整理業者や不用品回収業者など、専門の業者に依頼するのがおすすめです。
業者であれば、梱包から搬出・運搬・処分まで、すべてやってもらえます。
特に遺品整理業者は、多くの遺品を扱ってきた経験から、家の中のものを1つ1つ大切に扱ってくれます。
近年、買い取りサービスを行っているところも増えているので、不用品の中で使えるものがあれば、買い取ってもらえる可能性もあります。
さらに、ものの整理や部屋の掃除、エンディングノートの書き方から遺産相続についてまで、多岐にわたって相談ができます。
無理をせず、困ったことがあれば相談してみるとよいでしょう。

まとめ

老前整理に前向きな夫婦

「生きてるうちが花なのよ、死んだらそれまでよ」と開き直ることができれば楽ですが、やはり大多数の人は、元気なうちに自分で整理をした方が気が楽になるのではないでしょうか。
老前整理は、老後の自分の生活を楽にするために行うものです。無理をせず、ゆっくりとできる範囲で進めていきましょう。
40代、50代から老前整理をすることで、60代以降の生活が快適に。
また、どんな生活や生き方をしていきたいのか見つめ直す機会にもなります。元気な老後生活に向け、ポジティブに始めてみてはいかがでしょうか。

この記事の監修をしたゴミ屋敷の専門家

氏名:新家 喜夫

年間2,500件以上のゴミ屋敷を片付け実績を持つ「ゴミ屋敷バスター七福神」を全国で展開する株式会社テンシュカクの代表取締役。ゴミ屋敷清掃士認定協会理事長。