身内の人が亡くなると、やることが山積みです。その流れと、やらなくてはならないことについて、みていきましょう。
目次
生前整理
身内が亡くなった後に、遺族が行うのが「遺品整理」ですが、自分自身が元気なうちに行うのが「生前整理」です。
現在の日本では超高齢化・少子化社会が進んでいます。また、核家族化も進み、一人暮らしの高齢者が急増しています。そんな世相から、子供に負担をかけられないと考える人が増えてきました。
そこで、自分たちがまだ元気で体も動くうちに、身辺整理をしておこうという風潮が高まってきたのです。
生前整理はいつするの?
生前整理を始める時期はいつでも構いません。自分が「いまやろう」と思い立った時に始めましょう。
退職を機に始める人もいますし、20代から少しずつ考える人もいます。また、子供たちが独立した40代、50代から始める人もいます。
「やろうかな」と思った時が、あなたのタイミングです。
もちろん、最期の日まではまだまだ時間はたっぷり。現在の環境をよく見回し、必要なものとそうでないものを分け、徐々にシンプルな生活を目指していきましょう。
生前整理でやることは?
また、単純にいらないモノを片付け、捨てるだけが生前整理ではありません。
今いる環境をじっくり見回して、この先の人生をどう生きるか、また、人も迷惑をかけない最期を迎える準備も生前整理の目的です。
- 遺産の目録
- 介護や延命治療が必要になった時どうしたいか
- どんな葬儀を行いたいか
- お墓をどうするか
- 遺品や形見分けについて
など、死後に周りが困らないよう、指針を作っておきましょう。エンディングノートを活用するのもいいですね。
こういった様々なことを考えるのも生前整理の大切な目的です。自分の残された時間をより良く生きる指標となり、死後に遺族を財産問題などで争わせることもなくなります。
生前整理は「死ぬ準備」ではなく、残りの人生をより明るく、楽しく生きるための活動なのです
お葬式
身内が亡くなったら、まずやらなくてはならないのがお葬式です。身内の方が亡くなってから、お葬式までの流れを知っておきましょう。
危篤から死亡まで
病人が危篤状態に陥ったら、知らせるべき人に連絡をします。知らせる人は、一般的に、家族や二親等までの近親者と、本人が会いたがると思われる親しい友人や知人です。
また、病人がクリスチャンの場合は神父や牧師に連絡し、病床に来てもらいましょう。
現在はメールやLINEなどもありますが、緊急事態なので、気がつきやすい電話で速やかに連絡しましょう。病人の生前に、誰に知らせたいか、来て欲しいかを相談しておくのもよいでしょう。
会社関係や、それほどお付き合いが濃くない人には、葬儀の日程が決まってから知らせます。この場合も、連絡は電話で行うのが一般的です。
葬儀までに時間がある場合は、まず死亡通知状を出し、その後で葬儀の日程を伝えます。
死亡後
病院で亡くなった場合
死亡が確認されたら、医師に死亡診断書を書いてもらいましょう。
自宅で亡くなった場合
かかりつけ医があれば、連絡して来てもらい、死亡診断書を書いてもらいます。
かかりつけ医がわからない場合は、亡くなってそれほど時間が経っていなければ、蘇生できるケースもあるので救急車を呼びます。蘇生できない場合は、救急隊から警察に連絡してもらえます。
死後、何日も時間が経っているような場合は、警察に連絡します。警察によって事件性がないかを確認の上、警察の監察医に死体検案書を作ってもらいます。
この場合、遺体を動かしたりしてはいけません。死体や周りのものを動かすと、事件性があるかどうかの判断が難しくなってしまいます。証拠隠滅と受け取られかねないので、現状維持が鉄則です。
死亡後の儀式
末期の水を取る
死の間際には水を求めると言われるため、故人の唇を水でしめす儀式で、「死に水を取る」とも言います。
新しい筆か、割り箸の先に脱脂綿をつけ、ガーゼをかぶせたものを用意し、茶碗の水を含ませて、故人の唇を湿らせます。臨終に立ち会った人が順番に全員で行います。
遺体を清める
故人の体をガーゼや脱脂綿で拭き清めます。アルコールや水を絞ったガーゼや脱脂綿などで体を拭くことが多いようです。
拭き清めたら、汚物や体液が出ないように、耳、鼻、口、肛門などに脱脂綿を詰めます。
次に、死化粧を施し、着替えをさせます。清潔な浴衣に着替えることがほとんどですが、希望がある場合は故人が生前に愛用していた服を着せる場合もあります。
これらの作業は、ほとんど病院で行ってもらえます。自宅で亡くなった場合は、葬儀社によって行なってもらえます。
遺体の安置
自宅の広めの部屋に布団を用意します。蒸れないよう薄くて軽いものがよいでしょう。
布団に寝かせたら、両手を胸元で組ませます。
仏式の場合は数珠、キリスト教式のバイアはロザリオをかけます。神式の場合は何も持たせません。
また、顔に白い布をかぶせます。
枕元に枕飾りを飾る
遺体を安置したら、枕元に「枕飾り」を飾ります。
- 仏式…小机に枕飯、ろうそくを立てた燭台、線香を立てた線香立て、花、りんなどをおき、火を絶やさないようにします。
- 神式…「案」と呼ばれる机に食べ物や榊などを供えます。
- キリスト教式…特に枕飾りの決まりはありませんが、小机に白い布をかけ、聖書や花、ろうそく、十字架などを置くことが多いようです。
これらの用意は、葬儀社に依頼することができます。
枕経と枕勤め
仏式の場合、枕飾りを済ませたら僧侶を迎えてお経をあげてもらいます。これを「枕経」といいます。
遺族や親戚は僧侶の後ろに座り、故人の冥福を祈ります。これを「枕勤め」といいます。また、遺族はろうそくの火と線香を絶やさないようにします。
これらの儀式は亡くなってすぐに行うものですが、最近では通夜の際に行うことも多いようです。
神式では神官を招き「枕直しの儀」を行いますが、最近は簡略化され、遺族のみで拝礼するようになっています。キリスト教式では枕勤めはありません。
納棺
通夜を始める前に、遺体を棺に移します。最近は葬儀社が行なってくれることがほとんどです。
遺体を納めたら、故人の愛用していた品などを入れます。また、腐敗を防ぐためドライアイスも入れます。
- 仏式…両手を組ませて数珠を持たせ、経帷子をかけます。
- 神式…納棺から出棺まで、朝夕の一日2回、供え物をして拝礼します。
- キリスト教式…カトリックでは神父が、プロテスタントでは牧師が納棺の言葉を捧げ、近親者で納棺します。
通夜と葬儀の手配
葬儀社の選び方
遺体を引き取る際、寝台車の手配から葬儀社に任せることは多いため、病院で提携の葬儀社を紹介してもらえることもあります。
互助会や生協などに入会している場合は、そこに連絡して葬儀の依頼をしましょう。
葬儀に関する団体や葬儀社は様々です。時間のない中ですが、状況に応じて良心的で信頼できる業者を選んでください。
また、故人が生前に契約している場合もあるので、そのような話を聞いている場合は、契約書を探します。
寺などへの連絡
宗教に則った葬儀を行う場合、死亡が確認されたら、できるだけ早く寺(菩提寺)、神社(氏子になっている神社)、教会などに連絡し、死亡の報告と葬儀の依頼をします。
通夜、葬儀の日程を調整し、葬儀の場所を決めます。仏式の場合は戒名や法名の相談もしておきましょう。
エンディングノートなどに希望の葬儀が書き残してある場合は、故人の希望にできるだけ沿うよう手配します。
葬儀の日程を決める
葬儀の日程については、僧侶や神職、神父、牧師と相談し、その上で葬儀社と相談して決めます。日程は寺などの都合を優先しましょう。
法律では、死後24時間は火葬できないため、死亡した日に納棺→翌日通夜→翌々日に葬儀・告別式を行うという流れが一般的です。
ただし、年末年始と暦が友引の日は休業している火葬場が多いので、それによって日程がずれることもあります。
一般的に、通夜は午後6時ごろ~9時ごろに行います。葬儀、告別式は午前9時~午後3時の間に1時間ほどで行うのが一般的です。
喪主を決める
「喪主」は遺族代表として葬儀に関して最終決定を行う責任者。通夜、葬儀の間、故人のそばに付き添い、聴聞を受ける役目です。
一般的には故人の配偶者が喪主になりますが、配偶者が死亡していたり高齢だったりする場合は子供、子供がない場合は親か兄弟姉妹が喪主を務めます。
葬儀後
香典返し
忌明けに香典返しを贈ります。香典返しは、いただいた香典の3分の1から半額程度の金額の品物が目安で、タオルや石鹸などの実用品がよく使われます。
- 仏式…四十九日後に贈る。表書きは「志」。
- 神式…五十日祭ごろに贈る。表書きは「志」または「偲び草」。
- キリスト教式…「忌明け」の感覚はなく、死後1ヶ月目の命日に合わせて品物を贈るケースが多いようです。表書きは「記念品」。
納骨
お墓の中や納骨堂などに遺骨を納めることを「納骨」といいます。納骨の時期は特に決まっていませんが、一般的には初七日から四十九日までに行います。
- 仏式…初七日や四十九日の法要に合わせて僧侶を招き、お経を上げてもらい納骨する
- 神式…葬儀当日、または十日祭から五十日祭の間に行います。最近は一年祭の霊祭に合わせて納骨することが多いようです。
- キリスト教式…プロテスタントでは死後1ヶ月目の召天記念日、カトリックでは死後7日目または30日目の追悼ミサで納骨するのが一般的です。
お墓がない場合、遺骨はお墓の用意ができるまで自宅に安置するか、寺院や霊園などの納骨堂に一時的に預ける「仮納骨」をします。
お墓は一周忌を目安に建てるケースが多いようですが、仮納骨は長くて3〜5年といわれているので、その間には用意したいものです。
散骨
最近では、遺骨を細かく砕いて山や海にまく「散骨」が注目を集めています。近年。散骨を扱う業者も増えているので、希望する場合は相談しましょう。
特に、遺骨の粉末化は難しいので、業者へ依頼する必要があります。
海への散骨は、船で20kmほどの沖で、お別れの儀式とともに海に散骨します。空や山への散骨は、ヘリコプターやセスナ機から行います。
また、散骨ではなく、山の中の雑木林に埋骨する「樹木葬」も増えています。
散骨を希望する場合は、生前に家族に伝え、あらかじめ手配しておき ましょう。
形見分け
形見分けとは、故人の遺族や親族、親しくしていた人たちに、個人の遺品や愛用品を贈るならわしです。
形見分けはいつするの?
仏式では四十九日、神式では五十日祭の忌明け、キリスト教式では死後1ヶ月ごろに行われるのが一般的です。
これに伴い、遺品整理は形見分けが行われるまでに済ませておくとよいでしょう。
すぐに遺品整理を行う必要がない場合は、四十九日の法要が行われるまで遺品整理を保留し、四十九日忌の法要の際に集まった親族などで形見分けを行うやり方もあります。
この方法だと、形見分けに関するトラブルの発生を防ぐことができます。
どんなものを贈るの?
形見分けの品となるものは、
- 指輪や時計などの装身具
- 着物などの衣類
- 骨董品・美術品
- 趣味の道具
- 蔵書やCD、レコードなどのコレクション
- 故人が収集していたもの
など、故人が大切にしていたもの、愛用していたものが中心となります。
お金や金券、不動産などは形見分けできません。
形見分けのマナーは?
形見分けの品は、個人の遺言があればそれに従います。ない場合は遺族が相談した上で決めましょう。
贈る側は、相手に遠慮されたら無理に渡さないようにします。逆に、受け取る側は断ることもできますが、よほどの理由がない限り申し出を受けるのがマナーです。
形見分けは、故人よりも目上の方には、贈らないことがマナーです。もちろん希望があった場合には、贈ってOKです。
贈るものは、できるだけ綺麗な状態にしておきましょう。特に衣類は、いちどクリーニングしてから贈りましょう。その他のものも、できるだけ手入れをしておきます。
また、いくら故人が大切にしていたものでも、あまりにもボロボロなもの、もう使えないようなものは贈らないようにします。
それから、特に気をつけなくてはならないのが、遺品の市場価値です。時価110万円を超えるようなものは、贈与税の対象となる可能性があります。
相手に迷惑をかけないよう、贈る相手や贈るものは慎重に選びましょう。