金庫の処分方法は? 知っておくべき金庫の素材・種類・施錠方法

金庫の処分方法は? 知っておくべき金庫の素材・種類・施錠方法

2011年3月、未曾有の災害となった東日本大震災では、多くの人々が家をなくし、苦境に立たされました。
暗く重いニュースの続くなか、「被災金庫の22億円返還」というニュースがあったことをご存じでしょうか?

津波の被害に遭った岩手、宮城、福島の3県で、流された5700個もの金庫が警察署に届けられました。
中に入っていた現金は約23億6700万円にも上り、そのほとんどが持ち主のもとに戻ったそうです。

真面目で誠実な日本人の民族性が表れたニュースですが、同時に、あれほどの震災に遭っても壊れなかった金庫の頑丈さに驚きを感じた人も少なくないのではないでしょうか。

遺品整理でも、金庫が出ることはよくありますが、処分に困るもののひとつでもあります。
そこで、金庫の処分についてみていきましょう。

金庫に関する基礎知識

ひとくちに金庫と言っても、様々な種類のものがあります。
処分するにあたって、まず金庫とはどのようなものなのか、確認しておきましょう。

  • 金庫の素材は?
  • 金庫の種類
  • 金庫の施錠方法

金庫の素材は?

金庫って、何で出来ていると思いますか?
実は、災害にも耐えうる耐火金庫は、なんとコンクリートで出来ているのです。
それも「気泡コンクリート」という特殊な素材を使用しています。

気泡コンクリートは、発泡剤を練り込むことによって内部に多数の気泡が閉じこめられたコンクリートです。
このため重量が軽くなり、断熱性や耐火性にも優れており、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の壁や床などにも使われます。

金庫 素材 コンクリート

耐火金庫はJISで厳しい規格が定められており、火災発生から2時間、庫内の温度を177℃以下に保てなくてはなりません。
気泡コンクリートは水分を含んでいて、火の中で水分が気化熱を発し、庫内の温度上昇を抑えます。そのため、JISの条件を満たしているのです。

ただ、この水分は、20~30年ほどで自然に気化してしまいます。
そのため、耐火金庫の耐用年数も20年程度ということになります。

また、耐火金庫以外の一般的な金庫には、気泡コンクリートのほか、スチール、鋼材、プラスチック、特殊合金などの素材が使われています。
手軽に持ち運びができる手提げ金庫などには、スチール製が多いようです。
特殊合金を使ったものは、破壊防止の点で優れています。

金庫の種類

金庫には、さまざまな種類があります。

耐火金庫

耐火金庫は主に火災対策として使われます。
ビル火災、地震の衝撃や二次災害としての火災まで、大火災時や消火活動が困難なケースを想定して作られている金庫です。
ただし、工具等による破壊には強くありません。

防盗金庫

盗難対策を主として使われる金庫です。
ドリルやハンマーなどの工具による破壊や、バーナーによる熔断に耐えることができます。

防盗耐火金庫

防盗性と耐火性を兼ね備えた金庫です。

耐火金庫 防盗金庫

データセーフ金庫

磁気メディアは60度前後でデータが破壊されてしまいます。
そのため、庫内の温度を177度以下に抑えるようにできている耐火金庫で保管していると、火災が起きた場合、大切なデータを焼失してしまう恐れがあります。
データセーフ金庫は、磁気メディアのデリケートな保管条件に合わせ、庫内温度を52度以下、湿度を80%以下に抑える金庫です。

手提げ金庫

証明書や通帳、パスポートなどの重要書類や、写真、手紙、貴金属など個人的な財産を守ります。
持ち運びが簡単で非常時にもすぐ持ち出しができ、場所を取らずどこにでも収納できます。

手提げ金庫

宿泊施設用金庫

一般的な耐火金庫は、その製品ごとに鍵を管理しなくてはなりません。
しかし、宿泊施設用の金庫は、各製品についている鍵はそれぞれ違いますが、マスターキーですべての金庫を開けることができます。
マスターキー1本で一括管理できるため、ホテルや旅館などの宿泊施設でよく使われています。

シークレット金庫

人目につかないような場所に隠すことを目的とした金庫です。
「偽装金庫」、「カモフラージュ金庫」など、一見して金庫に見えないようなものや、壁や床に埋め込むものがあります。

金庫の施錠方法

施錠方法にも、さまざまな様式があります。

ダイヤル式

最もスタンダードなタイプです。ダイヤルを左右に回し、番号を合わせて扉を開けます。
ダイヤルを回す回数が通常の半分のものや、100万変換ダイヤルなど、さまざまなタイプがあります。

金庫 処分 ダイヤル式

テンキー式

4桁以上の数字を選んで暗証番号を入力し、シリンダーキーを回して解錠します。
部屋に置いても違和感のないデザインのものや、暗証番号を液晶表示するもの、メロディ音機能付きのものなどがあります。

シリンダー錠式

鍵で解錠するタイプです。操作が簡単なのが特徴です。
リバーシブルキー(ディンプルキー)やシリンダー錠が2つ付いたものもあります。

指紋認証式

個人の指を登録し、指紋を鍵の代わりに使用する金庫です。

指静脈認証式

指の静脈紋様をスキャンし、本人確認を行います。
指紋認証式と同様に、他人のなりすましを防ぐことができます。

カード式

FeliCaカードやFeliCa対応携帯を鍵として使用するICカード式、専用カードと鍵を併用して解錠するタイプなどがあります。

数字合わせ式

ボタンを押して暗証番号を設定する金庫です。
自分の好きな数字が設定できるので、宿泊施設でよく使われています。

金庫 処分 数字合わせ式

マルチロック式

用途に合わせてロックシステムが選択できる金庫です。
指紋認証式、テンキー式、IC式を1つに収めたものや、指紋認証式またはテンキー式とシリンダー錠を併用して開閉するタイプなどがあります。

金庫を処分するには?

さて、実際に金庫を処分する場合、どのようにすればよいのでしょうか?
金庫のさまざまな処分方法をみていきましょう。

  • 自治体で処分する
  • お店に引き取りを依頼する
  • 不用品回収業者に依頼する
  • 金庫専門業者に依頼する
  • 遺品整理業者に依頼する

自治体で処分する

自治体では金庫をどのように収集しているのでしょうか。
金庫を処分したいとき、素材などから考えると、不燃ごみ? サイズから考えると粗大ごみ? 迷ってしまいますよね。
手提げ金庫は、自治体によっては回収対象になっていますが、耐火金庫に関しては回収していないところがほとんどです。

たとえば、名古屋市や大阪市では、

耐火金庫・・・収集外。ただし50cm角以下の小型のものは環境事業所に相談
手提げ金庫…不燃ごみ。ただし30cm角を超えるものは粗大ごみ

としていますが、札幌市や東京都目黒区では耐火金庫は収集されません。
また、長崎市のように、粗大ごみとして収集してもらえる地域もあります。
自治体で処分したい場合は、居住地域の役所などで問い合わせましょう。

金庫 処分 粗大ごみ

お店に引き取りを依頼する

もしも金庫を購入したお店がわかれば、相談してみましょう。
費用はかかりますが、引き取ってくれる場合もあります。
また、新しい金庫を買う場合は、買ったお店でなくても古い金庫を引き取ってもらえることがあります。

不用品回収業者に依頼する

依頼前に、料金についてしっかり確認しておきましょう。
金庫の引き取り料金のほかに、出張費、運搬料、荷降ろし料金(階段の場合)などが追加料金としてかかる場合があります。

また、金庫は重量のあるものです。
家庭用の金庫は重いものでも30kgほどですが、業務用の場合は100kg超とかなりの重量があります。

このような場合、スタッフを増員する必要があるので、あらかじめ外形寸法を測っておくとよいでしょう。
重量は金庫の表面に記載してあることが多いので、確認しましょう。

金庫専門業者に依頼する

金庫 処分 業者

金庫の解錠や修理など、金庫全般を専門的に扱っている業者では、不用になった金庫を引き取っているところが多いようです。
持ち主が亡くなったあと、金庫を解錠して中身を取り出し、そのあと処分したい場合などに便利です。

遺品整理業者に依頼する

遺品整理業者でも金庫の処分ができます。
遺品整理業者の最大のメリットは、遺品整理と不用品収集・運搬、また清掃まで全てが一気に片付き、時間も手間もかからないことです。

また、遺品整理業者なら、買い取りをはじめ、遺品の供養などきめ細かいサービスを受けることができます。
ホームページなどでどのようなサービスをしているか、また、買い取りや運搬に必要な資格を取得しているかを確認してから依頼しましょう。
また、複数の業者で相見積もりをとってから決めるようにするとよいでしょう。

金庫を捨てずに処分する

金庫がまだきれいで使えそうなものであれば、売却を考えてもよいでしょう。
たとえばインターネットのオークションやフリマアプリに出品したり、リサイクルショップに持ち込むなどの方法があります。

売る前には、まず大きさや重さを測っておきましょう。
家庭用の耐火金庫は、30kg以上のものもあります。オークションなどに出す場合、落札者や購入者が送料を負担する場合、あまり高いと売れにくくなってしまいます。

金庫 処分 オークション

また、メーカーや型番が分かれば、その情報を掲載しましょう。
検索されやすくなるので、早く売れる可能性が高くなります。
重量やメーカー、型番は、金庫に記載されている場合が多いので、金庫の表面や周りを確認してみましょう。

さらに「保証書付き」「キャビネット付き」などの情報や、傷がある、鍵が開けにくいなどの問題点がある場合は、必ず明記しておきましょう。

低金利が続いている現在、「タンス預金」が増えているそうです。
銀行に預金してもほとんど増えることがないなら、自宅の金庫でお金を保管するほうが安心というわけです。

これからは、家庭で金庫を利用する人は増えていきそうです。
それに伴い、生前整理や遺品整理で金庫を処分する機会も多くなっていくことでしょう。
金庫を用意するときは、処分まで考えて買う時代なのかもしれません。

この記事の監修をしたゴミ屋敷の専門家

氏名:新家 喜夫

年間2,500件以上のゴミ屋敷を片付け実績を持つ「ゴミ屋敷バスター七福神」を全国で展開する株式会社テンシュカクの代表取締役。ゴミ屋敷清掃士認定協会理事長。