代々のご先祖様が眠るお墓。お墓を供養することは、とても大切なことです。
ですが、近年、「墓じまい」をする人が増えています。
墓じまいとは、現在のお墓を撤去し、遺骨を他の墓地に移転したり、永代供養墓地に改葬したりすることをいいます。
墓じまいが増えているのは、社会の変化が大きな理由です。
現代の日本では、都市部に人口が集中し、核家族化が加速しています。
それに伴い、地方では、管理・供養する人のいないお墓「無縁墓」が増えていきました。
さらに、少子化・未婚化によってお墓の継承者がいなくなっているため、都市部でも無縁墓が増えています。
このような社会状況から、無縁墓になることへの不安を解消するため、永代供養のお墓を生前予約する人が増えているそうです。
今回は、永代供養墓の生前予約について見ていきましょう。
目次
永代供養墓とは?
永代供養墓とは何か
永代供養墓とは、さまざまな事情のためにお墓まいりができない人に代わって、霊園管理者が遺骨を供養・管理してくれるお墓のことです。
一般的なお墓では、草むしりや石磨きなどお墓の掃除や、お盆・お彼岸などのお墓まいりは、子孫の役目とされています。
しかし、近年の少子化により、お墓を守っていく人がいない家庭が激増しています。
法要などを営むことはもちろん、お墓を管理していくことができないのです。
そこで、永代供養墓に注目が集まっています。
永代供養墓であれば、霊園や寺院にお墓の管理を任せることができ、お盆、お彼岸などには供養祭が開催されます。
そのため、お墓を守る子孫がなくても安心できるというわけです。
永代供養墓の種類
永代供養墓には、主に4つの種類があります。
個人墓付き永代供養墓
個人墓付き永代供養墓は、最初に一般的な個人墓を設けるタイプです。
契約期間中は個人墓で普通に供養を行い、契約期間が過ぎると、遺骨を霊園内の供養塔などへ合祀されます。
契約期間は、仏式でいう「弔い上げ」となる33回忌をめどとすることが多いようです。
費用の相場は70万円〜150万円ほどです。
納骨堂
永代供養を行ってくれるタイプの納骨堂です。納骨堂側が供養し、合同供養祭などを行ってくれます。
個人墓付き永代供養墓と同様、33回忌をめどに納骨堂内の供養塔などへ合祀されることが多いようです。
費用の相場は50万円〜100万円ほどです。
都心からアクセスが良いほど、費用は高くなる傾向にあります。
合祀タイプの永代供養墓
個人墓を設けず、最初から供養塔などへ合祀を行うタイプです。
同じ霊園で合祀を選んだ人たちと一緒に一箇所に納骨され、供養も一緒に行われます。
費用は最も安く、10万円〜30万円ほどです。
中には3万円ほどの寺院・霊園もあるようです。
永代供養タイプの樹木葬
永代供養のスタイルをとる樹木葬です。
永代供養タイプの樹木葬は、墓石の代わりに樹木を植えるタイプのお墓で、霊園が管理と供養を行ってくれます。
山の一画を使い、遺骨を自然の木の近くに埋めるものや、寺院の一画に作られたスペースに埋葬されるものなどがあります。
一人につき1本の樹木を植える形式と、1本の大樹のまわりに何体もの遺骨を納骨する形式があり、遺骨を土に埋めて自然に還りたいといった自然志向の人から支持されています。
費用は30万円〜70万円で、個別の区画を設けるところは費用が高くなるようです。
永代供養墓のメリット・デメリット
少子化・未婚化の中でスポットを浴びている永代供養墓ですが、そのメリット・デメリットを見ておきましょう。
メリット
永代供養墓で最も大きなメリットは「後の世代に負担をかけない」という点に尽きるでしょう。
永代供養墓は、一般的なお墓と違い、年間管理料が発生しません。永代供養墓を購入し、支払いを済ませれば、残された人は管理料などを支払う必要がないのです。
また、永代供養墓は、霊園が管理と供養を行ってくれるため、残された人が掃除などの管理をする必要がありません。
お盆前、炎天下でのお墓掃除は大変です。温暖化の進む現代では、草むしり中に熱中症で倒れてしまう人もいるそうです。
しかし、永代供養墓であれば、霊園で掃除などの管理を行ってくれます。
また、家族が遠くに住んでいるために、なかなかおまいりに行けない場合も、霊園側が供養を行ってくれるので安心です。
つまり、永代供養墓は、のちの世代に経済的・肉体的・精神的な負担をかけないというわけです。
また、永代供養墓は、一般的な代々墓に比べ、価格が安いのもメリットです。
一般的な代々墓の相場は、250万円ほどですが、永代供養墓は、最も相場の高い個人墓付きのものでも150万円ほどで購入することができ、かなりリーズナブルであるといえます。
さらに、永代供養墓は、ほとんどの場合、宗教・宗派や信仰の制約がありません。誰でも寺院あるいは霊園と永代供養の契約を結ぶことができます。
デメリット
永代供養墓は、33年程度の契約期間が過ぎると合祀されます。
最初に個人墓を設ける個人墓付きのタイプであっても、最終的には他の人の遺骨と一緒に合祀されることがほとんどです。
多くの場合、骨壺から遺骨をあけて供養塔へ納骨するため、いったん合祀されると他の遺骨と混じり、誰の遺骨なのか判別できなくなってしまいます。
そのため、子孫がもし新しくお墓を買って、そちらへ遺骨を移したいと考えても、合祀後は移すことができません。
近年、永代供養墓は、さまざまなタイプのものがあり、かなり長い間、普通のお墓のようにおまいりすることもできます。
しかし、「永代供養墓」というと、無縁仏が葬られる寂しい供養塔のようなイメージを持つ人はまだ多いようです。
そのため、親族などに「どうして、こんなところに・・・」と、なかなか理解されないケースがあるようです。
特に、合祀タイプの永代供養墓に多いのですが、家族や親族に戸惑いが生まれることがあります。
個別のお墓ではなく、大きな供養塔に向かって手を合わせるため、自分の親や先祖におまいりをしている気がしない人もいるようです。
供養塔へおまいりする場合も、お花や供物をお供えし、線香を手向けて合掌するので、個人墓に対するおまいりと変わりはありません。
しかし「自分の家族や先祖に対して供養をする」という感覚は薄まってしまうかもしれません。
永代供養墓の生前予約のメリット・デメリット
さて、生きているうちに、お墓や葬儀を自分で選び、予約することを「生前予約」といいます。
近年、永代供養墓も生前予約しておく人が増えています。
社会やライフスタイルの変化によって、お墓の継承者がいない人が増えています。
また、昔は、生前にお墓の準備などをすることは縁起が悪いとされ、避けられる傾向にありました。
しかし、近年では「終活」という言葉も定着し、自身の死後のことをしっかり考えるのは大切なことという意識が定着してきています。
また、自身の死後の葬儀やお墓についても自分らしさを大切にしたいと考える人が増え、その中で、好みとライフスタイルに合った永代供養墓を選択する人が増えています。
そんな永代供養墓の生前予約について、メリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット
永代供養墓を生前予約することの最も大きなメリットは、自分が入るお墓を自分の目で確かめられることです。
自分の希望に沿ったお墓を選ぶことができるので、残された家族が、どんなお墓にしようか悩むことがありません。
また、経済的・肉体的・精神的に、のちの世代に負担をかけることがないため、お墓についての悩みがなくなり、大きな安心感につながります。
さまざまな条件を1つ1つ自分で比較・判断し、納得のいくお墓選びができることが、生前予約だからこそのメリットと言えるでしょう。
デメリット
とはいえ、デメリットもなくはありません。
永代供養の「永代」とは、「永久」ではないことを念頭に置きましょう。
ほとんどの霊園や寺院では、33回忌までというように、遺骨の供養・管理の期間を区切っており、期間が過ぎた後は、ほかの人の遺骨と合祀され、まとめて供養・管理が行われます。
いったん合祀されると、遺骨を取り出すことはできなくなります。この点で、家族や親族の理解を得にくいのはデメリットと言えるでしょう。
永代供養の生前予約をする際には、いつまでが個別の供養・管理なのか、いつ合祀となるのかをしっかり確認しましょう。
また、生前予約をして料金を全て支払った場合でも、年会費や管理費が別途にかかる場合があります。
これでは、結局、のちの世代に負担をかけてしまうことになります。
寺院や墓苑との契約内容は事前にしっかり確認しておきましょう。
まとめ
さまざまなメリットのある永代供養墓、そしてその生前予約ですが、のちのち揉めないためにも、条件などを事前によく比較検討し、しっかり考えてから決めましょう。