「遺品整理」と「特殊清掃」。
まったく違うサービス内容ですが、実はお互いに関係している部分があります。
特に、変死や孤独死の現場では、特殊清掃なくしては遺品整理を行うことができません。
このようなことから、近年では、特殊清掃と遺品整理をどちらも依頼できる業者が増えています。
目次
遺品整理と特殊清掃の違いとは?
まず、遺品整理と特殊清掃がどんな作業なのか見ていきましょう。
遺品整理とは?
「遺品整理」とは、亡くなった人が生前に使っていたもの全てを仕分け・整理することです。
着ていた衣類、使っていた生活用品、家具、家電、趣味用品など、故人の身の周りにあったもの全てが遺品整理の対象となります。
遺品整理では、故人の持ち物を必要なものと不用品に仕分けし、不要なものは処分します。
このとき、貴金属や美術品・骨董品など市場価値のあるものが出てきた場合は、遺産相続の対象となります。
また、預金口座の通帳、土地建物の権利書なども相続の対象となるので、必要なものとしてとっておきます。
中でも遺言書は相続に関して大変重要な書類ですので、すぐ開封せずによけておきましょう。
遺品整理を行うタイミングは特に決まっていませんが、親族が揃う四十九日などの法要をきっかけにすると良いといわれています。
親族を何度も集めるのは大変なので、法要のタイミングであれば形見分けなどもできるからです。
ただ、これよりも早く行っても構いませんし、遅く始めても問題ありません。
ただし、故人の住居が賃貸だった場合は、早めに遺品整理をして退去した方がよいでしょう。
特殊清掃とは?
「特殊清掃」とは、事件や事故、自殺などによる変死の現場や、孤独死によって遺体の腐敗が進んで汚れてしまった部屋を原状回復する作業です。
特に孤独死の場合、亡くなってから長期間、人に気づかれないことが多いので、遺体の腐敗が進み、体液が流れ出たり、害虫が発生したり、強烈な腐敗臭が部屋じゅうに充満したりといった事態になります。
このような場合、一般的なハウスクリーニングでは汚れや臭いを消すことができません。
そのため、特殊な薬剤や脱臭装置を使ってクリーニングを行います。
また、うじ虫やコバエなど害虫駆除、体液や皮膚の除去、場合によっては床板や壁紙の張り替え、土台のコンクリート削り、清掃後のコンクリート乗せなどを行います。
染み付いた臭いがどうしても取れない場合は、家の解体やリフォームを行わなくてはならないケースもあるようです。
部屋の広さや状態によって異なりますが、特殊清掃には1DKで3日ほど、3LDKで5日間ほどかかります。
もちろん、遺体が長期間放置されていればいるほど、汚れや臭いはひどくなるので、清掃時間はさらに長くなります。
遺品整理と特殊清掃のつながりとは?
遺品整理と特殊清掃は、まったく違う作業ですが、お互いにつながりを持っています。
遺品整理と特殊清掃
故人が病院や施設、または家族の見守る中で亡くなった場合は、すぐに検案・検死が行われ、日を選んで葬儀という流れになります。
そのため、遺品整理を行うだけで済みます。
しかし、故人の死が変死や孤独死であった場合、そのままの状態では遺品整理ができません。
そこで特殊清掃が必要となるのです。
特殊清掃では、汚染された箇所を除去します。
その際、遺品に体液や血液が付着してしまっていることがあります。
また、体液や血液が付着していない場合でも、遺体から発生した腐敗臭や死臭が遺品に付着してしまっていることもあります。
そのため、孤独死や変死の場合、特殊清掃と遺品整理の両方を行うことになります。
遺品が何もない、という現場はほぼないので、特殊清掃が必要な部屋には遺品整理が必要ということになります。
このような場合、まずは特殊清掃を行ってから遺品整理に移ります。
孤独死などの現場は、腐敗した遺体から出た体液や排泄物などが周辺に染み込んで、悪臭を発しています。
ここに害虫が発生し、また、さまざまな病原菌が大量に発生してしまいます。
このような部屋の中で、長時間遺品整理を行うことは感染症などを引き起こすことになり、非常に危険です。
また、このような状況は心身ともに大きなダメージとなるでしょう。
このようなことから、特殊清掃を行うことなく遺品整理を行うことはできないのです。
特殊清掃と遺品整理の流れは?
簡易的な特殊清掃を行う
まず、人が防護服なしでも入室できるレベルにするため、簡易的な特殊清掃を行います。
消毒、汚染されたものの撤去、汚物の除去、害虫駆除、簡易的な消臭などが主な作業内容です。
現金や、貴金属など市場価値のあるもの以外は、衛生上、この段階で処分されることがほとんどです。
遺品整理を行う
遺品を仕分けし、処分するものと残すものに分類します。
簡易的な特殊清掃の際、衛生上、問題のない遺品は残されています。
これらを必要なもの、処分するものに分けて梱包し、運び出します。
徹底した特殊清掃を行う
遺品整理が済んだところでモノのなくなった部屋を徹底的にクリーニングします。
不要品として家財が残っている場合は撤去し、処分します。
腐敗した体液などを徹底的に清掃します。
床や壁にまで染み込んでしまっている場合は、床板や壁紙を剥がして張り替えるといった作業も行います。
また、コンクリートの小さな穴の中にまでも臭いは入り込み、しみつくため、オゾン脱臭器で徹底的に脱臭を行います。
脱臭には3〜5日間ほどかかる場合もあるようです。
こうして、部屋を徹底的にクリーニングし、原状回復します。
特殊清掃と遺品整理を行うには?
特殊清掃はどうやって行うの?
単なる遺品整理であれば自分たちで行うことができますが、特殊清掃となるとそういうわけにはいきません。
クリーニングには特殊な洗剤や脱臭器などが必要ですし、深い専門知識や豊富な経験が必要だからです。
また、特殊清掃が必要な現場は、一般の人には心身共に負担が大きすぎます。
そのため、特殊清掃はプロの業者に依頼するのがベストでしょう。
特殊清掃はどこに依頼すればいいの?
特殊清掃や遺品整理は、それぞれ専門の業者があります。
特殊清掃のみ専門業者に依頼し、遺品整理は自分で行うこともできますし、両方を別々の専門業者に依頼することもできます。
しかし近年は、特殊清掃と遺品整理に密接な関係があることから、特殊清掃業者と遺品整理業者が業務提携していたり、1社で全ての作業を行うところも出てきています。
特殊清掃にかかる料金はどのくらい?
特別な道具と技術が必要な特殊清掃には、どのくらいの雹がかかるのでしょうか。
あくまで目安ですが、
- 消臭作業・・・5万円〜
- オゾン脱臭・・・3万円〜
- 消臭剤や除菌剤の散布・・・1万円〜
- 害虫駆除・・・2万円〜
- 排泄物・血液などが付着した畳の撤去・・・1枚につき3千円〜
ただし、部屋の広さや状況によって変わるので注意が必要です。
また、脱臭に関しては、許容できる範囲まで消臭を続けますが、こちらは季節によっても異なります。
場合によっては数週間かかるような場合もあるので、料金は大きく変わります。
そして、どのレベルまで原状回復を行うかによっても料金は変わります。
事前に家族でよく話し合い、業者に相談して、適切なプランを提案してもらうと良いでしょう。
特殊清掃を依頼する際の注意点は?
経験豊富な業者を選ぶ
特殊清掃の現場は、さまざまです。
死因、放置されていた時間、季節など、いろいろな条件によって状況が変わってきます。
そのため、経験の浅い業者では対応しきれないケースがあります。
依頼の際は業者のサイトをしっかりチェックして、経験豊富な業者を選びましょう。
対応が親切かどうか
依頼や問い合わせには電話やメールを使いますが、この時の対応が良くない業者は選ばない方が良いでしょう。
デリケートな問題だけに相性もありますし、信頼できる丁寧な対応をしてくれる業者を選びましょう。
見積もりをチェックする
繰り返しになりますが、特殊清掃はさまざまなので、クリーニング完了までどのくらいの時間、料金がかかるかは見積もりをしてみないとわかりません。
そのため、必ず見積もりを出してもらいましょう。
明細をしっかりチェックし、わからないことがあったら必ず質問します。
あまりに安すぎる業者には注意が必要です。
特殊清掃は高度な技術やタフな精神力が必要なため、相応の料金がかかるのは当然と考えた方が妥当です。
また、見積もりは複数の業者から相見積もりを取り、比較検討して、納得できる業者を選びましょう。
まとめ
遺品整理と特殊清掃には、意外なつながりがありました。
部屋を原状回復し、良い遺品整理を行うためには、特殊清掃は不可欠です。
良い業者を選び、故人を送ってあげましょう。