9月もいよいよ終盤。秋のお彼岸でお墓まいりをした人も多いのではないでしょうか?
お墓は、大切なご先祖さまの魂を供養する場所です。
親御さんがいなければ、あなたは生まれて来ませんでした。遡れば、ご先祖様の誰1人欠けても、あなたは存在しなかったのです。今生きているあなたの命は、多くのご先祖さまによって生まれたのであり、何代も前の顔を知らない人も決して無関係な存在ではありません。
そんなご先祖さまに感謝し、祈りを捧げることが「供養」であり、供養をする場所がお墓です。
では、墓や墓地の種類からお墓の建立、お墓開きまでをお話しています。
今回はその続き。お墓まいりの作法や「お墓じまい」までご紹介しましょう。
目次
お墓まいりをするのは、いつ?
昔は、家の近くに共同墓地があったり、菩提寺の敷地内にお墓があったりすることが多かったため、お墓まいりは日常茶飯事に近いものがありました。
しかし、現代では、生活圏にお墓があるとは限らず、離れた場所にあることが多いので、毎日のようにおまいりすることは難しいですよね。
そんな、限られたお墓まいり。一体、いつすればよいのでしょうか。
- お彼岸
- お盆
- 年末年始
- 命日
- 法事や法要のとき
- お祝いごと、報告があるとき
お彼岸
年に2回、春分の日、秋分の日を中日とする前後3日間、計1週間を「お彼岸」といいます。
「彼岸」は仏教用語で、煩悩や迷いを超えて到達する悟りの境地のことです。仏教では、私たちが今住んでいる、煩悩や迷いに溢れた世界(此岸)で6つの修行をすれば、彼岸に行くことができるとされています。この修行をするのに良いとされているのが、年2回のお彼岸なのです。
実は、お彼岸にお墓まいりをするのは日本独特の風習で、同じ仏教国であっても他国では見られない習慣です。
というのは、日本でいう「お彼岸」は、仏教だけでなく、神道の考えが合わさったものだからです。
日本では、仏教伝来前には神道が信仰されていました。また、農耕儀式や自然崇拝の考えがあり、種を撒く春には五穀豊穣や安全を祈願し、収穫の秋には豊作に感謝して祭祀を行いました。
神道には、「万物に神様が宿る」という考えがあり、太陽も神として崇められていました。そこから、太陽が最も真西(仏教でいう西方浄土)へ沈む春分・秋分の日に先祖を供養するのがよいと考えられるようになったのではないかといわれています。
さて、お彼岸は、お盆のように決まった行事や飾り付けをすることはなく、お墓まいりをするだけです。一般的には、中日か、その前後に行きます。
お彼岸には、お墓や仏壇におはぎや、ぼた餅を供える習慣がありますが、実はこれ、同じ食べ物なんです。名前が違うのは、あんこの小豆の粒を、春には牡丹の花、秋は萩の花になぞらえて呼ぶから。日本人の季節感と繊細さが表れた呼び方ですね。
お盆
お盆は、正式には「盂蘭盆会」といい、7月または8月の13日〜15日(地域によっては16日)に行う先祖供養の仏事です。年に一度、亡くなったご先祖様が家に帰って来る期間とされています。
お盆の準備は地域によって異なりますが、仏壇の前に棚や台を設け、供物や花を飾ります。また、迎え火を焚いてご先祖様をお迎えし、送り火で見送るという風習もありますね。
この時期にも、お墓まいりをします。家族そろってお墓に手を合わせ、ご先祖さまをお迎えし、感謝したいものです。
年末年始
年末年始といえば、お盆と並んで帰省する人が多い時季ですね。普段なかなか帰れない人にとって、お墓まいりをするチャンスです。にもかかわらず「お正月にお墓まいりをするのは縁起が悪い」とも言われます。これは本当なのでしょうか。
実は、そんなことはありません。明治時代の廃仏毀釈の名残りから、そう言われることがあるだけのようです。
本来、お正月は、年神様とご先祖さまをお迎えする魂祭りの行事です。ですから、お正月に、ご先祖さまのいらっしゃるお墓におまいりすることは、ちっともおかしなことではないのです。
私たちにとって大切なご先祖さま。年末にはお墓をきれいに掃除し、新年にはご挨拶をして一年の無事を祈願しましょう。
命日
故人の命日(亡くなった日)にはお墓まいりをしましょう。
亡くなった日の同月同日を祥月命日、毎月の同日を「月命日」といいます。たとえば、亡くなった日が9月10日なら、9月10日が祥月命日、他の月の10日が月命日です。
祥月命日には、一周忌、三回忌など法要などを行いますね。また、法要のない年もぜひお墓まいりしたい日です。
月命日は、他の日よりは大事な日ではありますが、そのたびにおまいりしなくてはならないというほどではありません。もちろん、時間が許せば、おまいりするのは良いことです。
法事や法要のとき
四十九日、納骨式、一周忌など回忌法要の際は、お墓まいりをします。これは法要の式次第に組み込まれているケースがほとんどです。
お祝いごと、報告があるとき
お墓まいりをしたいのは、法要などのときだけではありません。たとえば、受験合格、結婚、出産、新築などのお祝いごとがあったら、ご先祖さまにぜひ報告しましょう。
お墓まいりに、この日はNGといった決まりはありません。慶事をご先祖さまに報告すれば、きっと喜んでもらえることでしょう。
また、迷いや悩みがあるときなど、お墓の前で手を合わせて静かな気持ちになるのも良いですね。
お墓まいりの作法
さて、お墓まいりには決まりごとがあるのでしょうか?
お墓を訪れる際に注意すべきことをみていきましょう。
- 服装
- 持ち物
- 時間帯
- お墓参りの流れ
服装
一周忌などの法要、また新盆の際は喪服を着ましょう。しかし、それ以外の時は、特に決まりはありません。自由な服装でよいでしょう。
ただし、あまり派手な服装や華美なアクセサリーは避けた方がベターです。特に室内でなく外にある墓地の場合は草や木が多いため、虫さされなどに気をつけるとよいでしょう。また、お墓の掃除をする際に、あまり動きにくい服装も考えものですね。
地域のしきたりなどがある場合は、従います。
持ち物
出かける前、おまいりに必要なものをチェックしておきましょう。
掃除用具
- 箒
- ちりとり
- ごみ袋
- 軍手
- バケツ
- ひしゃく
バケツやひしゃくは用意されている墓地もあるので、事前に確認しておくと荷物が少なくて済みます。
おまいりに使うもの
- 仏花
- 供物
- ろうそく
- 線香
- ライター
- 数珠
- 半紙
時間帯
基本的に、行ってはいけない時間帯はありません。墓地で訪問時間が決まっていれば、その範囲内ならいつでもOKです。
ただ、おまいりに好ましくないとされる時間帯はあります。よく言われるのが夕方です。薄暗くなり、人の顔がはっきり見えにくくなる「逢魔時」。いわゆる黄昏時のことです。
逢魔時は大禍時とも書き、昔は魔物に遭遇したり、災禍を被ったりする時間と考えられていたのです。
一般に、墓地には外灯などがないので、暗くなると足元が見えにくく、転んだりする危険性が高くなります。また、人気のない場所でもあるため、昔は危険とされたわけです。
現代でも、お墓は周囲より暗く人けがないところが多いので、夕方以降のお墓参りは避けた方がよいですね。
お墓まいりの流れ
挨拶をする
お寺の墓所の場合、僧侶に一声かけましょう。また、お墓まいりの前に、本堂におまいりしておきます。
無縁仏や、両隣のお墓にも手を合わせます。ただし、これに関しては、よその霊に頼られてしまうので、しない方がいいとされている地域もあります。僧侶に確認しましょう。
掃除をする
バケツに水を汲み、自分の家のお墓に行きます。まずは掃除をしましょう。
お墓の周りに生えている雑草や枯れ草を抜き、蜘蛛の巣なども取り払います。落ち葉やごみを箒で掃き清めます。墓石に苔や汚れがついていたら、雑巾などで丁寧に落としましょう。
バケツの水をひしゃくですくい、墓石にたっぷり丁寧にかけます。
お墓に水をかけるのは、お墓にかけられた水しか飲めない餓鬼への施し・慈悲とされています。また、水をかけることによって、ご先祖さまが子孫の訪問に気がついてくれるともいわれています。
故人が好きだったからとお酒をかける人もいるようですが、お酒やジュースなどは墓石にシミが残ってしまうので、最後に水で流しておきましょう。
花などを飾る
掃除が済んだら、花立てに水を入れ、お花を飾ります。
半紙を敷いて、その上に供物を供えましょう。供物はNGの墓地もありますので、事前確認が必要です。
続いて、ろうそくに火をともし、線香に火をつけます。お墓まいりのときの線香は、1本のものでなく、束になっているものを使います。
おまいりをする
墓石よりも姿勢を低くするのがマナーです。墓石が低い位置にある場合は、しゃがんで手を合わせましょう。ご先祖さまへの感謝や、日頃の報告などを心の中でお話しします。
片付け
おまいりが済んだら、供物を片付けます。
供物がそのままになっていると、カラスやネコ、ネズミなどが荒らし、糞を撒き散らしたりすることがあります。動物や鳥の糞は掃除が大変なので、お墓を汚されないよう供物は必ず片付けて帰りましょう。
線香やろうそくの火は完全に消します。ただし、消す時は、口で息を吹きかけてはいけません。失礼にあたります。必ず、手で仰いで消しましょう。
墓じまいとは?
機会あるごとに手を合わせてきたお墓。しかし、近年「墓じまい」をする人が増えています。
墓じまいとは、今あるお墓を片付けて更地にし、お寺や墓所に敷地と使用権を返すことで、廃墓ともいいます。
なぜ墓じまいをするの?
墓じまいが増えているのは、社会環境の急速な変化が最も大きな理由です。
都市部に人口が集中し、核家族化が加速するにつれて、地方では無縁墓が増えていきました。さらに、少子化によってお墓を継承する後継者がいなくなり、都市部の霊園でも無縁墓が増えています。
このような社会状況を背景として、後継者がいない、親族に迷惑をかけたくないという理由から、先祖代々のお墓を墓じまいするケースが増えているのです。
墓じまいと永代供養
お墓には、ご先祖さまの遺骨が納められていますよね。墓じまいをしてしまったら、このお骨はどうすればよいのでしょうか。
永代供養
最も多いのが、永代供養をしてくれるお寺や墓所への改葬です。
永代供養は、墓所やお寺の僧侶が、永年にわたり供養を続けてくれるので、後継者がいなくても安心です。初期費用のみで、あとはずっと供養をしてもらえます。また、残された人も、その場所へ行けばおまいりできるというのもメリットです。
合葬となる場合もあるので、他の人と骨が混ざるのに抵抗がある人には向いていません。
散骨
最近では、墓所に改葬するのではなく、パウダー状に砕いた骨を海や山などに撒く散骨を選ぶ人も増えているようです。ただし、散骨してしまうと、おまいりする場所がなくなり、心の拠りどころを失くしてしまうことにも。散骨を考える場合は、しっかりと検討しましょう。
納骨堂・手もと供養
他の人とお骨を一緒にしたくない場合は、個々にお骨を納められる納骨堂に改葬する方法があります。ただし、納骨堂は、永代供養料だけでなく、年間の維持費・管理費がかかります。
費用があまりかからない方法としては、お骨を手もとに置き、家で供養する「手もと供養」があります。
しかし、どちらの方法も、供養する人がいなくなった場合のことを考えなくてはなりません。
墓じまいの流れ
親族と話し合う
墓じまいで多いのが、親族間のトラブルです。
お墓には、多くの人の思いがあるものです。独断で事を進めず、必ず相談して決めましょう。
墓地に伝える
墓じまいが決まったら、墓地の管理者に伝え、必要書類を提出します。
墓じまいを行う
撤去する作業を依頼する石材店を決めます。
僧侶に依頼し、必ず魂抜きの供養を行ってから撤去作業をします。更地になったら、墓地に永代使用権を返却します。
許可を申請する
移す際には、改葬許可の申請が必要です。
- 墓地のある地域の役場で発行する「改葬許可申請書」
- 現在の墓地の管理者が発行する「埋葬(納骨)証明書」
- 改葬先の管理者が発行する「受入証明書(永代供養許可証)」
以上の書類を、もとの墓地がある地域の役場へ提出し、改葬許可証をもらいます。
これを、改葬先へ提出します。
お墓のことは1人では決められない?
遺品整理は、社会を映す鏡のようなもの。我々も現代社会の状況を仕事を通じて痛感しています。お墓にも同じ理由から変化が出てきているんですね。
お墓のことは、1人で決められない部分も多く、お悩みの方が多いのではないでしょうか。そんな時は、ぜひ遺品整理業者にご相談ください。提携の業者、寺院などのご紹介も致します。