お彼岸も過ぎ、秋が深まってきました。
「暑さ寒さも彼岸まで」とはよく言ったもの。温暖化など環境破壊が叫ばれていますが、季節はそれなりに巡って来るようです。
お彼岸には、お墓まいりをした人も多いのではないでしょうか?
お墓の掃除をして新しいお花を飾り、静かな心でご先祖さまに向かい手を合わせる・・・日本人ならではの時間ですね。
さて、お墓のあるところは「墓地」と言いますよね。でも、似た言葉で「墓所」もあります。
この二つってどう違うのでしょうか? そんな、お墓に関する言葉についてみていきましょう。
目次
「墓地」と「墓所」
「墓地」とは、管理棟や参道なども含め、お墓を建てて良いと許可された土地のこと。墓苑・墓所などとも呼ばれます。
「墓所」は、お墓を建てるために整備された区画のこと。また、建墓の為の土地そのもののことも指します。
墓地と同じ意味で使われる言葉です。
「永代供養墓」と「永代使用墓」
「永代供養墓」とは、お寺や霊園が責任を持って、長期的に供養するお墓のことで、「永代墓」とも呼ばれます。
個別に建てられたお墓ではなく、1つのモニュメントに多数の遺骨を納める形式が多いようです。
多くはお墓の後継者などが絶えてしまう心配がある場合などに利用されます。
「永代使用墓」は、霊園や寺院などに「永代使用料」を支払い、永代にわたってお墓を使用する=その土地を借りる権利を確保した墓地のことです。
永代使用墓地とも言います。
一代墓(その世代のみが使用できるお墓。一定期間が過ぎたあと、遺骨は永代墓や合祀墓に移される)や永代供養墓のようなケースを除いた、一般的なお墓の多くが永代使用墓地にあたります。
お墓の土地は、あくまで永代にわたってお墓としての土地の使用権利を借りるものであり、土地を購入するわけではありません。
そのため、お墓を所有者が他者へ転売するといったことは原則できません。
「永代使用権」と「永代使用料」
「永代使用権」は、墓地(お墓のある土地)を使用する権利のことです。墓地使用権とも言います。
お墓は、不動産として土地を購入するわけではなく、永代にわたってお墓として使用することを目的として借りる形になるため、ごく一部の例外を除き、売買はできません。
一般的に、永代使用権の取得後には、年間管理料などの管理費が発生しますが、年間管理料を支払っていれば、代々にわたって使用し続けることができます。
「永代使用料」は、永代使用権を得るために、お寺や霊園などに支払うお金のことです。
同じ面積であっても、墓地によって価格が異なります。
また、方角や角地か中地かの違いなど立地条件によっても、価格に差が発生することが多いようです。
「墓碑」「墓誌」「墓標」
「墓碑」は戒名・俗名・享年・没年月日・略歴などを刻み、埋葬されている人のことが分かる石版、もしくはお墓そのものを指します。
「墓誌」とは、お墓に埋葬されている人の没年月日や戒名・俗名・年齢など、略歴を記した石版で、墓石の傍らに建てる石碑のこと。「墓碑」と同じ意味です。
それに対し、「墓標」には、複数の意味があります。
木製の簡易墓
墓地で、まれに木製の棒に戒名などを刻んだものが建てられていることがあります。
のちのち、きちんとしたお墓を建てるための仮のお墓として建てたものです。
一般的には、この木製のお墓を「墓標」と言います。
最終的には石のお墓を建てるのが普通です。
お墓(墓石)の総称
いわゆる一般的な「墓石」のことを指す場合が多いのですが、木の板のみや簡易的な石のお墓のみでも、そこに埋葬されているということが分かれば「墓標」と呼びます。
お墓に刻んだ文字など、埋葬の目印
お墓に刻んだ文字のこと、もしくはその場所に埋葬していることを示すことを言います。
主に個人の名前(戒名や俗名)、没年月日(享年・行年)などを彫刻し、そのお墓に誰が眠っているのかを分かるようにします。
「享年」と「行年」
「享年」は、その人が亡くなった年齢のことです。
「行年」という言葉もよく用いられ、お墓には亡くなられた年齢として「行年・享年」のどちらかを彫刻するのが一般的です。
「享年」と「行年」は大きく違わないのですが、やや意味合いが違います。
「享年」は、『この世で天から命を授かり、これまで生かされた』といったイメージ。
それに対し「行年」は、『自分の力でここまで生きてきた、人生を全うした』というイメージです。
「石碑」と「石塔」
「石碑」とは、お墓のことを表す場合と、故人や祖先の言葉や業績を刻んだ石製の碑のことを指す場合があります。
後者の場合は、お墓とは用途が違い、弔いの意味は少ないです。
たとえば故人が作家だった場合、その一文を刻んだり、会社の創業者の功績などを記したりして、その人の功績を後世に伝えるために設置されます。
墓域内に設置されることもありますが、この場合は墓石や墓誌とは別に石碑をおくのが一般的です。
「石塔」とは、お釈迦さまを弔うための仏塔で、特に素材が石でできているものを石塔と呼びます。
お墓の場合は故人を弔うためのものですが、墓石そのものも石塔と呼ぶことができます。
また、五輪塔や大型の多重塔をさすこともあり、大型の多重塔(三重の塔~)の多くは文化財となっているものも少なくありません。
もっとも身近な石塔は、供養塔として各地で見ることが出来る「五輪塔」ではないでしょうか。
古くからある供養塔には、歴史上の人物のものもたくさんあります。
ちなみに、木板で造られた卒塔婆も、起源は仏塔と同じと考えられています。
「香皿」「香立て」「香炉」
お墓の「香皿」は、お線香をあげる香炉に入れて使う、お線香や香炉を守るためのものです。「線香皿」とも呼ばれます。
香炉に直接お線香を置くとお線香の火が消えやすく、香炉が傷ついてしまう可能性があるため、この香皿が使われます。
一般的な香皿は、ステンレス製で錆びにくい素材が使用され、網状になっている部分にお線香を載せる感じで置きます。
灰も簡単にはらえるので、何度も繰り返し使用できます。
「香立て」は、お墓の手前部分にあるお線香を上げるための道具です。
お線香を立てて置くタイプです。
お墓は野外で雨風吹きさらしになっていることが多いため、屋根がなくお線香が消えやすい「香立て」タイプは珍しくなっているようです。
「香炉」は、お墓の手前の方にあるお線香をあげる部分のことです。
以前は、お線香を立てて置く「香立て」が一般的でしたが、雨風でお線香がすぐに消えてしまうため、最近では屋根や壁の付いた「香炉」が一般的になりました。
香炉でお線香をたく場合は、線香を置くための専用のお皿「香皿」を使用します。
「納骨」と「納骨法要」
「納骨」は、お墓などにお骨を納めること、または、骨壺に火葬後のお骨を納めること。
納骨する時期は、初七日、四十九日、百か日などの法要の際に、一緒に行うことが多いようです。
「納骨法要」とは、お墓に遺骨を納める際に行う法要のことです。
納骨の際に行う、お坊さんによる読経や、参列者による焼香などの一連の法要儀式のことを指します。
「開眼供養」と「閉眼供養」
「開眼供養」は、新しいお墓に故人の魂を移すための儀式です。
開眼供養を行うことによって、石から「お墓」になります。
「魂入れ」「入魂式」「建碑式」などとも呼ばれます。
近年では、49日などの埋葬式の日に一緒に行われることが多いようです。
また、新しいお墓ではなく改葬する場合も、元のお墓から魂抜きをして、移転先の新しいお墓で開眼供養を行います。
開眼供養の依頼は、寺院墓地の場合はそのお寺に、霊園の場合は管理事務所や担当石材店に手配を依頼します。
「閉眼供養」は、「魂抜き」「抜魂式」「性根抜き」などとも呼ばれます。
改葬(お墓の引越し)やお墓の建て直しなどを行う際にとり行われる儀式です。
お墓から遺骨を出し、墓石をただの石に戻します。
「開眼供養」とは反対の意味です。
閉眼供養ののち取り出された遺骨は、開眼供養が行われた新しいお墓に移されます。
開眼供養、閉眼供養ともに僧侶に立ち合ってもらい、お経をあげていただく場合がほとんどです。
「埋蔵」と「埋葬」
「埋蔵」とは、火葬された遺骨を、お墓などに納骨することを言います。
埋葬を行う場合は火葬許可証(改葬の場合は改葬許可証・分骨の場合は分骨証明書)が必要です。
近い言葉に「埋葬」がありますが、「埋葬」は遺体をお墓などに納めることで、土葬も含まれます。
しかし、我が国では、火葬を行った遺骨をお墓に納骨する「埋蔵」のほうが多いため、埋蔵の場合も埋葬と言うこともあります。